人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ゴルドルフ「それでは、厄災討伐戦第二段階!炎の厄災、呼称名【ペンドラゴン】の対処を開始する!」
シオン「【炎の厄災】こと赤き竜、ペンドラゴンは成層圏付近を飛び回る高速移動ユニットです。そこから数々の武装を持ち、ありとあらゆる兵装を使い地表を焼き払う高速機にして爆撃機、戦闘機のいいとこどり…」
ホームズ「とても地表から撃ち落とせる相手ではない。故にこうして、あえて彼のテリトリーを侵しアトランティスボーダーにて迎え撃つ…というのが概要だ」
カドック「大きさが違いすぎて、逆に対処できない…なんてことにはならないか?」
ゴルドルフ「うむ、それなのだが。領空侵犯していながら一度もこちらには攻撃してきていないのだよ。実にすんなりここまで来てしまった訳だ」
シオン「余裕か、眼中にないかは不明ですが、どちらにせよ戦わなくてはなりません。ここで──」
エル「超高エネルギー反応接近!」
アカネ「真っ直ぐこっちにかっ飛んで来るぅ!?」
ホームズ「来たか…」
ゴルドルフ「た、対空兵装!」
ネモ「ダメだ、早すぎる!推定速度マッハ50!対ショック用意!!」
ルル「い、いや…!ペンドラゴン、甲板に着地!」
ゴルドルフ「はぁ!?」
ムニエル「姿を変えた…!?ひ、人型に変わってくぞ!」
カドック「ひとまず僕らも行くぞ!」
ゴルドルフ「う、うむ!気をつけていくように!」
【…………………】
ブリテン、遥か上空。雲すら足蹴にする天空にて、アトランティス・ボーダーの甲板にて鎮座する者。先の荒ぶる竜とはかけ離れた沈着さにて其処に座すもの。【炎の厄災】、ペンドラゴン。
「本当だ…、竜フォルムから姿を変えている…」
何度も見た、その竜体とはまるで異なる、漆を染み込ませたような鈍い黒と赤の竜が意匠にあるフルプレートアーマーにフルフェイスヘルメット。手には燃える紅と黒の刀剣を所持せし、竜騎士が如き姿の厄災。
「無用な破壊を好まない、という事なのか?初邂逅とは違い随分と理性的だね」
キリシュタリアの言葉通り、その姿は狂乱や厄災とは無縁に見える。安全のため甲板に出たキリシュタリアとカドックを認め、炎の厄災はゆっくりと立ち上がった。
【─────】
バスターソード、ツヴァイヘンダー。そういった両手剣の意匠剣を、ペンドラゴンは構える。それは、確かな戦闘意志。
「アタランテ、頼む!」
「カイニス、出番だ!」
サーヴァントを素早く招き寄せ、交戦に備える。間違いなく、最強格のマスター二人が挑む厄災の人の似姿。火蓋は切って落とされた。
「上等だ、火力頼みじゃないのを後悔しやがれ!」
「空を舞う利点を捨てたな。容赦はしない!」
アタランテ、カイニスは素早くペンドラゴンに躍り出る。ポセイドンのトライデントにカリュドーンの猪の突進力。それは並のサーヴァントを一撃で叩き伏せるもの。しかし──。
【──!!】
瞬間、ペンドラゴンのアーマーに備え付けられていた各部ブースターから、黒炎の魔力が吐き出されるように放出される。それにより、赤鎧の重厚なフォルムがまるでロケットのようにブーストされ、驚異的なスピードにて制動を開始したのだ。
「何ッ!?」
「疾い──!!」
カイニス、そしてアタランテが驚愕に目を見開くほどの大加速。あまりの爆発力に、辺り一帯の空間が爆発したかと見まごう程の紅蓮に染まる。灼熱の軌跡を乗せたペンドラゴンの身体は、極限の速さを以て駆動する。
【───!!!】
「ぐぅうっ!?お、ぉおあぁぁぁ………!!!」
カイニスのトライデントと、ペンドラゴンの竜の爪牙剣が鍔迫り合った。カイニスとて神霊を自称するもの、その力は決して並ではない。
だが、そうでありながら、ペンドラゴンの一撃に圧され、膝を折り曲げ跪く形で劣勢を演じる羽目となってしまう。無尽蔵とすら、法外とすら言える魔力を全身からブーストの要領で大放出。その膂力は、まさしく竜や巨人に匹敵するほどの怪力に達していると言って差し支えないものであり、そして──
「がぁああぁぁぁっ────!!!」
甲板にめり込む形で叩き伏せられることとなったカイニス。ペンドラゴンの膂力は、人間の形を取っていながらもまさに竜そのものだった。神霊に類するものを真っ向からねじ伏せる程に。
「貰ったぞッ!!」
だがその一瞬の空隙を突き、アタランテがその爪をペンドラゴンに叩き込む。行動の合間を縫った完璧な奇襲。マスターの援護を受けたその渾身の一撃は、ペンドラゴンの鎧を砕かんばかりのものだ。
【!!!】
いや、事実それは鎧を破損するに足る一撃だった。身を捻り直撃を避けたものの、右顔面部分の兜が抉り取られる。そしてその中身をアタランテは認めた。
(!!中身が──無い…!!)
