人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

2075 / 2537
シャムシード『アフラ・マズダ。真なる善神。本来ならば万の謝罪と、億の罰を賜るべき…ですが、今は』

アフラ・マズダ『そうだ。キラナ…我が娘とも言うべき存在に、力を貸してほしい』

シャムシード『喜んで。我が身全てを賭して、かの御方の力となりましょう。そしてそれが、償いの道への一歩!』

アフラ・マズダ『然り。そしてまた一つ、この星の神話は楽園にて束ねられるのだ──』


聖なる力と正しき想い

『光輪よ、私に力を!善の証を、今ここに!』

 

聖王キラナの号令に応じ、アフラ・マズダの光輪が姿を変える。聖王たるキラナは運び手ではなく担い手であり所有者であるため、その真の力を引き出すことが可能となったのだ。光り輝く輪であるそれは、所有者の力を全開させる為の導となる。

 

【あれは……!】

【へっ、懐かしいじゃねぇか。セファール以来かね?】

 

ザッハーク、アンリマユはそれを知っている。かつてアフラ・マズダが自由自在に行使していた権能にして自らの一部。それらは千変万化、自由自在に姿を変え、悪神、並びにその配下を討ち祓い善の理を示してきた。言うなれば、世界に善悪の概念をもたらした神がアンリマユ、そしてアフラ・マズダなのだ。

 

光輪とは形無き、しかし物質界に存在する物理的なもの。それらは無形であるが故、ありとあらゆるものに姿と力を変化させる。聖王シャムシードが有していた智慧と、神の視座と魂を有するキラナが合わさった今、光輪は武具であり手足となったのだ。

 

【舐めるなよ小娘風情が…!オレがそのような小細工に退くなど、ぐっ…!?】

 

逃げず、真っ向から挑まんとしたザッハーク。具現化した瞬間違和感に身体を痺れさせる。見ると自らを構成しているエーテルから、光が漏れ出ている。

 

【なんだ!?この、不愉快な光は…!】

【プレシャスパワー、って言うんだぜ?知らねぇとは遅れてるな、ザッハークちゃんよ】

 

身体から七色の粒子を溢れさせ悶絶するザッハークを、アンリマユが嘲笑う。先の頃より布石は打たれていたのだ。

 

【貴様、わざと己を貫かせ…泥にこの、不愉快な粒子を混ぜ込んでいたのか…!!】

 

【ハッ。絶対悪名乗るにはオツムが足りてねぇんでねぇの?やられ役が板についてきたなぁ、ザッハーク様よぉ!】

 

【嘗め、るなぁっ!!】

 

本来なら完全に行動不能になるはずだが、そこは流石の絶対悪というべきだろう。ねじ伏せ、真っ直ぐにキラナへと直進して見せる。しかし、その挙動には精彩がまるでなく、致命の毒を盛られた事による破滅に満ちていた。だが、当然慈悲をかけられるような高尚な魂などでは無いため…。

 

『ぶっころせーっ!』

 

キラナの号令に応え、光輪がその権能を剥き出しにする。真円を描いていた輪が弾け飛び、その一つ一つが刃であり、銃口であり、槍である超善執行武具へと変性を遂げる。それらは聖王の号令の下、ザッハークへと断罪を仕向ける!

 

【ぐぅおぉおぉおぉおぉおぉおぉおッ!!!】

 

ザッハークを切り裂き、射ち穿く数多無数の光条にして刃。数にして数千を超えるそれが、空間を縦横無尽に飛び回り絶対悪を蹂躙していく。一つ一つがアフラ・マズダの権威籠もる神の一撃、それらを数多無数に放つ自律起動ユニットこそがキラナの有す光輪の威が一つ。

 

【この程度の、子供騙し等にやられるものかァ!!】

 

ザッハークが気迫と共に魔力を放つ。それは善を呑み込む苛烈なる悪の波動であるが、キラナにそれは届かない。無数の光輪が形を変え、彼女を守護する絶対の盾となる。

 

