人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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クー・フーリン伝説


「コンホヴォル王、私の犬は兵士十人より強く犬(ケルトの犬は数メートルをゆうに越す)100匹分の力を誇る素晴らしい犬だ!」

「それは素晴らしい!守護に憂いはないな!さぁ、宴を始めよう!」

「ったく、コンホヴォルの野郎先に行きやがって。俺の分の食いもん残ってんのかよ・・・あ?」


『ガルルルルルァア!!!』

「なんだワン公、やんのか」

――

『ギャィイィイン!!』

「い、今の断末魔は何事か!?」


「庭からだぞ!!」



「せ、セタンタ・・・!?」


「おう、コンホヴォル王。なんで俺が来るってのに番犬離してんだよ」  


『犬の亡骸』

「躾がなってねぇから殺しちまったぞ。首輪くらいつけとけや」

兵士が束になっても敵わぬ鍛冶屋クラン自慢の犬を、クー・フーリン一人で(うっかり)叩き殺す(クー・フーリンが来訪することを失念していたコンホヴォル王が、クランに伝えていなかたったため番犬を離してしまっていた)

この時、クー・フーリンは小学一年生

「コーヒーを淹れたぞ、アンデルセン」


「よし御苦労、そこに置け、ちょうど休憩だ」

「執筆は順調か?」

「忌々しいが順調だ!ヤツの主役のテーマなど敬遠していたが書いてみれば痛快だ!どんな荒唐無稽な描写もヤツというだけで片がつく!小難しい理屈をこねるまでもない!後付け描写し放題だからな!締め切りを催促する編集もいない!痛快とはこの事だ!」

「・・・なによりだ、無理はするなよ」

「解っている。しかし・・・」

(これほどあの人でなしの王を上機嫌に受かれさせる要因はなんだ?カルデアか?マスターか?・・・妙に引っ掛かる。あのはしゃぎよう・・・ヤツにとって唯一無二のなにかを手にいれたような有り様だ。・・・ヤツが今まで持っていなかったもの?それは一体なんだ?それが、ヤツの上機嫌の原因なのか?)


「・・・・・・・・・」

「・・・まあいい。この『あなたの為の物語』を書き上げるまでの伏線として、一つや二つの謎を残しておくのも悪くはない、か・・・」



『あーぱーエプロン』

「本当にいいんですか!?」

「えぇ。体験期間からはじめる、スイーツジャンヌの従業員としてアンタを招いてあげる」

「オルタ・・・!ほ、本当にいいんですね・・・!?」

「――地獄であったあの調停者モドキに比べたら、アンタはずっとずっとマシだったのだと解りましたからね。少しは優しくしてあげます。少しだけ、ですよ」

「――ありがとう!もう一人の私!」

「あいだだだだだだだぁあ!!このアーツゴリラ加減しなさいよばかぁあ!!」

「これからも一緒に、頑張りましょうね!!」

「はーなーしーてー!!!!」



「コンちゃんきゃわわわ・・・きゃわわわわわ・・・」

「えぇ、なんとしても彼女はカルデアに招かなきゃ!!着せかえ!いいから着せかえをさせるのよ!」

「コンちゃんまじ天使・・・守護らねば・・・拙者が守護らねばならぬ・・・」



「おや、独り身の鈴鹿御前様。御相手は見つかりましたか?」

「まだだしー。つぅか一言余計だし!」

「頑張ってくださいまし?わたしには、もう?大事な大事な御主人様が出来ましたから♥」

「うっざぁ・・・」

「全くだナ。頑張るいたいけな女子を貶すは恥である。奢り高ぶりはキャットも食わぬぞオリジナル」

「げぇキャット!!いつのまげふぅ!?」

「気にするな、スズカ。己を磨けば必ず良縁は舞い降りる。さながらニンジンに吸い寄せられるキャットのようにな、ニャハハ」

「さんきゅ!キャットはマジイケてるし!オリジナルとは大違いだし!」

「アタシは頑張り屋が好きなのだナ。ご主人も皆も好きだぞ、オリジナルはのぞく。さぁ今日も今日とて狐鍋である」

「はなしてー!はなしてくださいましー!!くっそぉボディに効いてうごけねー!御主人様!ヘルプー!!」

「後でネイル塗ったげるかんねー!」


「ナイチンゲールせんせー、てをあらったよー」

「はい、良くできましたね、ジャック」

「ナイチンゲール先生、うまく洗えたかしら?」

「この調子ですよ、ナーサリー」

「あらっ、た」

「はい、大きい手をよく洗いましたね、アステリオス。この調子です」

【手をあらいま】

「殺菌!!!」

【対処がはやすぎんだろ――!!!?】




『世界』の観点

「人類最後のマスター、藤丸リッカよ。我が威光、我が誇りを懸けて、お前に頼みがある」

 

