メイ「だがあくまでそれは減衰だ。聖杯を飲み込んだあのバカから引き抜く作業がいる」
ダ・ヴィンチちゃん「敗北を認めたらウエッと吐き出す…とか、無いかなぁ?」
メイ「いや、多分癒着してるよ霊基と。どうしても何か外敵な…」
はくのん『追加戦士枠登場』
ロマニ「月の新王!?」
はくのん『ゴルシからテレパシーは受け取っている。リッカにこれを』
『ゴルシのアンカー』
ロマニ「アンカー!?」
はくのん『そしてセリヌンティウス』
セリヌンティウス「私!?」
はくのん「リッカとあなたが…勝利の鍵」
セリヌンティウス「そ、そうなんですか…?いや、ここまで来たら一蓮托生です!」
はくのん「よし。武装名──」
アグネスタキオン「さぁ、いよいよフィナーレだ!人間とウマ娘の可能性、メロスに見せてやろうじゃないか!!」
ベリル(光り輝くベリル)
『ライスシャワーは自分が不幸を呼ぶだなんて言っていたけど、僕はそれは間違いだと信じている』
「お兄様…」
ライスシャワーが孤独に走ることを容認しない、カドックの独白。彼女の抱える不安と悩みを、カドック自身が理解し溶かしていく。
『君がもたらした不幸なんてない。君はいつだって誰よりも前向きに、真っ直ぐに駆け抜けてきた筈だ。僕は知っている?いや、知ったんだ』
本来ならば、ウマ娘が駆け抜ける景色にはトレーナーすら映らない。ライスシャワーは常に怯えていた。自身が不幸をもたらすウマ娘であることと、不幸にしてしまった人達への罪悪感を懐き続けていた。
(でも、今見えるのは真っ暗だけど明るい星空…聞こえてくるのはお兄様の声…)
『君を選ばせてもらった僕が保証する。その走りは決してヒールでも、誰かを害する刺客でもない。…僕は信じる。その不撓不屈と、儚くても絶対に枯れない君の闘志を。その生き様を。君は、君のその姿は僕の憧れなんだ。ライスシャワー』
彼女は不幸にも、人の悪意にも、自分の自信のなさにも負けなかった。その強さは、遥か高みの頂に挑み続けるカドックにとって紛れもない希望だったのだ。
『頑張れだなんて言わない。君が頑張らなかった日なんてなかった筈だ。だからこう言わせてくれ、ライスシャワー』
(お兄様、ライスは…ライスは…!)
『──勝て!君はヒーローだ!君が勝つことで、僕は幸せになれるんだから!!』
(───ライスは、勝つよ!)
カドックの激励、そしてライスシャワーの奮闘と決意。その要素が重なった時。
──その心身に、鬼が宿った。
「ぬぅぅっ───!?」
メロスは全身が総毛立つ感触を覚える。走れど走れど、その悪寒は高まり続け、漆黒の重圧となって背後から迫りくる。
(これは、なんだ──!?)
「はぁああぁぁあーーーーっ!!!」
蒼き焔を眼光より全力で燃え滾らせ疾走するライスシャワー。その疾走は、見え始めていたメロスの背中を捉え、みるみるうちに距離を詰め、肉薄していく。
「う、うぉおぉおぉ!!」
メロスは初めてであった。暴漢ではなく、それでいて刻限ですらない。ただただその存在が、追い縋る存在が真後ろにまで迫りくる恐怖。
(やるんだ、絶対に…!皆の、お兄様の期待に応える為にも!ライスはヒールじゃなくて、ヒーローだから!)
それは信頼の発露。決意の発現。長き距離、皆が詰めた勝利の道を一瞬で踏み抜いて駆けていくブルーローズ・チェイサー。
(追い付かれる!?この私が!?馬鹿な、私は負けられぬ!負けられぬのだ!セリヌンティウスの為、約束を果たすため!)
しかしメロスも底力を見せつける。驚異的な末脚、粘りをみせライスシャワーを引き離さんと更に加速する。逸話すら宝具に昇華するその健脚は、まさに英傑に相応しいものだ。
(そして彼女たちは同じだ!あの走りを知っている、あの決意を私は知っている!そう、彼女たちもまた果さんとしている!約束を!それに近しい何かを!!)
メロスには理解できたのだ。彼女達の鬼気迫る在り方はまさに、沈む夕日よりセリヌンティウスを救わんとしていた自分と全く同じもの。負けられない何かがある。負けてはならない何かを見つめている。
(今の私と…──いや、違う。私は今彼女達と同じか?同じなのか?)
自分が今走っているのはなんのためだ?信頼を果たすためか?セリヌンティウスの友情に報いるためか?バーサーカーながら、彼の思考は巡っていく。
(いや、今の私は悪を正すために走っているのだ。カルデアという悪を、セリヌンティウスではく、カルデアという悪を正すため──)
…だが、その思考の空白は不敗の神話に齟齬をもたらすものだ。メロスは確かに走り抜けた。セリヌンティウスとの友情を果たすため。
だがしかし。正義のための行いはどうか?民に乱心を聞かされ、城に殴り込んだ際には自分はどうなった?呆気なく捕らえられたのではなかったか?
(…おぉ、悪のために走る私は同じだ!愚かにも、正義を為さんとしたメロスにはない!彼女らの絆を覆す為の大義と、気迫と、セリヌンティウスへの想いが!!)
