人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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《傲慢。これを語らせる事において我の右に出るものはいるまい。自我を肥大化させること、身の程を弁えず埒外の矜持を外界に向けること。培った経験を誇示すること。其を以て定義される事が傲慢よ。そも人とは他者との比較にて己の優位性を認識する悪癖がある。己が成果が、他者を上回り初めて他者より優れていると認識するのだ。まこと、愚かかつ矮小としか言いようがあるまい。雑種と雑種の背比べに何の意味がある?その成し遂げた成果は、世界に何れ程の成果を残す?団栗の背比べという諺がある。正にそれよ。世界の織り成す歴史の編纂の前には、他者と比べ得られる優越感や達成感など芥子粒より尚小さい。――そも。傲慢の罪過たる由縁は自己存在意義を他者を物差しにせねば計れぬ魂の矮小さ、他者の在り方を許容できぬ不寛容さこそを言う。己より上を認められぬ俗物がよく嵌まる落とし穴よな。そも他者に自らの評価を預けることこそ愚行の極み。他者より上回れば傲慢に、他者より下回れば卑屈となる。こんな当てにならぬ査定をして何になる?上であろうが下であろうが雑種は雑種よ。――我には永遠に理解できぬ、近くに有りながら遥か彼方に置かれる罪過よな。ま、雑種に絶対たる価値観を持てなぞ言わぬ。荷が勝ちすぎよう。世界はそれほど軽くは無いのだからな。それと・・・傲慢の罪を抱えた道化は重宝すべきだぞ。傲慢も、卑屈も、等しく嘲笑えるからな》

(比較にも通じるね~。オンリーワンを目指しなよオンリーワンを。皆違って皆いいんだよ。女体もフェチもね)


――美徳は、絶対たる己を持つ。ですね


《そうだ。己を裁くは己のみ。自らのみで世界に相対する。他者なぞ雑種、他人の評価など意に介す必要すらない『我』を確立することだ。他者と比較するから迷うのだ。他者に評価を預けるから惑うのだ。己こそ絶対にして唯一の基準。誰になんと言われようが、けして揺らがぬ『自我』を持て。他者に揺らがされぬ価値観、己にのみ向かう傲慢――多くを問われる低さを脱し、誰にも責められぬ高みへ至る。即ち、この世の総てを背負うこと。それこそが、傲慢を『矜持』に固定し定義する方法に他ならぬ》

(それオマエ以外全員傲慢じゃん)

《当然であろう。雑種ごときが傲慢なぞ数億年早い。思い上がるな。身の程を知り、貞淑に慎ましく生きるがいい。我以外の価値の基準などゴミ以下よ。貴様ら凡俗に赦されしは、空しい努力にて培われた自信のみ。それらは空しくとも、けして無駄ではない。凡俗であるなら数をこなせ、才能が無いなら自信をつけよ。他者の上に君臨せしは我にのみ赦されし特権よ》

――はい。この美徳は、よく心得ています


《――我を一番の近くで目の当たりにしているのだから当然、か?》

――はい!英雄王の誇り高い在り方が、ワタシは大好きです!

《――・・・天空神の酒と、大地の女神の果実は何処にしまっていたか・・・》

(ふふ、そうだね。――さて、そろそろ終わりが近い。リッカちゃんは『我』を確立することが出来るかな・・・?)

――ほら、フォウ。食べやすいように切り分けたから、マスターの無事を祈って一緒に食べよう?
ほら見て!フォウの顔~。やぁフォウくん!ボクもフォウだフォウ!・・・なんちゃって!

「(消滅)あっ(復活→爆散)」


《・・・そう言えば。モンテ・クリストも善性を取り戻した後の旅立ちの傍らには、・・・姫が在ったという話であったな――》


傲慢――人類悪胎動――復讐するは我等にあり!!