 

会談のテーブルを運び込みながら白髪の青年、カルナが誠実に告げる

 

 

「この対話が如何な結末を迎えようと、今この場で、お互いを害する行為には決して走らないとどうか誓ってほしい」

 

「戦闘行為はダメってこと?」

 

カルナがゆっくりとうなずく

 

「過程、目指す場所は違えども。オレ達とお前達の望むものは極めて近しいとオレは信じている。この場でお前達が死合うのを、オレは望まない」

 

言葉に嘆願をのせながら、自らの槍をゆっくりと置く

 

「我が名、我が父の威光に誓って、この対談の間は、お前達を傷つけることはないと誓おう。そちらもどうか、エジソン、ブラヴァツキー婦人を害さぬ事を・・・誓ってはくれないか」

 

深々と頭を下げ、邪念なく願いしは施しの英雄

 

 

「――フッ、相も変わらず高潔な事よ。此度の貴様の参戦は、其奴らを信じてのことか?」

 

「いや、単純に懇願されたまでのことだ。助力を申し込まれた以上、オレは全力を尽くす」

 

「フッ、流石は動く肉塊にまで呼び出された男よな」

 

《・・・エア。暫し魂を休ませよ。選別は会談が終わった後でよい》

 

 

――はい、英雄王

 

王の厚意に応え、武具の選別を控える

 

 

――ふぅ・・・あ、王。先の解呪と転写の原典は引き続き選別を続けてよろしいでしょうか?

 

《無理をせぬ程度にな。肝心要の際にお前の精度が落ちては話にならぬ。ゆるりとで良いぞ》

 

――はいっ。無理はいたしません

 

 

「兄貴も、いいかな?」

 

リッカの問いに、ウィンクで応えるクー・フーリン

 

「おうよ。犬たるもの、待ての一つも出来なくちゃあな」

 

「うむ、飼い主の如何でこうも違うか。やはりコトミネめはブリーダーとしては今一つであったようだな」

 

「たりめーだ。嬢ちゃんなら令呪が無くなろうが最期まで付き合うが、あのクソ神父なら令呪が無くなりゃそれまでだ。喉笛を食いちぎって野晒しにしてやるまでよ」

 

「それが機転を利かされあのザマであったのだろうよ。ま、有り得ぬ未来であろうな。貴様が我が楽園の番犬である限り、貴様の槍が貴様を貫くことはあるまい」

 

「おう、俺もそいつを信じて疑わねぇさ」

 

言葉を交わし、兄貴は壁にもたれ掛かり、王は携帯式玉座に腰を下ろす

 

「さぁ対話の時だ。貴様らの動機、矜持、目的。余すことなくつまびらかにするがよい。事と次第によっては、貴様らの陣営は約束された勝利を獲得する栄誉を手にするやも知れんぞ?」

 

 

「ま、裏切り背信には倍返しだけどよ」

 

一瞬だけ、獰猛に笑うクー・フーリンと、愉快げに笑うギルガメッシュ

 

 

こちらが下手に出る理由が微塵もない理由、カルデアが誇る三大最強戦力の2騎がマスターの背後に侍る

 

「感謝する。――オレはカルナ。故あって、アメリカの助力を行っている。あちらにいるのが・・・」

 

くい、と指を指す先に・・・

 

 

「アメリカの存亡はこの対話にある・・・!婦人!私に力を!婦人!」

 

「はいはい、がんばれ、がんばれ!あなたなら大丈夫!勇気と自信を持って、吠えなさい!」

 

 

「う、うむ!うむ!よぉし!では!!プレジデントなBGMを流せ!」

 

合図と同時に、勇壮かつ迫力あるBGMが、会談の席を満たす

 

「・・・あれが王ですか」

 

穿たれた風穴から、颯爽と現れるナイチンゲール

 

「あ、頭が・・・被り物、でしょうか・・・?」

 

それに続き現れたマシュは、筋骨隆々のプレジデントにおおいに困惑しているようだ。無理もないが

 

「狂犬病、伝染病の媒介の危険性があります。速やかに保護、予防接種を受けさせるべきかと」

 

