人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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カルデア

リムル「大賢者、あれは?」
大賢者『詳細不明』

「じゃあ、それは?」
『詳細不明』

「それならこれは?」
『……………詳細不明』

(流石に機密だらけのカルデアを知る、なんていうのは無理筋な話だよなぁ。我ながら困惑している大賢者を楽しんでしまっていた…)

『………………………』

(露骨に拗ねさせてしまった…後で謝っておこう…)

『…!通知あり。オルガマリー・アニムスフィアより通達。謁見の許可、下りたし』

「!いよいよか…。向こうにもいたけど、こっちは正真正銘の英雄王。王様の中の王様だ…!」

(とりあえず平身低頭するべきかな…よし、開幕は平伏しておこうっと)
『録画開始』

(するなよ!?さては怒ったか!?)

『否定。キレています』
(同じじゃん!)

(感想は今より返信いたします!)


未だ知れぬ魔王の胎動

「貴様か。オルガマリーの報告にあった、別世界における魑魅魍魎共の長たる軟体生物リムルとやらは」

 

「ははぁっ…!」

 

少しのカルデア散策の後、その時は訪れた。王の座す白金の間に招かれしリムルは人間体のまま、平伏の姿を取っている。それはリムルを慕う元の世界の魔物が見れば憤慨ものの光景だが、リムルは目の前の存在を知っている。知っているがゆえにその身はその行動を、体勢を取っていた。

 

「拝謁の栄に預かり大変光栄であらせられます!王の中の王、英雄王ギルガメッシュ様!」

 

そう、奇譚モノを知るものならば誰もが心得る我様キャラ。人類最古の王、奈須きのこ謹製ギルガメッシュ。この世全てを手に入れ、王の財宝の描写は不動の最強戦闘能力の一角を担い、Fateの裏の顔とも言うべき存在。なんとそれが、目の前に確かな存在として在るのだ。頭など擦り付けて火を付けても足りまい。

 

「うむ。最低限の礼儀は弁えているようだな。赦す、面を上げよ。我を見ることを容認しよう」

 

(…あれ?雑種呼ばわりはしないのか?)

 

おずおずと顔をあげるリムル。目の当たりにしたギルガメッシュは…どこか雰囲気が違う。全てを雑種と見下し己を至上とする王…なのは間違いないが、どこか上機嫌な弾みを感じるのだ。

 

リムル達は知る由もない。傍らには、この世界にしかいない魂を有し常に上機嫌な、慢心を捨てた無敵の御機嫌王であることを。そもそもスライムなどを間に招くなども有り得ないのではあるが。

 

「貴様の素性、目的、理念は概ね説明を受けた。貴様が己の力を担保に、我等と対等な関係を紡ぎたい…という申し出もな」

 

「はい。嘘偽りない本心であります。オレは…心の底から信頼できる人間の仲間たちが欲しい。人間と魔物達、力を合わせてより良い世界を作っていきたいんです」

 

リムルの言葉に、ふむとギルガメッシュが頷く。…リムルはその動作に、微かな違和感を覚える。

 

(誰かと、話してる?)

 

自分ではない、傍らにいる誰かと楽しげに談笑しているような。そんな様子を見据えたリムルにギルガメッシュはさらなる声と問いを投げる。

 

「魔物どもの特産品に、回復のポーション。これを定期的に配給し仕入れる事が貴様の手土産という事だな」

 

「はい!テンペスト共和国の物資を、カルデアの皆に最優先でお届けさせていただきます!」

 

「ふむ……」

 

ギルガメッシュはカタログを見やり、静かに頷く。リムルの側は気が気ではない。愉快な入れ違いだが、英雄王と御機嫌王の認識の違いがアンジャッシュなのである。

 

(雑種判定受けたらどうしよう…ギルガメッシュ王的に魔物の国とかどうなんだ…!?不敬判定とかされないよな…!?)