「――フン」

 

 

最後の地獄、第七の裁きの間

 

 

 

「あれ?誰もいないよ?」

 

 

 

アヴェンジャーに導かれ、辿り着いた三人

 

 

 

「ちょっと、適当フカすの止めなさいよ。ふざけてるのかしら」

 

旗を不満げに揺らすはジャンヌ・オルタ。長髪とその美しい肢体を不満げに動かし、美貌を歪める

 

 

「アヴェンジャー様、これは一体・・・?」

 

 

そして、傍らにいるのはメルセデス。彼が連れてきたのだ。共に来い、裁きは行われると

 

 

「アヴェンジャー?」

 

「――マスター。いや、リッカ。・・・お前は、呼ばぬのだな。俺を・・・エドモン・ダンテスとは」

 

そう呟く彼の口調は、いつになく穏やかである。

暖炉の炎の如くに

 

「ん?うん。だってアヴェンジャーとエドモン・ダンテスは違うんでしょ?」

 

「――その理解の早さ、直感。・・・嗚呼、獣となったのは悪いことばかりではないということか」

 

 

「問い掛けからの自己回答のサイクルは辺りおいてけぼりだから止めなさいよ本当」

 

 

「フン。口も回ろうと言うものだ。おぞましくも充実した地獄巡りも今宵で終わる。その事実――些か、思うところがあるのでな」

 

ゆっくりと、監獄の空を見上げる

 

 

 

「――餞別がわりだ。昔話をしてやろう。――煙草が欲しいところだが、贅沢は言うまい」

 

 

「リッカの前でそんな毒物を吸ったら焼き殺すとだけ言っておきます」

 

「弾劾が冴え渡るな、エデなりしアヴェンジャー。お前も感じるか。地獄の終わりを」

 

「ハッ。地獄に未練などありません。さっさとカルデアに帰るのみです――でも」

 

ちらり、とリッカを名残惜しげに見つめる

 

「リッカと二人だけの旅路、というのは・・・得難い経験でした。あの白い調停者モドキがしたのと同じように、私も霊基に刻むとします。――希望に満ちた、地獄の行軍を」

 

「・・・はい。二人の復讐者を、私はけして忘れません」

 

 

地獄に在りて紡がれた絆を、確かめ合う

 

 

「フッ、そうだ――お前たちのように、海の傍らにて希望を信じていた男がいた」

 

 

ゆっくりと、話始めるアヴェンジャー

 

「愚かな男だった。世に悪意が満ちているとは知らぬ男だった。故に、男は罠へと落とされた。無実の罪によってシャトー・ディフへと囚われて・・・」

 

 

シャトー・ディフに落とされし男

 

希望を信じていた男

 

「十四年。地獄の日々を乗り越えて、監獄塔から生還した男は――復讐鬼となった。人間の持つ善性を捨てて、男は悪魔がごとき狡猾さと力を手に入れていたのだ。――男は、復讐のままに復讐へと耽った。自らを地獄へと落とした者共を、一人ずつ、たっぷりと恐怖を与えながら手にかけて」

 

ニヤリ、と獰猛に笑うアヴェンジャー

 

「クク・・・あぁ、今でも思い出せる。連中の顔、顔、顔!我が名を告げたときの驚愕!己が忘れ去っていた悪業の帰還を前にした絶望!クク――ハハハハハハハハハハハハ!!あれこそが復讐の本懐!正当なる!復讐の極みなる!!」

 

 

それらを受けて、一同は理解する

 

 

「もしかしなくてもそれ・・・」

 

「フッ、逸るな。年長者、復讐者の先達の話は、最後まで聞くものだ。・・・とは言え概ねこれで終わりだ。男は復讐に耽ったが、最後の一人を見逃した。・・・自らの悪を捨てたのだ、と言うものもいる。最後の最後に善性を取り戻したのだと」

 

力強く、リッカを見つめる

 

 

「――愛を、得たのだと」

 

 

「愛・・・ここで、愛」

 

「ハッピーエンドではないですか。何をそんなに怒る必要が?諸手をあげて称えられる物語にしか聞こえませんが?」

 

 

「――男は確かに復讐を止めた。そう、確かに失われた筈の愛を取り戻したのだろう。男は復讐鬼たる自身を愛し続けた寵姫と共に何処へなりとも消え失せた」

 

「――私、私は、知っています。その話を、その、復讐の神話を・・・」

 

メルセデスが告げる

 

