人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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クー・フーリン伝説



「おぉ、おぉ――!なんと言うことだ・・・!我が手塩にかけて育てた、我が猛犬が・・・!おぉ――!おぉおおぉお・・・!!」


「見事だセタンタ!その齢でその武勇!お前はさぞ歴史に名を残す勇士になろう!」

「・・・・・・・・・」

「・・・どうした?セタンタ」

「どけ」

「ぬうっ!?」←国王


「鍛冶屋クラン。・・・すまなかった。アンタの大切にしていた犬をオレが殺しちまった。・・・知らなかったは言い訳にならねぇ。いくら嘆いても、ソイツは戻ってこねぇ」

「セタンタ・・・」

「だから――オレに、この犬の子を育てさせてくれ。そいつが育ちきるまでオレがアンタを護る。オレが、あんたの番犬になる」

「おぉ、セタンタよ!それは――!」

「誓約も立てる。『オレは生涯、犬を食わねぇ』。だから――泣かないでくれ。知己が涙を流すのを見るのは、辛ぇ」

「――・・・セタンタ・・・」


「はははは!ここにお前は誓いを立てた!ならばもはやお前には新たな名をつけねばなるまい!」

「テメェは伝えてなかった事を少しは悪びれろや・・・」

「では――これよりお前はクランの猛犬!『クー・フーリン』と名乗るがよい!」

「クランの猛犬、ね――あぁ、悪くねぇ響きだ!」


涙を流す鍛冶屋クランの為に誓いを立てる。主人の為に、『クランの猛犬』になることを誓う

「オレに任せろ!主人に決めたヤツは、何がなんでも守り抜いてやるからよ――!!」



クランの猛犬

生前では有り得ぬ、ゲイ・ボルク同士の激突――

 

 

 

「チッ――!」

 

 

「――ッ」

 

 

その答えは、即座に現れた。アメリカの大地を抉りながら遥か後方へ飛び去っていく真紅の魔槍、大地に深く埋まり、星の岩盤を抉りながら掘り進む鏖殺の魔槍

 

 

――同じ必中必殺を謳う槍。来歴が違わば相討ちとなるその渾身の一撃は、しかし・・・同じ来歴、同じ存在と認められたことで『全く同じ軌跡』『全く同じ呪い』がぶつかりあい、激突、互角の現象となったのだ

 

互いに、頼みにする槍は手元から離れた

 

「宝具、封印。――転身」

 

――無いなら無いなりに殺すだけだ

 

赤黒く、禍々しい海獣の鎧を。その身に宿す呪いを総て解き放ち解放し、おぞましき魔獣と変貌する狂王クー・フーリン

 

「行くぜ、全速解放――!」

 

――背を見せるなんぞ出来るかよ!

 

蒼と銀の近未来型の流線フォルムの鎧。各種ブースターを瞬間点火し、雄々しくしなやかなフォルムとなった猛犬が迅ける

 

ならばと――決断した二頭の猛犬は共に、最奥の秘技を展開する――!!

 

 

 

「『『噛み砕く死牙の獣(クリード・コインヘン)』』――!!」

 

 

紅き海獣、蒼き猛犬

 

 

「おぉおぉおっ――!!!!」

「フン――」 

 

互いを噛み殺さんと、牙を剥き出しに吼え猛り、互いにぶつかり喰らい合う――!!

