人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
バーヴァンシー「っ…」
ルイノス「この声は…!?」
ロマン『牙獣の厄災のものだ!なんてことだ、グランドマスターズが戦闘を開始したんだな!?』
リッカ「カドック達が…」
オルガマリー『どうする?急行するかしら、リッカ』
リッカ「必要ないよ。それより…」
ホープ『…ライネック様…ライネック様だ…!』
ビリィ「間違いない、ライネック様の雄叫びだ!」
チルノ「らいねっく?」
リッカ「モルガン陛下!」
モルガン『───えぇ。通信を、飛ばします。ロマニ、キャスターアルトリア。手伝いなさい』
ロマニ『は、はい!』
キャストリア「了解!」
CCA(あ〜…じゃ、解呪の魔術ビームにして撃っとこ。ルイノスさんルイノスさん、お耳を)
ルイノス(は、はい?)
ウーサー「!」
『我等が希望。牙を、掲げろ!』
ウーサー「───あなたは…!」
(感想は今から返信します)
「数に圧倒されるな!周りに気兼ねする必要はないんだ、蠢く全てを敵として蹴散らせばいい!」
「解っているわ。項羽様、そのお力を!」
『承知した。全てを粉砕し疾走する』
「アシュヴァッターマン!アナタの嫌いな堕落よ、思いっきりやっちゃって!」
「おォよ!!真っ当に、誠実に生きようとするヤツの足を引っ張るような真似は許せねぇなァ!!怒りが滾る理由には十二分だぜ!!」
「カイニス!ポセイドンの前だ、やる気スイッチは押されているね!」
「皮肉かテメェ!!」
牙獣の厄災を守護し、モースを…呪われし魂を蹴散らす。その為に、グランドマスターズは戦いの舵を切り、戦端を切り拓いた。カイニスは黄金の鳥、項羽は嵐、アシュヴァッターマンは怒りそのものとなり、片端から迫りくるモースを穿ち粉砕していく。黒い織物を引き裂くように、怒涛の勢いでモースの陣形に穴が空いていく。
「シグルド、大型モースを私が留める。ガレス達と協力して撃破を!」
「了解。この戦い、我が愛と我が義父に捧げよう」
「マスター!下がっていてくださいね!奥の手はまだ先です!」
「よろしくね、ガレス!」
「ど、どうですかデイビットさん。題名は、罪を吸うヒマワリ…」
「悪くない」
シグルドの卓越した剣技、ガレスの餓狼の如き疾走、デイビットとゴッホの妖精國のスケッチ。それらも十全に活路を穿ち、徹底的に咎人を蹴散らし吹き飛ばしていく。
【……………!!】
「動いてはダメよ、蓄積された呪いはとても深い。除去しなくてはならないわ」
「がおん!」
霊亀の力を使い、最早動けぬ牙獣の厄災を治療するアイリスフィールにセイバーライオン。彼は今、急患であり敵の敵だ。ならば、死なれてしまってはこの共闘は無意味となる。
【!!!!!】
だが、牙獣の厄災の憤怒と激昂はまさに核融合炉が如き鮮烈かつ激熱の感情となり噴き上がる。最早憎悪と怨嗟すら越えた激昂、激憤。数メートルも高き身体に力を込め、血を吹き出しながら立ち上がらんとする。
「無茶をしてはダメよ!あなたを癒すから、じっとしていて…きゃあ!」
【ガアアアアアアアア!!!】
それはアイリスフィールすらも目に映らず、ひたすらに妖精達へ向ける憤慨と熱意。それは、爆発し続けるエネルギーを全て変換し力とするような大出力。
【オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!】
必ず護る。何を護るのかすら忘れても。
必ず阻む。何を待つのかすら忘れても。
必ず至る。何を望むのかすら忘れても。
ひたすらに厄災を憎み、激する。それは彼が野蛮な厄災ではなく。自身より大切な…自身よりも何かを思い遣れる誇り高き魂を有している事は明らかだ。グランドマスターズを睨みはしても、害しはしない。そういった振舞いは、カルデアに確信をもたらす。
『やはり…救世主トネリコに忠義を尽くせし妖精の騎士。彼は厄災にて罪の奈落たるブリテンを滅ぼす役割を担った、トネリコの遺産なのか…』
