リッカ「あはは…ま、まぁその名前はもう、私には相応しくない綺麗な名前なんだけどね」
(藤丸立香って…オレの知ってる藤丸立香は、等身大一般人で、当たり前の善性を信じて足掻く主人公だった筈!こんなにスタイル良くて魔王級だっただなんてそんな筈は…!?)
『解析完了。現在の彼女は3分の2が神となっています。3分の1はゾロアスター教の悪神、アンリマユ。3分の1はその眷属、アジ・ダハーカ。魂と肉体のメインは彼女、藤丸リッカです』
(大賢者…お前、どんなカルデアを推薦してきたんだよ…ギルガメッシュ王が治めるカルデア、なんて飛びついた俺も俺だけどさ…)
リッカ「すみませんリムル様、なんだか元気がなさそうに見えましてお声をかけさせてもらったんですけど…」
リムル「あ、あぁいや全然!全然……いや、実は…」
リッカ「私で良ければお話相手になりましょうか?」
リムル「それは願ってもない!聞いてください、半端なスライムの玉砕を───」
「てな訳で、寛容で御機嫌な筈のギルガメッシュ王にボロッカスのミソッカスに痛いところをつかれ、心と身体がボドボドなスライム、リムルなのであった!…はは、自慢の技のからげんきもイマイチな決まりぶりだろ?それくらい凹んでいます、今」
「リムル様がこんなにも凹みきっているなんて…なんてレアな現場に出くわしたんだろうか私は!」
傷心リムルを見つけたのは、御存知人類最悪のマスター藤丸リッカ。一般のカルデアの藤丸とはちょっと違いリムルを驚かせたものの、生来のサブカル好きから意気投合し高天ヶ原の夕陽を眺めている。中心にはルゥが寝ている。
「まぁそれはともかくとして。覚悟も何もかも足りてないわたわけだなんて…本当にボロッカスに言われましたね!」
「繰り返さないで〜!リッカちゃんは知ってるみたいだから言っちゃうけど、スライムになる前はしがない一般サラリーマンだったんだよ俺。王侯貴族とは無縁の。だから、元の世界で知る王様を目にしたのは初めてだったんだ。ギルガメッシュ王が」
その一般諸侯が、王の中の王と言葉を交わした結果に自身の半端を見抜かれた。話の運びからリッカはそれを理解し、頷く。
「言い方は苛烈で、厳しかったけど。何も言い返せないくらいに正しかった。転生者として、どこかふわふわした浮ついた気持ちがあって、そんなヤツが対等でいましょうだなんて言ったって…いや振り返るとよく殺されなかったな俺!?」
「ふふふ、覚えておいてくださいリムル様!ここのギルは、御機嫌王なのです!」
「御機嫌王ばんざーい!!…で、オレに足りないのは覚悟だって事で、同盟の申し出は破棄よりの保留となりました。ギルガメッシュ王と並び立つには、それこそオレの世界で言う『魔王』になるしかない。…そう、大賢者は言ってきたんだけど…」
はぁ、とリムルは水色の髪を揺らし溜息を就く。夕焼け小焼けに、八咫烏が飛んでいく高天ヶ原。ルゥのいびきが風情を掻き立てる。
「魔王って、敵とかを捻じ伏せたり敵を滅ぼしたりする苛烈な王様なイメージがあって好きになれないんだよ、オレ。オレは別に最強になりたいわけでも、世界を支配したいわけでもない。人間も魔物も、できるだけ仲良く出来たならいい。それくらいの、細やかな願いがあればいいんだってやってきたんだ、今まで」
「リムル様…」
「でもそれは、裏を返せば人にも魔物にもいい顔をするだけの半端者だ。焚き付けるだけ焚き付けて、自分で統率を率先もしないし侵攻もしない。日和見主義者って言うんだろうか。…改めて、器じゃないんだろうな。王様の」
そう告げ、ごろりと寝転がるリムル。理想と空が、高く遠い。
「いっその事、人の心や情けなんてものがあるからいけないのだろうか?心まで魔物に、魔王になってしまえば…こんな半端な自分とはさよなら出来るんだろうか?」
「それは、辛い道ですよ。リムル様」
リッカはリムルに告げる。彼女は知っているのだ。リムルが歩む道や、起きる厄災、そこから生じる覚悟の目覚めを。
「大切な国を踏み躙られ、大切な人達を奪われ、人間にどこまでも失望する。そうする事であなたは魔王になるのだとしたら…そんな道を、あなたは自分で歩もうと思いますか?」
「そ、それは嫌だな!非常に嫌だ!オレは半端者かもしれないけど、だからといって魔物や国を捧げてまで魔王になりたいなんて思わない!ベルセルクのベヘリットじゃあるまいし!」
まだ彼は喪っていない。未来の惨劇も起きていない。それは、リムル・テンペストという存在にとって不可欠の事象であるのだろう。
──でも。それでも。この出会いに意味があるのだとしたら。こうして話ができる関係になれたのなら。そんな悲劇を、粛々と受け入れろと見放すことは彼女には出来ないから。