ホルスターから銃を抜かんとするナイチンゲールを、即座に制止するマシュ

 

「待ってください!待ってくださいナイチンゲールさん!」

 

「どきなさい!助手のあなたに私を止める権利はない!」

 

「か、カルナさん。治療行為は・・・」

 

「・・・控えてもらえれば 助かる」

 

 

沈痛に、申し訳なさそうに告げるカルナ

 

 

「お、お待たせしたわね!では、会合を始めましょうか!」

 

パンパンと手を叩き、辺りの空気を引き締める少女

 

「じゃ、自己紹介から始めましょう?私はエレナ・ブラヴァツキー!このライオンあたっ・・・大統王の補佐役にして、偉大なるレムリアの使者!よろしくしてくれて、よくってよ!」

 

ぴしり、と敬礼し、にっこりと笑う少女、エレナ

 

 

「神秘学の先駆けなる婦人か。マスター、貴様ら人間が14の齢に触れる文学の開祖はその女と言えば影響の浸透が伝わるか?」

 

――齢14・・・真なる力に目覚めやすくなる時期の文化の開祖・・・凄い!

 

 

「すごーい!!知ってる知ってる!レムリア・インパクトでしょ?渇かず飢えず、無に還るやつ!」

 

『それは無垢なる刃よ、リッカ。・・・まったく、琴線に触れたらすぐにこれなんだから。気を引き締める!』

 

嗜めながらも、けして気は抜かないオルガマリーである。それは姿が見えずとも変わらない

 

 

「ごめんなさい!」

 

「ケルトとは・・・微塵も関係ねぇわな!学があるケルトの英雄なんざとんと聞いたこたぁねぇ!どいつもこいつも脳みそ筋肉まみれだわハハハ!」

 

愉快げに、反応に困る事をのたまうクー・フーリン。本人は本気で楽しんでいるのだが・・・

 

――自然と生きる術や、ルーンを操る術は決して野蛮な存在では出来ないと思うのですが・・・ケルトは少し、イメージに引っ張られすぎだと私は思います、はい

 

《仕方あるまい。奴等の場合、文化に勤しむ逸話より血にまみれた逸話の方が遥かに多いのだ。風評の流布が偏るのも妥当と言うものだ》

 

――それでもあの演奏は、けして野蛮な民族のものでは無かったと、ワタシは信じています

 

(帰ったらエアも、何か楽器を嗜んでみるかい?ボクが色々教えてあげるよ)

 

――式ちゃんに相談してみようかな!その時は、練習に付き合ってね、フォウ先生!

 

(先生・・・いい響きだぁ・・・)

 

 

遥か彼方に吹っ飛んでいき、花火になるフォウ

 

 

――フォウ――!?

 

《死亡芸に磨きがかかってきたな、獣め・・・》

 

 

「私は、マシュ・キリエライト!先輩のメイン・サーヴァントです!先輩の!メイン・サーヴァントです!」

 

『繰り返したわね?そうよねぇ?それがあなたのアイデンティティーだものねえ?』

 

どや顔でディスプレイを満たすジャンヌ・オルタ

 

「いつか、いつかきっと!先輩の一番になるサーヴァントです!」

 

「もうオンリーワンなんだけどぁ・・・私後輩いなかったし・・・」

 

「フローレンス・ナイチンゲール。ドクター・リッカの施術を補佐する看護師です」

 

軽く頭を下げ、ギロリとエジソンを睨み付けるナイチンゲール

 

 

「・・・よろしくお願いいたします」

 

『オルガマリー・アニムスフィア。グランドオーダーの全権を担い、指揮する所長です。ギルは、カルデアのグランドオーナーの立場にあり、些事と雑事を担当するのは私です』

 

『僕はロマニ・アーキマン。医療スタッフでもあるんだ』

 

『ミドラーシュのキャスターでーす♥ロマン様の未来に、私の総てを投資する女でございまーすお見知りおきを♥』

 

「ふはは!コーヒーが甘いな、マリー!」

 

『とても・・・甘いです・・・』

 

――英雄姫エア!ギルガシャナ=ギルガメシアです!・・・えへへ、名乗れる名前があるって、素敵ですね!

 

 

《思えば我が名付け親か・・・ふはは!姫に名をつける親になるとは我も思いもしなかったわ!》

 

喜色に顔を綻ばせるエアの頭を優しげに撫で、愉快げに笑う英雄王

 

(ボク、エアの尊さに触れると死んでしまいます)

 

光に包まれ、天へと登っていくフォウ

 

――ま、まってー!いかないでー!フォウー!

