人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「嬢ちゃん、皇帝と蜥蜴娘にソロコンサート申請と・・・あと、ジャンヌの嬢ちゃんにあのバカみてぇにかれぇ料理のフルコースを頼んじゃくれねぇかい」


「え、兄貴」

「俺じゃねぇ俺じゃねぇ。――死にたがってる師匠がいるんでよ。まずは命を取りに行くわ」


天地開闢・創成神話再演――インドマジでいい加減にしろ

「あいたたたた!酷いなキャスパリーグ!ギルガメシア姫に抱かれ丸くなったと思ったらこれだ!しかもパワーアップしているからタチが悪い!」

 

 

ハンマーで全力で叩き殴られ霧散しながらも即座に再形成する、爽やかな雰囲気と、華を漂わせる青年

 

 

(当たり前だろ、殺すつもりで放ったんだから)

 

 

「本気だったのかい!?」

 

――フォウ、この人は・・・?

 

フォウが怒りの一瞥をくれながら、話す。彼の、千里眼を持つグランドキャスター資格者の素性を

 

 

(コイツはマーリン。夢魔と人間の混血のクズだ。勝手に人の夢に上がり込んで精気を吸うクズで、キングメーカーとか大層な売り込みで独りの少女を破滅に追い込んだクズで、ボクを、ボクを――楽園から叩き落としたキングオブクズだ!なんて事をしてくれたんだ!恨んでないけど怒りは無数にあるぞ!死ね!)

 

「い、いいじゃないか!美しいもの、見つけたろ?」

 

《こやつは人間を愛してはいるが、愛しているのは人間が織り成す物語のみ、個人に対する情はない。我と似てはいるが・・・気紛れに介入する辺り我より悪質ではであるな。女関係の痴情の縺れで塔に幽閉された賢しい愚か者よ》

 

二人は歯に衣着せぬ物言いでマーリンを口撃していく。真っ青になって弁解するマーリン、いやクズ

 

「止めてくれないか!初対面で人の印象を最悪にするのは!姫に嫌われちゃうだろう!都合の悪いことは隠して上っ面を取り繕えば人間関係は上手くいくんだから!」

 

――フォウの言っていた主ってこの人かぁ!

 

(死ぬほど遺憾な事にね。ギル、ルールブレイカーの原典ない?ボクにブッ刺して契約をエアに移してほしいな)

 

「そこまで嫌かい!?」

 

 

《待て、今探す》

 

「探さないで!?待ってほしい!君にはカルデアとガーデンを繋げる触覚でいてほしいんだ!私にとって都合のいい関係でいてほしい!というかギルガメシア姫の夢にプロテクトかけるのはズルいぞ!」

 

あたふたしながら酷い言葉を吐くマーリン。当然フォウは怒りを燃やす

 

(当たり前だろプライバシーの意味調べてこいマジブッ殺すぞオメー。エアが鍛えて生まれ変わったプレシャス☆フォウの本気オメーで試してやろうか?)

 

七色の殺気を迸らせ喉を鳴らすフォウ

 

《エアよ、突然だが夢魔の習性を語るとしよう。夢魔は人の夢に上がり込み精気を喰らう。了承を得ず一方的にな。まこと屑の所業よ。夢にいる間はおおよそ無敵だが・・・入り込んだ夢の持ち主が認識をしてやれば無力となる。夢にこやつを見たら我を呼べ。逃がさず捻り潰してやろう》

 

 

楽しげにマーリンの弱点を吐露していく王。薄笑いを浮かべている辺り確信犯だ

 

「待ってほしい!私の肩身がどんどん狭くなる!一ヶ月間考え抜いた『第一印象でギルガメシア姫に気に入られよう作戦』が台無しじゃないか!」

 

(なんで感情解らないくせにキレッキレにクズなんだオメー)

 

――彼が、フォウを下界に導いた魔術師・・・

 

