人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
バアル『ぬおっ…!ケルヌンノスか!』
(腕の一振りで、眷属どもを皆殺しか。なんという力であろうか…!)
ルイノス「今のは『
『ヌウゥゥゥゥン!!』
ルイノス「『
オーディン『ルビ怖っ』
ルシファー『やぁ、バアル!そっちは大丈夫かい?』
バアル『ルシファー様!ご無事で…ッ!』
ルシファー『こっちはなんとか落下を止められたよ。いやぁ、デミウルゴスもやるもんだね。力だけは』
バアル『大事、ないのですか…!?』
ルシファー『僕?あぁ、当たり前さ。でも、軍勢は皆バカンスかな。溢れてた呪いにあてられてね。暫く活動できないね』
バアル『…こちらが片付いたなら、すぐにそちらへ』
ルシファー『ゆっくりでいいよ。せっかくなら楽しみなって。今から始まるのは──』
──紛れもなく、二つの世界を救う聖戦さ。
「『
最大戦速、その駆体が駆け抜けられる全身全霊を以てアバドン・セファールに突進していくアトランティス・ボーダー。眼の前に在りし巨人は、世界のすべてを虚無に飲み込みながら猛然と突進を敢行する。一歩進めば海は干上がり、空は黒く染まり、テクスチャ諸共黒き身体に吸い尽くされる。それは猛然と、ブリテン全てを喰らいつくさんと直進し来たる。その本能のまま、その使命のままに。
故に、カルデアは…マシュはそれを阻まねばならない。全てが虚無に消し飛ばされ、異聞帯として当たり前に滅びるという結末から、それら全てを護らねばならない。
奇妙なものだ。滅びる世界を、ただ滅びさせないが為に護るなど。滅びるしかない世界を、無意味なままで終わらせぬが故に抗うなどと。それはまさに、矛盾に満ちた選択だ。放っておけば自ずと消えるものを、来賓のカルデアが命を懸けて護らんとする。
「オルテナウス、最終承認!完全駆動、承認開放!コード詠唱、ロード・アヴァロン!リミッター解除!!」
だが、そうするだけの価値は既に見出している。そうするだけの宝物は手に入れている。命を懸けるだけの財宝は、カルデアはとうに見つけている
「『これは、己自身の決断である』!!」
大切なものを、命懸けで護る。それを害するものより、全力で護る。戦う理由は単純で、護る理由は明快だ。
『承認。オルテナウス、全リミッター解除。霊基、全力駆動。魔力パス、完全ブースト。最終宝具装填』
ただ、素晴らしいものを手に入れて。ただ、大切なものを喪いたくない。歴史の在り方や、どちらが正しいかなどは二の次だ。
【■■■■■■■■■!!!】
ただ、皆で迎える素晴らしい明日と未来の為に。
「『
彼女の守護は、在るのだから──!
「『
『総員衝撃に備えて!!』
『来るぞーっ!!!』
アバドン・セファールの全てが、滅びとなってマシュに叩き付けられる。
円卓から吹き出す人理そのものが、巨大なマシュのビジョンを取る対粛清絶対防御へと変化する。その二つは、世界を揺るがす大振動となって波及し、ブリテンそのものを大激震させる波濤を巻き起こす。
【■■■■■■■■■!!!!】
「はぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあーーーーーッッッ!!!!」
それは世界を滅ぼす熱量を受け止めるに等しい行為。それは世界全てを担うに等しい行為。アトランティスボーダーから生み出されし守護の光は、マシュとアバドンを白と黒の区域に完全に二分し完全なる拮抗を演じさせる。
「これが…汎人類史の光。正しき歴史の編纂を歩む、今を生きる歴史の輝き…」
トネリコは、ブリテンの全てはそれを見つめていた。まさにそれこそは救世の光そのもの。世界を神の粛清から防護する絶対防御。
【■■■■■■■■■!!!】
「ぐぅっ───おおおぉぉぉぉ!!!」
尋常でない反動と痛みを絶え間なく受けて尚、マシュはその防御を崩さない。それが使命だと、デミ・サーヴァントでありながらも戦い抜く為の理由だと彼女は懸命に奮い立つ。
アトランティス・ボーダーの推進力をもってして、アバドンの質量を弾き返す事は叶わない。無限か、一瞬かの拮抗とせめぎ合いをマシュは懸命に演じている。
筋力、技術。そういった類の多寡ではない。マシュの護る意志、アバドンの本能。そのどちらが勝つかの大一番である。
【■■■■■■■■■────!!!】
アバドンの使命こそは、全てを貪り喰らうこと。神により与えられ、黒き巨人に成り果てようとも。神に従う奈落の王故にその本能の行使は絶対だ。アバドンの周囲の世界が、ガラス細工のように砕け散っていく。
