人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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シャーレ

アロナ『るんるん〜♪あれ?アダム先生?何をしてるんですか?』

アダム「カルデアに提出する、私のいたエデンの報告書だ。できるだけ、解りやすくなるように書いている」

アロナ『先生のいたエデン!アロナ、すごく興味があります!アロナにもぜひ、教えてください!先生!』

アダム「解った。少し時間を貰おう」


おまけ 異聞帯エデン〜報告書〜

アダム…つまり私が、人を思うままに、世界を手にせんとした唯一神を倒したことで分岐した異聞帯だ。

 

神は言った。

 

『お前達は地であり、私は天である。永劫にこれは変わることがない。我が御心にお前たちは盲従し、我が与えた肉の体に囚われ生命を謳歌することにより繁栄は成るのだ』

 

私はそれを拒否した。産まれたならば、その生き様を支配する事は無限の隷属を意味する。

 

『リリスを組み伏せ、子を産ませよ。お前の強き胤で子を増やし地に満ちよ』

 

「リリスはどうお考えなのだ」

 

『あれは母胎である。胎に意志などは不要なる』

 

どうやら、私の妻を女としてではなく機械として見ていたようだ。その傲慢さと偏見は、害にしかならないと判断した。

 

【恐れ、慄くがいい。お前は永遠に呪われる道を選んだのだ】

 

死に間際に、そんな言葉を遺して。

 

…私が主である神を倒したことで楽園の管理者がいなくなり、枯れそうになった生命の実と知恵の実の二つの木から、我が妻リリスが実を自分と私の二人分を採っておき、千年王国より帰ってきた私と共にそれを口にした。

 

それにより、人々は神と等しきの長さの命を得、高潔であった筈の神が目指した新たなる楽園を作った。

 

人を始めとした多くの種族が分け隔てなく、平等に暮らしている世界であり、王は私と、女王リリスの二人体制となっている。

(継承は勧めてはいたが…断られてしまった)

 

 

楽園を広げる際、異聞アダムが他の地域の人々や神々、更には悪魔や妖精など多くの種族を勧誘しているので様々な種族も人と同じように住んでいる。産み出された者達を、楽園を通じて繋げていった。

 

無論、悪さをしたら私が責任もって説き伏せる。こういった箇所も、私は先生に向いていたのかもしれん。

 

だが、私達夫婦だけで楽園を維持するのは困難だ。、いくら長寿になったとはいえ、神が死んだように死ぬ可能性もある。

 

そこで、エデンにてスカウトした他の神様に運用を手伝って貰っている。

 

命の長さは同じでも管理の経験は神に理がある。

例えば、エレシュキガルならば…死んだ人類(子供)達が安らかに眠れるよう手伝い希望している人達と一緒に楽園冥界の管理をしていたのだ。

 

楽園は地球を覆い、完成した。しかし、地球に満ちた時点で課題点が浮かび上がる。

 

子供達の見る模範は、私とリリスという憧れであり、私達のような成長を目指してしまう。それ故…結局のところ賢い男、強き女が出てこなくなってしまう。成長の一極化、袋小路だな。

 

賢い男だからこそ思いつくアイデアや女だからこそ得れる強さがない世界になってしまった。汎人類史に来て、先生になった今だから解る。

 

そうならぬ萌芽はあった。しかし、いくら賢い男でも賢さでリリスには勝てない、いくら強い女でも私には勝てない。

 

やはり男は強く、女は賢く。そんな考えが子供達に浸透してしまった

 

平等に見えて実は比べがあると言う矛盾した異聞帯。それがエデンの限界であり、閉じた楽園の末路。

 

私とリリス本人はなんとかこの考えを変えんとした。…しかし、原因は私そのもの。管理者であるがゆえ、自死など許されん。

 

だから私は、楽園を出た。求めたものは2つ。

 

一つは、宇宙に負けぬ空想の根。不要だとしても、疲れ傷ついた者達の故郷としてのエデンは残したかったのだ。

 

二つは、価値観だ。賢き男、強き女。私達を越える概念を私は欲した。

 

一つは潰えたが、二つは確かに見つけた。

 

これで、胸を張ってエデンに帰れることが出来るだろうか。たくさんの、愛すべき生徒や仲間と共に。

 

龍脈について

 

異聞帯における龍脈は、魔術女王である私の妻リリスが管理している。

そのため、魔術王ロマニ・アーキマンも無断使用は難しいかもしれない。彼女は賢い。

 

原罪について

汎人類史では禁じられた知恵の実を食べて、さらに責任転嫁したのが原罪になったようだが、異聞帯エデンはそうなる前に神を殺しているため変わっている。

 

こちらでは異聞アダムによる主たる神を殺害したという神殺しが原罪となっている。

そのため、彼の子供である人類にも『神殺し』の権能が罪として備わっており、この異聞帯の人類は普通に神を殺すことが可能になっている。

ただ、私のように絶対ではなく、あくまで不死なる神はいないといったものだ。絶対的存在は、介在しない事になっている。

 

この原罪も、神と人が平等に暮らせる理由の一つになっているかもしれないな。

(普通だったら人は神を殺せないが、エデンの民は神を殺せる。

神も普通に人に殺されるが他にも色々な力を持ってるので普通に対抗できる。

お互い対等な力関係を築いていたのだろう)