 

「カァアァッ――!!!」

 

――規格外な筋力で振るわれる、鏖殺の牙。薙ぐ、叩きつける、抉る、殴る、叩き込む、捻り潰す

 

猛り狂うクー・フーリンの怒りを具現化した一つ一つの一撃がサーヴァントを葬り、皆殺しにし、屍の山を築き上げる身の毛もよだつ漆黒にして深紅の連撃

 

「あぶねぇじゃねぇか!!」

 

各自のブースター、カンによるポジショニング、動体視力、体捌きによって皮一枚、紙一重にてその絶死の牙をかわし、無力化するクー・フーリン

 

 

 

「躾のなってねぇ馬鹿犬だねぇ、っと――!!」

 

瞬間の隙を衝き、脚部ブースターを展開し狂王クー・フーリンの腹に渾身のローリングソバットをぶちかます

 

「――――ッ」

 

瞬間的に重力すら振りきる速度の蹴り。ソニックブームも重ね合わさり身体と内臓をズタズタにされながらホワイトハウスの壁を叩き壊し外部へ吹き飛ばされる狂王

 

余波でホワイトハウス内部にあった総てがズタズタに消し飛び、音速の刃で余さず切り裂かれ消し飛ばされる

 

仕切り直しだ、とクー・フーリンは冷静に判断しブースターを逆噴射し空へと飛ぶ

 

 

(宝具を使うにせよ何にせよ、一先ずペースを掴まなくちゃな。まずは――)

 

 

――クー・フーリンが目を見開いたのはその瞬間であった

 

 

「ガァアァアァアァ――――ッ!!」

 

大地の精霊すら戦き、逃げ出し、怖じ惑うその雄叫びを巻き上げ、大地を震わせながら

 

 

「なんとぉ――!?」

 

狂王は『ホワイトハウスを岩盤ごと抉り引き抜き、持ち上げ』――

 

「――そこだ」

 

 

力の限り、浮遊するクー・フーリンに投げつけたのだ――!

 

「へっ、狂ってもオレ、メチャクチャするじゃねぇか!」

 

笑いながら、クー・フーリンは一つの宝具を展開、召喚する――

 

 

「目には目、歯には歯!城には城ってな!来い!『投げ落とす圧壊の城(キャッスル・スロウ)』!!」

 

クー・フーリンの背後に巨大な、超巨大な『城』が現れ、天高く聳え立ち屹立する

 

 

「おぉら、よおっと!!!」

 

 

力任せに右腕を突き刺し、城を振るい、持ち上げ、飛来してくるホワイトハウスにぶん投げ、叩きつける――!

 

 

空中にて叩き付けられぶつかり合いもろともにひしゃげ、潰れ、倒壊し、破壊されていくホワイトハウス、アルスターの投城

 

「――ッッ!!」

 

狂王はその倒壊と粉砕を待たずに突撃し、空中のクー・フーリンを力の限り掴み、遥か彼方へと投げ飛ばす

 

「っぉおぉお――――!!?」

 

投げられたクー・フーリンの勢いはマッハを遥かに越え、凄まじいGがクー・フーリンを襲い、肉体を粉々にせんと圧を背負わせ引き裂かんと牙を剥く

 

「あの野郎、砕けた身体を直しながら無茶してやがるな――!いてぇなんてもんじゃねぇぞアレ!」

 

ブースターを逆噴射しながら制動をかけ、なるたけ辺りのものを壊さぬよう自重をかけながら次なる手を打つ

 

「『投げ放つ御子の一投(デル・フリス)』!!」

 

自らの逸話を昇華した宝具、手に取り投げたものに神秘を与え必殺を為す渾身の一投にて――

 

 

「行け!!『突き砕く不壊の槍(ドゥ・バッハ)』!」

 

誇るは不壊、砕くは万象の槍を迫り来る狂王に力の限り穿ち放つ――!

