アロナ『シャーレを拠点とした連邦生徒会、その会長代理です!アダム先生の目の上のタンコブですね!』
オルガマリー「教育実習生、オルガマリーよ。アダム・カドモン先生の補佐をさせていただくわ」
リン「……お願いします。アダム先生、繰り返しますがアビドス高等学校の借金は推定300年近くかかる額なので、とてもでなくても在学中には…」
アダム「私は先生だ。生徒の悩みを解くのが使命だ。アビドス高等学校の借金は必ず返済する」
リン(…アダム先生は様々な学園の問題に取り組んでいただく存在です。このままでは私達シャーレの活動に支障が出てしまいます。どうか説得を…)
オルガマリー(説得?少し違います)
リン(え)
(解決すればいいのですよ、借金を。御心配なく。ある程度、目処はつきました)
「アビドス高等学校。かつては広大な敷地と最大数の在校生を有していた巨大な名門校だったが、大規模な砂嵐に晒され土地部の大半が砂漠化。その対応に多額の資金を投入したが改革は叶わず借金が残される。民間軍事業者に土地を明け渡す契約を締結され学校側の所有地は少なく、在校生は対策委員会約5名…」
『お、オルガマリー所長!独力でそこまで調べていたのですか!?アダム先生にも負けない処理能力です!』
透き通る青空が近い場所にあるシャーレ、オフィスにて。アダム先生が取り組まんとしている問題の資料を即座に参照するオルガマリー。基礎知識ならばサイトに転がっているため、モリアーティ達の英才教育にかかれば造作もない。
「先にも言った通り、合計借金は億にも到達する。対策委員会の5名は頑張ってくれているが、返済は利息をなんとか返している状況だ。私もなんとか取り組んでいるのだが、結果が伴うには時間がかかる」
「具体的には」
「砂漠地帯を耕して緑を復活させる目論見を続けている。後数十年もすれば緑を取り戻す筈だ」
本気で言っている様子のアダム。アロナは映像を見せる。そこには、人がたやすく遭難する規模の砂漠地帯と僅かな文明都市のあからさまな荒廃地帯に、芽吹いていく緑の地が垣間見えた。
『できるからこそ、諦めるつもりはないんです。アダム先生…』
「時間がかかりすぎね…どうやら融通がきかない、というのは本当みたい」
そもそも億単位の借金では発生する利息を削るのも一苦労だろう。貸した側はカイザーコーポレーションなる会社らしい。大方、土地再生のカタに土地や施策をチラつかせ、学校から搾り取ったといった筋書きだろう。汚い大人の思惑というやつだ。
「了解しました。一週間あれば返済できるプランをご用意します。後でアビドス高等学校へ御案内ください、アダム先生」
「できるのか。それは非常に助かる」
『おぉ〜!やはり楽園カルデアに頼んだのは大正解でした!やりました、アダム先生!』
はしゃぐアロナと頷くアダム。所詮は消費文明と金銭社会。金で解決する悩みなど悩みのうちに入らない。楽園カルデアには最早、全世界の国家予算を合わせた分の資産が用意できるのだから。
「御安心いただけたところで、ではこちらの御質問を。アダム先生…アダム・カドモン。あなたは『汎人類史』のアダムですか?」
『はんじんるいし?』
「違う。私は異聞帯と呼ばれる世界のアダム・カドモンであり、空想を根付かせる為、6000年ほど各世界を放浪している」
アダムはあっさりと身の上を伝えてみせる。彼にとって、やましい事や隠すべきことではないのだろう。己の秘密を、話してみせた。
「私のいた世界は、神の用意した楽園が世界を覆った世界だ。神を殺し、エデンを世界の法則とした」
「神を、殺した…?」
「人を嫉む神であった。不要であったので討ち果たしたが、神なき世界の無限の安寧は世界を閉ざした。発展なき世界もまた消える。エデン異聞帯とも言うべきそれは不要な歴史となったようだ」
『えでんいぶんたい?よくわかりませんが、先生がこんなに話すのは珍しいですね!』
アロナの言葉は気楽で、オルガマリーの口調は困惑を宿す。となれば、神の庇護なくアダムが楽園を世界の理にした、ということだ。滅亡ではなく完結の異聞帯である。
「私は愛する者と楽園を確かにするため、楽園を出て放浪を始めた。各世界を渡り歩き、空想を現実にする手段…空想樹を探した」
『くうそーじゅ?』
「…でも、見つからなかった…?」
「あぁ。長き長き放浪にエデンを見失い、私はこの世界の果てで力尽きていた。その際に私は、聖霊たる彼に出会い、導きを得た」
それがパパポポであり、その導きが学園都市の先生となる事だったという。探しものは組織的な設備や人員でやるといい。個人の放浪には限度がある。
その際に、アダムはパパポポから唯一神の権能を宿した『大人のカード』たるプラチナクレジットカード型行使権を授かりここにやってきたのだという。殺した神から施しを受けた、なんとも不思議な事態とアダムは言う。