ゴルドルフがそう断じた決断を否定するものは誰もいない。ならば彼は、護り抜く事こそが本懐なのだろう。
『天敵である筈の厄災にモースが殺到していたのは、彼が護る何かを手にする為。その為に、彼を押し退けようと…』
「うざってぇ奴等だな!情状酌量の余地はねぇ、さっさと滅びて地獄に行きな!!」
ベリルは素早くフェンリル形態に移行し、サンプル確保の為に数多のモースを喰らい腹に収める。ニャルには呪いの対策コーティングを施された。丸呑みしても問題はない、が…
「うぇえぇえ……気持ち悪いぃ………」
毒素は当然ベリル還元である。つわりのような気分の悪さがベリルを襲い動きを止める。当然殺到する呪いだが…。
「やはりベリルさんを狙いましたね。行きますよ!モア様、だいじょうぶちゃん様!」
「はい!慈悲をたくさん与えます!」
「ワァ!だいじょうぶ!」
モアの加減した鉄槌、だいじょうぶちゃんの連続内臓攻撃、ナイアのタナトスフォームの魂を砂にするほどの斬撃が辺りを埋め尽くす。ベリルを囮に、最高の娘たちに仕事を任せていたのだ。
「旦那ぁ…アフターケアスルーしやがったな…くそ、食べる度にエラい目に遭うってことかぁ…」
ベリルはぼやきながら、ひたすらに喰らいつくしサンプルを獲得していく。確かに気分は悪いが命に別状はないし、失敗し、ニャルに喜々としてお仕置きされる方が恐ろしい。
「どうだい!我等グランドマスターズ!君の忠義を心から応援しよう!だからもう、厄災なんて殻は捨て給え!」
【……!?】
「救世主を護るんだろう!曲がりなりにもここはまだブリテンだ。彼女の國で誇りを見失うな!」
カドックとキリシュタリアが背中合わせで、牙獣の厄災に語りかける。全身を厄災の呪いで覆った姿から、厄災の様相は伺えない。が、逡巡は齎された。
この地において、誰かを気遣い力を貸すものなど最早いない。存在などしない。妖精達はその様な生き物だ。だからこそ憤慨し、だからこそ激憤し、ひたすらに妖精を喰らい尽くしてきた。
だが、かつての記憶の彼方で彼が聞いたもの。かつての護るべき存在が、託し遺したもの。
〜
いつか、ブリテンが本当に素晴らしい国に生まれ変わる時。
あなたはその地と、そこに生きる善き民を守護する騎士であってほしいのです。
これは自らの激情を恥じ、自身を見つめ、反省と改革を行わんとするあなたに頼みたい事なのです。
どうかよろしくお願いします。
我が誇らしき騎士、───□□□□□。
〜
『いくら蠢こうと、いくら犇めこうと、天空の下にいるならば同じ事。ケルヌンノス君と違い私はそんなに優しくはない。反省しないのならば滅びて逝って構いません。女でもないし』
キリシュタリアに宿るゼウスが神威を示し、暗雲と曇天に満ちた空からサテライトレーザーもかくやな超巨大雷霆を叩き落とす。対空迎撃など蠢くモースに叶うはずもなく、大地を丸々抉り取りながらモース達は粉々に砕け散る。
『これがゼウスのライトニングさ。女性は私にいっぱい惚れていいよ。キリシュタリアルームで朝まで語り合おうね』
「できるんだったら最初からやりなさいよこのエロじじい!」
「人格はともかく、流石の腕前です。ゼウス、キリシュタリア」
「はっはっはっ。これでこそゼウスという感じがしないかい?しない?いやいや、そこは私に免じて感じてほしい!」
「何の話だよ…楽園カルデアは敵も味方も規格外ばかりだから感覚が麻痺する…」
なんと、グランドマスターズの介入から数分もかからずにモース軍団は駆除される運びとなる。元々、魔術師でも選りすぐりの精鋭ばかり。リッカに負けず劣らずのメンバーの一丸は、苦戦などするほうが貴重なのだ。
『よ、よし!よくやってくれたぞ皆!これで侵攻は収まるだろう…!』
『…いえ、そうはならないみたいですよ…!モース反応、一箇所に増殖集合!強烈な密度を以て何かに変貌していきます!』
『な、何ぃ!?』
