人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
リッカ「通過儀礼?」
士郎「リッカ君。君は困っている人を見つけたらどうするかな?」
リッカ「はい!全力で助けるし力になれるよう努めます!」
士郎「それは、どうしてだい?」
リッカ「私が誰かの幸せな顔を見たいからで、私自身が助けたいと思ったからです!徹頭徹尾、自分のためです!」
イリヤ(人助けが…いきがい?)
ルビー『ナチュラルボーンヒーローですねぇ!魔法少女ではなくニチアサ方面ですが!』
士郎「…………うん、よろしい!恭也、準備を頼むよ」
恭也「あぁ。我等の剣、託すに相応しい清廉さを見せてもらった」
リッカ「そ、そうなんですか?大したこと言ったかなぁ…?」
士郎「ふふ、いいんだよ。誰かを幸せにしたいなら、まずは自分が幸せにならなくちゃいけないからね。誰かを幸せにして、自分も幸せになれるなんて素敵な子だなぁリッカちゃんは!流石なのはの一番弟子!」
なのは「お父さん!ティアナやスバルが聞いたら争いが起こるからだめ!」
黒神「それでこそだ、我が盟友!」
リッカ「夏草の皆が教えてくれたものでもあるけどねっ!」
ヘラクレス(武術に一番大切なものは心。正しき心が極みへの道を示す無二の標なのだからな)
ヘラ『むう。見返りを求めねば何を祝福にくれてやるか迷うのだがな…』
ヘラクレス(ヘラ、そういう観点違う)
ヘラ(違うのか…)
ヘラクレス「さて、では私が相手となろう」
イリヤ「いいんですか!?」
ヘラクレス「フッ…噛ませ犬も私はこなせるのだ」
「恭也。リッカちゃんは剣士として私達より遥か先にいる。御前試合の演舞の気持ちで挑みなさい」
「解っている。…リッカ君。我等の流派はきっと、君の戦いに役立ち新たなる強さへ到達するきっかけとなるはずだ」
静かに小木刀を構え、被検体を名乗り出たヘラクレスの前に立つ恭也。その気迫は鋭く磨き上げられた一本の刀が如し。ヘラクレスにもその緊張は伝わり、気が引き締められ闘気が静かに火花を散らす。
「──いざ!!」
閃光が如くに踏み出せしは恭也。先手を取る形でヘラクレスとの距離を詰め、身に付いた技をありのままに披露する。
「御神流、徹!」
その一撃は鋭い突き通し。驚嘆するべき技の冴えながら、ヘラクレスにとっては珍しいものではない。容易くガードにて防いだ、刹那。
「ぬうっ!」
なんと衝撃がヘラクレスの表面から内に突き抜け、そのままダメージとなる。たとえ防がれようと衝撃を内に通す。太刀には叶わぬ貫通技法を開幕に魅せる。
「御神流、貫!」
「むうっ…!」
そのまま二の太刀を振るい、ヘラクレスのガードを難無く貫き貫通させる。太刀は斬り裂く、断ち切るものであり、小太刀は引き裂くことは叶わねど、こうした貫通や徹しは独壇場と成りうる。
「御神流、斬!」
だからといって斬りが不得手などでは決してなく、そのまま振るえばヘラクレスの鍛え抜かれた肉体を斬り裂く程の鋭い斬撃を披露する。大英雄の顔色を変えるほどの一撃が、涼やかに空を斬る。
(速い、そして鋭い。ダガーと侮ったならば首が飛ぶな)
ヘラクレスは冷静に力量と間合いを分析し、体躯に似合わぬ軽快さで距離を取らんとした──だが。
「掛弾き!」
「むっ!?」
瞬時に間合いを詰められた事に驚愕する間もなく、脚に刃を突き立てる形で投げられながら木刀を叩き込まれる。そう、小太刀は太刀よりも体術との親和性が高いのだ。
「猿落とし!枝葉落とし!」
蹴り上げ、脚を立てたまま斬り裂く。肘を極め、挟み木刀で叩き斬る。実戦の様相では斬撃と打撃の深手を負うことは間違いない怒涛のコンビネーションに、ヘラクレスは宙を舞い翻弄されながらも一つ一つを受けていく。
「取り回しが良い小太刀ならではの近接戦の択の多さが目を引くな。敵は本来一太刀あらば殺せる。その機を手繰り寄せまた確実に仕留める。体術も含め実に良い手練手管だ」
