人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
竜王【────!!】
サタン【氷漬けに…】
クザン「悪いな…。一応、世界貴族のお膝元で暴れ回られると困るんだわ」
【今更…】
ボルサリーノ「速度は『重さ』…」
【!】
「光の速さで蹴られた事はあるかい」
【─────】
サカズキ「『流星火山』──!!!」
クザン「あらら…やりすぎじゃァねえか?」
ボルサリーノ「いんやぁ。世界貴族を狙ったんだ、これくらいはねェ……それに」
サタン【………………】
ボルサリーノ「まるで応えていないねェ〜〜……残念ながら………」
クザン「………………」
【海軍大将……海軍最高戦力……】
氷で竜王を凍らされ、光の速さの蹴りを受け、無数の溶岩の落下を一手に受けながら、サタンは何事も無いかのように立ち上がる。その身体と翅には、僅かばかりの損失や手傷も伺えない。
【想定外の実力だよ。………仮想していたレベルよりずっと下だ】
「何じゃとォ……」
【期待外れだと言ったんだよ。政府の犬たち】
「『八咫鏡』」
その言葉を言うが速いか、黄猿が素早く次の手を打つ。光の道を作り、光の速さで周囲を駆け巡る黄猿必殺の戦法。
【ピカピカの実…全身光人間】
「御明察ゥ〜。多分それが最後の言葉だよォ〜〜」
サタンの見据えた全くの逆。後頭部へ目掛けて黄猿が実体化した蹴りを放つ。視覚としても速度としても、決して対応も反応も出来ない一撃。
「死ぬといい…海賊達の見せしめにねェ〜」
そのままサタンの頭蓋を、光の蹴りが砕く──筈であった。だが現実は、全くの予想外へと事象を導く。
【『神避飛翔』】
「!!!」
サタンは振り向く事無く刀を抜き、その蹴りを受け止める。同時に刃と、六つの悪魔の羽から極限まで練り上げた覇気の刃を縦横無尽に放つ。
「その刃、それにこの斬撃はァ………!」
本来ならば桃色の刀身が、漆黒の様相を見せていた。その翅から放たれる覇気は、赤黒き色。それは武装色と、覇王色の…──
「〜〜〜〜!!」
極限に練られた覇気の直撃は致命傷に成りうる。覇気刃を回避しながら、黄猿は光に身体を分解させ離脱する。それはピカピカの実の離脱であり追いつける者は本来皆無…。
【いくら光で動こうと、脳の電気信号は精々00.10が限界…】
「!!」
【考える速度まで光にはなれない】
見聞色の覇気。心と未来を予知するまでに至ったサタンのそれは、黄猿の離脱予定位置と目論見を完全に見切り見破ってみせた。黄猿の背後を完全に取り、両手を構え──
(こりゃあ……いかん…!!)
黄猿は光から人に戻った直後。再び光にはなれない数瞬間の無防備な背後に向けて。
【『六王銃』】
「!!!!!!」
渾身の拳の叩き付けと、寸勁の理論で覇気を流し込み叩き込む。それは覇気を極限まで凝縮した覇者の一撃。直撃を受けた黄猿は上空より叩きつけられ…
【そこで寝ているといい】
「!……!!………!!!」
四肢に海楼石の銃弾を叩き込まれ、完全に沈黙する。光になれず本体にも甚大な被害を受けた。黄猿は完全に戦線離脱を余儀なくされる。
「──大将相手によくやるぜ。だが、ここまでだ」
【!】
瞬間、青キジことクザンがサタンに組み付いていた。完全なる奇襲、サタンには身動ぎすらさせない速攻。
「『アイスタイム』」
【──────】
ヒエヒエの実の冷気を直接叩きつけ、瞬時に凍らせる技。対処の暇もなく、永劫解けず死に至る必殺の間合い。サタンは成す術なく凍り付き、停止する。
「ちょいと卑怯だが…悪事の報いだ。悪く思うなよ、美少年」
サタン、並びに竜王も氷漬けにし、鎮圧完了と黄猿を助け起こしに向かう青キジであったが…。
【キシャアァアァアァァァァァァ!!!!】
「何だと……!?」
竜王は発熱し、絶対零度の氷河時代を一瞬で融解させ砕き活動を再開する。その熱量は、まさに規格外。
「おいおい…冗談だろ。一週間は溶けない筈の冷気だぜ…!?」
【一週間?……あまり笑わせないでくれるかな】
「!!」
それに倣うように、サタンの冷気も一瞬で溶け、融解していく。翅が再び羽ばたき、何事も無かったかのように歩みだす。
【お前達は何十、何百年の間…護るべき相手を悲しませ、怒りを募らせてきた?】
「………こいつァ……!!」
対処を、そう思うより先にサタンは動いていた。クザンの脳天を叩き壊すような、瞬殺の殴打。
