人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
チルノ「む。ホープ達か。無事で良かった」
ビリィ「おおっ…!?なんだか凄く、魅力的になったね!?」
バーヴァンシー「…ウィンダとか言うのを倒すために、色々無茶やったみてぇだな」
チルノ「責任を果たしただけだ。親分として、きちっとした規範をな」
バーヴァンシー「…そうかよ。じゃあ子分として言わせてもらうぜ」
チルノ「?」
バーヴァンシー「流石、私達の親分だな」
チルノ「──おう!」
〜
カービィ「ポヨ、ポヨイ。ポヨイ」
ペンドラゴン【……】
モルガン『カービィが言っています。ペンドラゴンは妖精の憎悪と呪いを燃料として飛ぶ厄災。妖精が滅び、死に絶えた今…この呪いを燃やし尽くす時が来たのだと』
キャストリア「まさか、それって…」
モルガン『全てを炎として費やし、この身を黄金の旅団に託す。…そう、決意したそうです』
ペンドラゴン【……】
ライネック「もう…ウーサーには戻れぬのか?」
ペンドラゴン【□□□。】
モルガン『消え去りはしない。ブリテンの竜は、正しき者と共にある。──厄災は、役目を終えるのだと』
CCA「それが…ウーサーさんの生き方というのですか…」
ペンドラゴン【…──!】
ルイノス「きゃあっ!?」
キャストリア「飛び立った!?何処に──!?」
モルガン『心配ありません。彼が燃やすのはもう、厄災ではありません』
そう、それは──
【………!】
高速戦闘形態から変形し、爪牙と剣を有した赤き竜鎧の騎士に変化したペンドラゴン。厄災の役目を終えたと判断した彼は、しかし自壊ではなくアトランティス・ボーダーの甲板へと再び姿を現した。それはチルノ達が勝ち、オーディンが鍔迫り合った時と同じくした時。
『……ペンドラゴン、着陸。どうやら、最後の勝負を挑んでくるようだ』
ネモの言葉に応え、甲板に集うマスター達。当初の予定通り、炎の厄災はグランドマスター達と睨み合う形になる。
正確には、最早ペンドラゴンに戦う理由は無かった。罪過の妖精達は皆滅び、最早罰するべき妖精などどこにもいない。妖精獄は、一掃された。
しかし、ペンドラゴンを構成するは吸収した妖精の呪い、呪詛。そんなものを残すわけにはいかない。更にペンドラゴンには、他に狙いがあった。
それは、アルビオン。復活を果たした無垢なる竜の妖精。自分とは対極の位置にある竜の妖精。あれこそが、新たなる理想郷に至るに相応しき竜と彼は判断した。故にこそ…
炎の厄災に堕ちた赤き竜は罪人に殉じ退治され、竜の鱗と皮、爪牙に当たる素材を託すべきと考えたのだ。
『最早アレは厄災ではない。救世主トネリコの伴侶、赤き竜ペンドラゴンである。グランドマスターズよ、総員の敬意を払い──呪いより解き放つのだ!』
ペンドラゴンの前に至る、数多無数の強者達。かつて遠い日、聞き及んでいた黄金の旅団。もういない伴侶だった者が全てを託した相手。
マスター、サーヴァント。互いに全力を尽くさんと相対する者等を見て、ペンドラゴンは唸りを上げる。
【────■■■■■!!!】
最早厄災としての威風や迫力は無い。ただ、その身に残された呪いを種火として燃え上がらせ、黄金の旅団に向けて叩き付けるのみだ。
「来るぞ!皆!」
「戦闘準備だ──!」
先程戦った者達。その仲間達。それらを再び目の当たりにしても、彼は決して怯むことが無かった。人型に自らを落とし込み、呪いに溶かした魂に刻み込んだ剣技たる技術と、莫大極まる魔力放出を以て無数のサーヴァント…黄金の旅団に牙を向いていく。
「ぐおぉおっ!!熱、いってぇえ!!」
