人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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オーディン『非常に責任を感じている』

ヒルド「うわぁ、お父様すっごく凹んでる…」

オルトリンデ「お父様、お気を落とさず。誰にとっても必要な事だったのですから…」

スルーズ「女神ヘル。これ程までに親和性の高い存在がいたなんて…」

モルガン「頑なですね…でも、解ります。私やトネリコ、我が妹も似たような…いえ、同じように信念を掲げたのですから」

ギルガメッシュ「チルノめ、無理な背伸びなどしおって。自ら成人になどなるものではない。幼少の我が千切れんばかりに首を縦に振る真理だぞ」

──使命感は、そうしなくてはならないという意志。強固ですが、そこに愉悦や笑顔が介入する余地などある筈がありません。王ならばともかく、この世全ての法など誰にも担えるものでないと思います!なんとか解ってもらわなくては!

ギルガメッシュ「──幻想郷の管理者、妖怪賢者めに連絡を回せ」

オーディン『…仕方あるまい。気は進まぬが…』

モルガン「?何を…」

ギルガメッシュ「何。簡単な話だ。道理を伝えるは友の役割。我が言うのだ、絶対の真理だぞ?」

オーディン『ヘルの血縁者を招く。…まともに言うことを聞くかすら未知数だが…幼子の笑顔の為だ、迷いなど不要としよう』


氷を溶かす暖かい代案を

「チルノが背負いすぎたって…!?確かに彼女、物言いはシンプルだけど愛嬌のあるいい娘なんだ。責任感の高さが裏目に出たのか…」

 

リッカがチルノの現状を伝えたところ、グランドマスターズは作業を中断して対策会議を結構することとなった。同じマスター仲間として、彼等は確かに一枚岩であった。カドックの分析に、皆が頷く。

 

「盲点を見落としてたわネェ。主人公や兄貴分ポジションにいる立場は、成長の機会が意外と少なかったりする。チルノちゃんは親分としてリーダーシップを育てたけど、その代わり責任感が強くなりすぎちゃったのね…」

 

「マシュから教わった、人の振り見て我が振り直せ…。それの最悪な見本が大量だったものね」

 

オフェリア、ペペロンチーノが鎮痛げに顔を伏せる。チルノとよくお茶会をしていた彼女達には、玉座に座る冷徹な彼女の姿はとても辛く映ったのだ。

 

「あたいが法、ねぇ。典型的な独裁者ルートじゃねぇのかいそりゃあ。完璧なルールなんてもんは猫の足跡、青いバラだ。あの愛すべきおバカに作れるとは思えねぇな」

 

「ベリルの言う通りだ。今のチルノは人に、妖精にルールを護らせようとしている。本来は、ルールが人や妖精を護るが通常だと言うのに」

 

ベリル、デイビッドはチルノの道の危うさを指摘する。完璧なルール、法とはつまりディストピアであり、そこに健全な未来は生まれないと。

 

「あんた達は物事ぐだぐだ考えすぎなんじゃないの?チルノがバカやってるなら、ただ叱って解らせてやればいいじゃない!」

 

「うむ。氷に沈む心を溶かすのは理屈ではない。我々、ひいては私達の熱いハートだ!!」

 

チルノとあんまり思考回路が変わらないぐっちゃん、賢いバカなキリシュタリアは気炎を吹く。ならばやるべきことは一つだと。

 

「というわけで私とキリシュタリアで説得に行ってくるわ!真祖と天空神よ!妖精に負けるわけ無いじゃない!」

「仲間のために協力は惜しまない!イクゾー!!」

 

「あっちょっと待って二人とも!人間の身体じゃ勝てないよ!?水分が七割の人体じゃ…!」

 

リッカの忠告も虚しく、数分後にはカイニスと蘭陵王にオブジェ氷像となった二人が回収され戻ってくる。勝負にもならなかったようだ。

 

「ダメだ。寒さで指示どころじゃねぇし、まともに言葉も話せねぇ。絶対零度の世界ってのはエゲツねぇな」

「魔術回路も、魔力もまともに起動せず。エーテルすらも凍結するかのような極寒…生物である以上、今の彼女に勝てる存在はいないかもしれませんね」

 

「あーもう!普段のうるさくて賑やかなアイツは何処に行っちゃったのよ!?」

「ふふふ、まさかこうまで手も足も出ない日が来るとは思わなかったね…!チルノ!グランドマスターズとして非常に頼もしいよ!!」

 

「カチコチにされたのに元気だな…。…リッカ、二人を見て気付いた事がある」

「うん。…凍らせただけで、外傷は一つもないね。それに、すぐに壊れる薄氷で…この」

 

すぐに強制送還された二人に命に別条はなく、それどころか騒ぐ元気すら有している。それは決して、カルデアやマスター達と敵対する意思はないという現れだろう。

 

「でも、だからこそ厄介だぞ。思いつきや気紛れじゃなく、確固たる信念でやっているってことだ。生半可な説得や懐柔では止まらないし辞めるつもりもない。僕はそういう決意表明に見受けられる」

 

「それは本当にその通りだよ。…チルノ、同族の妖精の最底辺を見ちゃった感じだから…」

 

カドックの言葉に、頷くリッカ。玉座に座り、全てを見据える彼女。ヘルの力やフェンリルの力に溺れたわけではない、女王としての振る舞い。

 

故にこそ、彼女は折れないし途中で曲げる事も有りえないことがわかってしまう。彼女にとっては理想郷を、子分を護る 親分の使命であるからだ。途中で投げ捨てる、という事は決してしないだろう。

 