【『雷鳴八卦』】
「…………………………!!!!!!」
【その程度の氷では冷ますことはできないよ。──天竜人に虐げられた人達の怒りはね】
鞘に収めた筈の刀剣で、瞬撃の棍棒の如き一撃を叩き込むサタン。現四皇『カイドウ』の一撃を覇気で再現した攻撃はクザンを昏倒、気絶に追い込むには充分過ぎる一撃だった。残るは赤犬、サカズキを残すのみ。
「おんどれェ!!!海軍を舐め腐るのも大概にせぇ!!!」
【!】
赤犬サカズキはマグマグの実の全身マグマ人間。触れるは愚か近付く事すら叶わぬ攻防一体の能力。サタンの肌が爛れるかのような熱量を纏い、サカズキはマグマの拳を叩き込む。刀でこれを迎撃するサタン。衝撃の余波にて、辺りに暴風が巻き起こる。
「海軍大将は最高戦力!!一人で何人も沈められちゃあ面子と正義が立ち行かん!!ここでお前はわしが仕留める!!!」
【…正義?】
「そうじゃァ!徹底的な正義!絶対正義!!海賊という悪を許すな!!!それがわしの、掲げる正義じゃァ!!」
燃え盛るマグマ。近接を維持してはサタンと言えど手傷は免れない。事実、肌が少しずつ火傷を刻み始めていた。リヴァイアサンが軋み、半歩、サタンが後ずさる。
【……───笑わせるなと言ったはずだ】
「あァ…!?」
だが、その言葉はある意味どんな言葉よりサタンを失望させ、嘲笑を呼ぶ。正義とは、彼が見た正義とはそんなものではない。
【天竜人の横行を許し、弱者の嘆きと叫びを良しとする。護るべき者よりも、権力と面子に尻尾を振る。海賊という悪のみを罰し、真に罰する者にはけして歯向かわない】
「おんどれェ……!!」
【何より…】
サタンは世界の情勢と仕組みを理解している。ならば絶対正義などというお題目がどれだけ空虚で、愚かしい皮肉であるのかすらも。
そして、何より。
【壊さなきゃ女の子がまともに歌も歌えない…】
「!!」
【そんな世界の───どこに正義がある!!!!!】
瞬間、サタンの覇気が膨れ上がる。その覇気の膨張に、サカズキのマグマの拳は跳ね飛ばされる。
「グァ…………!!」
だが、サタンの攻撃は終わっていなかった。全身に力を溜め、抜刀術の要領で限界まで覇気と力を練る。その破壊力は天井知らずに高まり、そして───
【『覇海』!!!!!!】
「─────────!!!!!!」
巨人族、エルバフの槍と言われる必殺の攻撃。それをたった一人でサタンは再現し、サカズキに渾身の一撃を叩き込んだ。武装色の覇気をふんだんに込めた、自然系の本体を破壊する…サタンという大魔王が十年間、ひたすらに自身を鍛え抜き習得した必殺技の一つ。サカズキは遥か彼方のマリージョア城にまで吹き飛び、叩き伏せられる。
【自分を無敵と勘違いした自然系の寿命は短い…それに加え、お前達海軍大将には致命的な隙があった】
サタンの前に、立つものはいない。四肢を打たれ、叩き伏せられ、吹き飛ばされ、戦闘など望むべくもない。
【それは…弱いものいじめに夢中になって、格上との対決の経験があまりにも少なくなっていた事だ】
スタスタと歩き、三人分の『正義の軍服』を回収する。それは不落の正義の証であり、海軍の絶対的正義の証明。
【僕を倒したいのなら、元帥の実力を兼ね備えてから来るんだったね】
その一つに袖を通し、虚の玉座へと歩みを進めていく。
【海賊という悪を許すな。海軍という狗を許すな。そして…】
その歩みを阻み、止められる者は存在せず。その存在を許されず。
【……天竜人という愚昧を許すな、だ】
海軍最高戦力、赤犬サカズキ、黄猿ボルサリーノ、青キジクザンは。
──此処に『完全敗北』を喫し。事実上、海軍の権威と権力は遥か地へと失墜したこととなる。
そして、サタンは歩み続ける。正義を退け、混沌の破壊の総決算。
『五老星』の存在する、パンゲアの玉座へと────。
「「「「「………………!!!!!」」」」」
(う、動けん………!)
(これは、覇王色の覇気…!!)
(なんという事だ…五老星たる我々が…)
(完全に動けんとは…!!!)
サタン【こんにちは、世界を牛耳る五人のおじさん】
(!!)
(あやつは…やつこそが今回の事件の首魁…!!)
【暫く座って足腰を休めるといい…楽に死ねるかどうかは君達次第さ…】
(叛逆の大魔王………サタン…………!!!)
To Be Continued……