 

その緊張の最中、じっと王の言葉を待ち続けるリムル。一通り目を通したギルガメッシュは、頬杖を付き告げる。

 

「粗末だな。精々まだ発展途上国ではないか。この程度の弱小国かつその特産品で楽園に売り込みに来た度胸と胆力は認めよう。貴様の言い方で言えば、技術ツリーの開放が終わっておらぬ」

 

「うっ!!…お、仰る通りです。テンペスト共和国はまだ発足間もなく、各種族の発明はまだまだ未知数で…」

 

「だが、伸び代は非常によいぞ。人間の発明ではなく魔物共の創意工夫…ファンタジー世界ならではの技術体系だ。そこでしか生まれぬ珍品も大いに望めそうだ。よい国の骨子を組んだな、軟体生物」

 

(あれ意外とお話がわかるぞ!?鋭いし!いいも悪いも言ってくれる!?)

 

ギルガメッシュってこんなに人を褒めたっけ…?ギャップに戸惑いつつも、深々と頭を下げる。なんにせよ、機嫌を損ねたら死という認識があるからだ。

 

「使者でなく、己が単身で赴いた器量も中々だ。前世が紛うことなき雑種にしては、それなりに群れの長としての責は果たせているではないか」

 

(見極められてる…!!転生者って事まで見抜かれた!?)

 

流石ギルガメッシュ王、と平伏すばかりのリムルだが、別にこんなものはなんてことでもないのだ。

 

──ドラゴンクエストのスライムとは、全然違うのですねぇ〜…

 

傍らに似たような出生の存在がいるだけの話である。

 

「そら、貴様からのPRは何か無いのか?転生する前は社会の歯車であったのであろう?気の利いたプレゼンテーションを我に見せてみよ。有した記憶、腐らせるは賢くあるまい?」

 

(そしてパワハラ上司的な無茶振り!?楽しんでるな、さては…!)

 

正体も含め、完全に踊らされている事を知りつつも最早後に引けないリムルは立ち上がり、王の要望に全力で応える。

 

「えーっと…!速い!旨い!安い!効果も凄い!!特異点修復のお供に!リムルのポーション!!体力回復、精神安定!リムル製菓から!!」

 

「………………………………ふははははは」

 

(渾身の愛想笑いーーーー!!くそー!なんか凄い負けた気分!)

 

培われたサラリーマンスキルは特にギルには響かなかったようで、査定の運びとなる。一周回ってリラックスされた空気の中、ギルガメッシュは裁定を下す。

 

「では査定をくれてやる。結論から言えば、貴様の国の防衛と守護、クエストの一つとして請け負おう」

 

「本当ですか!?」

 

「有事の際限定だがな。我等は貴様の国の発展には干渉せぬ。貴様らの特色と紋様、ありのままを我に捧げよ。見返りとして、貴様の国の特産品、出土品、工芸品その他諸々を補給物資としてカルデアに納めよ。貴様自身にもカルデアのサーヴァントとして指揮下に参じさせる。それで良いな?」

 

「はい、はい!!勿論です!ギルガメッシュ王やサーヴァントの皆がいてくれるならそれくらい安い安い!」

 

こうして、恙無く契約は結ばれ、リムルとカルデアの同盟は結ばれる──筈だった。

 

「但し。──カルデアと対等、という同盟は認めぬ。現時点ではあくまで我等が貴様らに力を貸してやるという力関係の契約だ。その意味は理解できるか?軟体生物」

 

「え…それってつまり、共和国がカルデアの下に就くって事ですか!?」

 

同盟ではなく、カルデアを上とした属国契約。ギルガメッシュが提示した条件はそれだった。リムルとその国を、纏めてカルデアの戦力として取り込むという話だ。不平等条約と言ってもいい。力を貸してやるから見返りを寄越せ。こういった文面なのだ。

 

「一体どうして…!?同盟では駄目なのですか!?」

 

