人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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ビリィ「こっちに、君に紹介したい人がいるんだ」

ホープ「彼女も『子分』にしてあげてほしいの!」

チルノ「子分志望だな!めんせつだ!ごしゅみは?」

ビリィ「彼女は目覚めたばかりで、ぼんやりしている。お昼寝が趣味かな?」

ホープ「今はここにいるんだけど…あ、いた!」

赤髪の少女「…………」

チルノ「あれ?ルイノスじゃないか」

ビリィ「彼女は、トネリコ様の手にした妖精国の宝物…」

ホープ「バーヴァン・シー!赤い乙女のバーヴァン・シー!」


救世主の希望と絶望

「御礼を言うのはこちらです。救っては裏切られ、救っては裏切られの繰り返しだったこの旅に、あなた達という存在は最高の果報を齎してくれた。私の旅は、妖精の救済は、決して間違いでは無かったのですから」

 

ビリィ、そしてホープを擁した救世主、トネリコと名乗る少女は二人を見据え、常日頃二人の感謝にそう返した。妖精達を救うために楽園から遣わされた、楽園の妖精。彼女は妖精國の救済を目指し、その旅を続けていた。

 

ビリィ、ホープ、そして黒騎士と呼ばれる者、ライネックと呼ばれる者、そしてトトロットと呼ばれる者。紀元前五千年前から、トネリコは二人を加えたメンバーで旅を行った。妖精達を救う為の旅。罪人たちの地獄を進む旅を。

 

「ケルヌンノス神は、決して罪人たちを苛むだけの神ではなかった。反省をしたならばその罪を赦し、罪から解き放つ。かの神が呪いの神ではないことを知れたのはとても大きな成果です」

 

彼女の旅には変化が訪れていた。それはひたすらに手を差し伸べ、それを癇癪で裏切られるだけの徒労の旅から形として現れた希望を活かし、そしてそれを全ての原動力として救世主は千年の間、あらゆる準備を執り行った。

 

「トネリコー。なんか方針変えたよな〜。なんていうか、今すぐ芽が出るようなタイプの策じゃないっていうか」

 

「そうですよ、トトロット。妖精にはほんの僅かでも、反省し、悔い改められる者がいると解った。ならばソレは『救われるべき命』として見ることが出来る。向き合い方が違ってくるのですから」

 

「……気の長い話だ。この地に掛けた仕掛け、100年や200年で成立する仕掛けではあるまい」

 

「何も問題はない。我らでずっとトネリコを支え続ければいいのだ。ビリィ、黒騎士、トトロットよ。いつまでも我等は同志だぞ!トネリコに見出された誇りを忘れるな!」

 

「うぅ…」

 

「あ、ホープ仲間はずれにしたぜコイツ!さては頭風の氏族なンだわ!」

 

「殺されたいのか貴様ァ!!言っていいことと悪い事があるだろうが!!」

 

「気にしなくて大丈夫です、ホープ。あなたやビリィには、いてくれるだけでかけがえのない意味があるのですから」

 

「トネリコ様…」

 

「重ね重ね、感謝と懺悔を。我々妖精は間違った繁栄に縋り、それを糺すあなたを迫害し続けた。それなのに、こんなにも尽くしてくださり…」

 

「ビリィも、顔を上げてください。私はあなた達という存在を見つけるために活動してきたんです。妖精が救われ、人と妖精が仲良くある理想郷を作る。それが…」

 

「?トネリコ様?」

 

「…いえ。その理想郷には、ここにいる皆で辿り着きたいのです。もう裏切りなんて怖くありません。絶対に信頼できる皆がいるのですから!」

 

万の裏切り、迫害からトネリコはビリィとホープを見出した。その希望を救わんとするため、トネリコは一層精力的に活動した。妖精国を何度も巡り、彼女にしか解らないような術式を繰り返し繰り返し刻んだ。

 

「………トネリコ…」

 

否、その術式の変化に、黒騎士だけは気付いていた。その術式は『今ある世界を救う』ものではなく、『遥かなる未来に希望を託す』もの。それは今ある命ではなく、遥か彼方の未来の命に向けられたもの。

 

「よーし、頑張るぞー!妖精は、九割クソでも、1割善!」

 

「「「!?」」」

 

果たして、それに彼女は気づいていたのであろうか。彼女は希望を見つけ出した。一目見たとき、数千年の迫害が報われたと言わんばかりの涙を流した程に。

 

彼女は希望を、二人の妖精を愛した。だがそれはつまり…

 