「い、いや誤解なんだギルガメシア姫、いや大体あってるけどそれだけじゃない事を解ってほしい!えっと、私は凄いぞ!NPチャージ出来るし無敵張れるし、クリティカル威力とバスター威力上げられて周回に引っ張りだこさ!皆私を酷使しているはずだよ!クズさではどっこいだと思う!」

 

《人権は人のみが持つ。夢魔の貴様なんぞに適用はされぬ。労働基準もまた然り。貴様が過労で消滅しようが悼むものは誰もおらぬ。フレンドを探すまでよ。何恥じることなく過労超過で果てるがいい》

 

「酷すぎる!この人でなし!」

 

《当然よ!我は王である!ふははははは!そら、エアも何か言ってやれ!こやつが姿を晒すなぞ、そうあることでは無いからな!》

 

――彼が、フォウの主人

 

下界にフォウを落とした、要因

 

フォウが、カルデアに招かれたきっかけ

 

 

――マーリンさん

 

なら、自分の言うことはたった一つだ

 

「な、何かな?待ってほしい、君の罵倒は心を砕きかねない!その、少し時間を・・・」

 

 

そう、たった一つ

 

 

――ありがとうございます!

 

 

「え?」

 

(ファッ?)

 

《――フッ》

 

魂だけながらも、深々と頭を下げ、感謝を表す英雄姫、エア

 

 

――貴方がフォウを導いてくれたお陰で、私はこの世でたった一人のかけがえのない親友と巡り会う事ができました!フォウは私の大切な、大切な――何よりも大事な親友になりました!本当に、感謝してもしきれません!フォウは、ワタシに人として大切な事、願い、それを見つけるまで寄り添い、見守り、導いてくれたから・・・!

 

 

・・・そうだ。ワタシは彼に感謝を伝えたかった

 

彼がいてくれたから、自分はかけがえのない宝物を手にいれることができた

 

フォウがずっと傍にいてくれたから、自分は真っ直ぐ、自分だけの願いをつかみとることができた

 

彼がずっと傍にいてくれて、励ましてくれたから・・・王の敬意と感謝を忘れずにいることができた

 

――君を叩き落とした相手にお礼と感謝なんて、酷いよね・・・でも、ワタシは暴力や罵倒より、伝えたいことがあって、だから・・・

 

(エア・・・――)

 

――だって、フォウはワタシの、かけがえのない・・・大切な、大切な親友だから。そんなあなたに巡り会わせてくれた人に・・・罵倒や、暴力なんて。出来るわけないよ・・・

 

(――っ・・・~――)

 

感極まるフォウ。言葉を発せなくなり、可愛らしくえずく声が聞こえる

 

――だから、言わせてください。華の魔術師マーリン

 

・・・ワタシに、かけがえのない宝物を与えてくれた貴方に、感謝を

 

ワタシが今のワタシでいられるのは、王と、フォウがいてくれたお陰です。――本当に、本当に・・・

 

深々と、再び頭を下げる

 

ワタシ達を見守っていただき、本当に・・・ありがとうございました!

 

「――あぁ、君は本当に、美しいものを見つけたんだね」

 

英雄姫の全霊の感謝を受けたマーリンは、満足げに笑い、フォウの頭を撫でる

 

「完敗だ。僕の本性を知りながら尚、面と向かってお礼を伝えたのは君が二人目だよ。――良かったね、キャスパリーグ。君は本当に、かけがえのない本当の主を見つけたんだね」

 

(――うるさい。エアじゃなかったら、お前なんて赦すもんか。ボクを突き落としたお前なんて。・・・エアに、会わせてくれた、お前、なん、て・・・――っ)

 

涙を溢れさせながら、眼を潤ませるフォウ

 

 

・・・実際のところ、フォウはマーリンへの恨みを、とうに脱ぎ捨てていたのだ。怒りはあれど憎しみは無いのはそれが理由だ

 

彼も、解っていたから

 

下界に降りねば、かけがえのない姫には会えなかったと

 

楽園には、姫はいなかったと

 

――本当に、美しいものには出逢えなかったと・・・

 

(ありがとう、エア・・・ありがとう――ボクも、ボクも・・・君に出逢えて、本当に良かったよ――)

 

涙を流しながら、エアの魂に寄り添うフォウ

 

――泣かないで、フォウ。ほら、また後でたくさんハグさせて?ね?

