人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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トネリコ『ウーサー…託すことが出来たのですね。あれこそ、あなたが目指し辿り着いた世界を救う竜の姿…』

トトロット「トネリコ!あの…ボクは…その…」

トネリコ『心配しないでください、トトロット。お互い、何を責めることがありましょうか』

トトロット「…あぁ…!トネリコ、奈落の虫、ヴォーティガンはもう瀕死だ、今なら討ち果たせる!」

トネリコ『そのようです。星の蝗に全力を尽くすため、決着をつけましょう!』

チルノ「なら、あたいに任せろ。もう助けるべきは助けた。なら、倒しやすいように凍結させる。そこを砕け」

トネリコ『…確信に至りました。あなたの眠っていた力、その潜在能力。それを引き出していたのは、誰なのか』

チルノ「?」

トトロット「あぁ。…許しを請う奴等をアシスト出来るように、ずっと力を貸していたんだな…」

トネリコ『大恩は厄災の終わりを以て。──ありがとう。祭神ケルヌンノス』


妖精達の救世

核を抜かれ、指導者も討たれ、最早風前の灯の命運となった奈落の虫、ヴォーティガーン。そもそもブリテンは滅び去っているが故に、その本領は発揮しきれぬものですらある状態だ。更にオベロンという影であり、本体を喪った今。頼りなく悶えるのみとなる。

 

しかし、その実態はどこまでも虚だ。討伐するには、それを討ち果たすための実が必要だ。奈落の虫がいては、トネリコの術式は本当の意味で完成しない。

 

「これが、オヤブンとして出来る最後のアシストだな。厄災と滅びは、子分どもの手でやっつけるべきだ」

 

その為に、チルノは此処にいたのであろう。その力、氷という液体を個体にする凍結、固定の相性は実体を定義する、単純な定着において無類の概念を有しているのだ。それは、当然ながら奈落の虫へと突き刺さる。

 

「凍れ!滅びの先を邪魔するな!」

 

チルノの叫びと共に、奈落の虫の周囲もろともが時間、概念、物理的にも完全に停止していく。地獄の氷結により、奈落の虫という存在は単純な固形物へと堕していく。

 

この溢れるばかりの才覚はチルノ自身が有したものであるが、その潜在能力の蓋を少しずつ開き後押ししていた意志は確かに存在する。それは、巫女と同じく自身の意志や魂を確保していた神そのもの。ケルヌンノス神その人である。

 

彼は魂を切り分け海へと逃がし、妖精国にて罰の終わり、許しという概念となった。同時にトトロットの憎悪から自己破壊を防ぎ、赦しへの布石を担った。

 

チルノはその圧倒的な潜在能力を持ちながら、歪な程に精神と自覚が未成熟であったことから、妖精を見定めるケルヌンノスはあろうことか心配し、憂慮したのだ。未来に酷いことにならないように、少しずつ、彼女のリミッターを解いてあげようと。

 

赦しの要領で彼女を見ていたケルヌンノスの計らいにより、今チルノは力に相応しい人格を手に入れた。箱庭にいるために封じられた妖精眼、氷の力。それは善き妖精たちの確かな力となった。

 

【ル、ォ…ォ─────】

 

それはケルヌンノスの願いの成就。奈落の虫への引導。即ちチルノの役割とは、残滓たるケルヌンノスの善の依代。

 

ケルヌンノスは彼女と共に、ずっとずっと善き妖精達を助けていた。甘きに過ぎる善神であるが…

 

赦しを請う必要など無かったのだ。ケルヌンノスはずっと、彼女達を待っていたのだから。

 

『ピンク色の勇者よ、あなたがモルガンの騎士、妖精騎士ウーサーですね』

「ポヨ!」

『一緒に決めましょう。我等に力をお貸しください!』

 

「ポヨイ!!」

 

【ならばカルデアからの支援物資だ。我らが永遠の天敵、宇宙の救世主よ、皆を物理的に導け!】

 

ニャルの声が響き、天空よりそれをカービィに齎す。それは、超大型モンスタートラック。カービィが有するポテンシャルの発揮の為の触媒。

 

「ポヨ〜イ!!」

 

カービィはモンスタートラックに噛み付き…いや、頬張りの要素で合体する。限界にまで引き伸ばされたカービィ・モンスタートラック。魔力が限界まで充填され、即座に発進態勢が整う。

 

「ホープ、ビリィ、ライネック、バーヴァンシー!トトロット!行きますよ!」

 

「「「「了解!!」」」」

「最高だぜ!救世主一行の突撃だ!」

 

「道はあたいが作る!」

『ではその道に、私が風で導くわ』

 

チルノの氷の道、オーロラの風の導きにより、ふわりとトネリコ・モンスタートラッカーが浮かび上がり、いよいよエンジンに火がかかる。救世主達の旅路が、今こそ結実する。

 

【ブライド。君も何かやってやれ】

『オベロン?』

【もうあんなもの、いらないんだろ?きっちり後始末をさ】

 