他の九割、その全てに『愛想を尽かした』事への裏返しでもあったのだ。

 

 

「トネリコ様!本当におめでとうございます!」

 

二人との邂逅から千年経った頃合いに、彼女はウーサーと呼ばれる北の国の王と結ばれることが決まった。妖精国に希望と秩序を齎す王政の発足。紛れもない妖精たちの女王の誕生だ。

 

「家具も調度品もボクが仕立てたんだぜ〜?当然ドレスもさ!黒騎士とライネックの奴らはどうにもむくれちゃって協力してくれなかったんだよな〜」

 

「無理もないさ。黒騎士は娘のように、ライネックは神のようにトネリコ様を慕っていたのだから。嫁入りを受け止められない親心なんだろうね」

 

「ふふ、全く…こんなにも幸せな日が来るとは思いませんでした。ここまでがんばって来られたのも皆さんがいてくれたから。ビリィやホープが、私に希望を示してくれたから。トトロット、黒騎士、そしてライネックが私に力を貸してくれたからです」

 

そう言って、彼女はほんの少しだけ憂いを見せた。そこにいない黒騎士だけが気付けるような、ほんの少しの憂いと、哀しみ。

 

「…ビリィ、ホープ。あなた達はこの妖精國に残った最後の希望。貴方たちが失われれば、本当に妖精は滅ぶしかなくなる。私はそう確信しています」

 

思えばそれは、悲壮な覚悟にして決意だったのだ。妖精國を誰よりも見てきたトネリコは、密かに答えを出したのだ。

 

「どうか、そのままのあなた達でいてください。遥かな未来において、貴方たちが希望となりますように」

 

「…トネリコ様…?」

 

「貴方たち二人は、私達の希望です。それを、忘れないで」

 

「トネリコ様、これを…!」

 

ビリィはその決意をまるで、別れのような言葉に受け取った。それを振り払うように、ホープは『それ』をもたらした。

 

「私、花を生み出せるようになりました!それで作った、冠です!どうかあなたが、幸せでありますように!」

 

「ホープ…。ありがとうございます。えぇ、そうです。全てはこれから。これから始まるのですから」

 

そうして迎えた、ウーサーとトネリコの婚約の日。

 

───ウーサーとトネリコは、妖精達が仕込んだ毒酒により婚約式の最中にて命を落とすこととなる。

 

 

「え、あれ!?」

 

「ここは…?」

 

ホープとビリィは、『婚姻式の仕掛けを確認して欲しい』というトネリコの指示にて、少し離れた施設に待機させられていた。花嫁姿をモニターで見てほしいとされ、待ち望んでいた二人は突如、転移魔法をかけられる事となる。

 

「ここは、まさか…アヴァロン!?」

 

アヴァロン、理想郷。かつて妖精達がいたとされる地。罪なきもののみが到れる、至高の楽園。二人は、至っていたのだ。それはトネリコの、最期の策であった。

 

『このメッセージが再生されたとき、それは私とウーサーとの目論見が達成され、そして私達が命を奪われた時でしょう。私達の命を使い、皆さんをアヴァロンへ飛ばす術式を組み上げていました』

 

再生されたトネリコのメッセージは、自身の死を以て対象をアヴァロンへと送ること。それは、二人の耳を疑うメッセージでもあった。

 

『私は妖精達を救うために、アヴァロンから派遣された楽園の妖精。その役割を果たす最後の策としてウーサーと話し合い、神に許されし二人を未来へ託すことにしました。あなた達という希望を、未来へ繋ぐために』

 

「トネリコ様!?命を奪われただなんて、どういう事ですか!?トネリコ様!?」

 

『ホープ、ごめんなさい。混乱してしまいますよね。…私は二人を見つけ救われ、安堵したと同時に、その他の妖精達にこう思ってしまいました。『もう、いいや』と』

 

神に許されし妖精。それらは確かにトネリコの心を救った。しかし自身を真っ直ぐ慕い、感謝をくれた二人への愛着が、妖精全体への使命を上回ってしまったのだとトネリコは告げる。

二人の為に妖精を救う。仲間の為に世界を救う。そのようにトネリコは思ってしまった。それは妖精國にもたらした仕掛け、妖精達を救うシステムが『いつか遙か未来に訪れる者達』に向けられたものであり、命と引き換えにアヴァロンへ対象を送る魔術を使用していた事からも明白であった。

 

『あなた達という存在さえ、疎み排除しようとする妖精達。私はそれを良しとはどうしてもしたくない。あの場所にいてしまえば、あなた達はいつか殺されてしまう。あなたたちは奇跡だから。二度も奇跡は起きはしないから』

