人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

2098 / 2537
アダム「………?」
アロナ『…あれ?』

?『…あのねぇ。最初に頼りにするべき相手、間違えてはいないかしら…!』

黒服【む…】

?「まぁそう言うなって。意地を張ってカッコつけるのが男の特権ってヤツだろ?」

アダム「…君たちは…」

温羅「よう、色男。久しぶりじゃねぇか。手に職付けられたんだな!」

リリス『舐めないでくれるかしら、アダム。私は始まりの女でもあるのよ?二日酔い…二日酔いくらい…うぅ、あたまいたい…』

アダム「ウラ、そしてリリス…助けてくれたのか」
アロナ『先生のお友達ですか!?』

黒服【なんと…】
「──始めまして、ゲマトリアの黒服様」

黒服【(背後を…)】
オルガマリー「人理保障機関、カルデア。そして…シャーレ所属『ビースト対策委員会所長』兼、便利屋68新米社員。オルガマリー、アニムスフィアと申します」

黒服【──!?】

超巨大スピーカーから聴こえる声『アダム先生ーーーー!!今すぐあなたを助けるわーー!!!』

アダム「この声…アルか」
アロナ『便利屋の社長さん!』

アル「スーパー便利屋の総力を繋けて先生を援護するわ!戦車も飛行機もなんでもいいから突撃よ!突撃!!」

ホシノ「大盤振る舞いだね〜。せっかく貰った会社、傾いちゃうんじゃないのかな〜?」

アル「いいのよ!先生を失う以上の損害なんてないのだから!私達のアダム先生を助けるためなら、破産の一つや二つ怖いもんですか!!」

ホシノ「…アウトローなのに熱いよ〜。ま、おじさんたちも一字一句同じ気持ちだけどね〜」


ノノミ「戦車部隊、突撃しまーす♪」
アヤネ「了解!全突撃!」

シロコ「爆薬満載のヘリを落として、諸共に爆散させる。これなら、ん…行ける」
セリカ「私達はどうなるんですかぁ!?」

アダム「君達……」

ホシノ「やほ〜。助けに…あ〜…うん。日課のジョギングやってたらたまたま通りがかってさ〜。助けてあげよっか〜?」

アダム「あぁ。君たちに、助けてもらいたい」

ホシノ「んふふ〜。頼ってくれて嬉しいよ、先生。じゃあ皆、気合いれてこー!」

アル「ちょっとー!?盗聴器から聞いてたのは私よ先生ー!?」

黒服【アビドス…並びに便利屋達…】

オルガマリー「あなたが思うより、アダム先生は素晴らしいものをお持ちのようね?」

黒服【…えぇ、全く。どうやら外法を使うのはリスクが高かったようだ。あなたたち『カルデア』を招いたのだから】

(返信とメッセージは今から順次始めます)



星が示す意義と意味

「動かない方が賢明よ、黒服さん。こちらの質問に答えてもらうわ」

 

【可能な限りであれば、お答え致しましょう。私達ゲマトリアの知るところであれば】

 

アルが屋台に(たまたま)置き忘れていた盗聴器。そこの記録からアル自身がこの窮地を読み取り、素早く位置を特定。オルガマリーに包み隠さず報告することによりカルデア側が迅速にアダムの意向を把握。

 

アダムとその異聞帯をカルデアと完全なる協力、同盟対象と認定。キヴォトス内での活動拠点としてシャーレに接触。ビースト出現を把握した事により七神リンに打診し、カルデア職員がシャーレ兼任所属する形で『シャーレ・ビースト対策委員会』として発足。超非常事態の際の緊急戦力としての利権を獲得。

 

同時にオルガマリー自身が便利屋68の組織運営のオフィサー兼下っ端として入隊。彼女の会社と理念を護る立場を固め今に至る。カルデア所長の、完璧な足回りによる先生援護部隊は間に合った。ゲマトリアのビーストに、生徒と便利屋の部隊が立ち向かっている。

 

「人類悪、ビースト。それらはこのキヴォトスには存在していない概念の筈。魔術王でもない限りそれを使役するだなんて出来るはずもない。ゲマトリア、あなたたちは何者なの?」

 

黒服の頭部に銃を突きつけるオルガマリー。黒服は抵抗しない。理解しているからだ。彼女の、圧倒的な実力と手腕を。

 

【一口で言うのは難しいのですがね。あなた達の世界で言う魔術師のようなものですよ。探求、研究し根源に至る。そういった、単純な命題のために全てを懸けるものです】

 

「そもそもその認識が異質よ。それらは私達の世界の概念の筈。こちらの世界のあなた達には認識できる筈がない」

 