当然納得できない、とリムルは食い下がる。しかし王の決定は覆ることはない。

 

「当然であろう。同盟というものは対等な力関係から生じるもの。貴様は今、単に王の威光に縋りに来ただけの立場だ」

 

「カルデアと共和国は、対等な関係じゃないと…!?」

 

「たわけ、足りぬのは貴様だ軟体生物。では一つ問おう。今の貴様に、何か我と並び立つものがあるのか?」

 

王は冷静に見定める。リムル・テンペストたる存在の価値を。見るとは、決めるということだ。

 

「貴様の今いる代表者、王という立場は自身で背負った責務か?周りの雑多共が貴様を祀り上げ、成り行きで決まったものではないか?」

 

「う…それは…」

 

リムルの代表者という立場は、彼の成果を見た者達が推薦したものであり彼自身が立候補したものではない。王は、日和見を鋭く見咎める。

 

「見たところ、数多くを喰らい力を付けたようだが…それは生前から身に付け、磨き上げた一芸か?天より偶然賜わった力を己が思うままに振り回し、雑種共に持て囃されているに過ぎぬのではないか?力に伴う責任に考えを巡らせた事はあるのか?」

 

「…それも…あまり…」

 

転生した際のスキル、大賢者のサポート、友の力。様々なものはあれど、自身が胸を張って誇れる確固たるもの。ギルガメッシュに自信を以て示せるものは、自身の内に無いとリムルは俯く。

 

「最後に、王としての有り様を問おう。貴様はどのような王としての視座を持ち、どのような王を目指しているのだ?魔王の一つや二つ、成ってやろうという気概は示したのか?」

 

「…示せて…ないです…」

 

魔王にならないのか?と彼は問われ返した。めんどくさいと。それはギルガメッシュからしてみれば、唾棄すべき無責任さであり愚昧を越えた愚昧である。

 

「分かったであろう。今の貴様は何者でもない。魔王となる気概も無く、下々を導く智慧もない。ただ物珍しげな一芸をひけらかすだけの詐欺師に過ぎん。同盟とは、王と王とが結ぶもの。道化や詐欺師と締結する条約などないわ、たわけめが」

 

「……………」

 

「少しばかり猶予をやろう。己が見出す道はなんなのか。どのような道を選び、進むのか。答えを示せたのならば──査定を一考してやってもよい。幸いカルデアには王は数多といる。貴様の思想の標を、精々探し当てるのだな」

 

未だ覚悟と道を知らぬ半端者と、王が結ぶ条約など無い。

 

その裁定の結果に、今のリムルは何も言い返す言葉もなく…間を後にするのであった──。




リムル「…あれが、王の中の王…」

(やっぱり、凡百の異世界にいる王様なんかとはレベルが違う。力を取っ払ったらただの雑種リーマンだってこと、突きつけられてしまった…)

「あっちはリアル英雄だし、そりゃあ転生スキルではしゃぐヤツなんて取るに足りない存在だよなぁ……お山の大将って突きつけられた気分…」

(でも…魔王になんてなったら…もっともっと波乱や大変な目に皆を巻き込んでしまうかもしれない。人間とも対立は不可避だろうし…そもそもそんな立場になりたいのかというと…)

「…覚悟、足りてないなぁ…」

リッカ「あれ!?もしかして…!?」

リムル「ん?」

リッカ「リムル!リムル・テンペストさんですか!?え!?召喚されてたの!?ホントに!?」

リムル「あ、あぁ。君は…?」
『最大級の警戒を推奨』

(へっ?)
『内包魔力、無限大。同時に汚染濃度、最大レベル。ユニークスキル、捕食者の使用は絶対厳禁。発狂の後死亡の確率、甚大。総合評価、魔王クラス』

(通りがかる人がみんな怖いなここ!?)

傷心中のスライムに、宿す力が魔王通り越して神レベルの一般人が邂逅する──。

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