人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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星の蝗、アバドン。それは、全てを喰らい行進する蝗害の擬神化。全てを貪る、神より与えられし裁きの具現。

それは今、カルデアと善き妖精達に度重なる攻撃を受け、その命運は尽きたかのように思われた。
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しかしそれは、憤激を顕にしたかのような咆哮を上げ、自らの身体をより黒く、より漆黒へと変化させる。その怒りと憎しみを明確に示すかのように。


そして──驚くべき変化が起こった。

ゴルドルフ『な、なんだね、あれは…』

アバドンが、突如四散。構成していた蝗達が霧散し、海の彼方へと向かい飛び去っていく。逃げたか、撤退か?そう考えた者達の思案を、即座に否定するその変化。

蝗達が一箇所に集まっていく。過密に過密を極め、片端から互いを押し潰さんばかりの密度にて、無数の虫達がそこに結集していく。

それは新生。アバドンという存在の核を利用した事による、神の命令の執行。

『奪い、貪り、埋め尽くせ』

その命により、かつてこの世界そのものを食らい尽くした『記憶』を再現し、そうあるようにと自身、再定義し、再構成した姿。

ロマニ『まさか、アレは──セイレムで見た…!』

──白き巨人、セファール。その戦慄の姿を神より与えられし、終末の巨人。

それを、神を騙る何者かは再現すらしてみせたのだ。

天命は一つ。

愚かなる愚者達に、神の裁きを。

生き残る者こそ、我が寵愛に足る子羊たろう──

【──────■■■■■■■■■■■■■■■■ーーーーーーーー!!!!!】



【星の蝗】


【アバドン・セファール】


目覚めし真の終幕、見えし巡礼の末

「アバドンが…姿を、変えた…」

 

キャストリアの呆然とした呟きの通り、アバドンはその姿を変える。人型の巨人、海より伸びる、天にも届かんとする威容の巨人の様相。それは人よりも、神々を畏れ戦かせる姿そのもの。神々の時代を衰退させた、永遠の戦慄の証。

 

『こちらオーディン。あの姿は間違いない、一万二千年前に全てを喰らい、収穫した白き巨人セファールだろう。星の蝗が、星に刻まれた蹂躙の記憶を読み取り再現したと思われる』

 

「た、確かに見た目は女性に見えなくも…と、というよりアレ!アレを見てください!空と、海!」

 

CCAの指さした通り、アバドン・セファールの現れた方向に信じ難き変化が訪れる。そう、終末の巨人の名はまさにそれを表していた。

 

「消えていく…空も、雲も、海も、何もかも…!」

 

アバドンが向いているのが、妖精達の死骸たるブリテン。数km離れた彼方の、アバドンの背中に位置する世界の全てが『消えていく』。かき消されるように、吸い込まれるように。初めから、そんなものは無かったかのように。

 

『フェンリルがかつて同じ現象を生み出した。アレは世界のテクスチャを切り取り吸収しているのだ。アバドンという奈落の王は、今世界そのものを貪っている』

 

「ビミョーに奈落の虫と属性が被っていた彼は何を!?」

 

『奈落の虫はあくまでブリテンの終末を担っていた。だがアレは、世界そのものを喰らい尽くす神の創りし裁きの代行。それらが貪り尽くすはまさに世界そのもの。──アレは今、世界という『織物』を喰らい尽くしているのだ』

 

空があった場所は黒く。海があった場所は断崖へ。海が奈落へと落ちていき、黄昏はガラス細工のように砕けて黒に消えていく。巨人を中心に薄氷が砕けていくように、その存在は世界そのもの、世界の在り方を貪っていた。

 

『アレこそ、全ての神々が膝を屈した収穫の再現。セファールの文明吸収そのものだ。偽神とやらは、少なくともその力は決して万物の父の名には恥じないらしい』

 

『ありがたい御高説だが落ち着き払い過ぎではないかね!?アバドンが迫りくるのはもしかしなくても…!』

 

『無論、ブリテンだ。剪定が始まる以上無くなりはするであろう歴史だが、あのアバドンを有していれば次は汎人類史だろう。なんとかして阻まねばならん』

 

阻む、といえばシンプルだが、それは目の前の絶望そのものを相手にとても楽観的に言えるものではない。今も尚、アバドンの眷属と軍勢は死闘を繰り広げている。あちらに回せる戦力は、カルデアとアトランティス・ボーダーしかない状況だ。ブライド、トネリコの連合体は奈落の虫に全身全霊を費やした。CCAはトトロットを救うために魔力の大半を一時全装填。速やかにチャージするには時間がかかる。

 

【──────■■■■■■■■■■■■■■■■ーーーーーーーー!!!!!】

 

雄叫びをあげ、迫りくるアバドン・セファール。更に恐ろしきことに、少しずつ、少しずつ行進のスピードが上がっていく。水をかき分けるような動きから、少しずつ、少しずつ歩行へ、そして走行へ。

 

『足下の無の海を高速で消化している。足枷の水を無くし加速度的に進行が速くなっているな。512mの巨体でよくやる』

 

『アバドンが、ブリテンに到達すれば…!』

 

『当然、トネリコの術式や遺体毎全ては無に帰すだろう。…異聞世界にあたらぬトネリコ達は剪定され、妖精国は完全に消滅する。止めねばならぬ。なんとしても』

 

オーディンの言うように、最早一刻の猶予もない。ブリテンに向けて疾走する戦慄の巨人を、極めて迅速に打ち払わなくてはならないのだ。迷う暇すら、致命となる。

 

「私が行く!マシュ、騎士王、キャストリア!準備して!」

 

躊躇いなくリッカは決断した。あの全てを巻き込み滅ぼす奈落の王へと相対する決断を。

 