「油断しないの、ベリル!ロマニが教えてくれたのだから。彼は救世主の伴侶だった人よ。弱い訳ないわ!」
過剰なまでの火力、過剰なまでの出力。それらを僅かの絶え間なく繰り返し、繰り返し、ペンドラゴンは振るい続けた。辺りの雲が霧散、蒸発し、周囲の気温が大凡人の住めぬ気温に至るまで魔力を、火力を、放出し放ち、剣に乗せてブレスの如くに叩きつける。
【………!───!!】
ペンドラゴンの大火力は、無尽蔵の妖精の罪過や呪いを変換し打ち放つもの。罪人を灰燼と化し、それらを魔力として貪ることで半永久的な火力と動力を確保する。
しかしそれらは最早行われない。概念的にも物理的にも、妖精達は砕かれ二度と這い出ることはない。今ペンドラゴンが使っている魔力は、いよいよ自己存在維持のための魔力なのだ。
「怯むんじゃないわ!ここで逃がしたら元の木阿弥じゃない!」
「回復は続けるわ!負けないで…!」
自身が欠けていき、喪失していく感覚。遥か地平線の雲を焼き尽くし、空を赤く焦げ付かせるような魔力料は、しかし燃え尽きるロウソクのように力を一向に衰えさせない。気を抜けば、骨もチリも残らない圧倒的大火力、そしてサーヴァント達を一斉に相手取る剣技の極地。
【!!!!!】
それは希望へと託す、破滅への疾走。最早肉体は鎧に変わり、呪いに魂は溶け果てた。その身に宿りしは戦争で、退屈しのぎで、道楽で、罪業で散っていった魂がもたらした怨恨と呪詛。
その妖精獄の負債を、ペンドラゴンはひたすらに炎に変え焼き放った。最早それが身を構成する一節なれど、彼は爪牙に剣を苛烈に、どこか荘厳に振り回し黄金の旅団に叩きつけていく。
残すわけにはいかない。妖精達の業を。
持ち越すわけにはいかない。輝かしき国と未来に、吹き溜まりの呪詛等を。
何も護れず、救世主が尊厳と自身を投げ捨てることを良しとしたのが自らの過ち。それこそが、自らが厄災を名乗った理由であり原罪であるのだろう。
ならばこそ、全身全霊にて振る舞う。己が最早何者であるかなどに興味はない。何者であろうと関係ない。
ただ──未来に託せるものがある。妖精達はその愚かさで。人間たちは愛玩動物に作られたが故に何も未来に残せるものを見出だせなかった。
それを、ペンドラゴンは怒りの中で嘆いたのだ。この地を訪れた大切な来客に、何ももてなすことができない。未来における希望を何一つ残せない。
【………!!!】
最早名前も、顔も、何を語ったのかも、肌を重ねたのかもすら忘れ去られたその中でも、救世主が目指した世界の形だけは過たない。
ブリテンは滅ぶが必定であろうと、来客やこの地に足を踏み入れた来賓に、何一つ国として残せないなど王としての耐え難き恥。そんな自負が、ペンドラゴンを五体を喪失していく哀しみや苦しみ、安堵を捻じ伏せ、カルデアを圧倒する理由であった。
【…!】
この国は、何か素晴らしきものを残せたのであろうか。旅人が、来て良かったと笑顔で帰還できるような何かをもたらすことが出来たのであろうか。
「カイニス!合わせろ!」
「分かってるぜ、アタランテ!」
ただ滅びるべきものを、ただ露悪さを見せつけるだけで辟易させたまま帰らせるなど許されない。彼女らの奮起と奮闘には、必ずや報いなければならない。
ただ滅びるべきが滅びるのではなく、救いようのない国にも、輝けるものは此処にあるのだと。そう、示すかのように。
【…………!……!!】
やがて、ペンドラゴンは動きに大いに精彩を欠く。油が切れた機械のように、日に晒された吸血鬼のように。それは黄金の旅団たるもの達の必死の奮闘。自らの構成呪詛と魔力を戦闘に充足した戦闘から、六名を越えるマスターとサーヴァントと戦闘を繰り広げた。甲板は爪牙の跡かつ、炎に晒されかつて無い被害を極めど航行に微塵も問題はない。