 

(ボク、エアの尊さに触れると死んでしまいま~す)

 

更に天へと登っていくフォウ

 

フォウ~!

 

「オレはアルスターのクー・フーリン。まぁ、今更名乗るのもあれだが形式でな」

 

 

「クランの犬を叩き殺したから来てるんだよね、由来」

 

「おう。大人10人力のでかいやつを、うっかり叩き殺しちまってよ」

 

「うっかり!?」

 

うっかりな、と笑うクー・フーリン

 

「我が名はギルガメッシュ。王の中の王。我が拝謁の栄に浴して尚、この面貌を見知らぬなどという蒙昧は本来生かしては置かぬが・・・此度は特別よ!崇めよ、賛美せよ!特に許す!ふははははは!!」

 

本来の彼を知っているものなら驚天動地の態度で、愉快げに笑うギルガメッシュ

 

 

「――庇護せし相手を見つけたか、英雄王。喜ばしいことだ」

 

誰に聞かせるつもりもない小声で、カルナは笑みながらそっと口から安堵を零れさせた

 

 

「では――」

 

 

「無用だカルナ君!恐れているわけにもいかない、今こそ名乗ろう!我が名を!!」

 

 

青い、筋骨隆々の体躯を大きく張り、まさに咆哮がごとき声量で叫ぶライオン丸

 

 

「みんな、はじめまして!おめでとう!!我こそはあの野蛮なるケルトを粉砕する役割を背負った、このアメリカを統べる王!」

 

ラッパが吹きならされるBGMにも負けない声量で彼は高らかに名乗り上げる

 

 

 

「サーヴァントにしてサーヴァントを養うジェントルマン!!大統王!トーマス・アルバ・エジソンである!!!!!」

 

大気を震わせ叫ぶライオン丸・・・いや

 

 

「え!?」

 

マシュが漏らし

 

『じ!?』

 

ロマンが叫び

 

 

「ソンは偉い人!!そんなの皆知ってる常識だよね!」

 

ドヤッ、と胸を張るリッカ。カルチャー知識において彼女は貪欲である

 

「――おい、戯れも大概にせよ。己をエジソンと思い込む精神異常者の類いか?」

 

「本当だ!本当に私はトーマス・アルバ・エジソンなのだ!!」

 

王の眼光に涙目になりながら弁明するエジソン

 

――たったたらりら~♪

 

(とう とい)

 

上機嫌に漏らすエアを見届け融解するフォウ

 

《ふざけすぎであろうが!!我を愚弄するか!どこからどう見ても獣畜生ではないか!!》

 

――エジソンはライオンだったんだぁ・・・知らなかった・・・フォウ!今度はフレンズになれるかなぁ?

 

(ボクに連なりエアの傍に来るには可憐さと尊さが足りない。せめてプードルになって出直して来るんだね)

 

――プードルって尊いんだ・・・

 

思い思いの所感を漏らしまくる一同

 

 

「――いえ、失礼。絶句してしまいました」

 

 

「ハハハハハハハハ!!わりぃちょいとなんか記録するもんねぇかい?コンラ達に見せてぇわマジで!いやぁ、発明王が猫だったとはねぇ!親近感湧くわ~!」

 

 

膝を叩きながら笑うクー・フーリン。絶句するナイチンゲール

 

「エジソン?発明王エジソンですか?あなたが?キメラではなく?」

 

「いかにも!今は発明王ではなく、アメリカを背負い立つ大統王であるが!!」

 

 

「質問でーす!エジソンさんはいつジャパリパークに行ったのですか?」

 

手を元気よく上げ、疑問をぶつけるリッカ

 

 

「何を言う!私はまごうことなき人間である!人間とは理性と知性を持つ獣の上位的存在であり、それは肌の色や顔の形で区別されるものではない!私が獅子の頭になっていようとも!私の知性と理性が失われていないのならば!それは紛れもなくトーマス・アルバ・エジソンなのだ!!」

 

ガォオ、と吠えたけるエジソン

 

《・・・あの物言い、初めからあのふざけた頭であった訳ではないようだ。それに、先程からヤツより感じる違和感・・・あぁ、成る程な》

 

――何か、お気づきになられましたか?王

 

《うむ。ヤツが王を名乗るカラクリが読めた。奴、いや・・・『奴等』は随分と愛国心に傾倒していたと見える》

 

・・・少し気になりはするが、根掘り葉掘り問い質すは無粋だろう。一先ず、王の種明かしを楽しみにしておくことにする

 

《案ずるな、時がくれば必ず教授してやるとも》

 

――筒抜けだった!