「マシュのロード・アヴァロンを使えば、世界まるごとアイツから護れる!そのスキにキャストリアのロンゴミニアドと騎士王のエクスカリバーを使えば、あんなバッタ巨人一撃だって!」

 

『確かに威力は申し分ない。理論上、エクスカリバー・トネリコと騎士王、キャストリアのバックアップがあれば撃退はできる。けれど…』

 

『世界のテクスチャを切り取る相手に吶喊を行う。その危険なリスクを容認できるのね、リッカ』

 

ロマニとオルガマリーに、リッカは迷いすらせず応える。

 

「私の護りはマシュだよ。マシュの護りが、私達を裏切ったことなんて一度だってあった?」

「先輩…!」

「…はい。御機嫌王の乖離剣すら防ぎきりし至高の防御。それは世界の粛清にこそ振るわれるものです。マシュなら、きっと」

 

「──勿論です!!天下無敵、空前絶後の超絶後輩!マシュ・キリエライトに死角などあるはずがありません!皆様の人生を、完璧に守護してみせましょうとも!」

 

リッカ達の信頼に、マシュは涙ぐみながら胸を叩く。そう、それはリッカの中で分の悪い賭けですらない。拮抗以上なら、こちらの勝ちなのだから。そういう信頼は、絶対に揺らがない。

 

『ふふ、そうよね。心配はしていないわ。──アトランティス・ボーダー転身!最大戦速でアバドン・セファールに突撃し、聖剣の射程内にリッカ達を導くわ!』

 

「では、ブリテンの守護は私に…いいえ!私達とケルヌンノス様にお任せください!」

『ヌン!ヌーン!』

 

名乗りをあげしはルイノス、並びにケルヌンノス。六人の妖精、そしてウーサー。

 

「オレたちがケルヌンノス神の霊基の核となり、かつて巨大を誇っていた大いなる祭神の姿を呼び覚ます。アバドンなど、真正面からぶつかり押し返せる」

 

『カルデアのケルヌンノスは汎人類史のケルヌンノス。かつてセファールの来襲からルイノスを助けた実力は折り紙付きよ!』

 

「私が皆様の力とケルヌンノス様を繋ぎ、ブリテンを護る壁となります!どうか皆様、あの恐ろしき虫の打倒を!」

 

ルイノスは最早呪いから解き放たれ、巫女として万全を期している。それにより、いよいよケルヌンノス神の全力を引き出すことが叶うのだ。

 

「妖精の聖剣の担い手として、皆の宝は護り切ろう。黎明に生きた者達、全てを注ぎ込むことで」

 

『『『『『『おー!!!』』』』』』

 

「行ってくれ、皆。──魔物どもの産み出した地獄のブリテンを閉じ、誰もが夢見る輝ける世界の到来を見せてくれ」

 

『ヌン!ヌン!ヌーン!!』

 

「──約束するよ!絶対に、生きて帰るって!」

 

「……そっか。うん。そうだよね。カルデアの皆は、躊躇いなくあんなのに挑める人達だもんね」

 

キャストリアは頷き、杖を握りしめる。それは、彼女の中で改めて決意と決心を固めた証。

 

「私も行きます。ブリテンにいるトネリコやカービィ、ホープ達、何よりケルヌンノス神の亡骸、そして未来に繋がる礎を護りましょう!」

 

「うん!!さぁネモ、一気に飛ばして!」

 

『了解だ。面舵いっぱい、全力転身!アバドンに向けて最大戦速!アトランティス・ボーダー、最終突撃命令!!』

 

『これが最後の攻防よ!かつての収穫のようにはならないと、見せつけてやりましょう!』

 

「はいっ!!」

 

「見せよう。──星を救う輝きを」

 

一行を乗せたアトランティス・ボーダーは、星の末端と化した無のテクスチャ、その中心のアバドンへと突進する。

 

聖剣によりアバドンが祓われ、赦免は成るか。

 

アバドンに全ては貪られ、ブリテンもろとも汎人類史が滅ぶか。

 

長き長き、赦免の巡礼は今終わる。

 

その行く末を、オーディンと黄金の王は静かに、厳かに見つめていた──。




ウーサー「では行こう、皆。まずはブリテン周囲の皆の援護に回る!」

ルイノス「はい!カルデアにアクセス、ケルヌンノス神を召喚します!」

ケルヌンノス『ヌーン!』

ミラ『わーい!生ヌンノス!生ヌンノスだー!』
レイン『このモフモフ…久しぶり…』
ケルヌンノス『ヌーン…ヌーン…!』

ソイル『再会の挨拶は後だ』
ファング『サボるとアレらの同類だぞ!』

プルム『私達を一時的に燃料にして、ケルヌンノスへ!』
ウィンダ『大いなる祭神の肉体を此処に!』

ルイノス「ウーサー、我等の力を!」
ウーサー「あぁ。聖剣よ、束ね給え!」

ケルヌンノス『ヌーーン!!!』

ブリテンの海に、それは現れる。

巨大な、肉体に妖精達の聖剣製造の際の魔力を有する、500mクラスに対抗生成された祭神。

トネリコ『あれが、汎人類史の…!』

ウーサー、妖精、巫女。それらが全て揃った究極の善神の大いなる顕現。

核にウーサー、ルイノスを迎え、善き全てを護るために起動する!

その名は───!

ルイノス「おいでませ!宝具発動、『目覚めし大いなる善神(アウェイクニング・ケルヌンノス)』!善き生命全てに守護を!!」

善神ケルヌンノス『ヌウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーン!!!!!』

虹色に光り輝く、汎人類史の善神。それが今、善き妖精達の旅路を守護せんと立ち上がる──!!
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