人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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ベリル「だが旦那よぉ。ラッコ兄貴と…だいじょうぶちゃんには説明して筋は通そうや」

だいじょうぶちゃん「!!」

ニャル【あぁ。あの二人には随分と世話になった。裏切り、絶望させるのは本意じゃない。…この私も、随分甘くなった】

ベリル「いいんでね?オレはクズのままがいいがよ、アンタはいい方に変わっていってると思うぜぇ?」

ニャル【…ほざけ、モルモットの分際で。何せ…】

だいじょうぶちゃん「ァ……ァ…」

【彼女たちは…友達、だからな】

「〜〜ワァーーーッ!!!」

「!?」

ニャル【!…気配が分からなかった…】

(ともすれば殺されていたぞ、私達は…)

「ワァーーーッ!!ワァーーーッ!!」

ベリル「お、おい!泣くなって、どうしたんだよ…!?」

ニャル【…聞かれていたな、恐らく…】

ベリル「…あ〜…」


よろこびがない

【すまない、落ち着いたかい?これから詳しく説明するよ、だいじょうぶちゃん】

 

「…………(ふるふる)だいじょうぶ…」

 

それは、解っているとの合図。付き合いがある二人にはそれは解った。だいじょうぶちゃんには家族に振る舞うハーブティーを、ベリルには適当なインスタントコーヒーを振る舞いながら、ニャルはだいじょうぶちゃんを宥める。

 

「だいじょうぶって…知ってたのかい?俺らがいつかやるかもって…」

 

「………(こくっ)」

 

【君は…よかったら教えてくれないか?君は一体何者で、何故そんなにも強くなったのか。君の倒さなきゃいけないやつとは誰なのか】

 

「……だいじょうぶ…」

 

だいじょうぶちゃんは、ぽつりぽつりと話し始める。自分が一体何者で、どのような経緯でやってきたのかを…

 

 

「てやーっ!!」

 

元来、彼女は変哲のないちいかわ族だった。運動神経と、正義感に溢れた普通の小さくてかわいいやつだった。

 

彼女はその持ち前のスキルを活かし、世界に、誰かに役立つ仕事をしようと考えていた。レスキューでもいい、福祉活動でもいい。誰かを助ける仕事をやりたかった。

 

「ゥ〜〜ン」

 

履歴書を書き、仕事を選ぶ段階にて彼女は悩んだ。一体どれが、一番世界に貢献できるんだろう?

 

そんな悩みを懐き、求人票を見つめていた。彼女は優秀で、どんな場所でも合格間違いなしだった。しかし、そんな彼女に…

 

「なってみる?」

 

「エッ?」

 

きのこを抱えたシロクマが、彼女をスカウトしたのだ。彼女は、なれると言われた。彼女がなりたいものに。

 

「正義の味方に、なってみる?」

 

「エッ…ワァーーッ…!」

 

正義の味方。弱きを助け強きを挫く、世界を護れる最高の職業。誰かを助ける最高の職業。

 

「ウン!ウン!」

 

当然彼女は頷いた。世界を護れる、正義の味方になりたいと。

 

「はい、契約ね。頑張ってね」

 

「ワーイ!」

 

彼女はそのシロクマと契約し、正義の味方に就職した。…そのシロクマの正義の味方が【どんなもの】か、よく調べることもなく。

 

 

「エッ?エッ?エッ?」

 

正義の味方になった彼女は、世界を転々とすることとなった。武装を与えられ、様々な世界へ。

 

「アッ、アッ…エッ…!?」

 

そこは、でかくて強いやつがたくさんのちいかわ族をいじめていた。殺していた。周りには、屍ばかりでどこにも生き残りはいないくらいに終わってしまった状況。

 

「ワァーーーッ!!ワァーーーッ!!!」

 

倒さなきゃいけない。倒さないと、本当に世界は終わってしまう。それだけは、理解できた。彼女は発狂しかけながら、目の前のでかいやつに挑むしかなかった。

 

「ヤーーーーーーッ!!!!」

 

彼女は正義の味方として、それをずっとずっと繰り返した。そう出来てしまう能力が、力が、契約があったのだ。

 

世界を護るため、護りたい人達が死に絶えた場所に呼ばれて。

 

何もかもが終わった世界で、世界だけを護るために最後の希望として戦い続けて。

 

「ワァーーーッ!!ア、ア…ワァーーーッ!!」

 

かつて夢見た正義の味方とは何もかもが違う実態。ただ、世界が明日に繋がるためのバランサー。そういったものに、彼女はなってしまったのだ。

 

 

「グェーーッ!!」

 

「……………!!」

 

だいじょうぶちゃんはそれでも正義の味方をやめなかった。どんな理由であれ契約したのは自分だし、世界が護る力をくれている事も解った。

 

その為に、彼女は怪異を狩ることを始めた。世界が呼ぶのは何もかもが手遅れになった後だが、時たまこうして怪異溢れる場所に呼ばれたりもした。それは、怪異に狩られすぎない為の処置だろう。

 

「ワァッ!ワァッ!!ワァッ!!!」

 

だいじょうぶちゃんは心を護るため殺意を纏った。負けないため、挫けないためにはそうすることが大事だった。

 

仲間を傷付けるやつと、最後に現れる世界を終わらせるやつ。自分が負けたら、何もかもおしまいだから、負けないために殺す相手を憎んで殺意に塗れ狩り続けた。

 

「フーーッ…フーーッ…フーーッ…!」

 

「ァ…ァ…ァ…!」

 

助けたつもりでも、それは化け物が化け物を殺しただけにしか助けた相手には見えなかった。

 

