人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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「解雇、ですと?」


「あぁ、これからオレはオレと死合う。魔神も出す。メイヴも決闘と来た。――最早勝敗は決したようなモンだ。てめぇはてめぇで好きにしな」

「好きに・・・」

「奴等を殺すも、てめぇの本懐も果たすも好きにしろってこった。――行け。テメェの虚無はテメェで埋めやがれ」



「・・・・・・お世話に、なりました」

「世話なんぞした覚えはねぇよ、間抜け」


「フェルグス、どうしたの?あなたも好きにしていいのよ?」

「好きにするとも。そしてお前も俺を好きにしろ、メイヴ」

「・・・え?」

「『魔神を使う際は、俺を材料にしろ』。クー・フーリンには本懐を遂げさせてやれ」

「・・・そういうこと」

「邪魔はさせん。ヤツと、お前のな。――はじめての対等たる女とのくんずほずれつ、期待しているぞ?はっはっは!」

「対等じゃないわ!!ライバルよ!!命を懸けた、クーちゃんを懸けた、ね!!」


慢心とは、無自覚な慈悲である

クー・フーリンの宣戦布告により、決戦は三日後に定まった

 

 

 

それまでは、各々思い思いに過ごすことを許された

 

 

「弾薬のマガジンあるかい?」

 

「ほいよっと」

 

準備に余念がないもの

 

 

「行くわよネロ!マシュコンには負けないわ!」

 

「うむ!上げていくぞ!」

 

 

「マシュさん!本物のアイドルの力を教えてやりましょう!」

 

「あ、アイドルではないのですが!」

 

士気を高めるもの

 

 

「はぁあぁあぁ!!」

 

「ハァアァッ!!」

 

 

鍛練に余念がないもの、様々である

 

 

――そして、ワタシ達もまた、ワタシ達が望む過ごし方を行っているのだ

 

 

――クー・フーリンが敵兵をほぼ全滅させた以上、対応できる懸念材料は絞られてきます。まず間違いなく――

 

《魔神柱、であるな。そして戦闘の余波にてこの広いだけの大地が崩れてしまっては事だ》

 

 

――はい。英雄王を初めとした大英雄の全力戦闘では、このアメリカが先に潰えてしまう可能性が高いはずです。・・・皆様本当に凄い・・・

 

《うむ。我等が仕事はまだ尽きまじ、であるな。よし――総てに布石を打つとするか、エア!》

 

――はい!

 

 

総ては、完全無欠の勝利のために――!

 

 

 

『クラン・カラティンの概念に、魔神柱の概念を押し込めた連鎖顕現が出来るか、だって!?』

 

 

まずは魔神の発案者、ロマニ・アーキマンに王が懸念を問う

 

 

「奴等は72柱の魔神の概念に寄生し、数を保つのであろう?格落ちの怪物の概念とはいえ、当て嵌めることは可能なのではないか?」

 

――ワタシ達の懸念が現実のものになるのなら、ワタシ達の戦力総てをそのままつぎ込んだとしても、必ず犠牲者は出てしまうだろう

 

「どうなのだ、魔神の元締めよ。我の予測は是か非か?答えるがよい」

 

 

杞憂ならばそれでいい。だが、可能性が一%でもあるのならば、それを潰すために奔走するに躊躇いはない

 

 

『その発想はなかった・・・!あり得る!十分に有り得るとも!多少、いやかなり無茶な召喚だが向こうには聖杯がある!多少の融通は通すはずだ!彼等は使い魔!そういう概念当て嵌めには抜群に相性がいい!』

 

「やはり可能、か。――三日の猶予を取ったのが思わぬ形で功を奏したな。ふはは、何事も常に余裕を以てゴージャスたれ、とは至言よな」

 

――それでしたら英雄王、『戦いの場を整える』と『戦う皆の強化に努める』が目下の課題になると進言します

 

《うむ、そして我には一挙両得する手段が見えたぞ》

 

――本当ですか!?

 

《然り。エア、令呪のストックをかき集めよ。奴等に三画ずつ渡すものと、ルーラー用の特別製をだ。その間、こちらの雑事はこちらで片を付けておく》

 

――解りました!英雄王!

 

《うむ、お前ならば必ず取り揃えられよう》

 

 

――任せてください!王の期待に、必ずや応えてみせます!

