(オレが誰かと親しくできたのは、シャングリラ・カルデアの環境があればこそだ。グランドウマ娘たる存在を、果たしてオレが選別することができるかどうか)
「…嘆いていても仕方ない。聞き込みを地道に続け見つけ出すしかあるまい。さて、名簿を確認するか」
?「…すみません。あなたです。そこにいて、そこにいないような不思議なあなた」
デイビッド「?」
?「お友だちが、あなたに強く興味を示しています。あなたは…天使のような雰囲気がある、と。私は、マンハッタンカフェと言うものです」
デイビッド「君はグランドウマ娘か?」
マンハッタンカフェ「いえ…ただ、個人的にあなたに興味が湧いたのです。少し、お話しませんか」
デイビッド「…コーヒーの匂いがする」
マンハッタンカフェ「えぇ、好きですから」
デイビッド「君とはいい話ができそうだ」
「凄まじいな、君の友達は」
デイビッドとコンタクトを取ったウマ娘、マンハッタンカフェ。彼女の言う、お友だちの走りを彼は目の当たりにしている。
「……あなたには、見えるのですね。お友だちが」
「速く、柔らかい走りをするウマ娘だと感じる。凄まじく高名なウマ娘なのだろう。名前はわからないが、グランドウマ娘でないのがとても残念だ」
漆黒の長い髪に、金色の瞳。155cmの小柄ながらも、ミステリアスな雰囲気を漂わせる彼女と共に、デイビッドは練習レース場を眺めている。
「あそこにいるお友だちが、私に訴えかけました。…自分こそ、何かを為せるはずだと。勇気を出して、一歩を踏み出してみろ、と」
「そうか。オレとしても、打算抜きで話せる相手は望むところだ。少し話せる時間は短いが、有意義な時間にしたいと思っている」
「はい。…あなたへの所感、なのですが。なんとなく…あなたはどこか、この世のものではないといった感覚を覚えます」
「スワンプマンという言葉を知っているか。本来の自分から、何もかもを築き上げ生まれた泥の自分。記憶も有し自分である自覚のある異なる自分。色々あって、オレはほぼそんなようなものだ」
「…なるほど。あなたの周りに感じる、遥か遠くの空の存在はつまりそういう事だったのですね」
「君とあのお友だちはどういう関係なんだ」
「私に、私とずっと一緒にいてくれるお友だち。私は、彼女に追いつきたい。彼女は私の、目標でもあります。あなたには、それが、見えているのですよね?」
「見えている。目前に起きていることを否定したりはしない。君に瓜二つのように見受けられるが」
「…でも、知らないんです」
「?」
「追いつけなくて…彼女はとても速くて。顔もまだ、見たこともないし、知らないんです。でも、あの娘はいつも傍にいてくれますし、確かに存在しています。…皆、半信半疑でいるのですが…」
「見ている世界が異なれば、齟齬というものも発生する。オレも、今いる組織にいる前。肉体と精神が再構成された後はずっと自身が自身でないという乖離に悩まされてきた」
「…お友だちが、言っていた通り…」
「だが、それを受け入れる出来事も数多あったが故に今の自分は存在している。例えどれほど周囲から隔絶していようと、例えどれほど周囲から異なっていようと、居場所や安寧は存在するものだ。オレがそうであるように」
「……………」
「オレを受け入れてくれた彼等がそうしてくれたように、君にもオレはそうしよう。君は心を閉ざしているな?」
「……はい。お友だちや、皆を否定されるのが…哀しくて」
「ならばオレはそれを肯定しよう。少なくとも、見た目や印象で相手を拒絶するのは善くない事だ」
「善くない、ですか」
「父の言葉でな。人は当たり前のように善き事をする。だからこそ、オレも当たり前のように善き事をできる人間でありたい。そう考え、日々を生きている」
「…素敵な父親ですね」
「オレもそう思う。そしてそれを、存分に発揮できる組織に今オレはいる。そして今回の善き事をするには、ウマ娘の協力が不可欠なんだ」
「御期待に添えず…すみません」
「いや。目的だけで付き合う相手はビジネスパートナーであり、互いに命を預ける相手にはなり得ない。君が話しかけてくれなければ、まるで0からあてのないウマ娘調査をする羽目になった。感謝する」
「…それは、大変ですね」
「ここで、一つ提案なんだが」
「はい?」
「何かの縁だ。オレと友人になってくれないか?君の友人も含め、最初に知り合った縁をオレは大切にしたい」
「私と、友達に…」
「君達がどういう存在であるのか、君達がどういった関係であるのか。ウマ娘とは、どういった生き物であるのか。何も知らないが故、オレはもっと知りたいと思う。マンハッタンカフェ、君を通じて」
「…私で、いいのでしょうか」
「君だからいい。最初に話しかけて来た相手は攻略ヒロイン濃厚だと、リッカ達が言っていたからな。どうやらオレのウマ娘ヒロインは君らしい。マンハッタンカフェ」
「……………」
「これは使命やスカウトではなく、オレ個人のお願いだ。迷惑だったなら、断ってくれて構わない」
「…いえ、そもそも話しかけたのは私ですから。私も、同じ気持ちでした」
「?」
「この広いトレセン学園で、隅で静かに佇むあなた。私と同じように、普通の人とはなんだか違うと思って…もしかしたらと、思ったので」
「お互い友達になれる、か?」
「はい。お友だちを見て、素晴らしいといってくれた事も…嬉しかったので」
「そうか。では…オレは君にとって二人目の友達だな」
「はい。でも、どちらも大切なのは変わりません」
「オレも同じだ。オレには友達が10人近くいるが…君もたった今、大切な友人となった。互いに、縁があったようだな」
「…すみません、お名前を聞いていませんでした」
「デイビッドだ。デイビッド・ゼム・ヴォイド。カルデアで、マスターをやっている。今から君は、自分の友人だ」
「デイビッドさん、ですね。解りました。ではデイビッドさん、お友達共々よろし…、っ!?」
「どうした?」
「右手が…熱くなって…これは…」
「…三女神を模した証。ウマ令呪のようだ。どうやら、発現していないウマ娘もいるようだ」
「デイビッドさんと親しくなった事により、ウマ令呪が刻まれた…」
「どうやら、君もグランドウマ娘だったようだ。しかし、今はそれはどうでもいい」
「どうでもいい、ですか?」
「ウマ令呪目当てで仲良くなったわけではないからな。お互いを話し、そして知り合おう。どうやらマスターとグランドウマ娘としても、互いに時間は過ごせるようになったらしいからな」
「…解りました。コーヒーは、お好きですか?」
「オレ以上にこだわる人間が一人いてな。可能なら、淹れ方を教えてもらいたい」
「ふふ、解りました。…あ、お友だちが帰ってきましたね」
「素晴らしい走りだったな。是非お友達とも仲良く…ぐっ」
「あっ、蹴りを…だめ、彼は新しいお友達だから…」
「どうやら…かなり気性の荒い友達なようだな」
…こうして、新たなる一組が誕生した。
デイビッド・ゼム・ヴォイド。そして、マンハッタンカフェ。
二人は意気投合し、お友だちとマンハッタンカフェの練習メニューを即興で考案したり、マンハッタンカフェの勝負服の色違いを再現したりと、良好な関係を築いたという。
ちなみにこれは、余談ではあるが。
デイビッドとマンハッタンカフェが話し、練習場を見つめて会話していたのは昼時であり、練習上で練習しているウマ娘はいなかった。
どのウマ娘に聞いても、同じ答えが帰ってきたという。
デイビッドがお友だちの走りを見ていたその時間…
「その時間には練習場には誰もいなかった」と。
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