「カドック!瞬間強化だ!」
「解ってる!」
サーヴァント達の宝具、マスター達の支援と絆。それらはペンドラゴンの炎を退け、刃を受け止める盾であり切り裂く刃。それらを懸命に繋げ厄災に食らいつく黄金の旅団のマスター達。
【…………!!】
やがて、ペンドラゴンは一線を超えた。苛烈な攻撃ができなくなり、やがてまともに立ち上がることすら定かではない程に肉体の呪いは消えかかっていた。
「当方は竜殺しである。しかし今は、その怨念のみを殺すまで」
「好機なり」
一騎当千の英霊達に、やがて完全に追い込まれんとするペンドラゴン。その末路は、定まらんとしている。そして、それは彼にとっても望むところだった。
【!!!】
圧倒的な存在達に対応し、最後の最期まで燃料たる魔力を使い切る。常軌を逸していた事に、彼はグランドマスターズのサーヴァントの宝具すらも阻むことを可能とした。無尽蔵の魔力、否。呪詛を火炎に吐き出し続けた。
【───!】
それらは、希望へと至る道筋を開くため。竜の因子を持つ自らの片割れに、希望を託すため。
「くたばれぇえぇぇぇっ!!」
「はああぁぁぁぁぁぁっ!!」
【!!!】
最大級の攻撃を感知しながらも、その攻撃は避けれずにいた。それこそが、雌雄を決する最後の一ピース。
【───!!!!!】
全身に、いや魂に不可逆の傷を受けた。致命傷であり、それを補う魔力も底を尽きた。
一時間にも及ぶ大戦闘の末、最早呪いは尽きようとしていた。それは即ち、炎の厄災鎮静の時。
【…………、…………】
最早、油の切れた機械の如く。ペンドラゴンは確信した。最早妖精達の憎悪は消える。全てが灰燼に帰した。
ならば、自らは躯を残さねばならない。勝者のために、その報奨として。
【………!!】
最後の力を振り絞り、ペンドラゴンは浮き上がり、よろよろと離脱する。それを追撃戦とするものは…誰もいない。
【………………】
最早身体は大破寸前だ。それでも彼は飛び、至らんとした。
赦免の瞬間はすぐそこに来ていた。それこそが、新たなる国の建国の日。
それはもう、見ることはできなくとも。
彼は最後に、自らを託す相手を見つけていたのだ。
ヴィマーナ
ペンドラゴン【………、………】
ギルガメッシュ「──────」
最後の力を振り絞り、ペンドラゴンは転がり込むように黄金の船へ座礁する。
最早まともに立ち上がることすらできない。グランドマスターズは確かに、炎の厄災へと打ち克った。
黄金の王は何も言わず、ただ真摯にペンドラゴンを見つめていた。
その時。
ブライド『ペン、ドラゴン?』
…彼が託すべき相手が、その名前を呼んだ時。
【……………───】
彼は解放されたのか、はたまた安堵の咆哮か。
末期に、仲間達を想い。
もう名前も思い出せぬ、遠き伴侶を想い。
いずれ至る、理想郷への道標たる夢を懐き。
目の前の白き竜に全てを託し。
【………………………──────】
炎の厄災…ペンドラゴンは、全ての燃料を使い果たし、事切れた。彼を蝕んだ4000年余りの呪いは、最早既に消え去った。
ブライド『ペンドラゴン…お疲れさまでした…』
ただ、『竜にのみ纏える』であろう鎧と爪牙を残して。
それを受け止めた白き竜、アルビオン・ブライドたる妖精は、それをそっと撫でた。
その瞬間まで、彼女の愛した世界を迎えるために自己を焼き続けた厄災。
その鎮静を、労るように。
…邪悪なる妖精達の末裔は、完全に滅亡し消滅した。
これにて、待ち受けるは赦免のみ。
救世主の伴侶であった赤き竜は、最期まで…
誰かの為にのみ燃え盛る、苛烈なる秩序の竜であったのだ。