(不思議だよねぇ。人間は基本的に短命で、死ぬのを忌避するのに年を重ねるのを有難がるなんて。うん、ふしぎ)
『皆でワイワイするの楽しそうだったし…私も古顔に声をかけてみようかなぁ』
『古龍ライン』
『たまには集まってみない?』
ルゥ『…でも皆生活あるし、正月くらいは呼び出しなんてスルーしてのんびり…』
『『『『『あけましておめでとう!お逢いに行かせていただきます!!』』』』』
ルゥ『えぇ…』
「「「「アンセス様!お逢いしたく思い参上仕りました!!」」」」
軽い気持ちでかけてみた祖龍ルゥ・アンセスの号令はあっという間の集合を招き、こうして同じ古龍達の顔ぶれを勢揃いさせる事に相成った。それぞれ、鋼龍、炎王龍、霞龍、炎妃龍の魂を宿し、英霊としてやってきた為人としての姿を有している。
「う、うん。あけましておめでと〜。人間の世界ではそういうんだって。これからもよろしくね。久しぶりの皆」
「有り難いお言葉。このクシャナ・ダオラ、一層精進に励みます」
一歩歩み出、硬質な鋼の鎧に身を包んだ銀の長髪、青目の美女騎士が如き存在がルゥの下へ跪く。彼女は風を自在に操る龍、クシャルダオラの英霊たる姿…クシャナと名乗る存在である。その気風は気高く真面目で、古龍の祖たるルゥに最大限の礼節を取る。
「うん。クシャナの最近の調子はどう?」
「はっ。竜巻に頼らず、地上における足回りを鍛えております。不届きにも竜巻にかまけた新大陸のクシャルダオラなどはクソモンスだのウンコダオラだの不名誉の誹りを受けるほどの醜態を晒しており…。私としては、汚名を挽回したく」
「汚名挽回?なんか違うような。名誉返上?のような」
「失礼、名誉返上の機会を得るため…再びの人の傲りを諌められるように精進致します」
ここに集う古龍達は、かつて人が竜を駆逐し弄んだ際に立ち上がった龍達そのものであり、ハンターが挑む者等より遥かな長命を有している。現代では世界の裏側にしか在れない神獣、或いは龍種であるが…ルゥからしてみれば、皆等しく子供のようなものだ。クシャナに、優しく労りをかける。
「頑張ってねぇ。はいこれ、お年玉」
「玉?玉をくださるのですか?」
「なんかね、新年は玉をあげるんだって。郷に入っては郷に従え…なんて言うし、受け取ってぇ」
「──有難き幸せ。クシャナ感激でございます。これからもどうぞよろしくお願い致しますね、アンセス様」
満面の笑みで受け取り、下がるクシャナ。すると次は、蒼髪の淑女と高貴なる服装の青年が歩み寄る。
『クシャナは真面目ですのね。わたくしああいう堅苦しいのはお嫌いなの。あけおめですわ、ルゥ様』
【おい、流石にそれは…あ、はい。ルゥ様、明けましておめでとうございます。テオ・テスカ。ナナ・テスカと共に馳せ参じました】
くぁ、とあくびを放つ淑女はナナ・テスカトリ。紅き真面目な青年はテオ・テスカトル。珍しき番の夫婦たる彼女らは、かの龍大戦の際にルゥが命を救った過去のある者達だ。故に、その態度はどこか砕けて気安い。
「あけおめ〜。どう?夫婦仲は順調?狩られたりしてない?」
『そりゃあもう。世界の裏側になんてハンターは来ないし悠々自適よルゥ様。子孫も残っているし、私達が命を張る相手なんてそんなにいるわけないじゃない』
【それもこれも、人と龍が時代と共に分かたれたが故の事。人間の判断の懸命さには感心と同時に…】
「寂しかったり?」
【それは、はい。やはり我等の時代は終わっているというのは…なんとも言えぬ、物悲しさがあります】
こちらの世界は勿論、幻想の裏側にさえ彼等に及ぶ生命はそういない。しかしそれでも、彼等の本懐とは命をかけた狩猟にあるとされ、それが望めぬ事は寂寥に繋がっているとテオは告げる。
「そっかぁ…やっぱりハンターあってこその私達、っていうとこあるもんね」
『普段は小火みたいな言い方しかしないくせに、しっかり火種は残してるのが面倒くさいところよね。でも終わったものはしょうがないじゃないの。人はもう、狩猟ではなく科学で基盤を築いているのだから』
【それは、勿論そうだ。そこを否定するつもりはないよ。だから…こんな気持ちは忘れるのが一番なんだ】
「…ん。もうお互いがお互いを求めることはなくなった。それを寂しいと捉えるのはあなた。喜ばしいと感じるのは私。もう人間に、未来はきちんと託せるようになったんだよ」