 

 

(君にはわんこコスが似合うよ必ず。わんこエア――あっ、尊い――パタパタ尻尾を振るエア、尊い――)

 

張り切るエアを見て、いつの間にか作り上げた虹色の丘の上でパタリと倒れるフォウ

 

フォウ――!?

 

『な、何をする気だい?まさか前みたいに一人で薙ぎ倒すとかするのかい?』

 

「たわけめ。アレは特例の中の特例だ。我が至宝に触れられでもせぬ限り、我が全力など出すものか。それこそ、天地が裏返ろうともな」

 

――胸に沸き立った照れと誇らしさは、今はしまっておく。今は、自分にやるべきことがあるのだから喜んでばかりは・・・えへへ・・・

 

(あっ――)

 

虹色の鼻血を出し、ゆっくりと倒れるフォウ

 

 

フォウ――!?

 

 

「我は王。率いる軍があるならば、それを生かす戦いをするのみよ――マリーはいるか」

 

王の呼び掛けに、オルガマリーが即座に返答する

 

『はい、ギル』

 

 

「魔神の、いや・・・この戦いの切り札はお前に他ならぬ。お前の『世界』は、魔神どもの致命的な刃となろう」

 

『私の固有結界、『人理に寄り添う、希望の華』ですね?』

 

それは、魔神達が取り零した致命的な楔、不要と断じた少女の人生の答え

 

 

彼女の固有結界は皮肉なことに――魔神柱を相手取るに最適と言っていい性能を誇るのだ

 

 

「そうだ。中に招いた者のステータスを極限まで下げる第一の結界。己の力を頼りにする肉塊には致命的な一打となろう。味方の弱体化は勘定に入れずともよい。我が打ち消す」

 

『はい。それに私の心象は、破壊されてからが本番――長期戦には誂え向き、というわけですね』

 

オルガマリーの固有結界、それは二段階に分けられる。最初の段階は、彼女の劣等感、コンプレックス、ヒステリーなどを形とした、不毛かつおぞましき大地。その中に入った者は宝具も含め、三ランクもステータスをダウンさせられてしまう。――サーヴァントは、宝具すらも封印されるに等しい。だがそれは魔神も同じこと。今まで魔神柱に苦戦を強いられなかった答えは、オルガマリーの尽力と献身にこそあるのだ

 

そして――固有結界が破壊された際に、その真価は発揮される

 

破壊され、真価を見せた固有結界の中にいる『カルデア所属のサーヴァント』は例え霊核を損壊していても復活し、ステータスを二段階強化される。カルデアの令呪も即座に補填され、こちらに絶対有利、いや『絶対勝利』の環境が約束されるのだ。相手のステータスはそのまま、というオマケも付けて

 

「そうだ。頃合いを見て我がお前の心象に『天地乖離す開闢の星』を放ち、真価を発揮する。奴等には宝具を封印する戦いを強いるが――ケアはこちらでしてやろう。そこに我が財の強化も合わせるのだ。こちらが力負けすることはあるまい」

 

 

それを発揮するには『世界を破壊する一撃』が必要なのだが・・・それは、英雄王という絶対強者の前には問題にはならない

 

・・・そう。彼等が『無価値』と断じた彼女が、巡りめぐって自らの脅威を徹底的に脅かしているのだ。因果応報とはこの事だろう

 

 

『解りました。私に任せてください』

 

――そして、今の彼女なら、どんな重圧にも負けはしない。・・・そう言ってくれると思ってたよ、オルガマリー所長

 

 

『ですが、懸念されるのは範囲です。私の固有結界を投射するにしても、アメリカ全土を覆うとなると、とても・・・』

 

「案ずるな、我に秘策がある。お前たちは何憂いなく、準備に勤しむがいい」

 

『秘策・・・?』

 

 

「ふっ、種をすべて明かしては遊興になるまい。期待に胸を踊らせ、サンタを待つウルク在住ギルガメッシュくんのように待つがよい!・・・いや、ヤツの下には来なかったな、すまぬ、忘れよ」

 

『うふふ、魔神なら・・・私も力になれますから期待していてくださーい♥』

 

「うむ。では貴様らに三日の間休息を申し渡す。存分に休め。戦いは定まった。休むことも戦いの定義よ」

 