「はぁあぁぁあぁあッッッ!!!」
それに対し、マシュは人間一人の心と意地だ。守り抜く勇気。助け合う奇跡、未来を掴む決意。人間が持つ、心の有り様こそがその防御を決して砕けぬものへと鍛え上げる。
世界は二分されている。アバドン、マシュ。拮抗が崩れしは、世界の命運が決まるその時。
「────!」
その人間などがいるべきでない終末、最後の審判の場をリッカは一歩も動かない。マシュの背後に、彼女のマスターとしての任を全うしている。
『カルデアの貯蔵魔力をマシュに!ロマニ、可能な限りの魔術強化を!』
『勿論だよマリー!マシュ!リッカ君!カルデアは君達と一蓮托生さ!負けるなんて考えてないよ!』
『アトランティス・ボーダーはご心配なさらず!とことんまでやっちゃってください!』
仲間達もまた彼女を、世界の全てを護る者達を全力で支える。
世界を滅ぼしに来たのではない。ただ、ここにしかない宝物を手にする為にやってきた。
誰かに歪められた結末や末路ではなく、正しきものを、在るべき場所に戻すため。
「トネリコさんや、皆さんの奮闘を…無下には、させません…!!」
マシュは見てきた。救世主達は皆苦しみ続けていた。善なる者達は皆、厄災や絶望に呑み込まれていくこの世界の有り様を旅にて見つめていた。
それは、あまりにもあんまりではありませんかと。彼女の心はそう感じていた。
浮かべられる笑顔がどこにもない。喧騒も、営みも、何もかもが存在しない。ひたすらに罪と、終わらない罰が蔓延るこの世界にて、それはあまりにも悲しいことではありませんか。
汎人類史が、異聞帯に救いを齎すことは無いのかもしれない。世界の在り方や行き先、正しきを決めるは王と世界であり、個人が救いなどを示すのは、勝利した歴史にあるものの皮肉や嫌味でしか無いのかもしれない。
でも、それでも。在るべきものを在るべき結末に。最後にこの物語を『めでたし、めでたし』に持っていけるように。
【いろんなひとが、いろんなことをしたけれど。けっきょくみんな、だめでした】では、あまりにも痛ましい物語ではありませんか。あまりにも報われない、悲しい物語ではありませんか。
物語は、希望に溢れていてほしい。物語を読んで、物語の人物の無事と幸福を願うように。せめて触れ合い、絆を結んだ人達には幸せな未来を迎えて欲しいから。
「彼女達の頑張りは!希望は!!未来は!!」
当たり前に滅び去り、それでおしまいではあまりにも虚しく悲しいから。それを覆す力と意志は、異聞帯そのものが持っているのだから。
「決して──間違いなどでは無いのですから──!!!」
その後押しこそ、カルデアの戦い。誰もが見たことのない、しかし誰もが望む幸福に至るために。
「おぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉお──────!!!!!」
彼女は叫び、その守護を全開とするのだ──。
【■■■■■■■■■……!!】
やがて、アバドンの背後の世界が砕け散った際に異変に気付く。
これほど拮抗していながら、先程より一歩も先に進めていない。あと一歩が、どうしても先に進まない。
喰らうこともできず、侵すことも叶わず。完全に進行を阻まれた、黒き巨人。
『アバドン・セファール!侵攻速度ゼロになりました!!』
『マシュが押し留めてくれている今がチャンスだ!一気にここで仕留めるんだ!』
「──では、騎士王。最後の決めをよろしくお願いしますね」
「行くのですね。キャスター・アルトリア」
「はい。マシュや皆が作った、最高のチャンスを更に彩ります。騎士王、あなたの救世が叶うように!」
マシュの背後に浮かび上がり、キャストリアが厄災たる巨人を睨む。
「対厄災武装、龍脈閉塞型武装ロンゴミニアド!全起動──!!」
その終末を乗り越えんが為に。
──真なる救世を、果たさんが為に!
キャストリア(魔力も充分。術式も完璧。うん、あの時の何もかもがいっぱいいっぱいで、無茶だったときとは何もかもが違う)
【■■■■■■■■■!!!】
キャストリア(これならやれる。思いっきり、世界を救う戦いができる!───うん、そうだよ。そうだよね)
リッカ「キャストリア──!!」
キャストリア(私も…皆への罪を、償わなくっちゃ)
楽園カルデアに…ううん。
完全無欠の結末を夢見て頑張る皆への、懺悔と謝罪を込めて。
私は、救世の為の槍を放つのです──。