垣間見えた内部に人の姿は存在していなかった。無数に塗り固められた黒き呪いがあるのみの、伽藍堂の鎧。信じられなくとも、そう認識する他ない炎の厄災の現状に、アタランテは数瞬行動が遅れてしまう。
「が、はっ────!!」
返す刀で、ペンドラゴンが渾身の左拳をアタランテへと叩き込んだのだ。固く握り込まれた篭手から繰り出される一撃は、アタランテの内臓と骨を尽く粉砕し、拳をめり込ませる。
「アタランテ!!」
カドックの叫びと同時に、ペンドラゴンはアタランテにめり込ませた拳を身体ごと回転させ、アタランテの身体を渾身の力で放り投げたのだ。アトランティスボーダーなら猛烈な勢いで投げ飛ばされるアタランテ。地表に落ちればまず即死するであろう上空からの追放。
「令呪を使う!傷を直し、転移し、宝具を使え!!」
カドックに刻まれた令呪、修復、転移、宝具を使用する。三つの命令をアタランテは快諾し、反撃に移る。
【おおおおおおおおおおおおおおッ!!】
転移した甲板より、カリュドーンの猪となってペンドラゴンに猛烈に突貫していくアタランテ。それは宝具を使用し開放した形態であり、渾身の一撃に相違ないものだ。
【───!!!】
「なっ──」
だが、それを信じがたい事にペンドラゴンは左手を前に突き出す形で迎え撃った。甲板の上を猛烈な、摩擦で火が出る勢いで滑走していくペンドラゴン。カリュドーンの突進を、ひたすらに制動する。
【…!!】
やがて、それは完全に停止する。なんと、アタランテの宝具の突進を完全に無力化、受け止めたのだ。それはまさに神業、ペンドラゴンたる者の所以たる規格外の力。
「がぁああぁぁぁっ……!!!」
赤き竜の反撃の拳は、カリュドーンの顎と頭部に深々と突き刺さる。打ち上げられ、叩き伏せられたダメージは比類なきほどに深刻であり、アタランテの戦闘不能は明白であるほどだ。
「テメェ、調子に乗ってるんじゃねぇえっ!!」
体勢を立て直したカイニスが、怒りを露わにトライデントをペンドラゴンに突き刺さんと駆ける。それは意識外の攻撃となるに値するもの。
「ぐッ!?」
だがしかし、それをペンドラゴンは左腕を無造作に突き出し、カイニスの顔面を捉え掴み取る。その動きは、カイニスの肉体の稼働速度を遥かに越えた速さだ。そして──
「ぐああああぁぁぁぁっ────!!!」
紅葉おろしの要領で、甲板を背中から引きずり回していく。圧倒的な速度とパワーで繰り出されるソレは、カイニスの神代の肉体すらも貫通せしめるほどの圧倒的な暴力。
【!!】
そのまま、カイニスをアタランテに投げつけ行動すら叶わないほどのダメージを刻み込む。純粋な魔力と膂力から繰り出される圧倒的な暴力は、精鋭サーヴァント二人すらも圧倒し、返り討ちにして見せるほどの力だ。
「これが、炎の厄災…!」
「なんという力だろうか!シンプルに強い以外の言葉が見当たらない…!」
人型になったのは、過剰な火力を必要としないが故なのか。だが弱体化などではあり得ず、それはまさに人竜たるに相応しい力を存分に知らしめた。
「追撃はさせない…!」
「次は我々が相手をしよう…!」
カドック、キリシュタリアが相棒を庇うように立ち、迎撃の意志を見せる。ペンドラゴンに対し、パートナーを護らんとする構えだ。
【─────…!!】
それを受け、爪牙剣を構えたペンドラゴン…だが、その戦いは早々に幕を下ろす事となる。
ペンドラゴンは即座に二人の間を駆け抜け、跳躍と共に竜の姿、高速戦闘機形態に変化し凄まじい速さでアトランティスボーダーから離脱していった。雲に風穴を開け、地表へと己を叩き落とす様を、二人は呆然と見やる。
「助かった…のかな?或いは、地上でなにかあったか…」
「…何にせよ、二人の頑張りで戦闘データは取れた。空手戻りじゃないだけ、良しとしよう…」
炎の厄災。ブリテンを焼き払い続ける炎の厄災との初戦は、そのあまりにも圧倒的な苛烈さをひたすらに思い知る事となった。
「アレを下さなくてはならないとは…先は長そうだね、カドック!」
「何でどことなく嬉しそうなんだ、あんたは…」
カイニス、アタランテを助け起こしながら、二人は驚嘆と共に思い知った。
厄災たる力の真髄。悪魔達とは違う、単純明快な力の絶対性。まさに竜が如くの、ブリテンを滅ぼす炎を──
地表
マシュ・キリエライト「数が増えてきましたね…!」
リッカ「轢き潰しても轢き潰しても湧いてくるから結果的に牛歩だよね…」
キャストリア「ゴキブリみたい…いや、ゴキブリに失礼かも…」
都市部に近づけば近づくほど、モースの肉壁は増えていく。その量に辟易していた巡礼組だが──
ロマニ『皆!上だ!!』
チルノ「上!?」
ペンドラゴン【!!!!!】
ペンドラゴンがリッカらの上空を駆け抜け、マッハによる衝撃波を辺り一帯に撒き散らす。
ウーサー「ぐっ…!!」
その勢いに耐え、顔を上げれば。其処には切り刻まれバラバラとなったモースが残るのみ。
ホープ「助けて…くれた?」
結果だけ見れば救援たるそれを、一行は鵜呑みにしかねる。
瞬間──ペンドラゴンの手によって、進行方向の景色が火炎一色に変わったのだ。無論、執拗な爆撃にて。
ロマニ『ちょっとこれ、過剰火力すぎないかなぁ!?』
ペンドラゴンの火力を鎮めねば、探索などかなわない。
そう、カルデアに炎の厄災は痛感させるのだった──。