オベロンの言葉に頷き、ブライドは赤き鎧を展開し魔力を凝縮する。排熱するはずの熱すらも内に回し、周囲を蒸発させる勢いの熱を溜め込みつづける。

 

『ポヨーーーーーーーイ!!!』

 

妖精騎士ウーサー、カービィの猛進は、天にかけられた氷の道を加速度的に疾走する。オーロラの風の後押しと、チルノの氷のスリップ効果で、カービィのいた地表から天空の奈落の虫に、秒刻みで速度が高まり続けていく。

 

『ウェールズの皆、オークニーの皆。見ていてください。数多無数の助けを経て、私は使命を果たします』

 

トネリコもまた、何重にも魔力障壁を重ね突進に備える。善なる妖精達を載せた渾身の疾走にて、彼女は確信する。

 

『救いの刻は此処に。私一人では決して叶わなかった救世主の歩みを支えてくれた皆様に、心からの感謝を』

 

星の蝗は、ビーストΩが送り込んだブリテンに存在しない滅びの要因。ならばこそ、本来の滅びとはこの奈落の虫。ケルヌンノスが抑え、そして遂に姿を表した存在との決着の時。

 

あまりに長い苦労があった。あまりに長い絶望があった。あまりに惨い運命があった。あまりに遠い宿命があった。

 

それでも、歩みは止まらなかった。赦しを得た妖精たちをこそ信じ、救世主として素晴らしい世を願い続けた。

 

それの最後の障害が今や目の前だ。ケルヌンノス神への赦しを告げ、このブリテンに巣食う厄災そのものを討ち果たせたならば、救世主の悲願は果たされる。

 

『妖精たちよ。黄金の旅団よ。本当にありがとう。──きっとあなたたちに見せられるはずです。理想であり幻想であるが故に、何者にも侵せない理想の國の在り方を』

 

何千年もの旅路が報われる。何千年もの苦しみが今終わる。疾走する騎士の車輪の音は、胸の高鳴りのごとく。

 

「落ちるなよお前ら!普通に死ぬぜ!」

「むぅ、オレの走る速度よりかなり速い…やるな、妖精騎士カービィ!」

「ホープ、僕に掴まっているんだよ!」

「うん!皆一緒だよ!トトロット様も!」

「ごめんな…ありがとう!さぁトネリコ!」

 

かつてを旅した仲間達。此処にいなくとも、ウーサーと、エクター。そして、ブライド。

 

『はい!──さぁ、カービィ!どうか!』

 

「ポヨーーーーーーーイ!!!」

 

全ての無念は報われる。全ての苦心は救われる。これはブリテンに生きる者たちへの、最後の巡礼。

 

『この一撃を以て!妖精達に救済を!!』

 

『「「「「「「我等の罪を、許し給え──!!!」」」」」」』

 

願いを込めた疾走は、車体を燃え上がらせる。眼前に、完全に凍結したヴォーティガーン。

 

『最大解放──!ペンドラゴン・スマッシャーーーーッ!!』

 

同時に、ブライドも自らのエネルギーを完全凝縮。然る後に一気に完全開放。全てを焼き溶かす必殺の奔流として、それをヴォーティガーンへと撃ち放つ───!!!

 

【オォ、オ………オォオォオォオォオォオォオォ────────!!!!!】

 

それは、末期の断末魔。最後に砕け散る運命より、逃れ得ぬ終末への到達を知らせる末期の咆哮。

 

トネリコ達は、ヴォーティガーンを貫いた。ブライドの一撃は、ヴォーティガーンを焼き尽くした。

 

この瞬間、妖精達は真なる救世を果たしたと言えるだろう。ブリテンを滅ぼす根源を、神すら封じるだけで精一杯なものを、確かに此処に討ち果たした。

 

「逃がすか!ヴォーティガーンに染まっていた者として、責任は取る!」

 

トトロットは砕け散ったヴォーティガーン、奈落の虫の残滓を素早く自身で吸収する。それは、繋がっていたが故の咄嗟の判断。

 

(まだ終わりじゃない。あのバッタを何とかするためにも!そして──)

 

「ポヨーイ!!」

 

突き抜け、そして落下を始めるカービィトラッカー。それは地表数千メートルからの落下となりかねなかったが…

 

『無事ですね!回収します!』

『ウーサー!いえ、アルビオン!感謝します!』

『はい!』

 

トネリコ達を助けるは、エクターが打ち、ウーサーが残し、オベロンが尊んだ竜の妖精。赤と白の竜。

 

 

カービィと、救世主達を助け。ブライドは天空を力強く飛翔するのであった──。

 




オーロラ「あぁ…やったわね、皆…」

チルノ「これできっと、ケルヌンノスも文句はないな。子分として、最高の働きだ!」

オーロラ「後は、星の蝗…!」

チルノ「そっちはきっと騎士王とキャストリアが…むむ?」

チルノ達は見る。

星の蝗の胎動は、まだ終わっていないのだと。
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