人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ウタ「んー?あれ、おじさんって確か…カルデアの?」
ニャル【覚えててくれていたのか。私はニャル。新時代の歌姫、知己を得て光栄だ】
ウタ「チキ〜?ルシファー!カルデアの人来たよ〜!…って」
ウロヤソク「邪魔をする、歌姫よ」
レタッソク「我等は…元天竜人だ」
ウタ「天竜人!?あの…世界中の嫌われ者!?」
「…その天竜人だ」
「元、とはいえ…確かに我等は天竜人。世界中の嫌われ者だ」
ウタ「あ、でも元なんだ。じゃあ大丈夫!エレジアへようこそ…って、まだ復興途中だけどさ」
「よ、よいのか?」
ウタ「あたしが目指す新時代は、歌でみんなが幸せな世界なの。その中には、天竜人だっていてもいいの。元でもね!」
レタッソク「………成る程…確かに君は、新時代の器だ…」
ウロヤソク「ありがとう…!新時代の歌姫よ!!」
ウタ「そ、そんな感動するような事言ってないよ〜…?」
ルシファー『あ、ミョスガルドの友達?ようこそ、エレジアへ!』
ニャル【ルシファー。では、手筈通りに】
ルシファー『うん、ありがとう!』
【残された時間は残り四年…決行の日まで、カルデアのメニューをこの地で欠かさずこなし力を付けろ、レタッソクにウロヤソク。神の騎士団にどれだけ縋れるかに…奴隷解放の成否がかかっている】
カルデアの1日はこちらの1年。あちらで特訓しては4日にしかならないため、ウロヤソクとレタッソクはエレジアへと連行された。ここで潜伏し、徹底的に己を鍛え上げ、マリージョアの神の騎士団を仮想とした戦闘を行うレベルに至るのだ。
「全力を尽くそう。マリージョアの復興も両立しながらな」
「ここは新時代の『中立国家』…!何としても、ゴードン国王と姫君ウタにはその架け橋になってもらわねば!」
「ルシファ〜。あたし姫君だって〜!」
『ちょっとお淑やかさが足りてないね〜』
「あんだとぉ!!??」
「ありがとうございます…天竜人たる二人に、エレジア復興を支援していただける日が来ようとは…!」
【カルデアの特殊特記戦力…言わば異世界来訪組のメンバーにエレジア市民権を与えるつもりだ。民として、自警戦力としても非常に有用になるだろう】
『決戦の日にはカルデアに招集してね?カルデア職員を死ぬ気で護ってもらわなくちゃね♪』
ルシファーは普段と変わらぬ朗らかさでハープを鳴らす。彼にとって、カルデアは大切な同盟者であり神を超える宿敵である。生半可な侮りや見下しはありえない。
【約束する。では、レタッソク、ウロヤソク。武運を祈る】
「「任されよ!!」」
二人は力強く頷き、鍛錬メニューと復興スケジュールを確認する。カルデア各勢力が練り上げた、地獄の復興鍛錬に四年間従事することとなる。
『さて…となると僕も、ウタにきちんと期日を教えておこうかな』
「期日?」
『4年後だ、ウタ。4年後に…君をシャンクスに会わせるよ』
「!?」
突如提示された、約束の履行の期日。ルフィとは手紙でやり取りしているため、最後に果たすべき約束を…ルシファーは告げる。
『4年までに、君は人間としても歌姫としても大きく成長しなくてはならない。そこから更に2年後にはエレジアは完全に復興し、君は新時代の歌姫として世界に声明を告げる事となる。世界を相手に平和と自由を謳う、究極の中立国家として!』
「…新時代の歌姫としてのあたしの戦いが、もうすぐ始まる。そういう事なんだね。…でも、その前に」
『あぁ。──君は知らなくてはならない。シャンクスが何故君をエレジアに置き去りにしたのか。あの日エレジアに何が起きたのか。全てを、シャンクスから聞き及ぶんだ。それが…君の本当の始まりだ』
ウタの抜け落ちたオリジン。あの日の全ての始まり。それを知るシャンクスに、ウタを会わせる。そうすることで、ウタの止まった時間は真に動き出すのだとルシファーは告げる。それこそが、ウタという人間の真なる始まりであると。
「…シャンクス…。あの日に何があったのかを、シャンクスは知ってるんだよね」
『知っているよ。だから君は彼から答えを聞かなくちゃいけない。彼から逃げてはいけないんだ。君が心から、誰かを幸せにする歌を謳う歌姫となるためにもね。できるかい?』
「……………ん。解ってる。覚悟して受け入れなきゃいけないのも、シャンクスや赤髪海賊団の皆と真っ直ぐ向き合わなくちゃいけない事も解ってる」
『よろしい。そうすれば、君はきっと過去を乗り越えて…』
「ルシファーは…!ルシファーはどうするの?エレジアが復興して、全部が始まったら…」
『………』