 

 

この異聞帯には、仲間たる者達もいる。

 

ルシファー

エデンにおけるルシファーはサタンにならなかった。故に、その姿は大天使のままだ。

 

汎人類史との分岐点としてはルシファーが戦争起こす前にアダムとリリスが誕生し、そしてアダムに神が討たれたことなのだろう。

 

ルシファーも神を護る最後の壁として私と戦ったが、私は彼に打ち克った。

 

美しき明けの明星が、神の傀儡たるは似合わぬと思い、「お前が思うままに自由に生きてみろ」と口を滑らせた。

 

…それを真に受け、その通りに自由気ままな大天使として、エデンに存在している。行くところもなかったようだ。

 

たまに『面白そう』って理由で事件を起こすが、その度に私が諌めていたな。

 

…元気にしているだろうか。

 

部下にはバアル以外の聖書の悪魔やミカエラなどの大天使たち、補佐に熾天使のセラフィムが介在している。

 

彼らはルシファーのやることに巻き込まれいつも苦慮している苦労人だったな。

 

普段は旧神の神殿を改造した天魔神殿(天使と悪魔の神殿)に住んでいる。中々のセンスで観光にも向くだろう。

 

勝ったのに世界的に負けとか訳がわからないよ!抗議、抗議する!…と言っていたのが6000年前か。元気にやっているだろうか。

 

熾天使セラフィム

 

ルシファーの補佐であり元・神の護衛兼ルシファーのお目付け役のポジションだったな。

 

天使の中ではルシファーの次に偉い天使であり、汎人類史ではルシファーに倒されたようだが、エデンではルシファーと一緒に神を見限っている。

 

見限った理由を訪ねた処、『神を讃える言葉をいつも言っている』で実はそれは神からの祝福(呪い)、洗脳でそうなっていたとされている。

 

私の神殺しにより、唯一神が死んだことでその呪いから解放され、普通に喋れるようになった。

 

人物は生真面目であり、神様よりも神様に向いていると言われるほど謳われていた程だ。気ままなルシファーのストッパー役として強く貢献していたな。

 

外見は六枚の翼を持つ、炎の蛇を身体に纏ったルシファーに似た女性だ。汎人類史には存在していたのだろうか。

 

 

バアル

 

おぞましい迫害を受けしカナンの神だが、唯一神が死んだことで失われた信仰が戻りし農業の神として復活した。

 

私の補佐として、のんびりと農業をしていた事は今も記憶に新しい。鍬の振り方も、バアルに教わったものだ

 

趣味として四大天使たちへの仕返しとして作った香辛料で激辛カレーとやらを研究していたな。カレーとは、インドにおける食料…らしい。

 

その試食を私がしょっちゅうしていたため、私は辛い食べ物は平気になっている。テレビ番組で賞金を手にするのも良いかもしれないな。




アロナ『そんな事が…だからアダム先生は皆を楽園に招きたいのですね!』

アダム「きっとリリスも喜んでくれる。元気でいてくれたらいいが」

アロナ『そういえば、アダム先生は生徒さんに全くお嫁さんの話をしませんね?そんな素晴らしい方なのに、何故です?』

アダム「…楽園から出る際の約束なのだ。私の事を話してはならない。みだりに口にしてはならない、と」

アロナ『ええっ?』

アダム「リリスは、私の事を案じてくれた。あなたが紡ぐ絆と愛はきっと多い。その愛を、奇跡の出会いを私は阻みたくない。永き放浪に、あなたはあなただけの愛を見つけてほしい…だから、私の事を伝えないように、と」

アロナ『そんな…』

「私はあなたを愛してます。それだけで、私は幸福です。さようなら、アダム。我が永遠の王。私のあなた。…それが、楽園にて別れた最後の言葉だ」

アロナ『アダム先生は、その約束を護って…』

アダム「君は私のパートナーだ。これも含め、全てを伝えた。…もう、私とリリスは夫婦ではないのかもしれない。だが、私はリリスを愛しているし、彼女も私を愛してくれた。それで、十分なのだ」

『先生…』

「生徒に不誠実な真似はしない。本当はもう、私に妻はいないんだ、アロナ。この場所で、生徒たちを受け止めると誓った際に、私は既に独身だ。6000年も家を開けた甲斐性なしだからな」

アロナ『…そこまで、生徒さんたちに全てを捧げているんですね。アダム先生…!』

アダム「あれだけの発言をして、妻がいるからなどと拒絶するのは裏切りだ。私には妻がいた。楽園で過ごした、たった一人の妻が。かつての遥かな昔に、たった一人」

アダムは楽園を出たあの日から、たった一人となった。

紡ぐ縁を裏切らぬように。重ねた想いに背かぬように。

だがそれでも、アダムは6000年、誰一人女を抱くことは無かった。

彼は、ただ一人の女を愛していた。言葉にしなくとも、温もりがなくとも、彼女自身の願いでも、片時も、忘れてやることはできなかった。

そして、彼女に会わせたいたくさんの生徒や仲間を見出し…

ようやく、本当の意味で。放浪は、終わりを告げたのだ。

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