「・・・だろうな。性質の悪い小説家めの所業で、あまねく世界に広まった話ではある。男の人生は物語となった。或いは物語こそが男の人生であったのか。何れにせよ――物語は至上の喝采を浴び、無数の想いを受け、復讐の神話となった。かつて男は復讐の神を叫んだが、哀れ、男自身がソレに成り果てたのだ。男は人類史へと刻まれた。人々が夢想する荒ぶる形のままに・・・それが、目の前にいる男の正体。――復讐鬼の影を所持していた男、それがエドモン・ダンテスと呼ばれた者だ。藤丸リッカ」

 

 

男は、告げた

 

アヴェンジャーたる自らの名を

 

切り離された、かつての名を

 

 

「アヴェンジャー・・・」

 

「――驚くことじゃあない。何。いつまでも真名を知らぬままでは座りが悪い。――お前を7日に渡り導いてきた縁だ。名づけるくらいは悪くは無いだろう」

 

「・・・随分と、気に入ったものですね。リッカを。断じてあげませんが」

 

「安堵するのはまだ早い。――これより、最後の『裁き』が始まるのだ。その支配者の名は――」

 

 

瞬間

 

「えっ、――っ!?」

 

 

影が伸びる。壁に映り、天井に伸び、リッカの影が肥大し、巨大化していく

 

 

「な、何これ!?」

 

 

「『傲慢』の罪。生命を弄び、玩弄し。『生命を所有している』などと傲り高ぶった大罪。図らずとも、お前はそれを背負わされていた」

 

「――あ・・・」

 

「――唯一つの生命に己が分身を背負わせんとした大罪!唯一つの命を己がものと思い上がった傲慢!!この『裁き』の間にてその醜悪な罪過は衆目に曝されよう!――さぁ!現れるがいい!『罪』の鎖に縛られ!!『美徳』の楔によりて穿たれし!少女の胎に巣食いし【未知】の獣!!」

 

 

伸びきった影より

 

 

「あ、ぁあっ――あぁあぁあっ――!」

 

『傲慢』にて種を蒔き『必要悪』にて育まれし・・・『人類悪』へと至らんとする獣が這い出でる――!!

 

 

「っ――!」

 

 

――それはまさに、『醜悪』そのものだった

 

 

シルエットを為すのは竜。三つ首の竜であるが・・・その全身は余すことなく腐り果てている。翼は砕け、足は溶け、四肢は、崩れている。6つの鎖が縛り上げ、6つの光の楔が突き刺さり苦悶に悶えている。三つ首は力なく揺れ、真ん中の腐り落ちた竜の頭は真紅に瞳が揺れる。その脇にあるのは

 

 

【ァア、ァアァアァア】

 

【ギィイィイィイィイィイ】

 

男と、女の顔。呪詛と腐臭を撒き散らす醜悪きわまりないその姿

 

 

呪詛を吐く

 

【何が、何が悪い――子供は親がいなければ生まれてこれなかったんだぞ・・・親が使って何が悪い――】

 

【そうよ・・・誰が育ててあげたと思っているの・・・誰が産んでやったと思っているのよ・・・何ヵ月も腹に寄生してたのだもの。私達が好きに扱ってなにが悪いの・・・文句を言われる筋合いは無いわ・・・家族の問題に、口を挟まないでちょうだい・・・第三者の分際で・・・】

 

 

傲岸、傲慢

 

生命を産み出しておきながら、所有物として定義した、人を人と思わぬ傲慢さ

 

 

【私達はこんな筈じゃなかった。もっともっと上に行けるはずだったのに・・・】

【私達を評価しない世界が悪い・・・私達を認めぬ世界が憎い・・・】

 

【【・・・それ故に、それのみを理由に私達はお前を作ったんだ、リッカ・・・お前の人生なんて必要ない、お前に人格なんて必要ない。お前の生命なんて、私達は知らない――】】

 

ごとん、首を叩き付けもたげる

 

 

【【お前は私達の模倣なんだ・・・!お前は私達の所有物なんだ!私達がいなければ存在すらできなかったんだぞ、お前を殺すことだってできたんだ・・・!それをしなかったのは、お前を生かしてやったのは私達の愛なんだ・・・!それなのに、それなのに・・・!私達の赦し無く、私達の許から離れるとはどういうことだ・・・!!リッカァアァア・・・!!】】

