ロマン「島津豊久がレイシフトしてしまっただってぇ!?」
オルミーヌ「は、はい…!「俺を呼んでる!」ともののあっという間に…!」
与一「カルデアでは共通標準語翻訳魔術が施されているとはいえ、鹿児島弁は異国語と思われてもおかしくはありません。孤立してしまうかと」
ノブノブ「あいつ、寝てるか食うか猿叫しかしてねぇから油断してたらこれよ。どこに行きやがった!?」
ロマン「とにかく逆探知だ!薩摩組はバーサーカーの中のバーサーカー、放っておいたら真っ二つの死体が大量発生してしま、え!?」
薩摩藩帰りの魔法使い豊久「いやぁ、学んだ学んだ!よか学園、よきマホウトコロだった!おう、ただいま!」
ノブノブ「なんだお前!?誰だお前!?」
与一「その格好は…?」
オルミーヌ「た、確かアーカイブにあった…ホグワーツの魔法使い…?」
豊久「おうよ。天啓閃いてれいしふとに飛び込んで見れば、怪しげな学校あってすっ飛んでみたらあれよあれよと薩摩藩よ。今しがた卒業ばして帰ってきた!」
(カルデアなので標準語アジャストされています)
ロマン「さつまはん???ホグワーツに?」
豊久「知らんか、浪漫?ホグワーツはあれぞ、薩英戦争と舞台背景同じよ。ぼるぜもんをチェストしてほれ、土産よ!」
『聖杯』
オルミーヌ「聖杯拾ってきたーー!?」
豊久「丁度えぇ、職員ば集めい!薩摩藩卒業生島津豊久、お前らに魔法を教えてやる!」
ノブノブ「どういう事よ?いや、どういう事よ???」
「集まったな!聞いてのとおり、夢で親父殿に学を学べと受けた俺はれいしふとに飛び込んでホグワーツマホウトコロ、薩摩藩に入学!数ヶ月か数年?学び卒業し無事薩摩藩卒業生ばなった!そこで学んだ魔法、きっとお前らにも役に立つ!学びぞ!俺は薩摩の『いんてり』よ!」
「「「「「???」」」」」
標準語なのに全く意味がわからない、といった様子の善良なるカルデア職員達。それはそうだろう。薩摩のバーサーカーが急に魔法学生の姿をしながら、杖を得意気に振り回しているのだから。いや、それは杖というより…
「と、ところで、その刀剣は一体…?」
「杖ぞ」
「いや、それはどう見ても刀か木刀」
「杖ぞ」
「そ、それが杖は無理が…」
「 杖 ぞ 」
「ハイ……」
オルミーヌの常識、豊久の気迫に敗北。玉鋼で鍛えられ、刀身が背丈ほどあるその物体がどうやら豊久の杖らしい。
「薩摩藩とは、薩摩の武士らが集まる藩じゃっど。常在戦場、先達の言葉を聞き、礼節を弁え、よく学ぶ。そういう気持ちのいい学友が集うよか学び舎だったな」
「じ、時代背景的にはあり得るんだろうか?薩英戦争で仲良くなったと聞くし、秘密裏にホグワーツにそういう組織が?」
「いやおかしいだろ。グリフィンドール、スリザリン、薩摩藩って並び自体がよ」
「いや、目の前に実例がいますし。信じ難すぎますが」
「振り下ろした一太刀で敵の頭を叩き割り、二つの魔法で敵を殺す!薩摩モンの魔法はチェストが基本、護りの魔法は女々か、後手に回らばさぱっと死せい!しかし敵を倒せんが一番女々しか故、追い込まれれば使えるものは全て使い最後に腹をきる!これが薩摩藩の基本にして理念よ!」
「それ敵に殺されるよりハラキリ死亡の方が多くならない?よく卒業できたなお前」
「いやいや信長さん、豊久さんですよ?大丈夫ですよそりゃあ…」
「だが食堂ば出禁になってしまったな。ユニコーンのえのころ飯(腹の内臓を抜き取り米を詰める飯)や肝練り(頭上に回転火縄銃を置いた談合)が周りに当たってしもうた。あれくらいで傷付くとは鍛錬ば足りとらん!実に他教科は女々か!」
「薩摩ワールドでファンタジーを侵食するんじゃねぇ!」
「まぁ学風説明はこんなもんでよか。皆待ちかねの魔法実践よ!おいノブ、杖ば持て!実戦を実践よ!」
「は!?嫌だよ俺死にたくねぇよ!?」
「「「「お願いいたします!」」」」
「お前らァ!?」
〜エクスペリアームス(赤い稲妻で敵の武装を解除する魔法)
「エ゛クズベリア゛ア゛ア゛ーーーーッ!!!!」
「ぎゃあぁあぁあぁあぁあぁ!!!!?」
ノブノブの杖を持っていた手が、豊久渾身のチェストによりバッキバキに破壊される。杖どころか箸すら持てないだろう。
「これの真髄は、武器を持つ腕がなかば武器ば永久に持てんたる理念よ。相手の腕ば砕く気概で打ち込めぃ!」
「あの、魔法って発音が正しくなかったら発動しなかったのでは…?」
「良いか、利き腕ば叩きこめ!一の太刀、ニの魔法!薩摩藩はこれが基本よ!」
「腕がぁあぁあぁあぁ!!」
アロホモラ(解錠呪文)
「ア゛ロホ゛モア゛ア゛ア゛ーーーッッッ!!!」
本来ならば鍵のかかった扉や箱を解き放つ呪文であるのだが、豊久…薩摩藩が振るうアロホモラは一味違った。目の前に用意された南京錠入りの金庫が、示現流を行使した杖の一撃で叩き壊れたのである。
「チェストの心構えば込め、示現流を叩き込む。まぁ俺はタイシャ流剣術なんでちょいと違うが、理念ば同じよ。これをマスターすれば合鍵や閉じ込め知らずよ!」
