人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ゴードン「!?」
ウタ「あと料理とか、運動とか、ふっこーとかも色々やる!あたし…もう泣くのやめる!」
ゴードン「ウタ…」
ウタ「ルシファーは言ってくれたの。もう一度シャンクスと、ルフィに会わせてくれるって。その為には、私が毎日毎日自分を鍛え上げなきゃダメなんだって!」
ゴードン「そうか…そうか、ウタ…!」
ウタ「あたし…なるんだ!ルフィが海賊王になるみたいに!あたしは!!『新時代の歌姫』になるっ!!!!!」
廊下
ルシファー「………ふふ…」
「な〜〜〜〜〜んで勉強しなくちゃいけないの〜〜〜〜〜〜〜〜……………」
新時代の歌姫になる。そしてルフィとシャンクスに再会する。それが、ウタの新たなる生きる目標となった。ルシファーを信じ、ゴードンから音楽のレッスンを受ける。それが、エレジアでの彼女の第一歩になったのだが。彼女はルシファーが持ってきた山程の参考書や教科書に囲まれげんなりしていた。
「当たり前だろう?バカに歌姫が務まるもんか。誰かにとっての幸せや、心や感情を知らなくちゃ。その為に世界のルールを知らなくちゃ君は何も成し遂げられない。僕も応援しよう!ハープ弾いてあげるから!」
「ハープはいらない!へたくそだから!」
「かなしい…」
「ウタ。楽譜を読む時、歌詞を作る時。読めなかったり書けなかったりしたら大変だろう?勉強は、必ず自分の為になるんだよ」
「…わかった。二人がそう言うなら…二人はあたしのファンと!先生だから!」
「あぁ…!私は、君を心から応援しよう!」
そこから、彼女の歌姫としての訓練は多彩を極めた。座学、勉強、歌の練習、そして女性に必要な花嫁修行はゴードンがつきっきりで行い、ウタの時間が無味乾燥にならないよう全霊を尽くした。
「砂浜ダッシュとか、瓦礫撤去とか、清掃活動とか!これも歌姫に必要な事なの〜〜!?」
「この大海賊時代では強くなくちゃ何にもできないぞ!最低限の力と気高き精神を持つための特訓だ!シャンクスやルフィに立派な自分を見せてやれ!さぁハープで応援だ!」
「やめて!げんなりするから!」
「いっぱいかなしい…」
戦闘訓練、精神鍛錬、奉仕活動を通じたノブレス・オブリージュの徹底はルシファーが担当した。ルシファーは彼女の歌声を愛しているため、彼女に必要とあれば全く容赦なく試練を課すのだ。
「シャンクスが君を黙って置いていったこと、それは君に言えない理由があるからだ。君がそれをシャンクスから直接聞けるだけの強さを身に着けたら、僕がシャンクスに君を会わせよう!」
「シャンクス…」
「信じる心を鍛えるんだ、ウタ。君が信じたいシャンクスはまだ死んでいない筈だ!」
「………うお〜〜〜〜〜!!」
「その意気だ!未来の歌姫!」
「シャンクス!!来ないならあたしが直接会って聞き出してやる〜〜〜〜〜!!」
ウタに英才教育を施すのに並行し、ルシファーも驚天動地の行為を開始する。そう───この世界を破壊するための鍛錬である。
「『覇気』。この世界において、『悪魔の実』と双璧を成す強さの根幹。──カルデアの皆に恥じない敵として、自分を磨かなくてはいけないね」
エレジアにて、彼はこの世界の強さを手に入れ、研ぎ澄ます事とした。彼は『悪魔の実の能力にかまけたバカ』は強者になれない事を理解した。ウタとの訓練の中で。
「!…!!……!!(声が、出せない…!)」
「成る程。悪魔の実の能力も万能じゃないね。ていうか悪魔如きが僕に敵うわけないけど」
彼は悪魔の実など必要としない代わりに『覇気』を研ぎ澄ます事とした。覇気とはこの世界の誰もが持つ意志の力。強者になればなるほど、当然の様に身に着けている力だ。
だが──『神に愛されたもの』であり、『天賦の才能』というものにおいて図らずとも全てを備えたルシファーには、本来ならば必要である覇気を習得するための長い長い訓練などは全く以て不要であった。
「覇気には三つに区分されてるってゴードンは言っていたね。順々に再現していこうか。…最初は、武装色の覇気」
武装色の覇気。身体の内側から出る覇気を纏う、見えない鎧のようなもの。
「わっ!ルシファーの翅が…真っ黒になっちゃった!?」
悪魔の実の能力者の中には、自身を自然現象の如くに変え本体の攻撃を無力化する力を有したものがいる。悪魔の実の『自然系』とされる能力者がソレだ。それの対策には、武装色の覇気が不可欠となる。
「六つの翅から絶え間なく──凝縮した武装色の覇気を放つ。近付く事なく、敵を破壊する。コンセプトはそんなとこかな?」
「(唖然)」