 

 

「――――」

 

加速していた狂王は避けられ、いや――『避けなかった』

 

――どうせ直す傷だ、面倒くせぇ

 

 

そんな感傷のまま、避けれる一撃を煩わしく感じ直撃を受けた

 

 

吹き飛ぶ右腕。――構いやしねぇ。左手がありゃ事足りる

 

砕け飛んだ右腕を、サーヴァントですら発狂する激痛に堪え修復しながら一気に懐に潜り込む

 

「うぉっとぉ!!」

 

クー・フーリンは更に蹴りと頭突きをかまし、ダメージを与えさせずともぐらつかせる

 

「――アンサズ!」

 

炎のルーンを描き、瞬時に狂王を火だるまに変貌させ空中にて回転踵落としににて大地に叩き落とす

 

 

「犬が空飛んでんじゃねぇや!!」

 

 

これまた音速を遥かに超える速度で叩き付けられる狂王。叩き付けられたアメリカの大地が隕石が落ちたような爆発を引き起こし、巨大なクレーターを作る

 

 

「あぁ、そういやここは外だったか――」

 

やべぇな、自重しねぇと、と一人思いながら右手でルーンを描き、言霊を使い更なる宝具を展開する――

 

「――我が魔術は炎の檻、茨のごとき緑の巨人。因果応報、人事の厄を清める社――」

 

 

始動の呪文を放ち、同時に即座に飛び掛からんとした狂王の背後に細木の枝で編み込まれた、ビル並みの偉容を誇る巨大な巨人が現れる

 

「――小細工を。無駄に器用なのがオレの良く解らん特技だな」

 

贄の収まっていない胸の檻に強制的に狂王を掴み叩き放り込む巨人、そして――、

 

 

「倒壊するはウィッカーマン!!丸焼き、味わっていきな!」

 

 

ルーンを起動し、巨人もろとも狂王を焼き尽くす――!!辺りの温度を80℃にまで上昇させ、燃え尽き――

 

 

「っ!!」

 

燃え尽き――無かった。ウィッカーマンが放り込んだものは贄ではない。『狂王』なのだから

 

「しゃらくせぇ――!!」

 

 

火傷をルーンで治療――いや、焼かれながら治しているので治療ですらないのだが。狂王はひたすらに暴れ、猛り、狂い。自らを囲う檻を即座に叩き壊し

 

「――熱いんだよ」

 

脳天から股にかけて一直線に引き裂き、人形としての役割を消失させる――!

 

 

「――!!」

 

脱出したや否や即座にクー・フーリンに飛び掛かり、牙で、爪で、その偉容でクー・フーリンを穿つ狂王

 

 

「『砕き割く光輝の剣(クルージーン・カサド・ヒャン)』!!」

 

象牙の柄、翡翠色のレーザーブレードを展開し、その破滅の牙撃を総て捌き、打ち払い、薙ぎ、斬り払う

 

爪と、刃が鍔迫り合い、大気を振るわせ嘆きを上げる

 

「手品の次は才能のねぇ剣遊びかよ。しょうもねぇ」

 

「抜かせ、フェルグスの剣技は剣技じゃねぇだろうがよ――!!」 

 

「カラドボルグを持つものには敗北しなければならない――ゲッシュに期待してんなら諦めるんだな。例えゲッシュを破ろうがテメェは殺す」

 

「ハッ、――んなもんオレが当てにするわけねぇだろうが――!!」

 

お互いに蹴りを放ち

 

 

「――らぁあっ!!!」

 

クルージーンを天まで届くほどに巨大化させ、レーザーブレードを下段に一息に振るい上げる

 

大陸、大地を軌道上に存在していた箇所ごと叩き斬り、狂王の左半身を叩き斬る

 

「――」

 

「欲しけりゃくれてやるぜ!!『砕き回る古の霓(カラドボルグ)』!!」

 

刀身に螺旋を描く、フェルグスより借り受けた螺旋剣を狂王に投げつけ起動させる

 

 

投げ放った瞬間一つのドリルに変わり、咄嗟に庇った右腕を抉り飛ばし、螺旋に巻き込み砕き散らす

 

「――ガアッ!!」

 

ルーンで修復し当然のように突撃し尻尾を振るいクー・フーリンを打ち据える

 

装甲が軋み、身体が悲鳴を上げる。その凄まじい膂力に呆れながらクー・フーリンは笑う

 

「ハッ、流石に往生際が悪いじゃねぇか!メイヴの野郎、面倒に作りやがって!」

 