 

(うん――!)

 

虹色の華を、辺り一面に咲かせるフォウ。消えてはまた咲き、虹色の花畑が産み出される

 

「――あぁ、そんな彼女だからこそ、僕は大ファンになってしまったんだね。姫を宿した君の、最古にして最新の叙事詩に、ね」

 

マーリンの視線に、威厳と愉快を以て応える

 

《フッ、無粋と責めはすまい。我の叙事詩の余りの鮮烈かつゴージャスな様に、参列を謳う部員は後を絶たぬからな。観客席を立つ無礼、特に赦そう》

 

 

その言葉を皮切りに、王が玉座より立ち上がる

 

「見るべきものは見た!聖杯も手にし、最早魔神どもは用済みである!であるならば――早急に一掃し宴の準備に取りかからねばなるまい!」

 

いよいよ決着の号令を下す王に

 

「では、私も完全無欠のハッピーエンドに貢献させていただくよ。一部員としてね」

 

爽やかに応える華の魔術師

 

(な、マジで!?オマエ信条はどうした!)

 

フォウの問い掛けにあっけらかんと応える

 

「臨機応変に決まってるだろそんなの。誇りで腹は膨れないからね。顔出すだけ出してなにもしないなんて英雄姫をガッカリさせるわけにはいかない」

 

 

・・・ありがたい!フォウの主、グランドキャスター候補の助力があれば百人力だ!

 

 

――ありがとうございます!マーリンさん!

 

「ううん。全然構わないよ。むしろこちらこそお礼を言わせてほしい、プリンセス。こんな人でなしなボクをも物語に加えてくれるその慈悲と優しさに、華の祝福があらんことを。――縁は繋がれた。今の僕は転た寝して迷い混んだだけだから消えてしまうが、いつか必ずまた会えるとも」

 

そう言ってマーリンは玉座の傍らに、花束を添える

 

「さぁやろうか!魔神の動きを止め、行動を単純化させるのは任せてくれ!僕の得意分野『煙に巻いてなんとかする』を見せてやるとも!」

 

杖を振るい、眼下の魔神達を即座に幻惑、停止させる

 

『こちらエレナ・ブラヴァツキー!英雄王、装置が強化されたから貴方も思いきりやってよくってよ!』

 

エレナのハキハキとした通信を受けとる

 

 

「ほう?何か新たな発明でも思い付いたのか?」

 

『い、いえ、それが、ね』

 

『威力は私に合わせろ凡骨!この程度の雷電にて音を上げていた貴様に真なる雷を見せてやる!』

 

 

『ほざくかテスラァ!!英雄王の策が完璧にすぎて出番がなくなると慌てて出てきた天才(笑)がほざくかテスラァ!!』

 

『黙れ格好悪いエジソン!!レディ・リッカにまた糾弾されたいか!』

 

『もう私はカッコいいエジソンだ!格好悪いのはおこぼれに預からんと顔を出した貴様だぞテスラァ!!』

 

 

『『人類神話・雷電降臨(システム・ケラウノス)!!』』 

 

 

『『W・F・D(ワールド・フェイス・ドミネーション)』!!』 

 

通信機の向こうの天才が吼えた瞬間、固有結界の強度が更に跳ね上がる。二人の天才のいがみ合いながらの協力により、装置が更にパワーアップしたのだ

 

 

――王!これなら!

