人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ルシファー「どうだった?イム」
イム『新時代来る…いや、ウタが新時代か…』
ウタ「えへへ…そんなに言ってもらえて嬉しいな!またいつでも来てね!」
イム「今度はムーの部屋に来てくれ。ではなルシファー、ウタ。ムーはウラヌスで帰る(ミョンミョンミョン、イムムムム)」
ウタ「へー、空飛ぶ船なんてあったんだぁ」
ルシファー「僕も空飛ぶしあるある。…さ、ウタ。覚悟はいいかい。会いに行くよ…シャンクスに」
ウタ「!」
ルシファー「けど、その前に…マモン!」
マモン【お呼びですか、ルシファー様ァ!】
ルシファー「奴隷にされた皆のケアを頼む。具体的には、天竜人の奴隷の証を消せ」
マモン【お任せだぜルシファー様ァ!】
アスモデウス『気安いわよマモン!サタン様と敬称を使いなさいな!』
マモン【こまけぇことは気にしねぇ。ルシファー様はサタン様だ!しゃあ、宝物を貰いに行くかぁ!!】
「この度は……!!我等天竜人があまりにも酷い仕打ちを働き、本当にすまなかった!!」
「謝って済む事ではない…!だが、それでも言わせてくれ!皆の人生を取り戻す手伝いに、尽力させて欲しい!!」
エレジアにて合流した、天竜人に奴隷にされた者達。それらは解放され、回復したウロヤソクとレタッソクの渾身の土下座を受けていた。その人々は、顔を見合わせ訝しむ。
「おかしいな…あれだけ殺してやりたいと思ってた天竜人のあんたらに、憎しみや怒りが湧いてこないんだ…」
「えぇ、なんだか…凄くすっきりしているの。あんなに酷い目に遭ったのに…」
それは、ルシファーの司るサタンの力にメカニズムがあった。サタンは世界中の人々から【憤怒】を吸い上げ、その化身たるドラゴラースを鋳造した。それは世界中の憤怒が彊ければ強いほど強さと強度を増していく。
世界中の人々の憤怒の意志を束ね、根源の天竜人に余すことなく叩きつけた。それらにより、怒りと無念はサタンが引き受け、禍根となる怒りは人々の心から消え失せたのだ。これもまた、ルシファーの思うままに振る舞う行為がプラスに働いた結果だろう。
「どうか顔を上げてください。私は、私達はお二人やあの御方に助けていただきました」
「君は…チャルロスが言い寄っていた…」
「テレサ。シスター・テレサとお呼びください。我々は皆、奴隷からの解放を成し遂げてくださった皆様に心からの感謝を捧げます。ね?皆様」
途端、湧き上がる歓声と拍手。怒りを取り除かれた皆は、素直な気持ちで感謝を告げられる。彼等の奮闘は、叫びは、確かに心に届いていたのだ。神に抗う人の叫びとして。
「ウ……ウゥ……!!」
「ありがとう……本当にありがとう…!!」
「御礼を言うのはこっちだよ!ありがとう、いい天竜人の二人!」
「あ、天竜人は侮辱になるのかな…?」
「いや、いいんだ!我等は天竜人の在り方を…罪を忘れない」
「罪は忘れない。改名もしない。我等はレタッソク、ウロヤソク…忌み名を背負って、生きていくのだ。ずっと…いや!我等の事はどうでもいい!」
「テレサ、君の身体にもまさか…」
「…はい。刻まれています。天竜人の文様、奴隷の証が…」
テレサが服を脱ぎ、背中を見せる。そこには、竜の蹄の焼印。うら若き十代の白い肌に、痛々しき蹄…奴隷の証が刻み込まれていたのだ。
「おぉ………なんという……!!」
「俺等全員にあるんだよな…熱かった」
「参ったなァ…これ、消せないよなァ…」
憤怒を取り除かれているため冷静ではあるが、ウロヤソクとレタッソクからしてみればあまりの惨状だ。数千から数万の身体に刻まれたその証、消し去るのは並大抵では済まない。
「上書きするにも、再び苦痛を齎すのは…」
「医学で肌を切り取るしか無いか…?」
二人がそれでも対応手段を考えていた…その時だった。
【フッハッハッハッハッ!!スッキリとはしているがシケた雰囲気じゃねぇか、解放の現場には似付かわしくもねェ、ナイーブかい、オメェら!】
ド派手なダウンコートにきらびやかな装飾、鍛え抜かれた褐色の肌に金髪の見るからに豪奢極まる二十代の青年が、痛快な笑い声と共に現れる。その風格は、只者ではない。
「き、君は?」
【俺様はマモン!ルシファー様の配下の魔王が一柱にして、強欲の化身!あらゆる財宝をかき集めるのが趣味の、欲張り兄さんさ!よろしくなお前らァ!】
サングラスをカチャリと上げ、ぐるりと辺りを見渡す。お互いの天竜人の紋様を途方に暮れながら見つめる様子を、マモンは見やる。
【成る程成る程、ゴミにもならねぇ負債を押し付けられてアンラッキーって事か?そりゃあそうさ、奴隷ってのは響きが良くねぇ、人はだれもプライドがあって生きてるもんだからな!だったら…】
パン、と手を叩きマモンは笑う。金歯が煌めく成金の魔王…強欲の化身の本領が現れる。