それを知覚したメロスの走りが、フォームが、気迫が…一瞬、緩む。その瞬間──
『レース中にレース以外のこと考えてるんじゃねえぇえぇえッッ!!!』
「うぉおぉおぉおぉお!?」
ワープ。そう形容するしかない突然で、鬼を宿したライスシャワーの内側から現れるレッドストライプ、ゴールドシップ
『アンタは一番なんかじゃないわ。人類とウマ娘の一番はアタシたちよ!!』
最終局面、先頭に躍り出るかのように駆け抜けるミス・パーフェクト、ダイワスカーレット。
『ダイワスカーレットさん、ゴールドシップさん…!』
『ぼさっとすんな!一気に駆け抜けんぞッ!』
『マスター達が、きっとなんとかしてくれる!アタシ達は信じるの!アタシ達の、それぞれの一番を!!』
その信頼に応えるように、キリシュタリアとリッカの声が響き渡る。彼女たちを信じ抜く、マスターの激励。
『君ならできるさゴールドシップ!』
『何せ、ゼウスを足蹴にしたウマ娘なのだからね』
『おうよ!やらねぇ理由がねぇっ!!アタシこそウラヌスウマ娘ゴールドシップだぁっ!!』
『私の中でウマ娘といったらダイワスカーレット!その境地と領域に行けるよ、スカーレットなら!』
『そう!それがアタシの目指す一番…!アナタの心を捉えて離さないウマ娘になる!それが、グランドウマ娘としてのアタシの一番!!』
ウマ令呪もそれに呼応し、限界まで輝く。ゴールドシップ、ダイワスカーレット、そして──
『ライスシャワー!!』
『!!』
『君だってできる!君だって──グランドウマ娘なんだ!!』
『うん!!』
『『『はぁああぁぁああぁあぁぁぁぁぁーーーーーーッ!!!!!』』』
三人のウマ娘…否、人理の未来を背負ったグランドウマ娘達がメロスとの距離を縮めていく。
「うぉおぉおぉおぉおぉおぉお!!!」
メロスも最後の力を振り絞り逃げる。逃げ、駆け抜ける。
刹那…彼は、思い至ってしまったのだ。
(私は───)
そう、その鮮烈さを魅せるウマ娘達を見て。
疾走る為に生まれてきた、純粋無垢な疾走を魅せるウマ娘を見て感じてしまったのだ。
(私は…何のために走っていたのだ───)
そして、その時は訪れる。
『こちらロマニ・アーキマン!見てくれ、皆!やってくれた、グランドウマ娘達がやってくれたぞ!』
ウマ娘達の視界には、ただただ広がる星空があった。それ以外、何も阻むものは存在しない。それは即ち。
『聖杯が活動を止めた!彼女達がメロスを追い抜いたんだ!僕達の勝ちだ!グランドウマ娘たちの勝利だー!ばんざーい!ばんざーい!!』
『『『『『『『うぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉお!!!!』』』』』』』
その疾走はカルデア全体に特別中継されていた。ライスシャワーの猛追、ゴールドシップの追い込み、そしてダイワスカーレットの、リッカによる令呪転送による先行勝負どころへの転移。
「しゃぁああぁあぁ!!やったぜ見たかメロスオッラァアァア!!」
「やった!やったわリッカ先輩!私が、私達が一番!そして、あなたのウマ娘としての一番になれたかな…!」
「やった……!ライス、やったよ…!カドックお兄様…!」
腕を突き上げ、喜びを噛み締め通常空間へと帰還していくグランドウマ娘たち。メロスは呆然と、空を見上げる。
「負けた…私は負けたのか。走ることにおいて…」
その事実を、ただただ噛みしめるメロス。
…そして、辿り着くべき場所へと運命は導かれる。
『ハンマァァァァァ!コネクトォッ!!』
「!?セ…」
『レガリオン!!ハンマァアァァァァァッ!!!!』
それは、セリヌンティウスの宝具たるハンマーとゴールドシップのアンカー、はくのん特別提供のレガリオンをリッカの特注令呪で組み合わせし、セリヌンティウス新生超巨大ハンマーアンカーツール宝具、レガリオンハンマー。
度重なる狼藉に、完全に怒髪天を衝きし憤懣のセリヌンティウスによる、聖杯の奪還である──!
セリヌンティウス「アンカーモード!!」
ハンマーを反転、アンカーに変化させ猛追するセリヌンティウスにメロスは狼狽するが…
メロス「ま、待てセリヌンティウス!話せば分か」
「ハンマー!!ヘル!!」
「ぐほぉおぉっ!!!」
セリヌンティウスのアンカーが、深々とメロスの霊核…聖杯へと突き刺さる。
「アンカー!エデンッ!!!」
「ぐっほぁあぁあぁあぁ!!!?」
力づくで鎖部分を引き上げ、豪快に聖杯をぶち抜くセリヌンティウス。
リッカ「聖杯確保ー!!」
素早くそれをリッカがキャッチし、最終号令をかける。
リッカ「セリヌンティウスー!!やっちゃえぇぇ!!!」
リッカが教えた通りに、セリヌンティウスは吠え──
セリヌンティウス「メロスよ────!!」
メロス「ま、待ッ───」
セリヌンティウス「
「ぐっっはぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
溜まりに溜まり、寝かせに寝かせたセリヌンティウスの全力全開のハンマー殴打。
「すみま──せん、でした───」
その魂をもたたき起こす必殺の一撃に、メロスの魂の曇りは完全に拭きはらされたのだった──。
ハルウララ「わーい、たのしかったぁ♪」
そしてハルウララも無事、完走を果たしたのだった。
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