「面倒なのは御互い様だ。――もう何度致命傷を負ったか解らん」

 

「抜かせ、殺せなきゃ何の意味もねぇ――!」

 

『裂き駆ける鏖殺戦馬』は使えない。ロイグ達がもう戦っているからだ

 

「――そこまで使えるなら、本来のバーサーカーの姿もある筈だ。何故使わない」

 

――そう。クー・フーリンには本来のバーサーカーたる資格の宝具がある。――恐らく、最もおぞましい姿の宝具が

 

「決まってんだろ。――テメェなんぞに」

 

ブースターを展開し――

 

「使う必要がねぇからだよ――!!」

 

狂王の身体を押し返す――!!

 

 

「――出し惜しんだまま、死んでいけ――」

 

それに応えながら、狂王が咆哮し膂力を解放される――!!

 

 

――二頭の猛犬は、アメリカ狭しと暴れまわり、その余波にてアメリカを蹂躙し尽くした。

 

 

「そらよっっ!!!」

 

クー・フーリンが狂王を海に叩きつければ、狂王の怒りと発熱により辺りの海が一瞬にて乾上がり

 

「そこだ――」

 

狂王がクー・フーリンを引きずり回せば、避難が終了し廃墟となったアメリカの都市を瞬間に破壊しながら邁進し尽くす

 

「いてぇじゃねえか!離せオラァ!!」

 

もんどり打ちながら突入した森では、争いの余波で森の木々が瞬時に切り株が眼前に広がり

 

「ケッ――!!」

 

掴み、無造作に投げ放ったクー・フーリンが叩き付けられた山肌は吹き飛び、山の高さが凄まじい勢いで修正が必要となってしまう

 

踏み砕けば岩盤を抉り

 

吼え猛れば雲が残らず吹き飛び

 

 

大地を踏みしめれば地震が巻き起こる

 

 

二人のクー・フーリンの唸りにいよいよ持って堪えきれなくなったアメリカ全土の精霊が狂乱し、辺り一体にハリケーンが巻き起こる

 

天空は曇天となり、海は逆巻き、大地は絶えず身をよじる

 

 

「おぉおおぉおおぉおおぉおおぉお!!!」

「ッッ――!!」

 

 

――アメリカ東側は、破滅的な大災害に見舞われていた

 

たった二人の激闘により――滅亡とはいかぬまでも

 

クー・フーリンはカンでわかっていた。どの程度で大陸が滅ぶのか

 

狂王は把握していた。自らの領地がどの程度頑強なのか

 

滅びぬ、ギリギリのところで――二人はアメリカを懸けた最大最強の決戦を――

 

固有結界の外で――たった二人の最終戦争を繰り広げていた――!!

 

 

 

【――兄貴・・・!】

 

 

リッカは駆けていた。休憩を挟み、アジダハーカアーマーを纏い、ただ駆けていた

 

 

【マシュ、コンちゃん、待ってて!最後の締めを、兄貴に託さなきゃ!】

 

翼を展開し、破滅と終末の光景のアメリカに飛び立つ

 

恐れはない。気後れはない。――ただ、マスターの使命を果たす

 

――この戦いに、ピリオドを打つために――!

 

 

 

「千日手だな。互いに聖杯にて願いを抱かれ、変質させられた以上、基本性能に然程違いはない――か」

 

東西の境、アメリカの中心にて額を擦り付けあいクー・フーリンが睨み合う

 

「おーやだやだ。敵に回すとこんなにめんどくせぇとはね。メイヴもオイフェもこんな気分だったのかね。――何回死んだよ、テメェ」

 

「100から先は数えてねぇ。――往生際の悪さは一番わかっているだろう?」

 

獣が唸り、猛犬が猛る

 

「違いねぇ。――ったく。一人で充分、ってところも見せてやりたかった気もないと言えば嘘になるんだが・・・主を蔑ろにする犬なんざそれこそ狂犬だわな」

 