 

 

「・・・お母さん・・・お父さん・・・」

 

 

【【私達の許へ帰りなさい・・・!お前はそれだけに産み出したんだ・・・!さぁ、習い事を始めよう。私達になるまで続けよう。食事も、睡眠も、上手くできたらくれてやる。そうだ、そうだよ。お前は私達の最高傑作だ。お前より良い子供はもう『製造れない』。私達にはお前だけしかいないんだよ、リッカ・・・!】】

 

 

「――・・・」

 

 

【【私達は、お前を愛しているんだ、リッカ・・!】】

 

 

・・・傲慢の極致

 

 

生命を生命と思わぬその身勝手な弾劾

 

 

それを、リッカに突き付ける醜悪な獣

 

 

「これが、リッカ様に巣食っていた・・・獣・・・!?」

 

「魔術王が想定していたものとはあまりにかけ離れている醜悪な有り様だがな。マスターの獣からへの脱却を得て、依代を失いカタチを保てなくなっているものを無理矢理引きずり出した。――傲慢の罪の名の下に『裁く』為にな・・・そして、ヤツが抱えるのは傲慢だけではない。見ろ」

 

 

アヴェンジャーが顎で指す

 

 

――そこに在りしは、獣の身体に巣食う数多の顔

 

 

――中学生ほどの少年少女。若い教師、年老いた教師などの無数の顔が浮かび上がっている

 

 

【ワシの学校に傷がつく!虐めなど有り得ん!】

――傲慢

 

【勉強なんかよりあいついびってる方が楽しいってマジで!】

――怠惰

 

【死ぬ前にアイツとはヤることやっておきてーなー】

――色欲

 

【あんなヤツ、あんなヤツ・・・!】

――嫉妬

 

【まじアイツビッチ!!ふざけんなマジで!】

――憤怒

 

【おらくれてやるよ。俺達の残飯だけどな!!】

――暴食

 

【いつか校長になり、この学校の総てを――】

――強欲

 

 

それらが吐き出すは7つの大罪。学校という社会にて産み出された必要悪――

 

リッカが叩き込まれし、この世の地獄・・・!

 

 

「あれらはマスターが経験したもの。――そして、魔術王がオレに見せたマスターの半生の地獄だ」

 

「――・・・むごい・・・こんな・・・」

 

メルセデスが口を抑える

 

「リッカ様は・・・こんなものを抱えて・・・?」

 

「――――・・・」

 

「――更に、これらを育んで産まれんとした獣がいる。その言葉を聞くがいい」

 

 

呼応するかのように、腐った竜が口を開く

 

 

「――!」

 

――一同が絶句する

 

【――ありがとう!気付かなくてごめんね!】

 

その言葉は・・・その声は・・・

 

 

【私は気付かなかった!分からなかった!何が尊くて、何が幸せなのか!何が愛なのか、分からなかった!――でも、皆が教えてくれた!】

 

快活な声。明るい、底抜けに天真爛漫とした声音で

 

【愛って――誰かを貶め、汚し、陥れる事!怒って、妬んで、怠けて、欲情して、ひたすら求めて、食べて、傲り高ぶる事なんだね!それが、【愛】なんだ!あはははは!!あはははははははははははは!!ありがとう皆!気付かなくて、ごめんね――!】

 

狂ったように笑い続ける、リッカの声を発する何者か

 

 

「あれが【人類悪】。必要悪の中で必要悪そのものを【愛】と認識し、学舎を出た際にそれを理解し出でる人類悪だ。――必要悪そのものを存分に振るうだろう。世界総てを愛するだろう」

 

 

【ありがとう!中学の皆!私――産まれてよかったよ――!!】

 

「何故ならヤツは、生誕を感謝し、世界を愛するのだから。【未知】の理を持つ獣として、世界をよりよくせんと愛の総てで満たすだろう」

 

「――それが・・・人類悪になった、リッカ様・・・」

 

 

そこに顕れしは傲慢、必要悪、人類悪が醜悪に折り重なりし有り得ざる獣

 

名を奪われ、そう在れと願われ。悪を愛として産まれ落ちた筈の獣

 