【こ、この力は…!!】

 

彼は幻視する。かつて誉れ高き聖王として謳われしシャムシード。その姿が、その魂がキラナを守護し、防護している。かつて己が弄び、破滅に導いた魂が、正しき報いをザッハークへともたらしている。

 

【おーおー、さしずめアフラ・マズダ版ガンダムエアリアルだぜ。タイムリーだねぇ。二期が待ち遠しいぜ】

 

【あの女…!正しくその力を取り戻し、このオレに復讐を果さんとするか!】

 

【あん?んな訳ねぇだろ。なんもかんもテメーの尺度でモノを語ってんじゃねぇぜ、ザッハーク】

 

アンリマユはすっかり観戦モードとなり、特等席にてザッハークが蹂躙されていく様を見ている。そして悪神として、今キラナに誰が、どのように力を貸しているかすらも見据えているのだ。

 

【お前のカキタレだった女、シャムシードとか言ったか。あいつは確かに過ちを犯し、自分こそがアフラ・マズダであるなんぞほざき、お前に全てを踏み躙られた。そりゃあ、腸煮えくり返るだろうよ。復讐を考えるのはなんらおかしい事じゃあねぇ】

 

【ならば、今のヤツがそうであろうが!オレを八つ裂きにせんと猛り狂うこれこそが本性であろうよ!】

 

【違うね。罪の晴らし方は復讐だけじゃねぇ。贖罪って形でも出来るのさ。今それを、まさにあの女はやってんだ】

 

己の全てをキラナとアフラ・マズダに捧げ、善なる戦いと願いを貫く力とする。かつて闇に墜ちた己だからこそ、真なる善を決して喪わせんと奮い立つ。

 

【罪ってのは受け止めるもんであり、いつか赦されるもんなのさ。シャムシードとかいう女の罪は重すぎる。永遠に償っても償いきれない大罪人だ。だからこそ…】

 

そう、だからこそ。かの女の選択した贖罪という道に伴う決意と覚悟、そして強さは何よりも重く、強い。遥かな底を知るが故に、そこに誘う悪の恐ろしさを知るが故に。それを齎す邪悪さを知るが故に。

 

【そんなヤツが力を貸してんだ。テメェみたいに玩具にしてた頃より強いのは当たり前の話だろうが】

 

『ザッハーク!げーむおーばーだ、ど外道ー!!』

 

光輪が瞬時にキラナの翼、双槍、ジェットパックとなり、ユニットと共同戦線にてザッハークを打ち据える。空間すべてを討ち滅ぼす善の光の窮極たる無尽無辺光となり、全ての悪を貫く──!

 

【ぐぉあぁあぁあぁあぁぁ!!!】

【ぎゃぁあぁあぁあぁぁー!!!】

 

アンリマユも貫く───!!

 

 

『畳み掛ける!しねぇ!!』

 

キラナのさらなる号令により、光輪は更に姿を変える。それは光輪の持ち主たるアフラ・マズダ、その偉大なる…顔。頭部ユニットとも言うべき、巨大な顔面に光輪が変容する。

 

【巫山戯るな、小娘如きがァァァァァァ!!】

 

ザッハークもまたアジ・ダハーカ。影といえどその精神と本能は健在である。顕現の魔力すらも回した収束の一撃が、キラナに向けて放たれる。

 

『大いなるアフラ・マズダの一撃必殺のたくさん攻撃!』

【一撃なのかたくさんなのかどっちかにしろや!】

 

『くらえー!!遍く照らし示す万象(リリサ・アヴェスター)』ー!!

