人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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チルノ「フッ、またあたいがしみゅれーしょんとやらですげぇ記憶を叩き出してしまったな!やったな、ぶり!」

ブリュンヒルデ「はい、マスター。今日はお菓子でパーティー、ですね」

チルノ「そーいうことだ!食べて食べて、自分にご褒美をくれてやる時間がやってくるのだ!よし!サイキョータイムと名付けるぞ〜!」

ウーサー「…妖精も、出身地によって色々なんだな。まさかマスター適性を持つ妖精も存在するとは」

ケルヌンノスの巫女、ルイノス「えぇ、本当に。とにかく性質が気まぐれなので、善なる方に一貫するのは本当に希少です。我等が始まりの六人も、その素行は自由だったようで。ケルヌンノス様が派遣されたのは、お叱りの為だったと聞いています」

ウーサー「そうなのか?」

ルイノス「えぇ。ケルヌンノス様の遠い追憶、よければお話いたしましょう。星の聖剣を創り上げた、尊き六の魂達を…」


ロストベルトNo.■ 悪性妖精獄ヴォーティガーン 空想昇華 □□□□□□□□□□□・□□□□□
序章〜始まりの勇気〜


罪無き者のみ通るが良い。後に夢魔を永久に封印する罠となった程の絶対的理想郷、アヴァロン。そこは文字通りの理想郷、楽園として申し分ない場所であり、美しい花たち、白い雲、蒼き空の広がる世界を見下ろし、見上げる天文台としても大いに作用していた。

 

そして、そこで聖剣を手掛ける妖精達六人、即ち始祖に値する者達が居を構えていた事をケルヌンノスよりルイノスは伝え聞いていた。…哀しいことに、ルイノスが目覚めた頃には全てが終わっていたからだ。

 

「今日も風は柔らかに私達を導いてくれるわ。これはそう…おやつの時間ね」

 

風の妖精、ウィンダ。風を読み、時には意志を乗せ自在に操る者。彼女は皆の方針を取りまとめるリーダー的存在でもあった。しかしカタブツではなく、むしろサボり容認派のゆるふわである。

 

「私は小さくありますが、非力でも役立たずでもありません。見目で侮る輩、報いを受けるべしです!」

 

翅の妖精、プルム。気が強くありながらも聡明かつ才知に優れ、外の世界やアヴァロンの情勢を見極めし賢者。しかし、イタズラ好きな一面が愛嬌であった。

 

 

「ふっふっふ、今日も楽しいお仕事かつ力自慢の時間だな!ブラッシングを忘れないでくれよ!」

 

牙の妖精、ファング。力が強く、大柄で、その自慢のパワーを自分の、そして誰かのために振るうことを喜びとした者。好戦的ながらも昼寝好きな者。

 

 

「はぁ、仕事か…後腐れのないよう、完璧にやってやる」

 

土の妖精、ソイル。小柄ながらもどっしりとした体型で、その手先の器用さから数多の素晴らしき道具を生み出す職人気質。嫌いなことこそ真面目にやればさっさと終わるがモットーの彼。

 

「私達の運命は今日もきままで輝いています!平和が何より一番!わーい!」

 

鏡の妖精、ミラ。予言や占いに秀でた彼女の言葉で、一日の方針が決まる程の精密な託宣をもたらす未来を見据える者。見透すが故の辟易も無縁の、心強き妖精。

 

「うん。今日も皆が、幸せだといいね」

 

雨の妖精、レイン。気配りと気遣い、他人の心の機微を見つめる最後の妖精で、彼女あればこそ、彼ら六人は仲違いや悪質な変質を起こさなかったのだと語られる。融和と調和の雨が如き妖精。

 

彼等は星の聖剣を担う者たちであり、星の命運を担う切り札でもあった。故に星や神や彼等に万全な仕事を求めていた。

 

「すみません、納品はまだ…私達、おやつに夢中でつい…」

 

力も秀で、極めて優秀な彼等の瑕疵となる箇所、それは偶に顔を出すサボりグセ。全てを放り出す怠慢とまではいかないが、妖精という性質上、即物的な享楽についつい足を取られてしまう時が存在していた。

 

納品自体は違えなかったが、彼等が仕事を失敗するのは即ち星の終焉を意味する。それを重く見た星側の神秘、即ち神は彼らを見張り、叱る監督役を派遣する。

 

「ヌーン」

 

「あら…!こんな大きなやわらかい神が私達の監督役なのかしら?」

 

それが、ケルヌンノス。慈悲と恩寵の籠もった、心優しき獣神。神々は裁きではなく、慈悲を以て妖精たちに接する方針を定めた。

 

「ヌーン…」

 

「仕事は溜め込んだり、サボったりすると余計大変で面倒だと?…全く、一理しかないことを…」

 

ケルヌンノスはその見立て通り、神でありながら彼等の心と精神を重んじ説き伏せた。仕事をサボる楽しみより、完遂の喜びのほうが味わい深いと。

 

「今日はお空が青いので、お仕事は〜…」

 

「ヌーン!ヌーン!」

 

「ふふ、ごめんなさい。皆でお仕事を終わらせ、午後からたくさん遊びましょう!」

 

その柔らかな在り方に、妖精たちも好意を示すのに時間はかからなかった。やがてケルヌンノスと妖精たちは互いを友と認め、楽園に住まう者としてお互いを強く信頼するにまで至る。

 

「俺達はずっと一緒だ。そう、輝く明日を我々が作っていくのだからな!」

「ヌーン〜…」

 

ケルヌンノスの在り方により、楽園の妖精達は心を腐らせること無く在った。

 

そしてそれが、決定的な人類史の命運を分けることとなる。

 

 