 

それは希望の反対の絶望の発露でもあった。千年かけて、ホープやビリィの後に続くものが一人もいなかった事でそれは確信に変わった。なんという皮肉であろうか。ホープやビリィの存在は、トネリコにとって希望の福音であると同時に…

 

その他大勢の罪人たちに滅びをもたらす、終末のラッパとなったのだ。トネリコは、仲間たち以外の全てに絶望していたのだ。

 

 

『トトロット、ライネック、黒騎士にも当然仕掛けは施してあります。しかし、罪が許された訳では無い妖精として、アヴァロンに導かれる事ができるかどうか…。トトロットは少し成り立ちが違うので、希望はあります』

 

万が一にも二人を失ってはならない。神の赦しを得ることが出来た二人を失えば、本当の意味で妖精国は滅びる。それを避けるため、毒殺のリスクすら飲んでウーサーとトネリコは婚姻を挙げた。それは彼女が、乙女ではなく女王として考えを改めた証拠。

 

『間もなく妖精国は滅びるでしょう。本来ならそこで全てが終わりでした。ですが今は違う。滅びの先に繋がる、あなた達がいる』

 

トネリコは告げた。最後の希望は失えない。たとえその他の全てが無くなろうとも。

 

『アヴァロンで滅びを乗り越えてください。そしていつか、あなた達に再び出逢う何者かが善なるものであった時、真の意味で世界を救う旅が始まるのです。そのために出来ることは、全て行ったつもりです。…仲間たちには、謝っておいてください』

 

「嫌、嫌です!トネリコ様…!私達に、トネリコ様やウーサー様が命をかける価値なんて…!」

 

『泣いてはいけません。ホープ。あなたの名前は希望。喪ってはいけない最後の希望。ビリィ、どうか護ってあげてください』

 

「トネリコ様…あなたはなんという…」

 

『ビリィ。ホープをよろしくお願いいたします。あなた達はアヴァロンの中でも、怠惰に堕ちないと信じています。…ついでにお願いをよろしいですか?』

 

「!?」

 

『アヴァロンに、実は先んじて保護していた妖精がいます。あまりに弱り果てていて、千年目を覚ましませんでした。…どうかその娘のお世話も、お願いさせてください』

 

…婚姻の日を境に、救世主トネリコとその一派は姿を消した。彼女らの輝きを疎んじた輩の目論見通りに。

 

『彼女の目覚めを契機に、きっと最後の旅は始まります。…皆といられた千年の旅は、とても楽しかった。だから私も、ウーサーも、命を懸けるに迷いはありません』

 

ホープは泣き続けた。ビリィはホープを励ましながら、アヴァロンの木へと向かう。

 

『さようなら。罪人たちの国における奇跡。そして救われた地でどうか、また皆と再会し、本当の意味で妖精國を救ってください。私はその、礎となりましょう』

 

そこには──死んだように眠る、赤髪の少女が横たわっていた。

 

『彼女の名前はバーヴァン・シー。私が極秘裏に保護した…善良なる妖精の、三人目です』

 

…やがて、最後の大厄災にて妖精國は完璧な滅びを迎える。

 

トトロットはアヴァロンへと辿り着き、トネリコの葬儀を行う。■■■■■■の呪いに染まった彼女は、三人を認識できなかった。

 

ライネック、黒騎士は戦死。トネリコの死地を護り続け、大厄災にて呪いに飲まれる。

 

トトロットはアヴァロンから出、呪いと更に一体化。二度と妖精の次代が生まれないよう、土地そのものを呪い続けた。

 

ホープ、ビリィ、そしてバーヴァンシー。三人はトネリコの計らいにより、数千年をアヴァロンで過ごす。

 

そしてそれが破られるのは…

 

「………ん…」

 

2017年。カルデアが来た年の元旦に当たる日に、バーヴァンシーが目覚めた事に由来する。




チルノ「トネリコ…立派な親分だな!!」

ホープ「うん!本当に、本当に…私達のために、命まで…」


ビリィ「だから僕達は、償い新しい妖精の未来へ行かなくてはならない。トネリコ様の願いをかなえるために」

バーヴァン・シー「…あなたは…お母様の言っていた…お客様…?」

チルノ「チルノだ!…わかったぞ、よくわかった!トネリコの考えてたことも!お前らの想いも!」

チルノは、理解したのだ。

チルノ「お前らのために!!この世界は救わなくちゃいけないな!!」

その希望が、本物であることに。
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