「子の繁栄、育成を学ぶには実際に触れてみるべき。聖霊の言葉を受け私はシャーレの先生としてキヴォトスに足を踏み入れ、アロナとシッテムの箱を授かった」
『はい!アダム先生は既に、対策委員会の窮地を救いアビドス高等学校から高い評価を受けています!生徒には決して危害を加えませんが、素手で戦車をひっくり返したスーパー先生なんですよ!』
アロナが興奮気味に映像を展開する。そこには戦車のみならず、民間軍事会社の基地に乗り込み壊滅させているアダムの姿が映っていた。
「…生徒には手を出さない線引があって何よりです」
「解任されるまで、私は先生として責務を果たす。全ての生徒が健やかに卒業するべくを助けるのが私の使命だ。故に、私はこのアビドス高等学校の借金を返済したい」
揺るぎない確信と決意、圧倒的な戦闘力と先生としての立場。どうやら本気で、彼は先生としての業務を全うするつもりのようだ。
「ことの仔細は理解いたしました。あなたの先生の使命に立ち返らせるためには、アビドス高等学校の問題をなんとかしなくてはいけない、とも」
「まずは砂漠地帯を緑化する。オアシスがかつてあった場所ならば、必ずや緑や水源は復活する筈だ」
「ユニークな解決法ですね。私達は努力を否定は決してしません。こちらは生徒さんに、別アプローチから取り組みます」
「よろしく頼む。生徒たちはみな善良で素直だ。君やカルデアの言葉もよく聞いてくれるだろう」
アダムはその時、初めて微笑んだ。期待と安堵、それは生徒と子の安寧を願う優しき大人、紛れもなく先生の表情だ。そして即座に、アダムは連絡を行う。
「ノノミか。今から私の協力者、教育実習生のオルガマリーがそちらに向かう。私は耕してから向かうから、きちんと言うことを聞くように」
『よ、よくわかりませんでしたがよろしくお願いいたします!アビドスは砂漠化地帯に都市部が点在している地域なので、下手をすれば遭難します!ナビに必ず従ってください!』
「怖いわね、学園都市…」
話はまとまり、互いに準備を行う。アビドス高等学校に、大人の責任を果たすためだ。
「アダム先生、一ついいでしょうか」
そんな中、オルガマリーはアダムへと声をかける。確かめるべき事があるからだ。
「異聞帯の存続が望みならば…あなたは汎人類史の侵略を目論んでいるのでしょうか」
「考えた事もない。私は家族と過ごせればそれでいい」
「…でしたら、私達はあなたに示せるかもしれません。あなたとあなたの家族、その世界の保護と救いの道を。というより、それを一緒に探してみませんか?」
オルガマリーの言葉に、アダムはやや逡巡して返答を返す。
「今は、互いの因縁は二の次としよう。生徒の事が最優先だ」
「…汎人類史の子達を、導いてくださるのですね」
「そうだ。それは私にとって、先生という使命を全うする事に他ならない。まずは、借金の返済からだ」
それだけを告げ、飾ってあったクワを持って着替えるアダム。どうやら全力な地道で、砂漠地帯を緑化するつもりらしい。
「オルガマリー」
「?なんでしょうか?」
「…さっきの話、いい返事を期待してくれ。尊重の機会、感謝する」
そうやって、またアダムは笑顔を見せる。それは完璧に整った美形から繰り出される、爽やかで甘い笑顔。
(…生徒に一目置かれる要素しかないわね、彼…)
大真面目に鍬を構えるアダム、アロナと共に。オルガマリーは件のアビドス高等学校へと向かうのだった…──
アビドス高等学校 廃校対策委員会
豊満な少女「あなたが先生の教育実習生たる助手、オルガマリーさんですねー?はじめまして、十六夜ノノミですー」
銀髪獣耳の少女「ん。砂狼シロコ。よろしくお願いいたします」
黒髪獣耳の少女「先生が招いただけあって、インテリそう。黒見セリカです!書紀をやっています!」
ショートヘア眼鏡の少女「奥空アヤネと言います。オルガマリーさん、どうか力を貸してください!」
ピンク髪のけだるげな少女「ホシノだよー。いやー、華があるねーここー」
オルガマリー「全員揃いましたね。それでは早速いくつか契約書にサインしてもらいます。そして即座に出立の準備を」
セリカ「出立、ですか?」
アヤネ「どこへ…?」
オルガマリー「皆さんには…宝物庫を襲ってもらいます」
シロコ「おぉ…」
「「宝物庫を襲う…???」」
ホシノ「おやおやー。もしや、秘策ありかな実習生さまー?」
「えぇ。──どびっきりよ」
プランを提示するオルガマリー。その表情は…大人の自信に満ちているのであった───
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