「それなら決めるしか無いんです。誰も喪わない、失いたくないのなら。誰よりも力を持ち、大賢者さんの智慧を借りれるあなたが、皆の幸福と明日を護れる王様になるしか無いんです。リムル様」
「リッカ…」
「リムル様。あなたは国を興しました。動機や思惑は色々あるかもしれないけれど、そこは権謀術数溢れる大人の騙し合い、政治としてのバトルです。そこには残念だけど、力ない理想の入り込む余地なんて無いんです」
それをリッカは知っている。ギルやオルガマリー、キリシュタリアや内海市長の話を聞いて、どれだけ人の上に立つ戦いが恐ろしく、苛烈で陰湿なものか。
「あなたたちの伸ばした手を、掲げた理想を平気で踏み躙る奴等は必ず現れます。その時にあなたが覚悟を決めていなかったら、あなたが間に合わなかったら。全てそれは貴方の国の全てに降り掛かってくるんです」
「リッカちゃん…」
「ギルはきっとそういう事を言いたかったんだと思います。王とは全てを背負うもの。背負う気概も覚悟もないままの王は、やがて全て奪われる。今のリムル様の危うさをギルは指摘したんですよ。…残念ですが、世界は優しいだけの理想を受け入れてくれる程、寛容じゃないんです。決意、覚悟、力が無いと、綺麗事を実現させることは絶対に出来ない」
リムルは圧倒されていた。ゲームで見た藤丸立香とは、言葉の重みやリアルさがまるで違う。一般人では到底出せない、風格や覚悟が言霊に満ち溢れていたからだ。
「でも、綺麗事や理想がない世界なんて地獄でしかない。人はどこかに、清らかで素敵な何かがきっとあると信じれるからこそ辛い今日を生きていけるから。──私は、リムル様の優しさと理想が間違っているだなんて欠片も思いません。あなたは間違いなく、弱い魔物の皆や、踏み躙られた鬼達の希望な筈です」
「…そう、かな。そう思って、いいのかな」
「勿論です!リムル様のお人好しなところ、甘ちゃんなところ、とっても好きでした!それを間違いだというなら、それは優しさを許容できない世界の仕組みが間違ってる!」
熱弁するリッカを、いつの間にかリムルは凝視していた。
(…不思議だ…。リッカの言葉を聞いてると自信が湧いてくる。勇気とか、決心とかが奮い立つ感じがしてくる…!)
「リムル様!あなたはいつか王にならなくちゃいけません!だからこそ私のお願い、聞いてもらっていいですか!」
「う、うん!」
「『強くて優しい魔王』を、目指してはもらえませんか!魔王の様に強く、人のように優しい王様をリムル様に目指してほしいです!誰かの犠牲の上に立つ魔王じゃなくて、皆で力を合わせて最強になる!そんな優しい魔王に!」
「強くて…優しい魔王…」
リムルはその言葉に、目から鱗が落ちた気持ちとなる。魔王とは怖く、苛烈で、恐ろしいもの。そういった印象ばかりを懐いていた彼に、それは盛大なカルチャーショックであった。
「そうか…!大切な何かに優しく、それを脅かす誰かに恐ろしく!そういった魔王を目指せばいいのか!確かにそれは、きっとあっちの世界にいるどんな魔王も有り得ない魔王の姿だ!」
「うん!リムル様ならきっとできるよ!半端な道だって、とことん突き詰めれば立派な極みに繋がる道になるんだから!」
いつの間にか空は夜になっていた。ツクヨミの浮遊式宮殿が、星のように輝いている。
「よーーし…!!リッカちゃん!早速だが魔王先輩の所に案内してくれ!魔王の道を究めるぞー!」
「お任せあれ!リムル陛下、ばんざーい!!」
「うわぁあぁ力強すぎぃいぃ!?」
奇しくも出会った、二人の主人公。互いの会話により、進むべき道は光を帯びる。
「オレ、間違ってたよ。君が藤丸立香だって聞いて驚いたけど…」
「?」
「お人好しで、愛嬌があって、芯の通った善性!間違いなく君は、藤丸立香だ!人類最高のマスターなんだな!」
「あ、ふへへ…リッカと名乗らせていただいていま(しゅわぁ)」
「リッカーーーー!?」
リムルは魔王の道を見出した。でもその道は…
──ほんの少しだけ、キラキラとしている道であった。
リムル「なぁ、リッカちゃん。もう一つ、オレのお願いを聞いてもらっていいか?」
リッカ「はい?」
リムル「オレと、友達になってくれないか?色々教えてくれたり導いてくれた恩返しを、いつか君にさせてくれ!」
リッカ「私がリムル様のお友達に!?光栄です!!それでは!」
「「コンゴトモヨロシク!!」」
互いに、お友達が増えたのだった。
〜
アジーカ【御近付きのしるしに】
アンリマユ【よろしく頼むぜー?ヴェルドラさんよ】
ヴェルドラ『フッハッハッハッ!!ご丁寧にどうも!あ、将棋とかやる?アジーカちゃん』
イフリート『拝火教…いい響きですね』
こっちも仲良くなっていた。(捕食ではなく精神世界来訪)
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