自慢げに笑う豊久と、煙を上げる金庫。その対比に一同は戦慄を隠せないのであった。
ディフィンド(空中に刃を展開する魔法)
「ディ゛フ゛ィイエ゛ア゛ア゛ア゛ーッ!!!」
空中に刃を齎す魔法、ディフィンド。発音どころか完全なる猿叫なのだが魔法は問題なく作動している。やはり薩摩藩の熱い魂がそうさせるのだろうか。
両手で杖を高々と掲げる蜻蛉の構えから放たれるエネルギーブレード、それにより、シミュレーションのスプリガンが真っ二つに叩き切られる。薩摩剣術と魔力を纏うこの魔法はあまりにも相性がいい。
「発音とか…どうなってるんですか…?」
「心の中で、言ってるとか…?」
「高等技術じゃなかったか、それ…?」
タイ捨流剣術も示現流も覚えてきた豊久。卒業生は伊達ではないようである。確実に生け捕りは無理難題であっただろうが。
レラシオ(追い払い魔法)
「レ゛ラ゛シ゛オ゛ォ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァーーーー!!!!!!」
豊久、腹の底からの猿叫。知恵を捨て、放たれるその大咆哮は敵対者の心ごと魂をへし折る最高の追い払い魔法と変化する。
「こえぇよぉ!薩摩こえぇよぉ!」
「日本ば恐ろしかところばい!ムニエル生きていられんご!」
「いや流石にこんなのばっかりじゃねぇよ!?与一もなんか言ってやれ!」
「鎌倉武士は更に上を行く野蛮ぶりですが?」
「そういうところを競ってるんじゃねーよ!!」
その絶叫は、エリザベートにコラボのお誘いかと勘違いされ二次被害を巻き起こしたのはまた別のお話。
エクスペクト・パトローナム(幸福なる思い出を糧に放つ守護霊召喚呪文)
「…本来なら、霊に頼るば女々しか。男の子は己で首ば挙げねばならん。故にこれに頼るは己に打つ手がなくなりどうしようもなくなった時のみよ」
「いや、守護させろよ」
「士道不覚悟、必ずや切腹を条件に発動する『戦場ば幸福』という心を使い招きたるは親父殿、はたまた連綿と築かれし島津の御先祖様方の第一刀!」
タイ捨に構えた豊久の背後に、無数に現れる島津一族の先祖達。手柄を譲るは切腹の誓いにて招かれた、地平線を埋め尽くす第一刀を構えた死兵達の一太刀の大合唱。
「エ" ァ" ア" ア" ア" アアアアアアアアアアアアアアアーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
対想定、ドラゴンに向けられた怒涛の示現流第一刀の連射。曇りなき猿叫が響き渡り、そこには迷いのない決死の一撃の大乱射が埋め尽くす。
「これを魔法と言い張るのか…」
「でも、なんだか…カッコよく見えてきたような…?」
「…日本って…凄いなぁ……」
ドラゴンが叩き斬られていく圧倒的終末の光景に、もうロマニは感嘆するしか手が残されていなかった。
紹介されているように、薩摩藩にかかれば全てが物理にて必殺の魔法となり、敵を確実に破壊、殺傷する一撃に早変わりする。
アバダケダブラ(即死魔法)
「こんなに長い呪文、薩摩藩には必要なかぞ!チェストのほうが何倍も早か!」
「アバダケダブラ、チェスト。本当です!4文字です!」
「チェ、は小文字大音統合すれば三文字だね…(遠い目)」
「まさか、闇の魔法使いにはめっぽう強いんじゃねぇか?薩摩藩って」
「ん?おうよ!痛みば耐え、裏切りば腹を切る。黒きもんには好きにはさせん!黄泉路の先駆けに一体何人の学友が参じたか…」
遠い目をしながら語る豊久。それは、彼が飛び込んでいった世界と時間が、確実に真実であることを意味している。
「というわけで、カルデア職員も薩摩藩魔法ば習えい!流派東方不敗を修めたお前らならできる!魔法を修め結束ば強め、リッカらを支えい!」
「「「「……………」」」」
豊久に勧められたカルデア職員達は顔を見合わせる。自分達に果たして収められるものなのだろうか。この技術は。
しかし、そこはカルデアの善き人々。リッカたちの為とならば答えは決まっていると強く頷く。
そして───
「エ" ァ" ア" ア" ア" アアアアアアアアアアアアアアアーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
オルガマリー「!?!?!?」←飛び起きた
…薩摩藩、カルデア組の朝は早い。朝5時には飛び起き、一心不乱にチェスト魔法の鍛錬を行う。
チェストは朝三千、夜八千。カルデア職員達は真なる強さと力を求め、己を磨き続ける。
「ク゛ル゛ーシェア゛ア゛ア゛ーーーーッッ!!!!」
「ク゛ル゛ーシェア゛ア゛ア゛ーーーーッッ!!!!」
「ク゛ル゛ーシェア゛ア゛ア゛ーーーーッッ!!!!」
苦痛魔法を互いにかけあい、己を高める姿を豊久は満足げに頷き、オルガマリーはただ困惑をかくせないのであった…
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