【そうでしょうか?世界はもう一つではないのです。認識の数だけ世界がある。私達はあなたたち汎人類史を観測し、平行世界をカルデアスが結んだ。アニムスフィアの奇跡は、既に魔法に到達していると考えては?】

 

「私達アニムスフィアが、世界の厄災をもたらしていると言いたいの?」

 

【厄災?そうでしょうか。私にはそう見えません。異なる者同士が巡り合う。それは素晴らしい成果ではありませんか?】

 

意外なことに、その成果を肯定された事実にオルガマリーは驚く。だが気を抜かず、質問を続ける。

 

「何故ビーストを使役できているのかしら。あれらは人類史の淀み、使役できるような存在ではないはず」

 

【眼の前の事実に、仮定はどれほどの意味を持つのでしょうか?】

 

「…正論ね。だからこちらは、その事実の解が欲しいのよ」

 

【そうですね…企業秘密でもあるはずなので、ヒントを。あなたたちが出来ることを、やりたいという存在がいる…といったところでしょうか】

 

「…システムフェイトによる、召喚を?」

 

【人理保障ですよ、オルガマリー所長。人類がいなくては困る存在がいるということです。人類を庇護し、擁護し、生きていてもらわなくてはならない。そういった存在を、私達は支援しているのです】

 

「────その為に、あんなものまで?」

 

【不思議に思えますか?ですが物事は表裏一体。あなたたちが頼るもの、私達が頼るもの。それには裏表が必ずあります。あなたたちは人類愛で今ある安寧を守護し、私達は人類悪にて今ある安寧に牙を剥く。そうして人間と向き合っていくつもりなのですよ】

 

今更ビーストが悪だけなどとは言わない。だが、黒服が有している情報はあまりにも踏み込んだものだ。何故、この異世界の存在がここまでこちらの実情に詳しいのか。

 

【不思議に思いますか?オルガマリー所長。事はもっと単純ですよ。頭を柔らかくしてお考えください。これはあくまで試作です。私達ゲマトリアが、人理を【濫用】した実験。ついでの起動テストのようなもの。ゲマトリアの立ち位置はもっともっと単純なのです】

 

「───後ろ盾…まさか、『スポンサー』!?」

 

【御明察。人理を保障し、人を生かそうとする組織は、全ての世界に【一つではない】。まぁ、そちらのカルデアは一際盤石に過ぎるとは思いますが。内外共に壊すのは最早不可能でしょう】

 

スポンサー。それが意味するところは一つだ。かつてマリスビリーが行った様に、父が目指した理想を叶えるためのショートカット。

 

「ゲマトリアは…【カルデアス制作に協力している】…?」

 

【そういう事です。何が何でも人類を護らんとする愛。ビーストとは人類愛なのでしょう?あれらを使役できているのはそういう事ですよ。私達ゲマトリアの支援者は、揺るぎなく人類を愛している。そう通達されたので】

 

何者かがカルデアスを利用しようとしている。デイビッドは言っていた。カルデアスは異星であると。であるならば、それを一体誰が利用せんとしているのか?

 

【信仰が必要なようです。カルデアスを求めた者は、もう一度自身を盲信する世界を有している。我々はそう推測しました】

 

「…!!」

 

【少し考えれば分かることです。設計理念や骨子、用途を見れば把握する事が叶う。【カルデアスとは異星であり、もう一つの星である】。であるならば、【それを手中に収めるという事は神と同義だ】。…と、ゲマトリアは結論付けたということですね。何故そうするのかは聞けませんでしたが…まぁ、アダム先生やオルガマリー所長の鮮やかさに免じて口を滑らせましょう】

 

「その…支援者の目的は?」

 

流石に完全なる平静は保てずとも、その答えを彼女は問う。黒服は、その存在の真意を開帳する。

 

【汎人類史以外の抹消、抹殺…。自らのみを称え、自らのみを賛美する者達を残し、自らを知らぬ全てを消し去る。そういった理念を、私達は聞かされましたね。スポンサー特権として】

 

「汎人類史以外の…抹殺…?」

 

【まぁ、自らのみを至高とし、ありとあらゆる神々や信仰を踏み躙った実績もあるでしょうしそれほど飛躍した帰結では…あぁ、これは少し口を滑らせましたかね?】

 

瞬間、激闘の余波が更に強まる。生徒たち、リリスと温羅とビーストの戦いは激化の一途を辿る。

 

【もう少しお話に興じますか?私が喚んでおいてなんですが、あの獣は生徒と先生だけでは難儀しますよ。そう言う愛が籠もったビーストであるので】

 