 

『・・・すごいポジティブさね。別に頭が獅子だろうと、自分が自分ならいい、と・・・私にも分けてほしいわ、その自信・・・』

 

溜め息を吐くオルガマリー

 

 

「分けてやっても構わぬが?」

 

『ギ、ギルの自信はほんの少しでも重すぎますから!』

 

『ねー。この世の総てを背負っている、なんてとてもねー』

 

「おーい、脱線してんぞー」

 

 

「さて、君の名前は藤丸立香、だったな。英雄王とクランの猛犬を駆る、人類最後のマスターよ」

 

「駆っていません。共に戦っているんです!」

 

向かい合う、獅子と龍。お互いがお互いに気後れする様子は見られない

 

 

「単刀直入に言おう。四つの時代を修正したその力を活かして、我々と共にケルトを駆逐せぬか?」

 

「――あれ?知ってるんですか?私達の旅路を」

 

うむ、と頷くエジソン

 

「ある人物がな、それを私に知らせてきやがったのだ!この世で最低最悪のろくでなし!にっくきあのすっとんきょうめが『こんなことがあったのだが私は息災だ。君にはこんな大冒険は無いだろうエジソン君』などとな!実に不愉快極まる!!」

 

『あ、やっぱり仲悪いんだね・・・』

 

『はぁ、喧嘩など一銭にならないどころか治療費で損ばかりなのによくやりますぇ・・・』

 

呆れるように漏らすエルサレムチーム

 

「いやまぁそれはいい。とにかく今はケルトを滅するのだ!奴等は時代を逆行している!アメリカ合衆国は資本と合理が産み出した最先端の国家だ!この国は我々のものであり、知性あるものたちの住処だ!だというのに奴等めはプラナリアが如く増え続け、その兵力の差でアメリカ軍は破れ去った!」

 

 

「プラナリアかよ。言いえて妙だなオイ。・・・ホント、アイツはろくなことしねぇなぁ」

 

苦々しげに呟くクー・フーリン。知己の醜態に思うところしかないようだ

 

 

「しかし幸いなるかな、この国には英霊たる私が降臨した!私が発案した新国家体制、新軍事体制によって戦線は回復し戦況は互角となった。――野蛮人どもめ、大量生産において私と覇を競い合うなど愚の骨頂!」

 

「ケルトは野蛮ってイメージは共通なのな・・・まぁその通りなんだが」

 

「妥当であろうが」

 

「しかし、それでも懸念材料はある。将、つまりサーヴァントの数が!足りん!圧倒的にだ!統率された軍隊あれど、一騎当千のエースがいない!兵で奪取した拠点が、サーヴァント一人に奪取されてしまうのだ!数の多寡を、ただひとりで覆される悔しさと理不尽さといったら・・・!こちらのサーヴァントは私を含めて三騎!他に召喚されたサーヴァントは散り散りでこちらには見向きもせぬ!私に理性がなくばまさに絶叫している状況だ!アメリカを救うべき英霊が、敵を恐れて戦いを拒否するなど怠慢にも程がある!!GAAAAAAAAA!!

 

天に届かんばかりの絶叫をあげるエジソン

 

 

――吠えた~!凄い!ほんとにライオンだぁ!

 

《・・・首を刎ねて飾りに最適な気がしてきたな》

 

(嫌だよあんなのマイルームに飾るなよ)

 

「お、落ち着いてくださいミスタ・プレジデント。その、世界を救うというならば我々も協力するにやぶさかではありませんので」

 

「おお!キミは話がわかる!」

 

マシュに同意を示され、ニッコリするエジソン

 

 

「・・・ホントに『世界』を救う気ならね」

 

「はい。ドクター・リッカ。・・・二つほど聞いてよろしいでしょうか」

 

「うむ、何かね。他ならぬナイチンゲール女史の言葉だ、真摯に答えよう。――紳士、真摯に答える。おおエレガンティック!カルナ君、今のを大統王録に記しておいてくれたまえ!」

 

 

「ふはははははははははははははははははははは!!!!たわけ!不意討ちではないか!!卑劣な!控えよ!!ふはははははははははははははははははは!!!」

 

「・・・テメェのセンスだけはわかんねーわ」

 

玉座にて笑い転げるギルガメッシュを、困惑しながら見やるクー・フーリン

 