 

瞬間、アフラ・マズダの顔面を模した顔の穴という穴から無数の光線が放たれ、空間の全てを白く、清らかに覆い尽くす程の大質量にてザッハークを滅し、塗りつぶしていく。逃げる空間など何処にもない、空間飽和一斉浄化宝具。

 

【ぐぅおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉお!!!馬鹿な、このオレが……!小娘ごときにィィィィィィィィィィ!!!!】

 

二度目の敗北を喫し、完全に光の中へと消え去っていくザッハーク。悪たるものへと突き刺さる善の権能の顕現に、シャムシードという隠れ蓑を有していない彼が耐えきれる道理など何処にもない。胸の空くような断末魔と共に、悪辣なアジ・ダハーカの精神と本能は消え去っていく。

 

【ぎゃあぁあぁあぁ!?なんで私も浄化対象なんだよぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉお!?】

 

当然アンリマユも悪側なので、浄化からは逃れられない。まぁアンリマユもアンリマユで、ザッハークを逃さないよう泥を絡め取らせていたので想定通りの結果ではある。

 

アフラ・マズダの顔面ビームは空間を満たして3分ほど続き、対国宝具クラスの魔力を耳や鼻の穴も含めた各部位から撒き散らしながら収束。やがて収まり静寂が戻る。

 

『よくやってくれた、アンリマユ。シャムシード、並びに善の鎧。全てを奪い返すことができたな』

 

【できたな、じゃねぇよコノヤロー…アンリマユをなんだと思ってやがんだ…】

 

『お前は私の対。偉大なる二元の片割れ。対等の…盟友だ』

 

『セーヴァー!やった、やったよー!わーい!』

 

【はは、はははは……】

 

アレだな、真面目にぶっ飛んでんのが一番イカれてんだな。大人になりずっと柔らかくなったキラナに抱かれながら、粒子を撒き散らすアンリマユであった。

 

…味方からのダメージが甚大じゃね?と気付いたのはその後だという。




アフラ・マズダ『鎧は修復し、複製した。キラナとシャムシードのものと、対になる者のために保管しておく』

アンリマユ【セキュリティちゃんとしとけよ、マジで】

キラナ『セーヴァー!どうだった?私、どうだった?』

セーヴァー【どうかな、と言われりゃあ…】
キラナ『?』

【立派になったな。…色々と】

キラナ『うん!セーヴァーは、リッカやアジーカの為にくそざこなんだよね?』
【どこから覚えてんだそういうんは!】

キラナ『だから、今度は私がセーヴァーを護るね!セーヴァーが私に、してくれたみたいに!』
【キラナ…】

キラナ『ずっと言いたかったんだぁ。──セーヴァー、大好き!わたしと、ケコーンしてください!』
セーヴァー【へーへー、私も好きだぜ。病める時も辛いときも一緒にいよーな】

キラナ『ん』
【ん?】

キラナ『ちかいの、ちゅー!』
【おいアフラ!何教えてんだテメー!】

アフラ・マズダ『素晴らしい。次代のアンリマユとアフラ・マズダ…ゾロアスターは受け継がれたのだ…』

【おぉい!!】

シャムシード『〜〜〜ふふっ…』

こうして、ザッハークが目論んだ善なる怒りの鎧は、無事回収される事となり…

プレゼントボックス『がたごと、がたごと』

アンリマユ【…………】

キラナ『でぇえぇえん!キラナがなかまになった!』

アンリマユ【気前いいなぁ、楽園はよぉ(白目)】

無事、聖王キラナが配布される運びとなりましたとさ。



〜ダマーヴァンド山、最深部


???【……どうやら、影ではこれが限界か】

最深部にて、胎動を続ける真体。

【何れ、お前達は知るだろう。この世に在る、真の邪悪を。果たして、オレに勝ったように下せるかな…?】

それは、静かに蠢いていた。

どのキャラのイラストを見たい?

  • コンラ
  • 桃太郎(髀)
  • 温羅(異聞帯)
  • 坂上田村麻呂
  • オーディン
  • アマノザコ
  • ビリィ・ヘリント
  • ルゥ・アンセス
  • アイリーン・アドラー
  • 崇徳上皇(和御魂)
  • 平将門公
  • シモ・ヘイヘ
  • ロジェロ
  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。