 

『解りました。――あなたも無茶はしないで下さい、ギル。あなたはカルデアの中核、万が一にも喪うわけにはいかないのですから・・・』

 

オルガマリーの心配を受けながら、王は笑う

 

 

「ふはは、心得ているとも。だが案ずるな。今の我に、過労死はあり得ぬ!存分に期待するがいい!」

 

 

――令呪と、固有結界。これで『サーヴァントの強化』と『アメリカの保護』は相成った

 

 

あとは、それを維持、範囲を拡げるための機構である――

 

 

 

「何!!このプレジデントハウスを直流的に大改造し!直流的にオルガマリー君の固有結界を維持、投射させる為の直流装置にするだとぅ!?」

 

 

猛り狂う発明王エジソン。実に端的な説明もくれて、手間が省ける

 

 

『そうとも。この万能の天才ダ・ヴィンチちゃんが監修、設計し。資材と素材をギルくんが提供する。そして君がそれを維持する。完璧なプラン、最高のスタッフ!それを後押しする無限の財にパトロン!出来ないことは無いはずだろう?エジソン君?』

 

「無論だとも!!」

 

獅子のごとく、エジソンは吼えた

 

 

「例え無茶でも成し遂げるが発明!これほど恵まれた環境にて失敗など有り得ぬ!いや、むしろ劣悪だとしても私は挑もう!成功するまで!何度でも!!」

 

「覇気がみなぎっているな。余程治癒が効いたとみえる」

 

 

「そうとも!!私はもう二度と、私の背中に続く子供たちを裏切るわけにはいかんのだ!さぁダ・ヴィンチ君!設計図を見せてくれ!必ず納期には間に合わせよう!!」

 

『いいとも!弟子が頑張るんだ、師匠も負けていられないからね!』

 

「うわっはっはっはぁ!!私たちに任せてくれ!今こそ私の耐久EXが輝きを発するときだ!『発明の為ならいくらでも徹夜できる』となぁ!!うわっはっはっはぁ!!!」

 

 

「喧しい!!覇気は買うが、当日にまでとっておけ!たわけめ!材料が足りぬならば言え!いくらでも追加発注を受けてくれるわ!」

 

――後は一人の天才、一人の発明王を、信じるのみだ

 

 

「さて、後は・・・」

 

「ギル~!お疲れ~!」

 

 

呼ばれて振り返ってみれば、鍛練後のマスターが駆け寄ってきた

 

 

「見てみて!これ、槍!」

 

「次は槍の鍛練か?」

 

「うん!書文先生とスカサハ師匠と兄貴が教えてくれてるんだ!」

 

(ますます強くなるのか・・・本来の邪龍だったらボクたちだって殺るか殺られるかなのに・・・)

 

――ワタシ達のマスターは最強なんだ!

 

(最凶なんじゃないかなぁ)

 

「――ふむ、よし」

 

何かを閃き、王が告げる

 

「リッカよ。此度のサーヴァントの編成、お前に任せよう」

 

「え、いいの?」

 

――あぁ!それはいい考えですね!

 

《であろう?今や世界に、こやつほどサーヴァントに精通するマスターはいるまい。こやつならばもしや我よりも的確に運用を果たすかもしれぬ》

 

(・・・本当に変わったね。誰かを当てにするオマエなんて、反則にも程があるんじゃないかい?)

 

フォウの呆れたような笑いに、大笑で応える王

 

《ふはは!変わったのは貴様も同じであろうが獣よ。その身に宿す理、もはや比較ではあるまい?》

 

王の言葉に、ふんすと胸を張るフォウ

 

(まぁね。今のボクは至尊の獣さ!――新人類を名乗るバカでも大量発生すれば、ボクも本気が出せるんだけどなぁ)

 

――フォウの本気!?見たい!凄く見たい!背中に乗れる!?乗せて!?

 

(もちろんさ!ボクは君の尻で背中を磨きたい!)

 

《乗るのはかなりの確率で我だぞ》

 

(・・・・・・・・・エアを宿してるからセーフ!!)

 

――わぁい!いつか、フォウと王とワタシで、戦う日が来るんだ・・・!

 

無邪気にはしゃぐエアを見て

 

 

((無言の消滅))

 

音もなく消え去るフォウであった

 

 

フォウ――!?