 

「一つめ。ここに到着するまで、何度か機械化兵団を見ましたが、あれはあなたの発案なのですか。あなたの新体制の目指すところだと?」

 

「その通りである!この国難を打破するため出した結論!国家団結、市民一群、いや一軍となっての新生!老若男女分け隔てのない国家への奉仕!いずれ、総ての国民が機械となりケルトを討つだろう!無論そのためには労働力の確保が必要だ。各地に散らばった労働力の確保、一日二十時間労働、休むことのない監視体制、無論、福利厚生も最上級のものを用意する。娯楽なくして労働無しだからな」

 

グッ、と拳を握り突き上げる

 

「我々は常人の三倍遊び、三倍働き、三倍勝ち続ける!これが私の目指す、新しいアメリカの姿である!!」

 

――自分ですら彼の言い分の破綻は感じ取れた

 

人間一人が三人分、三倍など働けるものか。無理に働かせ、無理に労働させては三倍どころか半分のパフォーマンスも発揮できない

 

《然り。一人に三倍働かせては使い潰れるが必定よ。最上の環境を用意し、ノウハウを叩き込み、的確に休ませ働かせ、一人一人に最高のパフォーマンスを発揮させる。それこそが正しき最良の組織運営に他ならぬ》

 

――一人が行える仕事には限りがあって当たり前だ。王の言う通り、社会の財産である人間や労働者を軽く見すぎても、負担をかけすぎても最良の結果など導き出せない

 

 

それを・・・楽園を手がけし王の手腕を間近で見てきたのだから尚更だ。彼の意見に、手放しで賛同はできないと感じる

 

「・・・そんなところに拘っているのですか」

 

「ん?今なんと?」

 

「いえ、独り言です。では二つ目の質問です。いかにして世界を救うのですか」

 

・・・そうだ。それこそが肝要だ

 

大統王たるエジソンが掲げる世界を救うプランとは・・・?

 

 

「それでしたら聖杯を確保すれば果たされます。ケルト軍の誰が聖杯を所持しているかは不明ですが・・・」

 

「まぁメイヴだわな。なんだ話がはえぇ。メイヴをぶっちめて聖杯をかっさらっちまえば俺達の勝ちって訳だ」

 

「何と品のない・・・簒奪と言え、簒奪と」

 

・・・しかし

 

「――いいや、時代を修正する必要はない」

 

エジソンが口にした言葉は、驚くべきものだった

 

「――やっぱり、か」

 

理解が及んだとばかりにリッカが口を開く

 

 

「あなたの言う『世界』は・・・『アメリカ』だけ、って事だよね。エジソン」

 

「――如何にも」

 

「・・・あ?」

 

「――」

 

・・・カルナの口にした言葉の意味はこれなのだ

 

『世界』総てを救うと決意するリッカ

 

『アメリカ』のみを救うと決意するエジソン

 

アプローチは同じながらも

 

「・・・・・・エジソン、お前は・・・」

 

 

目指す結果は、あまりにも違うのだ――




「マックールの小僧と、ディルムッドがやられた、か」

「嘘!?あの嫉妬男と顔だけ不倫男、もうやられちゃったの!?頭にチーズでもぶつかったのかしら・・・」

「知ったことかよ。死んだヤツの利点はな、もう思い出さなくていいってことだ。くたばった戦士なんぞ、なんの価値も、意味もねぇ」

「やん、クーちゃんったらドライ♥そんなところも大好き!・・・誰にやられたのかしら・・・」

「誰でもいい。・・・」

「あら?何処行くの?」

「あいつらが指揮してた兵どもを始末する。頭が潰れたんだ。烏合の衆なんざ囲ってもしょうがねぇだろ。敵にあっさり討ち取られる無能の率いてた軍なんざ必要ねぇ」

「そうね、サクッと皆殺しでお願い!・・・あ、そうそうクーちゃん」

「あ?」

「二人やられちゃったのは事実だから・・・その分はぐれサーヴァントでも殺しておかない?倒した戦力に与されるのも面倒だし?」

「・・・・・・」

「ほら、『エリザベート・バートリー』とか、『ネロ・クラウディウス』とか・・・クーちゃんなら一捻りでしょう?」

「・・・・・・考えておく。あいつらの兵、6850人を皆殺しにして物足りなけりゃ、次はそいつらだ」

「はーい♥行ってらっしゃーい♥」


「・・・・・・奴等をあっさりと刈るサーヴァント・・・まさか、な」

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