黒神はその一部始終が完璧に見えていた。ヘラを宿せる程の気風の彼女は、才能という点ではリッカに並ぶものを持つ。
「御神流・虎乱!」
「ふんっ!」
ヘラクレスもやられてばかりでは示しがつかぬと、恭也の連撃をあっさりと捌き二刀を弾き飛ばしてみせる。優勢から一転し、徒手空拳となる恭也であるがそれすらも御神流は織り込み済みであった。
「萌木割り…!」
素早く組み付き、ヘラクレスの関節を極める。彼が力で振り払った為に破壊には至らぬが、武具なくせば八方塞がりとなる脆弱さなどまるでない、全身が小太刀と同等の凶器に昇華させたといっていい凶悪さを誇っているのは明白であった。
「これらは御神流の基本の技だよ。リッカちゃんの奥義を、更に強くしてくれるであろう技はここからさ」
「…(ごくり)」
「恭也!見せてあげよう。我々も奥義を見せねば無礼に当たるからね!」
「言われるまでもない」
瞬間、先程とは別次元に高まる恭也の集中力。その桁違いの威風と威圧に、いよいよヘラクレスも本腰を入れた警戒を披露する。
(リッカと同じというのであれば、高速移動…アキレウスとどちらが速いか…)
同門の人類最速を思い浮かべたヘラクレスであったが、高町恭也の示した速度は単純な速さとはベクトルとニュアンスが異なるものであったことを肌で理解することとなる。
「御神流…奥義之歩法。─── 神速!」
「──!!」
恭也が奥義を披露した瞬間、先にリッカが見せた状態の再演が行われる。正確には、現象全てが後からやってくる雷位と違いかろうじて衝撃や軌跡が読み取れる程度には発生しているのだが…
「?????」
『へ、ヘラクレスさんが棒立ち…棒立ちですと!?』
まるで状況を把握できていないイリヤ。そしてルビーの驚愕の通り、なんとヘラクレスは亀のように丸まり、文字通り神速と化した恭也の攻撃に防戦一方となっている。反撃の糸口が、まるで掴めていないのだ。
『何をしているかヘラクレス!その程度、アキレウスの小僧よりは遅かろう!反撃をせぬか!』
「いや違う!これは──思考速度の高速化か!」
『解るのか、愛生…!?』
驚愕するヘラに、なのはが補足を加える。御神流奥義が一つ、歩法の神髄、神速の意義を。
「人間は普段、五感で周囲の状況を判断するよね。でも、視覚が凄まじい集中力を発揮している場合には脳が他の感覚を遮断して、視覚にだけ全部の能力を注ぎ込む状態が起こるんだ。その時に通常では考えられない視覚の能力が発揮され、本来見えるはずのないスピードでも認識できるようになるみたい。いわゆる、野球のバッターが「ボールが止まって見える」っていうやつね」
「まさかそれを、人為的に起こしているというのか…!」
「それと、人間って死ぬかもって緊急事態を察知すると、全ての感覚が視覚に集中されて、見たものを通常の数十倍の速度で処理するようになるの。それはまるでスローモーションを見たような錯覚を抱くみたい。
その時は世界がモノクロになっててなんでモノクロになるのかっていったら、本来脳で行われるべき色の分析が死への危機という緊急事態に直面した時、他の感覚と同じように今必要のない情報だって脳が判断し、分析をカットするのが原因みたい」
それらは当然、臨死体験や走馬灯といった極限状態にしか発揮されない現象だ。だが…この流派はそれを奥義とし、再現を可能にしたのだろう。
「本来、そういった通常では発揮されない感覚を、極度の集中状態にすることで強制的に発揮させるものなんだね、あの奥義はきっと。当然、そんな感覚に身体が追いつくことはないはずなんだけど、人間がもともと持ってる力…いわゆる「火事場の馬鹿力」みたいなのを発揮させて、辛うじてそれを可能にしてる…っていうのが大まかな原理になるのかな」
なのはの推論ではあるが、事実として身体に負担が掛かることは間違いなく、余り多用の利く技ではないのは明白だ。