自嘲するクー・フーリンに狂王は訝しむ

 

「――何をほざいてやがる」

 

「一つだけ教えろ。――なんでテメェはそんなに阿呆な道を選びやがった」

 

クー・フーリンが告げたのは、狂王の在り方

 

王として生きながら、なんの愉悦も見出ださない在り方を、彼は問うた

 

「――オレの見てきた王は皆愚かだった。それだけの話だ」

 

皆、我欲のため、威信のため、戦っていた

 

ならば自分もそうするまで。戦って、戦って、戦い抜き、力尽きた先が自分のゴールと信じる

 

生存ではなく、死滅のためにただ走る

 

生き、笑い、戦うクー・フーリン

 

死に、見下ろし、唸るクー・フーリン

 

――陰陽の在り方、相容れず

 

同じでありながら、殺し合うより他は無し――

 

「――違いねぇ。客観的に見たら、オレは愚直に過ぎるわ」

 

「末期の言葉はそれでいいのか?――結局最後まで、バーサーカーの姿は出さなかったな」

 

御互いの装甲は限界を越えかけていた。耐久力を越え、朽ち果てかける鎧

 

「理性を手放し獣になれば俺を突破できたものを。――背中を気にし、辺りを気にかけたテメェの負けだ」

 

――そう、破壊したのは狂王の領地、アメリカの半分のみ

 

クー・フーリンは己の力に懸けて、仲間の帰る場所である西側は、被害が及ばぬよう戦い抜いたのだ――

 

「かもな。――オレ『だけ』じゃあここまで、よくて相討ちが関の山だろうよ」

 

クー・フーリンの口振りに、違和感を覚える狂王

 

「――だけ、だと?」

 

「忘れたか、間抜け。俺達は『クランの猛犬(クー・フーリン)』。孤独を信条とする狼とはちげぇ生き物だ」

 

――ブースターが再び、唸りを上げる

 

 

「俺達だけじゃあここまでだ。所詮鏡写しの存在、どうしたって決着なんぞつくまいよ。――なら、最後に『一手』、決まり手がいる。――みっともねぇ話だがよ」

 

「――何の話だ」

 

狂王の膂力が、クー・フーリンを押し返す。だが、クー・フーリンの確信は揺るぎない

 

 

「解らねぇか。――無理もねぇわな。今の『オレ』に在って、『テメェ』にないもんだよ」

 

――狂王は思い至る

 

「テメェ――まさか――」

 

ニヤリ、とクー・フーリンが笑う

 

何故ここで押し留めていたのか?何故加速を使わず、筋力で劣りながら力比べをしていたのか?

 

「――おせぇよ、間抜け。『猛犬』には、『主人』が付きもんだろうが」

 

――クー・フーリンは、信じていた

 

「――オレの誓いは『享楽』じゃねぇ!『勝利』だ!――悪いが頼らせてくれや!!」

 

――『彼女』がメイヴを下し――

 

 

「オレに『令呪』をくれ!!『マスター』!!!」

 

高らかに叫び――

 

 

「応!!」

 

 

――人類最後のマスターが、それに応える!

 

 

「・・・チ、マスターか――!」

 

「『ガンド』!!」

 

 

泥とカルデアの電力を凝縮させたガンドを放ち、狂王の動きを縛り、止める――!

 

 

「――令呪を兄貴に!!三画全部を託すよ!!」

 

更に躊躇いなく令呪を、クー・フーリンに向けて放つ!

 

 

「『勝って、兄貴』!!!」

 

三画使われた令呪の願いを聞き取り

 

『勝つ』為に――受けたダメージ、消費した魔力が即座に回復、クー・フーリンに補填される――!