ルシファーの目的は、トットムジカの楽譜。エアの誕生日記念に用意しようと狙いを付けた回収が最優先だ。本来なら、仕込みと教育、国の復興が終わればこの世界の何もかもが用済みなのだが…
『…実は決めてあるんだ。海賊を狩る『賞金稼ぎ』として、海に出て悪い海賊を潰していこうかなって。そうすれば、君やゴードンの活動資金にも困らないでしょ?』
ウタの声は、もう既に宝物と同じ価値を有しているので。その美しさを保ち、自らを律し続けるのならば。ウタがいつまでも、新時代の歌姫であるならば。
「良かった…エレジアに必ず、戻ってくるんだよね?どこにも行ったりしないんだよね?」
『……あぁ。この世界では、ここが僕の帰りたい場所だからね』
彼女の奮闘と頑張りを、脇で見守っていくのも悪くはない。そう判断したルシファーは、ウタにそう返した。この世界では、自分の居場所はここなのだと。それを受けたウタは不安げな表情を解き、一笑を浮かべる。
「約束だからね?あんたはあたしの第一ファン!永久ゴールドファンメンバーなんだから!」
『それはそれはありがとう。ではファンとして残り数年…みっちり君を鍛えていくとしようかな!』
「うん!…って!鍛えるのはファンじゃなくてマネージャーの仕事じゃ〜〜〜〜ん!!」
『マネージャーでもあるからね僕は!…まぁ』
「?」
『…これからもよろしくね、ウタ』
「うん!勝手にいなくなったら絶対許さないんだから!ルシファーはあたしのマネージャーだったりプロデューサーだったり、色々とにかく重要なんだからね!」
ウタは屈託なく笑う。それは年相応の煌めく笑顔であり、そこに陰鬱なものは一切ない。彼女は完全に、己の人生を彩っていた。
『僕に出来ることならば喜んで。君が僕より美しく在る限り、いつまでもどこまでも君を支えるよ、ウタ』
ルシファーも決して余裕をかましてはいられない。非加盟国の保護、海軍を見据えた鍛錬に入念な体制破壊。彼の動きにより、世界は良くも悪くも形や気風を大きく変えうるだろう。
【ルシファー様。海に生きる生物たちとの対話は順調です。皆解ってくれました…海の懐の深さには脱帽する他ありませんね…】
レヴィアタンも準備を進め、海を確実に水面下で支配していく。海難事故に天変地異、海の表情を自由自在に変えるなど、レヴィアタンに与えられた当然の権力である。何よりも海を活動基盤とする大海賊時代において、ルシファーはレヴィアタンを通じて既に海を支配していたのだ。
『さぁ、頑張って最後の仕上げに移っていこう!僕達が鍛え、僕達が望む世界は自分達で作ろうじゃないか!』
「おーっ!!!」
元気よく弾むウタの声を受けながら、一同は解散する。それぞれの未来を、カタチとするために。
【ルシファー様。お耳に入れておきたい事が。悪魔の実と呼ばれる者への情報です】
『悪魔の実?あのカナヅチになる割に合わない果実か。どうかしたかな?』
【はい、それが……かつて解放の戦士として注目を集めた『太陽神』の力を宿す悪魔の実が、この世界のどこかにあるようです】
『太陽神なのに悪魔の実なの?まぁいいや、その様子じゃ見つけられなかった?』
【ごめんなさい、ルシファー様。海の生き物たちに訪ねて得た情報でもあるので…】
『いや、大丈夫。それだけ解ればいいや、ついでに…』
【あ、ついでに悪魔の実もいくつか集めてきました。図鑑も用意しています。どうぞ】
『…手際が凄くいいなぁ…本当、嫉妬の魔王だなんて二つ名も考えものだ。君とアスモデウス、そういう感じが強いよねぇ』
【…あぁ、それと。私の加護を込めた海楼石の刀剣に銃、完成しています。お納めください】
『ありがとう、レヴィアタン!ゴールド・ロジャーは剣と銃で戦ってたから、僕も見習いたかったんだ!』
【ふふふ…海楼海神刀『リヴァイアサン』…目指せ最上大業物…銃は普通に『レヴィアタン』と銘を入れさせてください…】
『何から何まで助かっているよ。ありがとう、レヴィアタン』
【フフフフフフ…その御言葉で、沢山の苦労が報われました。引き続き活動し、アスモデウスをからかってやります…】
そんなやり取りを最後に、自身らはやるべき事を懸命に真っ当する。
街を直し、武を極め、革命に繋げる戦いを始める。
『天竜人を下界で殺せば…バスターコールの招集とかで中将数人と大将をやれそうだね!』
4年後に、全てが動き出す。
海賊王を目指す少年が、船出の旅に出る瞬間を以て…
【世界への叛逆者】として、ルシファーが閉塞しきった世界に、破壊をもたらす混沌となるのだ。
…この神への叛逆とは、彼が行う本懐そのものである。
世界は──ウタやルシファーの答えを待っていた。
そして…
舞台は4年後へ──
To Be Continued …