 

 

《うむ。我等が本領にも堪えれるやも知れぬな。まさに――裁定の時だ!》

 

 

『ギル!こちらは大丈夫!どうか、全力で!!』

 

オルガマリーの激励に応え、素早く乖離剣を手に取る

 

「大儀である、オルガマリー!やはり貴様は、我が左腕となるに相応しい献身の化身よ!」

 

『――私は褒められれば伸びると、最近解りました!』

 

嬉しそうに笑うオルガマリーと頷きあう

 

『ギルガメッシュ様・・・皆様を、ラーマ様を・・・』

 

シータの願いに

 

「任せるがよい!」

 

 

ヴィマーナを飛び出しながら、応える!

 

 

「ジャンヌ!令呪を以て奴等に宝具を開帳させよ!我の指示通りにだ!」

 

指示を出す王、即座にそれに頷くジャンヌ

 

「ご武運を、英雄王!」

 

「ハッ、当然よ!!」

 

視線を交わし、力強く裁定者と調停者は頷き合う

 

――フォウ、マーリンさん!行ってきます!

 

 

(必ず戻ってきてね!約束だよ、エア!)

 

――うん!

 

「かの賢王から預かった、君に渡したいものもあるからね。またの再会を祈っているよ」

 

――はい!

 

 

遥か天空より、王が飛翔する――!!

 

 

 

 

 

魔神の破滅の口火を切ったのは、燃え盛る炎の弓矢であった

 

 

その弓矢にて、カルナは勝利を確信する

 

 

「――来たか、アルジュナ」

 

 

白衣と褐色の肌のアーチャー、アルジュナが魔神を数柱、纏めて撃ち抜いたのだ。燃え落ち、焼け爛れていく魔神達

 

「盟約を果たしに来たまでの事。――何故笑う」

 

指摘されたカルナは、誇らしげに笑う

 

「こうして肩を並べられる事が喜ばしく、誇らしいからだ。オレとて人の身。感情は備えている」

 

知るカルナとは違う、あまりにもかけ離れたカルナに

 

「――全く、忌々しい」

 

つられてアルジュナが笑うのも、仕方ない事だろう。――彼が饒舌であったなら、マハーバーラタの物語の主役は彼であったのかも知れぬのだから

 

 

「今ルーラーからの通達があった!余とアルジュナ、カルナ以外のサーヴァントは『一柱』を残して宝具を開帳せよとの事だ!――皆、最後まで頼むぞ!」

 

ラーマの号令に――

 

 

「しゃあ!一番槍ならぬ一番脚は貰っていくぜ!!英雄一の先駆け、見せてやらァ!!」

 

 

二頭の神馬、一頭の名馬に率いられた戦車が瞬時に最高速にまで達する

 

 

「しかと見ろ!!魔神ども!これが真なる英雄の疾走也――!!」

 

 

ジャンボジェットすら瞬時に解体する速度と質量の暴力が、魔神どもを即座に吹き飛ばす――!

 

 

「『疾風怒濤の不死戦車(トロイアス・トラゴーイディア)』――!!!」

 

 

翡翠の一閃が駆けた軌跡にいる魔神が、即座にチリになり砕け散る!

 

 

「ヘラクレス!!」

 

 

アキレウスが問う頃には既に矢をつがえ

 

 

「『射殺す百頭(ナインライブズ)』」

 

 

対幻想種用のドラゴンホーミングレーザーを撃ち放つヘラクレス。黒と灰のドラゴンレーザーが魔神を抉り穿ち、着弾した箇所もろとも『虚無』へ消滅させる究極の射撃

 

「――お前は無駄口が過ぎる。戦場にて言葉は無用、雄叫びと勝鬨が上げられれば事足りるのだ」

 

「ハッ、戦場にて笑わぬ輩はエリュシオンでも笑いを忘れてしまうぞ?」

 

「――彼女を見習うがいい」

 

クイ、と顎をやる先には

 

 

「『貫き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク・オルタナティブ)』」

 

ゲイ・ボルクを二本駆り、一本目で犇めく魔神を空間に固定し

 

 

「刺し穿ち、突き穿つ――」

 

 

二本目の全力投球にて、軌道上にいる魔神、縫い付けられた魔神を皆殺しに蹴散らし穿つ――!