 

 

 

「信じてたぜ!嬢ちゃん!後は任せな!!――そおら大仕掛けだ!!」

 

 

クー・フーリンが大地に手を叩きつけると、アメリカ全土を覆うように、狂王を閉じ込めるように巨大な結界が展開、作動される

 

「――原初のルーンを総動員した結界――テメェ、吹き飛ばされながら――」

 

そう、クー・フーリンは戦いの中でアメリカの大地に刻んでいたのだ

 

大神刻印(オホド・デウグ・オーディン)』――原初のルーン総てを使う結界の始点を、ルーン文字を。起動する魔力を補填されることを信じた上で

 

――マスターの勝利を、信じた上で。必ずこの身に、信頼と勝利を託すと信じた上で――、令呪の奇跡を託すであろうと確信した上で!

 

 

「殺しても死なねぇ――ソイツがオレの持ち味だ。だがな――世の中にゃ『見ただけで殺す』事もできるヤツもいるのは、テメェも良くわかってんだろ」

 

 

クー・フーリンの眼が、七色に輝く――

 

「『テメェを殺す』。――行くぞ。この一撃、我が総てを懸けた一撃、手向けとして受け取るがいい――」

 

見初め殺す邪神の魔眼(バロール)』・・・血縁なる最強の邪神のその瞳を輝かせ、狂王の『死の点』と『死の線』を確かに顕在化し、捉える

 

 

「翔べ、嬢ちゃん!!なるべく高くだ!」

 

【う、うん!】

 

 

バサリ、と翼を展開し大地から離れるリッカ

 

身体中のブースターを展開し、初速300㎞から即座にマッハ10に至り、雲の遥か彼方まで飛び立つクー・フーリン――!

 

「――チ・・・!」

 

狂王は動けなかった。ガンド、ルーン、バロールの魔眼により、動きを完全に封殺されたのだ

 

 

 

 

 

飛んだ、駆けた。高く、高く。なお、高くクー・フーリンは飛翔した

 

 

大陸が見えなくなり、眼下に雲海が広がる高みに登り辿り着くまで飛翔し駆け抜けた

 

 

「――来い!!」

 

 

『自分目掛けて』ゲイ・ボルクを飛来させる。主の命に応え、遥か彼方より飛来する真紅の魔槍

 

 

「さぁ、正真正銘オレの全身全霊だ!迷うなよ!――締めにテメェが逝くがいい!!」

 

『噛み砕く死牙の獣』で自らの肉体を保護、『原初のルーン』にて肉体の機能を限界以上にまで引き上げる

 

狂王がしていたように、余りにかかる負担にて砕けながら散る身体を直す。発狂する激痛はただ『堪える』

 

 

「この一撃――嬢ちゃんに捧げるッ!!」

 

 

――雲を引き裂き、飛来するゲイ・ボルクを見据え、全身のブースターを崩壊覚悟の全力展開にて勢いを限界まで稼働させる

 

 

 

「『絶死に至る(ルー・)』――!!」

 

 

下界にいる狂王の姿を眼に捉え、其処だけに届く軌道を導きだし――

 

 

「『窮極の(バロール)』――!!」

 

自らの身すら砕く勢いと気迫にて――渾身の『脚投げ』、アーマーにて加速したオーバーヘッドキックを――叩き込む!!

 

 

 

「『魔槍(ゲイ・ボルク)』――!!!!!」

 

 

 

――その渾身の一投、槍の極致。クー・フーリンの生涯、その総てを込めて叩き込む『対界・対人宝具』

 

対人に絶死をもたらす、或いは『世界を穿つ』域にまで達した、今の『クー・フーリン』にしか放てぬ渾身、究極の絶技

 

 

絶死に至る窮極の魔槍(ルー・バロール・ゲイ・ボルク)』――もはや速度など計れぬ、何の意味も為さぬ

 

ただ、『穿つ』『死をもたらす』為に――雲を総て吹き散らし、大気を切り裂き

 

――七色の閃光を輝かせ、ゲイ・ボルクが駆け抜ける――!!