ルゥの言葉に、テオは頷く。彼にもまた、それは理解できているのだ。口にするのは、叶わぬが故の無念ゆえか。
【確かにもう、命をかけた戦いは無くなりました。それを私は正しく受け止め、妻の為に生きていこうと思います】
『ん。私も、夫のあなたがいてくれたなら満足よ。今日は呼んでもらって嬉しかったわ、ルゥ様』
「ん。末永くお幸せに〜。はいお年玉…ふぁ!?」
そっと手渡そうとしたお年玉が浮かび上がり、ふわふわと宙を漂う。同時にルゥの体すらもふわりと浮き、まるで糸の切れた凧のようにせわしなく漂う。
「ふぁ〜〜〜!?」
「あははは!ルゥ様ってば迂闊なんだ!」
するとそこには、霞龍オオナズチの顔面を模した帽子を被る、錬金術師めいた少女が愉快げに手を叩きながら虚空より現れる。霞龍オオナズチの力を有す化身、ナズ・ミストが腹を抱えて指差し笑う。
「あけましておめでと〜!どう?ルゥ様をここまで手球に取れる私、凄いでしょ!」
「凄い〜!凄いから離してぇ〜!」
「やめなさい、ナズ。ルゥ様に戯れが過ぎますよ」
ピシャリとクシャナが制し、ナズがそれに従いルゥを離す。べしゃりと大地に落っこち、小さく鳴く祖龍ルゥ。
「ヒィン」
「あけましておめでとー!会いたかったけど、呼ばれるまで我慢したよ!偉いでしょ?」
「え、えらぁい…でもいきなり絡め取るのはやめてぇ」
ナズは見ての通りステルス能力を有した悪戯好きであり、気ままなため敬意や礼節にはナナ・テスカよりも薄い。めったに連絡が繋がらない、ツチノコのような存在である。
「ねえねぇルゥ様、あなたがいる場所って人間のギルドなんでしょ?私達を倒せるような人間、いるのかな?」
「いるかいないかって言ったら…いるよぉ」
「ホントに!?すごーい!ハンターはまだ、存在するんだ!」
喜ぶナズ。彼女は奔放であり、縄張り争いにも狩りにも戦いにも興味のない気まぐれな龍である。ならばこれもまた気まぐれであろうが、彼女は今ハンターに興味があるようだ。
「ルゥ様みたいに、人間と戦ったり一緒に狩りをしたりしたら楽しい?楽しいかな?」
「人間同士で戦ったりはしないよ〜。人間は仲間で、世界のために戦うのがカルデアなんだよね」
「へー!それ、私達にもできるかな?」
「ふぁ?」
「私達も、そのカルデアの仲間になってね?強い人間や敵と戦ったりしてみたりはできるのかな?って事なんだよ、ルゥ様!やってみたいなぁ!人間と一緒!」
「ナズ…あれ、ひょっとして皆も?」
「人が滅んでは、せっかく次代の座を譲った甲斐がありません。邪神よりも献身を捧げる覚悟です」
『夫も連れてきたのはそういう事よ。なんとか働き口を見つけてあげたくてね』
【そ、そうだったのか?それなら…どうせ、暇だしな!】
「少なくとも、私達は大丈夫!ねぇねぇルゥ様、私達も人間と一緒に戦わせてー!」
「ふぁ〜…」
想像以上に、予想外なところから現れてしまった援軍たち。同窓のつもりがカルデアに強力な戦力を招く結果となったルゥは首を捻り…
「ま、まぁいっかぁ!そだね、じゃあ聞いてみようか!」
かつての龍達がやる気になり、力を貸してくれるなら無下に断る理由はない。ルゥは一人頷き、カルデアにて彼等彼女らを招き入れる手配を頼みに行くのであった。
「えっと、クシャルダオラとテオ・テスカトルとナナ・テスカトリとオオナズチをカルデアに招き入れたいんだけど…どう?」
「……えっ…?」
いきなり超生物たる古龍が一気にカルデアに加わる事実に、オルガマリーは流石に二度聞きを抑えることが出来なかったという。
大終末の潮牙・応接室
ボルシャック『お、噂に聞く古龍のみなさまか!俺達は異聞帯のドラゴンだ。仲良くしてくれ!』
テオ【おぉ、熱いな!こちらこそ!】
ボルメテウス『蒼炎か。気高き見た目には相応しい色だ』
ナナ『あら紳士。よろしくね♪』
バザガジール『姿を消すのか、君は。愉快な性質だ』
ナズチ「ふふ、盗みも得意だよ?」
ボルバルザーク『この場所は侵入者を滅殺する門!故に求められるは強さ!異世界の龍よ、俺様と戦え!!』
クシャナ「いえ、あの。守護者同士が戦う意味とは…?」
ルゥ「皆、仲良くしよーね!がんばー!」
そして結果的に、さらなる戦力強化が図られましたとさ。
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