 

 

以上の生誕を以て彼女の深淵は定義を果たした。――人類最後のマスターとは鏡合わせの名

 

 

基は人間が産み出した、人類総てに感謝と恩返しを果たせし大災害

 

 

名を、ビーストif・アジ・ダハーカ

 

有り得た人類悪の一つ。『未知』の理を持つ獣である

 

――人を知らぬにも関わらず人を愛するという歪み。それこそが、アジ・ダハーカの獣性である

 

 

 

「・・・これが、私の中の獣かぁ・・・」

 

ぼんやりと、リッカが呟く

 

 

「リッカ・・・!」

 

「あははっ・・・ちょっとこれは・・・――しんどいや・・・」

 

 

力なく笑うリッカ

 

「いけない・・・!生きる気力が萎えてしまっている・・・!」

 

「リッカ・・・!」

 

「行くぞ、エデなりしアヴェンジャー」

 

振り返らず、アヴェンジャーは告げる

 

「出るものが出たのだ!ここで完全に滅するぞ!!今こそ復讐者たる我等の炎が、獣を、世界に蔓延る邪悪を焼き尽くす時だ!!」

 

「でも――!」

 

「信じろ!!ヤツは我等の共犯者!!地獄において、唯の一度も決意を曇らせなかった女だ!!」

 

 

「――解りました!リッカ・・・!貴女を信じて、今はアイツを食い止めます!!」

 

 

【【⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!】】

 

呪詛を吐き出す獣に、二人のアヴェンジャーが躍りかかる・・・!

 

 

 

「リッカ様!リッカ様!しっかり!気を確かに!!」

 

メルセデスの必死な訴えに、力なく答える

 

 

「大丈夫、ちょっと・・・堪えたかなって・・・だけだから・・・」

 

言葉とは裏腹に、生きる気力が萎えてしまっている。心が砕けかかっているのだ

 

獣がいたことではない

 

迫害されたことではない

 

 

ただ――世界を滅ぼす獣が、自らの内にいたことに

 

「・・・ごめん、皆・・・ラスボス、私だった・・・」

 

「あぁ、あぁ・・・!リッカ様・・・!」

 

メルセデスは混乱する。自らを助けてくれた、勇者の挫折に

 

「どうすれば力になれるの・・・!?どうすれば、どうすれば・・・!?どうすれば――!!」

 

 

――瞬間

 

「どうすれば――『救える』の――・・・!?」

 

 

その言葉は、確かにメルセデスの心を穿つ――

 

 

 

――われはここに集いたる人々の前に厳かに神に誓わん

 

我が生涯を清く過ごし、我が任務を忠実に尽くさんことを。

 

 

われは総て毒あるもの、害あるものを絶ち

 

 

悪しき薬を用いることなく、また知りつつこれを勧めざるべし

 

われは我が力の限り我が任務の標準を高くせんことを務むべし。

 

我が任務にあたりて、取り扱える人々の私事のすべて

 

我が知り得たる一家の内事の総て、我は人に洩らさざるべし

 

我は心より医師を助け、我が手に託されたる人々の幸のために身を捧げん

 

 

 

――それらは、とある天使を称える言葉

 

 

その偉業を称え、その意志を誓いとして残したもの

 

 

そう、彼女こそがその誓いの体現者

 

 

その名は――

 

 

 

「――精神的衰弱を感知。施術の際に危険と判断」

 

ぐいっ!と凄まじい力で肩を掴まれる

 

 

「はいっ――?」

 

 

「精神的激励を施します」

 

 

そのまま、右手を

 

 

「――緊急治療!」

 

「あいっだぁあぁあぁあぁあぁあぁあ!?」

 

力の限りリッカの頬に叩き付ける――!