「ワァーーーッ!!」

 

「ァ……」

 

怖がり、逃げ出していく仲間たち。同胞に畏れられていく自分。正義の味方になった筈なのに、誰かを殺し哀しませてばっかり。

 

「ワァ………ァ……ァ…………」

 

彼女は泣いた。夢見た正義の味方が、とっても残酷で大変な仕事である事を考えられなかった自分が情けなかった。

 

「グス…グス…ゥ……」

 

それでも、彼女は決して挫けなかった。世界は、確かに存続していく。

 

同胞は、生き残れば増えていく。減っても形を成していく。

 

でかいやつを倒せるのは、自分だけ。倒さなくちゃ世界が終わる。

 

「……だいじょうぶ…」

 

自分に言い聞かせた。だいじょうぶ、だいじょうぶと。

 

「キャハハハハ、キャーハハハ……だいじょうぶ、だいじょうぶ…キャーハハハ…」

 

もう誰とも遊べなくなっても、美味しいものにありつけなくても。正義の味方という誇りだけは胸にある。

 

あの時憧れた自分だけは絶対に裏切らない。正義の味方の証の剣ではなく、刀や銃、盾に血が染み付くまで、様々な世界を巡り正義の味方を貫き続けた。

 

そして訪れたのがこのちいかわワールド。自分と同じくらい強いラッコと、世界が終わる猶予の間仲間となった。

 

「やるなッ!」

「だいじょうぶ!」

 

そして、束の間の平和を維持する中で彼女は見出す。

 

「……!」

 

黒ずくめの怪しいやつと、めがねすーつの変なやつ。間違いなく、こいつらが世界を滅ぼす最後の敵。本能と直感で理解した。

 

「………!!」

 

殺意と憎悪を燻ぶらせる…筈が。彼女から見て、二人はなんだか困っているように見えたので。何か、力になってあげたいと考えてしまったから。

 

彼女は…二人に、声をかけたのだ。

 

「だいじょうぶ?」

 

と。流浪を続け、彷徨い続け流れ着いた自分と同じだったからかもしれない。

 

そこからは──もう、語ることはない。

 

楽しいばかりの思い出と。

 

やるべき事への帰結。それが、彼女の全て。

 

先の発言から…『ちいかわ族の死骸を糧に湧き出す湧きドコロ』の枯渇から、その時が来てしまったのだと。

 

彼女は正義の味方として…やるべきことをやる。それは、ベリルとニャル。倒さなくちゃいけないやつの抹殺。

 

そっと離れるつもりだった。二人を先に殺してしまっては、ちいかわ族の数は減らない。いつものように、何もかも手遅れになってしまってからでなくては意味がない。

 

だが……ベリルたちは、彼女にとって…

 

【彼女たちは…友達、だからな】

 

もう、ただ殺す事なんてできない相手になってしまったのだ。

 

彼女はもう、正義の味方でいられない。

 

友達を殺してしまっては、もうただの人殺しだ。

 

たとえ世界が滅ぶのだとしても、彼女は二人を殺せない。

 

三人もできた友達を…一人も減らしたくないと願ってしまった。

 

彼女はあの日に、なりたいと願ってしまった自分を裏切ることだけは…

 

自分の胸に懐いた正義の味方だけは、裏切ることだけはできなかった。化け物と化した同胞と、世界を終わらせるやつを殺しても。

 

…一緒に過ごした、世界の放浪の果てにやっと見つけた友達だけは、殺せなかったのだ。

 

 

「だいじょうぶちゃん…お前さんはよぉ……」

 

「……………」

 

彼女はそれきり、俯いた。ニャル達のやることは、世界を護るためのこと。止めてはいけないと。

 

【……だいじょうぶちゃん】

 

ニャルは、一つだけ問うた。彼女について、知らない事があったからだ。

 

【名前を、聞いてもいいかな?】

 

だいじょうぶちゃんは、あくまで愛称。彼女の名前は、聞いていなかった。

 

「……ない、ある」

 

【!!!】

 

「ない、ある。ないある。なまえ…ないある!」

 

「ないある…」

 

【…………───!!!!!】

 

ないある、その名前を聞いた瞬間…ニャルの全身が、震え出す。

 

ないある。それが…

 

ちいかわワールド、たった一人の正義の味方の名前だった。




ニャル【………やってくれたな…まさか私すらも曇らせ対象だったとはな………】

ベリル「だ、旦那…?」

ニャル【平行世界のナイアの守護者ルートを見せつけてくるとは…恐れ入ったよ、本当に傑作だ。コラボさえしなければ、Fate世界とコラボさえしなければ。私達と会いさえしなければないあるは正義の味方でいられた筈なのに巫山戯た真似を…許さんぞアラヤ、許さんぞガイア、許さんぞナガノ、人の心を知識と知っているだけの抑止力めえぇぇっ………!!!】

ないある「だ、だ、だいじょうぶ?だいじょうぶ…?」

ニャル【大丈夫だよ、ないあるちゃん。もう泣かなくていい。一緒に世界を救おう、正義の味方として。『彼女』が最初に願ったはずの、過ごしたい世界にするために】

ベリル「うおっ!?」

【何が曇らせだ、何が守護者だ…知ったことか…!そんなもの…!】

「ワァッ!?」

ベリルを雑に掴み、ないあるを大切に抱きかかえ。

【む ち ゃ く ち ゃ に し て や る ! !】

ニャルは涙を流し、咆哮する。

…数日後、ちいかわワールドに、アンリマユが現れるのだった──。
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