「し、白き巨人…あれが、収穫の星の尖兵の姿…!」

 

ミラが見た破滅の未来、プルムが見据えた世界の終わり。星の全てを根こそぎ奪い尽くす白き簒奪者が、遂に地球へと訪れたその日。

 

ありとあらゆる者達が敗れていった。人は愚か神すらもなすすべなく滅びていった。ギリシャの神々は爆散。インドの神々は世界ごと粉砕され、ゾロアスターの善悪神は、一人の神格を命懸けで逃し滅びを迎える。唯一対抗できる筈だった最強の英雄神が去った今、命乞いにて生を繋いだメソポタミアの神々。

 

「こんなの、もう、ど、どうしようもないよ…」

 

レインの言葉は皆の総意だった。あらゆる抵抗は無意味であった。まもなく星は収穫され、あらゆる歴史は、わずかな痕跡を遺すのみとなる。

 

「諦めてはいけません!私達には、最後の仕事が残っているではありませんか…!」

 

「もう遅すぎるわ、ウィンダ…!もう、私達が護るべきものは全て消え去ってしまう。命を懸ける理由なんて…!」

 

それはあまりにも徹底的だった。それは、妖精達の気まぐれや弱気を導くに足るに相応しい光景だ。何も、のこっていないのだ。そう妖精達は絶望した。

 

「私達は、ここにいれば死にはしないだろうな…」

 

「う、うむ…せめて、かつてあった者達を語り継ぐ事で弔いとしようではないか、永久に…」

 

「…………」

 

妖精達の誰もが絶望していた、そんな時だった。

 

「ぬ、ヌーン…ヌーン…!」

 

ケルヌンノス。果敢にも楽園を護らんと飛び出したケルヌンノスが、息も絶え絶えに戻ってきたのだ。傍らに、小さき命を抱えて。

 

「ケルヌンノス!その方は、人間…?」

 

「そうか、ケルヌンノス…!せめて人間という種は護ろうと命懸けで…」

 

「だが、オスは持ってこれなかった様だ。これでは、繁殖して増えられんぞ…」

 

妖精達はケルヌンノスを労った。そして、友としてその真意と慈悲を理解した。

 

「ヌーン、ヌーン…ヌーン…!」

 

消え去って良い命など無い。非力なれど、命を護るのが神の使命。使命も尊厳も名誉も全て投げ捨て、彼は誰かと、何かを救ってみせた。

 

「…彼は、ただ護りたいが為にこんな無茶を。神という使命と、心の赴くままに…」

 

その行為が、妖精達の勇気と善性を最大まで奮い立たせた。まだ自分たちにはやれることがある。護れるものがある。

 

「やるぞ、皆!我等が友、ケルヌンノスに応えるのだ!」

 

「言われなくても!友達がこんなに護りたい世界なら、しょうがないよね!」

 

「あぁ。私達は大変な間違いをするところだった」

 

「友達と、世界を、両方護る!」

 

「彼が護りたいと思ったなら、それに私達も倣いましょう!ウィンダ!」

 

「えぇ。皆、行きましょう。私達の大仕事に!」

 

…果たして、神々の願いは届いたのだ。星を脅かす最悪の簒奪者、その尖兵を前にし、彼等始まりの六人は完璧な仕事ぶりを果たした。

 

星の内海により、至高の聖剣は鋳造された。そしてそれは、聖剣を担うべき一人の青年の手により振るわれ、白き巨人を討ち払った。

 

世界は救われた。歴史は紡がれ、また未来へと繋がっていく。そんな時、神に救われた一人の少女が目を覚ます。

 

「ここは…?」

 

彼女が見たものは、先の滅亡など嘘のような穏やかな楽園。並びに、麗しき理想郷。誰もいなくなってしまった、静かなる箱庭。

 

「ヌーーーーーーーーーン!ヌーーーーーーーーーン!!」

 

「あ…」

 

「ヌ〜ン……!ヌーン!ヌーーーーーーーン!!」

 

そして、その楽園に似つかわしくない、慟哭のような嘆き。心を引き裂くような、悲しみの絶叫。

 

「ケルヌンノス様…?」

 

世界を救うためだった。仕方のない犠牲であり、それは然るべき犠牲であった。彼等は、このために存在していたのだ。

 

「ぬ、ヌン…ヌン…!ヌン…!」

 

大きな獣神は、背中を丸め何かを抱きしめるように泣いていた。それは、妖精達が描いた、妖精達とケルヌンノスが共に眠る絵。幸せな、昼寝のひととき。

 

『いつかきっと 笑えるといいね』

 

「あぁ…っ」

 

メッセージを見た巫女は、全てを理解した。神は滝のように涙を流し泣き崩れた。もう、友達はどこにもいなくなってしまったのだと。

 

二度と会えない別離に、ケルヌンノスは泣き続けた。そしてその哀しみを癒そうと、彼女はケルヌンノスの巫女となった。

 

やがて、妖精達の聖剣を抱えた青年が現れる日まで…ケルヌンノスは、泣き続けたとされる。




ウーサー「…何度聞いても、敬服しか浮かばぬ高潔さだ」

ルイノス「はい。彼等がいてくれたから、私達の今があります」

ケルヌンノス「ヌン…」

ルイノス「そして、ケルヌンノス様も。いつかまた、皆が集まる奇跡を、私は願っています」

『妖精達の絵』

「絆は、ここに確かに在るのですから…」

チルノ「なにやってんだ?」

ウーサー「む」

ケルヌンノス「ヌーン♪」

チルノ「うぉお!けむくじゃらが迫る〜!!」

それは、妖精達の話。

…後に楽園を助ける、偉大なる妖精達のおはなし。
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