 

 

「解った!私に任せて!ばっちりしっかりやってみせるから!」

 

「うむ。我等の戦闘の要はお前だ。我が命を下すより、奴等は遥かに容易く受け入れようさ」

 

「解った!じゃあ、私に任せて!」

 

手を振りながら、お風呂場に駆けていくリッカ

 

 

「私を信じてくれてありがとう!私、頑張るからね!」

 

 

「――たわけめ。貴様ほど奮闘している人間は他には数えるほどしかおらぬわ」

 

 

王が静かに呟く

 

 

《――さて、これで一通りの懸念は果たしたか?後は、奴等の健闘次第よな》

 

――はい!では最後のお仕事に参りましょう!

 

《む?エア、新たに仕事を発注していたのか?》

 

――それはもう!とびきりのお仕事です!

 

(そうそう。エアに感謝しなよ?お前の過労死を防いでくれる唯一人のプレシャスだぞ!エアと対抗したかったら黄昏の女神を持ってこいって話さ!尊さと愛で世界が満ちてボクとニートが吹っ飛ぶ未来しか見えないけどね!確実にボクは吹っ飛ぶ!こんな風に!)

 

 

尊さと愛で滅尽滅相されるフォウ

 

フォウ――!?

 

《む。気になるではないか・・・部屋に行けばよいか?》

 

――あわわわ、はい!御呼びしてあります!

 

 

《御呼び・・・?まぁよい。お前の提案なのだ、悪い筈があるまい》

 

 

そうして王を待っていたのは・・・

 

 

 

 

 

 

「はい、ギルガメッシュさま。はぬまーん印のバナナパフェです」

 

「こちらはカレーとナンだ!さぁ味わってくれ!余と、シータの特製だぞ!余と、シータの特製だ!」

 

エプロンをつけながら仲睦まじく料理を振る舞う、ラーマとシータが待っていた

 

《・・・成る程。休み、英気を養うことが我の仕事、と言うわけか?》

 

王の言葉に、エアはにっこりと笑う

 

――はい!差し出がましいですが、王の体調管理はワタシの最優先事項ですから!仕事は納めて、ラーマくんやシータちゃんと語らいましょう!

 

(この場に満ちる尊さで三消滅はイケるなぁ!)

 

ラーマとシータが仲良くキッチンにて料理をする様を見てほっこりするフォウ

 

 

《フッ、まこと気の利く事よ。――後でアルトリア二人、ネロ、ジャンヌ、マリーも招いてやるとするか》

 

――はい!皆で楽しく、英気を養いましょう!もちろん、ワタシとフォウもね!

 

(うん!よぉし!いつでも座に飛び込めるようにしなくちゃ!尊さが世界に溢れる渇望を懐くんだ!あ、でも・・・女神にワンハグされて追い返される未来しか見えない)

 

――フォウがまた異世界の電波を受信してる・・・

 

(エアの尊さに特別な理由付けなんて必要ない。ウンコマンはさっさと奇形嚢腫にワンパンされてどうぞ)

 

「さぁさぁ席に座れ英雄王!余とシータには、そなたに返しきれない恩義があるのだからな!」

 

「はい。――バナナ、いっぱい食べてくださいね、ギルガメッシュさま」

 

「ふははははは!!アホガールならぬ、ラマガールというやつか!よかろう!存分に我が舌を堪能させるがよい――!」

 

「はいっ。ラーマ、愛しています」

「僕もだ、シータ!」

 

御揃いのエプロンを着用しながら、二人は料理を続ける

 

 

――これが、尊いって事なんだね、フォウ

 

(そうだよ、エア。君そのものさ)

 

いいながら、因果地平の彼方へ旅立つフォウ

 

(コスモスへ、いつか、君と――)

 

フォウ――!?

 

騒がしい休息は、楽しく過ぎていった――




『英雄王、すまないが――』


「む?カルナではないか。施しの英雄たる貴様が乞うとは・・・よい、申してみよ」

『――オレに、いくつか宝具を貸してほしい』

「ほう?――理由を問うても構わぬか?」


『――完全無欠の、はっぴぃえんど・・・のためだ』

「――――フッ・・・よかろう。それを聞いては、ゴージャスとして黙ってはいられぬな――」
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