しかしこの神速があるが故、御神の剣士は最強と言われているのだ。
完成された御神の剣士相手では、銃火器を装備したものが100人程居ないと倒せない。その意味は、圧倒的な面の制圧でしか、かの剣士を打倒できないという事なのだろう。
「リッカちゃんの雷位は紛れもなく最高峰の奥義にして、私達も含めた剣士達の目指す頂の一つだよ。私と恭也が保証しよう」
「あ、ありがとうございます!」
「本来なら、その頂点には人生の全てを掛けて到達するものなんだ。余人や達人ですら、短い人生をかけてやっとこさ指がかかるかどうかの高い高い山のてっぺん。でも君は、なんと既にそこにいる訳なんだ!なら…君は『奥義の先に行ける』」
士郎の言うことは、リッカの奥義には先があるということだ。山を登り切る体力と研鑽を、全く消費せず頂上に至った。ならばリッカにのみ赦された『奥義の先』があると士郎は告げる。
「山から星を見上げるように、星に手を伸ばすように。この御神流が君達の旅路の助けになることを、心から祈っているよ」
ヘラクレスと恭也のぶつかり合いは、御神流の全てを開帳する御前試合にも匹敵する超絶なぶつかり合いとなった。
「どう、リッカちゃん?マスターできそうかな?」
「──やります。やってみせます」
リッカは一部始終を逃すまいと刮目し、食い入るように戦いを見やる。
「こんな凄い小太刀の使い方…学ばなきゃ勿体無さすぎますから!ありがとうございます、なのは教官!」
「うんうん…!」
企画倒れにならなくて良かった…目を輝かせるなのははそっと、胸を撫で下ろすのであった。
恭也「ありがとうございました、えいこーさん。奥義まで晒し、これだけやって倒れないなんて…とんでもない御方だ」
ヘラクレス「負けなかっただけだとも。まるで思考が追いつかなかった。真の速さ、鬼神に通じる一念。素晴らしい体験だったよ」
恭也「是非とも、また。…リッカ君。君の雷位はまさに雲曜の速さだ。だが、君自身の思考と集中力はそれに追いつけているとは言い難いと俺は感じた」
リッカ「はい、恭也さん…!」
恭也「この奥義、神速を是非身に付けてくれ。集中力を極限まで高め、思考速度すらも君の雷位と一体化させるんだ。それができたとき、君の奥義は俺達の奥義と合流し、成るだろう 」
士郎「その名も『閃雷』!なんてどうかな?それに君はなのはによれば武芸百般を極めているそうじゃないか。それらを十全に活かす意味でも、神速は役に立つ筈だよ」
黒神「そうか…!リッカよ、小太刀をスターティングウェポンとし、オーダーチェンジの要領で瞬時に武器を持ち替えるのだ!神速を移動や体捌き、小太刀の強化に使えたならば負担はずっと少なくなる!」
ヘラ『ふむ、妾はぜんぜん見えなかったが…速く動くのはと、雷位、とやらを刃に纏うのを同時にこなすのはどうだ?』
イリヤ「えっと、オリオンさんが言ってた、アルテミスさんの祝福を肉体強化に使うやつを併用すればずっとずっと楽になるんじゃないでしょうか!」
ルビー『お誂え向きに女神モードがリッカさんにはあるわけですし!あらゆる行動を神速でキャンセルルート開拓からのコンボですね!』
ヘラクレス「体感してみてわかったが、あの歩法を得られたのならば、人間相手でお前に勝てる輩は存在すまい。皆の意見を取り入れてみてはどうだ?」
リッカ「神速キャンセル…!解りました!!恭也さん、士郎さん!是非ともご指導よろしくお願いいたします!!」
恭也「こちらこそ。雷位の閃きを見て、奥義習得の光明としたいと考えていたからな」
士郎「うんうん。また家族ぐるみの付き合いが増えたね、なのは?」
なのは「うん!……よーし…!」
皆で特訓と習得に動かんとする中、なのははこっそりと連絡を行う。
「あ、もしもし?スバルにティアナ?是非とも交流させたい生徒がいるんだけど、いいかな?」
…後に双方に過酷なトレーニングメニューが課せられるのは、また別のお話。