一同は気も赦す間もなく構える。何百、何千のモースが、ぶつかり弾け混ぜ合わせ溶け合うように凝縮されている。
「うぇっ、げぇっ…なー、ヒナコ、あれってよぉ…」
「言わんとしていることは解るわ。蠱毒よ、あれは」
蠱毒。呪いを凝縮させ、最悪の毒を生み出す儀式。妖精達の咎と罪は、重なり折り積まれ、いよいよその根幹たる一つを現す。
【悪くない、悪くない。オレは何も、悪くない。サボろうと決めたのは全員だ。サボったのは全員だ。オレは何も、悪くない】
『超巨大反応!これは…厄災クラスの顕現です!』
シオンの言葉通り、それは現れた。それは下卑た舌を出し。猿のように手長であり肩を丸めた狒々のような姿。口から腐敗した息を吐き、毒に染まった牙と爪を振りかざす、悍ましき牙。
【オレはなんにも、悪くない。呪われるなど、間違いだ。呪われているのは、神がオレを働かせなかったからだ】
「出るものが、出たな…!」
カドックの言葉通り。それは、始まりが厄災の一つ。六匹の悪魔が一つ。
【救世主、救世主を寄越せ。ヤツはきっと生贄になる。巫女でもいいぞ、生贄になれ。我等を救う、贄となれ】
腐敗し、失墜せし牙。神を欺き殺した、永劫の罪過が一つ。
〜
【牙の厄災】
【FANG】
〜
【どうせ全ては、後の祭り。お前たちを捧げて、オレはさっさと許されよう。オレは何も悪くないからなぁ〜〜〜〜〜】
ブリテンに巣食う原罪が、牙を剥き出しに現れた。
牙獣の厄災【!!!】
牙獣の厄災は、その姿を見出した。
トネリコを害した原罪。妖精達を害した原罪。
妖精達の、永劫抗えぬ罪。償えぬ過ち。
【グ、オオオオオオオオオオオオオオオ!!!】
彼は吠えた。やつこそを滅ぼす。トネリコを苛み続けた、やつこそを。
妖精の罪を、この身を賭して討ち果たす。千載一遇の機会は、現れた。
【オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!】
だが、最早彼は厄災。猛り狂う滅びでしか無い。理性は捨てた。心は捨てた。全ては怒りのままに。
厄災では、先祖返りの厄災に勝てない。ただ、滅びるだけだろう。
──だが。
ホープ『ライネック様!!』
牙獣の厄災【!?】
その奮闘は、たしかに。希望へと届いていた。
ビリィ『やはり。その姿、その咆哮!ライネック様でしたか!』
ホープ『あぁ、良かった…!どんな形でも、生きていてくれた…!』
牙獣の厄災【………………!!!】
それは、楽園の奮闘が思い起こさせたが故に。その耳に届かせた。別働隊の、通信。
カドック「くうっ…!!」
キリシュタリア「雑に強いな始まりの厄災!伊達に始祖なだけはある!」
【生贄はぁ、巫女のようにぃ、バラバラにしてくれてやるかぁ〜】
ホープ『ライネック様!どうか思い出して!あなたは厄災ではなく、排熱大公!』
ビリィ『トネリコ様の最も頼りにした騎士!排熱大公、ライネックであらせましょう!』
チルノ『なんだお前!友達か!』
牙獣の厄災【……!】
チルノ『なら親分としてアドバイスしてやる!ホープもビリィも、カッコイイとこが見たいんだ!シャキッとしろ!!』
牙獣の厄災【……………!!】
報われなかった。後の祭りだった。
だが今は。トネリコを害した罪が眼の前にある。
トネリコが遺した、希望がある。
来たのだ。トネリコの予言、ブライドの予知。
トネリコのブリテンが、生まれる時が。
ならば、諸共呪いで消えるのではなく。
新たなるブリテンを守護する騎士でなければならない。
【────オレ、は…オレは──!!】
〜
頼みましたよ。ライネック。
…もう、好きという感情は良くわかりませんが。
私はたしかに、あなたを愛していました。
〜
『──オレは厄災ではない!トネリコの騎士!!排熱大公、ライネックだ!!』
ホープ『あぁ…!!』
ビリィ『歪みねぇ、獣の騎士が…帰還した…!』
厄災のブリテンに、今。
騎士道が秩序の咆哮を上げる。
『罪過御祓』
『排熱大公ライネック』