【その負債、俺様が宝物に変えてやるぜ。このマモンの『
「「「「「!?」」」」」
瞬間、マモンの傍からきらびやかな…いや、下品極まる金色の建築物が出現する。宝石や鉱物で彩られ、この世全ての贅沢を形にしたような御殿が姿を現したのだ。
【さぁ!このマモンにとびきりの財宝を寄越しな!!さもしくさみしい元奴隷達よ!!】
その言葉と共に、万魔殿が口を開き大口で奴隷達に向けて吸い込みを放つ。
「な、何を!?」
「「「す、吸われ………!!あれ!?」」」
万魔殿は奴隷達を吸い上げた。正確には、奴隷達の人生に刻まれた価値【奴隷】という概念とその証。天竜人の蹄の焼印のみを。
【俺様の万魔殿は他人の人生の価値を強奪する!!俺様にかかればホームレスを億万長者に、ブルジョワジーを多量債務者にする事も想いのままだ!しかして今回の万魔殿が戴くものはァ!!】
「奴隷の…奴隷の証が消えた!?」
「これで俺達……自由なのか!?そうなんだよな!?」
【尊厳を奪われたものには自由を!!そして屈辱に純潔を散らされた女共には『清純』を!!】
「あ……おなか、いたくない…?」
「下腹の違和感が…!あぁ、こんな事が…!!」
【そうだともォ!!この俺様が補填する!!この世の【贅】を集めた強欲の魔王!マモンのパンデモニウムがなぁ!!】
それだけではない。潰れた目が治り、欠損していた部位が治るわ、奪われたもの、喪われたものが、正しくあるべきように補填されていく。
これこそが強欲のマモンの真価、パンデモニウム。世の全ての贅を詰め込んだ万魔殿を展開し【奪う】もしくは『与える』事が出来る。天使と悪魔全てにおいて、もっとも強欲な彼の力。
「これで俺達……本当に、自由なんだ…!!」
「そう、そうよ!始められる…!また、何もかもを始めることができる…!!」
「「「「「「ウオオ〜〜〜〜〜〜!!!俺達は自由だァ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」」」」」」
天を裂き、地を割らんばかりの大歓声。肩を抱き合い涙するものもいた。歓喜に叫ぶものもいた。涙しながら笑い、笑いながら涙する。彼等が天竜人に奪われた全てを、強欲の魔王マモンが補填した。
【いいじゃァねぇか……とびきりの財宝、パンデモニウムがいただいたぜ…!!】
その笑顔や涙こそ、マモンが望んだ贅沢にして財宝。百万ドルの笑顔と言われるような、心からの笑み、喜び、感謝や歓喜。
【俺様のパンデモニウムには財宝が満ち足りていなくちゃいけねぇ!捧げろお前ら、もっともっとだ!喜びと感激の喜悦と涙をマモン…いや、我等が大魔王に捧げろォ!!】
その様子を満足気にマモンは焚きつける。彼もまたルシファーに会い価値観を変えた魔王が一人。【溢れる財宝は、分け与えた時にこそ最も輝く】をモットーとする、強欲を極めるもの。
【埋め尽くそうぜ!このくたばったほうがいい世界をとびきりの宝物でよぉ!!新時代ってのは、お前らが贅沢を満たす世界でなくちゃいけないんだからよぉ!!】
「マモン殿……!!礼を言わせてくれ!」
「ありがとう…!彼等を人間に戻してくれて、本当にありがとう…!」
【フッハッハッハッハッ!!マモンの魔王たる力を骨の髄まで思い知ったか、万民ども!これこそが強欲!俺様の望む強欲!!【世界中の人間の笑顔】というパンデモニウムの一端よ!!フッハッハッハッハッ────!!】
「マモン様。ありがとうございます…本当に…」
【馬鹿め、シスターが魔王に頭を下げるな。礼を言うべきは、こやつらだ】
「マモン様…はい。ありがとうございます。レタッソク様、ウロヤソク様…!」
「良かった…本当に…」
「テレサ嬢よ…君に相応しい伴侶を見つけるのだ、今度こそ…」
【愉快痛快!!笑顔に勝る贅沢なし!またこのマモンがルシファー様、ベルゼブブに次ぐ魔王であることを証明してしまったなぁ!!フッハッハッハッハァ!!】
…その日から一週間、エレジア跡地は奴隷解放のドラムが鳴り止まなかったという。
ルシファー「確かこの辺に…あ、いたいた!」
ウタ「あの、海賊旗…!」
ルシファー「赤髪海賊団…覚悟はいいかい、ウタ?」
ウタ「うん!お願い!」
ラッキー・ルゥ「お、お頭ぁ!空から、空からウタが!!」
シャンクス「バカ言え、何を寝ぼけて…」
ウタ「シャンクス〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
シャンクス「…………ウタ……!!?」
ベックマン「こりゃあどうい」
ウタ「コノヤローよくも置いていったなァ!!!!!!」
「ぶべェ!!!」
「「「「「「お頭ァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?!?」」」」」」
ルシファー(爆笑)
ロックス・ター「超展開過ぎると思ってんスがね…」
十年余りの親子の再会。それは…
鉄拳だった