ルシファーの翅から放たれた武装色の覇気の光弾は、エレジアの大陸の一部を軽い発射で最初から無かったように削り取った。当たったものを消滅させる武装色の覇気。それが、ルシファーの力の一つ。
「エレジアめちゃくちゃにするな!バカルシファー!!」
「ごめんなさい!!」
武装色の覇気の習得を完遂したルシファーは次の覇気の習得に移る。他の覇気を読み取り、未来予知に近しい現象を使用者に齎す『見聞色の覇気』。
「ねぇ。ルシファー。今あたしが望遠鏡で見てる向こうのクジラは何匹?」
「………………子クジラ二匹、クジラが四匹」
「なんで分かったの!?気持ち悪い!?」
「ひどい!それはそれとウタ、今日の夜はパンケーキ食べてから寝ようとか考えてるよね」
「うわー!なんでわかるのー!パンケーキ取っておいたのに!?」
極めれば、気配遮断に未来視、読心などの精神に纏わる全てを可能とする補助向けの覇気。武装色の覇気と同じく、ルシファーの見聞色の覇気は最上位のものを備えていた。エレジア付近の海域全てを、その覇気でカバーするほどに。そうすれば、エレジアに近付く脅威を察知し、先んじて武装色の覇気の翼にて殲滅も可能だ。
そして最後は───
「──────」
「ぁ─────(くらっ)」
「おっと!良かった…僕には備わっててくれてたか」
数百万人に一人とされる王の素質。新世界にて覇王の頂点を決める資格。『覇王色の覇気』。それをルシファーは、ウタのシャンクスが行っていた情報を元に開花させる事に成功した。
「今の…。シャンクスがやってたのとおなじ。目の前のやつらが、睨んだだけでばたばたばたーって倒れるやつ…」
「まぁ、僕は天竜人と世界政府にしか興味がないから覇王なんてどうでもいいんだけど…上手くできたみたいだね」
威圧や気迫を覇気として転換したそれは、あまり強大に開放すると他者に感知されてしまう。その為に今は抑えた発現だったが──
(本気でやれば、今のところ海域纏めて威圧できそう)
ルシファーの大魔王としての素養を、覇気という技能と才覚として放出する。それにより、覇王色の覇気を研ぎ澄ましていく。覇王色の覇気の鍛錬は、素養持つ者が死闘を繰り返さなければ成長しない。しかしルシファーは元来備わった大魔王の極限の才覚を放出するのみなので、成長の余地がない。ただ、出力制限のみが課題なのだ。
「ルシファー、凄いね!覇気、三つも使えるんだ!」
「ふふん、当然だよ。僕は君の歌声を世界に届けるファンだからね!」
「ありがとう!でもなんでハープはずっとへたくそなままなの?」
「………覇王色の覇気の習得よりずっと難しいの、何かの間違いだと思いたいなぁ…」
ウタと共に、ルシファーも自らを鍛え上げていく。エレジアの再興や、世界政府の破壊と天竜人の処理のために必要な事を成す。
「最低でも十年は自分を鍛え上げてもらうよ、ウタ。勉強すればわかるだろ?この世界は…」
「うん。ロジャーが始めた大海賊時代。悪い奴らがうようよいる…でも、大丈夫」
「?」
「ルフィが、海賊王になる!新時代を、あたしとルフィがきっと作ってみせる!平和な世界で、みんなを歌で幸せにする!」
「…じゃあ、シャンクスはライバルかな?」
「ゔっ………ど、どうしよう…」
「あはは、まぁいいじゃないか。未来は君達にあるよ。好きなように世界を変えればいい。この死んだ方がいい世界を、少しでも良くしよう。少なくとも…皆が君の歌を聞けるくらいにね」
「うんっ!だからルシファー、ハープ上手くなってね!」
「…頑張ります………」
エレジアにて、歌姫の卵と大魔王はひたすらに自らを研鑽する。
(ウタ……本当に良かった…)
それは──彼女の人生の救いとなったと。陰でゴードンは人知れず涙していた…。
半年後
ウタ「わ!何このいっぱいの石!」
ルシファー「あまり触っちゃだめだよ。海楼石っていう、海の成分が形になった石だ」
ウタ「え〜。なんでそんなの集めてるの〜?」
ルシファー「強くなるためには必要なことなんだよ〜。今から銃作ったり刀作ったり忙しいんだ。ほら行った行った!」
ウタ「え〜!ルシファー付き合い悪いぞ〜!」
ルシファー「ごめんごめん。…あ、これ。渡しておかなきゃ」
『海楼石のネックレス』
ウタ「!」
ルシファー「そのうち、エレジアの外にも勉強しにいくよ。それをつけて離さないようにね」
ウタ「ルシファー…ありがとう!」
ルシファー「うん!…さて…」
…部屋の中には、ルシファーが『海中』を駆け回り採取した海楼石が山と埋め尽くされていた。
ルシファー「これを御機嫌王に納めて、協力を取り付けなくちゃね。世界を相手にするんだ、これくらいやらなきゃ!」
全ては、旧世界を破壊するために。
大魔王は着々と、神を騙る者達の支配への叛逆を進めていた──