「…あなたはいったい、何者だというの?」

 

【生徒を助けられなかった先生、上手くやれなかった人類最後のマスター。…なんて、信じることができますか?】

 

「──あなたは汚い大人かもしれないけれど、その誠実さと解りにくい好意の示し方には感謝します。値千金の情報、ありがとうございました」

 

【いえいえ。個人の裁量で世界ごと消されてはたまったものではないので。個人的には、あなたの有するカルデアを応援させていただきますよ】

 

それだけを告げ、オルガマリーは戦場に戻る。その後ろ姿に、まるで餞別を送るように黒服は告げる。

 

【あなたたち、善良なる人々からカルデアスを簒奪出来なかった時点で、あちらは一度敗れています。どれほど取り繕おうと、あなた達の活動は彼の一枚上手を言った】

 

「いきなり何を…」

 

【胸を張りなさい、という事ですよ。あなた達の頑張りと健闘はあなた達のものだ。あなた達自身を、あなた達を支えた全てを信じてあげてください。これは、大人としてのエールです。それでは】

 

黒服はそれだけを告げ、黒き煙と共にかき消える。黒服の齎した情報はあまりにも衝撃的だが、それはまた後でいい。

 

「──言われなくても、そのつもりよ。私はギルやロマニ、リッカやマシュ…そして、姫やみんなを信じている」

 

それだけは、決して揺らがない。疑惑を振り払うように、オルガマリーは一閃となってアダムの下へ駆け抜ける──




オルガマリー「大丈夫ですか?アダム先生。本当にお疲れさまでした。アロナちゃんも」

アダム「礼を言うのはこちらだ。私個人の問題に、ここまで手厚いサポートをしてくれてありがとう」
アロナ『はい!黒服さんと何を話していたのですか?』

オルガマリー「世間話よ。皆が頑張っているおかげで、ビースト達は進撃できていない。一気に決めましょう」

アダム「よし。…っ」
アロナ『無理です、先生!たった一人で推定1500体のビーストを倒した今、余力は…!』

鳩『カードを使うっポ』

アダム「!…神か」
アロナ『えぇ!?』

オルガマリー「パパポポ様…」
アロナ『知り合いですか!?』

鳩『カードを使い、君のために駆け付けてくれる誰かを呼ぶっポ』
アダム「私は代償を払えない。私の全ては、生徒達のものだ」

鳩『代償?そんなの無いっポ。神の奇跡を私が使うだけなのだから』
アダム「(……フリーズ中)」
アロナ『神の奇跡???ハトさんがですか???』

鳩『大人のカードではなく神のカードだっポ。さ、速く。君の先生としての道はこれからなのだから』

オルガマリー「では、私も最高にして最強の親友を二人ほど招きます。足並みを揃え、決めましょう」

アダム「……神殺しの身で、烏滸がましいが」
鳩『ポ?』

「あなたに、無上の賛美と感謝を」
鳩『気にしなくていい。子を護るは親の務めだっポ』

──そして、オルガマリーとアダムは満を持してジョーカーを切る。

マシュ「御機嫌王直々のご指名!行きましょう!先輩!!」
リッカ「オルガマリーとマシュの三人で…くー!解ってるねギル!」
オルガマリー「ふふ、そうね。粋な期待に応えましょう」

アダム「私に力を貸してくれ。まだ見ぬ、私の生徒よ」

?「ふふ、もっちろん!アダム先生のお願い、なんでも聞いてあげるからね!」

アダム「…君は?」

ミカ「あっ、エデン条約はまだな感じ?なら始めまして、アダム先生。私はミカ、聖園ミカだよ。先生の事、どこにいたって助ける良い子なんだから♪」

リッカ「お話は聞いてます!アダム先生、ミカちゃん!よろしくお願いします!」
マシュ「美しい見た目、わかりました!大天使ですね!(?)」

ミカ「わーぉ、盾にカタナにツインガン!過激〜♪よろしく〜♪」

アダム「皆…よろしく頼む」

細やかな取引にて始まった、早朝の大決戦。その幕が降りようとしていた──。

どのキャラのイラストを見たい?

  • コンラ
  • 桃太郎(髀)
  • 温羅(異聞帯)
  • 坂上田村麻呂
  • オーディン
  • アマノザコ
  • ビリィ・ヘリント
  • ルゥ・アンセス
  • アイリーン・アドラー
  • 崇徳上皇(和御魂)
  • 平将門公
  • シモ・ヘイヘ
  • ロジェロ
  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。