 

 

「チィ!焼いても燃やしてもキリがない!無限リポップはメタルスライムとかにしてくれないかしら!」

 

「傲慢の業をマスターが昇華していない。能力のほぼ総ては封じられたが、討伐の資格だけはまだ所持していない!」

 

「やっぱりそこは試練を乗り越えなきゃダメか・・・!リッ、リッカ!?」

 

 

仰天するジャンヌ

 

そこにはフルスイングでリッカをビンタする、メルセデスの姿があったのだから、無理もないだろう

 

 

「ちょ、何を・・・!」

 

 

「クハハハハハハ!!ようやく魂を取り戻したかメルセデス!!そうだ!お前の魂は聖女にも劣らぬ強靭さを持つとオレは確信していたぞ!!」

 

【【【⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!】】】

 

 

「さぁ、エデなりしアヴェンジャー!お前を此処に招いた意義が近付いてきたぞ――!!」

 

「意義――?」

 

 

 

「気が付きましたか、リッカ」

 

「はいっ!!」

 

目の前にいたメルセデスは、変貌していた

 

 

気弱な雰囲気など何処にもない。揺るぎない決意、覚悟を湛えた軍人がごとき鋼鉄の眼差し

 

 

「治療は患者の意志に左右されます。そしてこれから行われる治療に、先程の精神状態は不適格でした。気を強くもちなさい。いいですね」

 

「はい!!」

 

「よろしい。――アレを見て精神を病む必要はありません。アレは巨大な病巣、ですが貴女の精神、魂は未だ害されてはいません。ミスター・ダンテス、ミス・ジャンヌの施術により無事に摘出されました。――後は、貴女は予防に努めるのみです」

 

「は、はい・・・!」

 

「私はアレを殺菌し、消毒し、治療します。貴女が、これ以上害される事のないように。我は総て毒あるもの、害あるものを断ちましょう。貴女を救います。――貴女を殺してでも。よろしいですね」

 

「はい!!」

 

「――いいお返事です。リッカ」

 

 

にっこりと笑う

 

 

その笑みの柔らかさは、間違いなく・・・

 

「メルセデス・・・」

 

「認識機能に異状が?いけません、緊急治療を」

 

「大丈夫!!大丈夫ですから!!」

 

「・・・予断は赦しません。アレを治療次第、すぐに診察に移ります。逃げ出さぬように」

 

キュ、と手袋を嵌め直し、ホルスターから銃を抜く

 

 

【リッ――ギャアァア!!】

 

【ギィイィイィイ!?】

 

 

「貴女達は、疾患を抱えています。人格、精神、倫理、観念、あらゆる面において」

 

スタスタと歩みながら銃撃を繰り返す

 

 

「殺します。一度貴女たちは殺菌し、消毒し、消滅しなければならない。さすれば救われましょう。貴女たちが残した命は、間違いなく健康になります」

 

「ちょ、何あれ――誰?」

 

 

「誰でも構わん!!クハハハハハハハハ!!さぁ役者は揃ったぞ、マスター!!獣は切り離した!お前の剣はここに集った!!」

 

 

バサリ、とマントを翻し、虎はいよいよ吼え猛る!

 

 

「これより行われるは悪性、理不尽への『裁き』!!傲慢なりし罪、総ての悪性!!それら総てに反逆の刃を突き立てるのだ!!さぁ、最後の罪を喰らえ!!マスター!!」

 

 

無数の黒炎が、ビーストifを焼き尽くす!

 

「リッカ!何も変わらないわ!貴女ならできる!!だって、今までずっと、一緒に頑張ってきたじゃない!!だから私は、貴女を信じています!!」

 

憤怒の業火が、ビーストifを弾劾する!

 

 

「治療します!完膚なきまでに!総てを殺して、総てを救います!!」

 

 

銃撃、打撃、人体解剖を駆使し人面を破壊していく!

 

 

地獄に集いし、己を貫き通す炎の魂達――!!

 

 

「皆――!!」

 

「言葉は要らぬ!!待て、しかして希望せよ!!お前の最後の答えを俺達は待つ!そして――!!」

 

 

「「復讐するは、我にあり――!!」」

 

 

――復讐者達による理不尽への復讐

 

悪性への弾劾を成す裁きが、幕を開けた――!!




――さぁて、頼むぜぇ後輩方。精々美味しいとこを掠め取らせてくれよぉ? 


それまで私ぁ、深淵のすみっこで隠れるだけだ。ヒヒヒッ、文句を言いなさんな

何時だって・・・箱の底にぁ、希望が隠れてるもんだろ?

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