「うぅ…リッカさん、皆さん…」

 

「ホープ!?」

 

すると、そこに現れたのはホープとビリィ、バーヴァンシーの三人。彼女と近しい子分の者たち。カチコチと手足の末端を封じられながら、リッカらの前へと現れた。

 

「チルノ親分と、帰ってくるのを懸けた決闘を行ったのですが…ボロ負けしてしまいました…」

 

「今のチルノに挑んだのか!?なんて無茶を…!」

 

「親分に伝えたんです。『僕等は親分と一緒に笑って過ごしたい』と。そうしたら親分は…」

 

「『お前らが笑顔ならそれでいい』ってよ。クソ!背伸びしすぎだぜ、親分!」

 

「背伸び…?」

 

「あの、緑と赤の錫杖の由来を聞いてみたんです。そうしたら、『故郷で友達と食べたアイスの色だ』って。これって、まだアイスが大好きだし友達の思い出を忘れてないってことですよね!」

 

ホープが顔を上げる。その顔には、切実なる祈りが浮かんでいた。恩人の未来を憂う切なる願いが。

 

「親分は変わってしまった訳じゃありません!ただ、皆を守ろうと背伸びしているだけなんです!親分だってホントは皆と、まだまだ遊んだりしたいはずだと思います!」

 

「思い出の品…いや、霊基の複合でも忘れられない彼女本来の無垢さ。それがあの…」

 

「スイカバー色の錫杖…」

 

「皆さん、お願いします!なんとか…なんとかして親分の無理な背伸びを止めてください!私達は親分が、チルノ親分の笑顔が必要なんです!」

 

「単純に、皆で辿り着いた世界なのに彼女だけを隔離だなんて僕は、僕等は納得できないんだ!」

 

「…皆。…親分冥利に尽きるね、チルノ…」

 

リッカは笑みを浮かべる。あの人間の悪性の極みのような地獄を切り抜けられたのは、彼女の真っ直ぐさがあったからだ。だからこそ、子分の彼女らはこんなにも真っ直ぐに彼女を慕うのである。

 

「勿論だよ!この世全てなんて、どんなものでも背負うのはめっっちゃ気合がいるんだから!チルノの無茶は止めなきゃね!」

 

リッカの言葉に、ホープとビリィの面持ちは明るくなる。早速対策の続行だ…という際に、バーヴァンシーが声を上げる。

 

「…要するに親分はアレだ。妖精の反転や暴走を危惧してああなったんだよな。悪妖精から、人間や皆を護りたいって」

 

「話を纏めるとそうだね。まぁ人間だって他種族マウント取れるほどまだ成熟しきってはいないけど…」

 

「不死関連で関わった人間皆死ね!」

 

「に、人間ヘイト・スピーチ…いや、無理もないけれどね!」

 

バーヴァンシーは考え込む。彼女は巫女の善性が妖精となったもの。妖精に関する発想は、冴え渡るものを要する。

 

「要するにだ。『キャメロット・オークニーにいる妖精が、誰かを傷つけない』って事を保証できれば。親分は引きこもらなくても良くなるんじゃねぇか?」

 

「そうだね!でもチルノが危惧していたのは妖精の反転しやすさだから、契約や約束を取り付けるのは彼女を納得させるのには弱いかも…」

 

『話は聞かせてもらったわ、リッカ』

 

「マリー!?」

 

ブォン、とモニター参列せしはオルガマリー。彼女は、それらの意見の結論を出す。

 

『妖精達に『生活インフラを提供する代わりに、妖精としての能力を制限する制度』を試験的に陛下に導入してもらうのはどう?どうやら藤丸君の世界のモルガン陛下は『存在税』として、妖精達から魔力を徴収していた代わりに国への参加を許していた。それを更にマイルドにするのよ』

 

「なるほど。それで妖精達に完璧と言わないまでも平等になってもらい、守る意思を見せない妖精をチルノが敷いた法で裁く。そうしたシステムならば…」

 

「今陛下に確認したよ!『チルノと協議して、妖精達への法を作る方針です』だって!」

 

「飴をモルガン陛下が、鞭をチルノの裁きが。それが法になれば、少なくともチルノ自身が全てを見る必要が無くなる!」

 

「これなら…!後はチルノを納得させるだけだね!」

 

「誰かの案を否定するならば代案を。これなら、情に訴えるよりは現実的か…!」

 

一同は動き出す。大切な仲間を、冷たい秩序から解き放つ為に。

 

「正しいかはわからない!だから、皆で正しい道を探していこう!チルノを取り戻すぞ〜!」

 

「「「「「おーっ!!」」」」」

 

一同は拳を掲げ、早速法案整備や制限魔術行使、霊脈の把握に努める。

 

その様子は──人と妖精の、互いを思いやる心があった。

 




オーディン『なるほど。法には法の折衷案か。少年少女と思いきや、現実的も対応をする』

ギルガメッシュ「自ら魂に澱みを加える真似など我が許さん。道理の解らぬ童の時分は、青い春よりも貴重な日時よ。チルノにはそれを思い知らさねばな」

──はい!幻想郷サイドも準備万端だそうです!

オーディン『…………気は乗らぬ。乗らぬが頼むぞ。『兄弟』』
プリテンダー・フェアリー『お任せあれ〜!迷える娘を導いちゃうぞ〜!』

紫「頼むわね、大ちゃん」

大妖精「は、はい!チルノちゃん…待ってて!」

〜氷獄

『モルガン・著 妖精法案』

チルノ「……………」

「ふりがなふってくれぇ…」

一人呟くチルノであった
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