 

 

――そして

 

 

「――――――」

 

一刺一殺。穿つは心臓、謳うは必中

 

 

【い、今の――は】

 

遥か天空により飛来せし、七色の槍が、過たず狂王の胸を貫き、『霊核』『心臓』そして『死の運命』を纏めて穿ち貫いた

 

 

『心臓大』の孔を胸に穿たれ、狂王は立ち尽くし

 

「――チ、オレも。焼きが回ったか・・・」

 

あらゆる蘇生、復活、回復をもはね除け

 

 

「――嬢ちゃん」

 

【は、はい!】

 

「――後は魔神だけだ。気張れよ」

 

奮闘し、自分を破り、もう一人の自分を勝利に導いたマスターに

 

「――あばよ」

 

簡潔に、称賛と挨拶を告げ

 

 

――アメリカを蹂躙し、震え上がらせた狂王は、静かに消滅していった――

 

 

 

 

――そして

 

 

「――どうだい、嬢ちゃん。嬢ちゃんの選んだオレは強かったろ?」

 

天空より彼方から――

 

 

「――オレを選んだ嬢ちゃんは、間違ってなかったってわけだ!」

 

近未来型アーマーを纏った、リッカの最強の戦士

 

「――うん!兄貴は――カッコいいね!!」

 

クー・フーリンが、リッカの飛び込み抱擁を優しく受け止めたのだった――




絶死に至る窮極の魔槍(ルー・バロール・ゲイ・ボルク)

種別 対人 対界宝具 ランク EX

レンジ 1 1000

最大捕捉 1~1000


『見初め殺す邪神の魔眼』『大神刻印』『噛み砕く死牙の獣』を総動員して放つ、クー・フーリン最大最強の一刺し。『死の因果』を穿つ絶対殺害魔槍

遥か天空より放たれるオーバーヘッドキック投擲。速度すら超越し、バロールの魔眼で視た対象に向かって槍が迫る逃れられぬ死の窮極

対人にならば『因果』『魂』『霊核』『心臓』総てを穿ち、無敵、復活、不死、概念あらゆる要因もろとも『穿ち』『殺す』絶対殺戮の一撃となり飛来する七色の魔槍の一撃となる。防御、回避はバロールの能力により不可能となる。『視た』だけで死ぬという本来の能力を再現した形となる。ただし、その効力は世界には働かない

『世界』そのものに放てばその歴史を一刺絶断する対界の一撃となる。世界を切り裂く槍となり、あまねく因果を殺し、輪廻すらも絶断せし、スカサハの領域にまで到達せし『世界殺し』の一投となる。ただし、その効力は人には働かない(世界が切り裂かれるので関係無いと言えばないのだが)

――人理が取り返しのつかない状況に至った際のセーフティー、最終手段でもある


代償として、『噛み砕く死牙の獣』にて全身を保護し『原初のルーン』を総動員して肉体を強化しなければ即座に消滅する。この際、崩壊しながら肉体を再生させるので常時発狂するレベルの激痛がクー・フーリンを襲う

そしてゲイ・ボルクとクリード・コインヘンを両立させる無茶を令呪にて行うため、魔力消費が凄まじく、連発は出来ない。特異点攻略に一度が限度

――故に、これを使う際は真に『自分の総てを懸けて仕えるに値する主人』を見つけ、認めた際にのみ。同時に『令呪を三画』という形で『命令』を受けたときにのみ開帳する

――我欲のため、師匠の懇願ですらも解放するつもりはない

――己の総てを信じ、命を預けた――ただ一人のマスターの命にのみ

彼は、総ての苦痛と激痛に堪え、期待に応えるために

この奥義を、振るうのである


NEWクー・フーリン伝説

心から信頼できるマスターを見つける。彼女と共に、狂い果てた己を倒す

生前ですら到達しなかった『神殺し』の槍を会得する

『勝って、ランサー』の令呪受諾
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