 

 

「寡黙さを習え、アキレウス」

 

「・・・クー・フーリンの旦那の立つ瀬がねぇじゃねぇか、二槍流なんてよ・・・」

 

ギリシャの二大英雄が、ケルトの神殺しに感嘆し、戦慄する

 

 

「――来たれい我が忠臣、我が手足、我が具足」

 

 

源の頼光が己の魔性の血を解き放ち、記憶の形を牛頭天王の神使達に取らせ

 

「四天王なぞこれこの通り――いざ!」

 

 

魔神達に飛び掛かる。刀で切り裂き、弓で穿ち、鉞で叩き斬り、長巻きで薙ぎ払う!

 

 

裂かれ、穿たれ、割られ、分かたれる魔神達

 

 

「リッカ、母は参ります――『牛王招雷(ごおうしょうらい)』――」

 

 

母と娘の絆、童子切安綱に雷と、マスターと契約パスから濾過され無害となった莫大な魔力リソースたる泥が雷と混ざり、流れ込む

 

 

「『天網恢々(てんもうかいかい)』――!!」

 

黒と紫の完全なコントラストを調和させた雷撃が、魔神を呑み込み灰塵に帰させる――!

 

 

「日本の武芸、これ程とは――見事――」

 

「まぁ、この程度。手遊びのようなものですが・・・ふふ、誉められるのは嬉しいですね」

 

獰猛に笑うスカサハ、誇らしげに笑む頼光

 

 

「・・・女ってすげぇな」

 

「うむ。ギリシャは大体女神が滅茶苦茶にするからな」

 

ドン引き、いや感嘆するギリシャの英雄二人

 

 

――更に、蹂躙は続く

 

 

「メイヴちゃん!そして狂い果てた我が親友クー・フーリン!お前達に、この技を捧げよう!!」

 

 

コノートの勇者フェルディアが上半身のタイツを破り裂き、肉体を鋼鉄のように硬化させる

 

 

「『硬く唸れ、オレの肉体(フェルディア・アストロン)』!!メイヴちゃん、最高ォオォオォオォオ!!!」

 

 

『フェルディアは戦いの際、ゲイ・ボルクすら弾く程の堅牢さを誇る肌を持つ』伝承を昇華させた対人宝具

 

鋼鉄の何倍も硬く、強靭になった肉体を躍動させ、超速のウェスタン・ラリアットにて魔神をへし折る!

 

 

「ただし肛門は勘弁願いたい!!痛いなどというレベルではないからな!えげつないぞクー・フーリン!!はははははははははは!!」

 

「フェルディア・・・はしゃぎおって」

 

大声で弱点を叫ぶフェルディアに呆れるスカサハ

 

 

「――お前は逝ったのだろう、狂王クー・フーリン。――お前のことは、胸に留めておく」

 

ロイグが鞭を叩き、マハ、セングレンに号令をかける

 

 

「お前の後始末は、オレがやってやる・・・!駆けろ、マハ!セングレン!」

 

御者王ロイグの号令と同時に、10メートルの鎌戦車の至るところから巨大な刃が現れ引き出される

 

 

「ブルルゥアァア!!!(よくもセタンタをオモチャにしやがったなァ!!)」

「ヒィイィインッ!!(鏖す)」

 

猛り狂う衝動のまま、マハ・セングレンの戦車が魔神どもを轢き殺す――!

 

 

「『裂き駆ける鏖殺戦馬(ロイグ・マハ・セングレン)』――!」

 

美しい軌跡を描き、即座に駆け抜けるアキレウスの戦車とは正反対の、執拗にして暴虐の蹂躙。アキレウスが総てを置き去りにする疾走なら、こちらは躯と屍を築き上げる爆走

 

引き裂き、踏み潰し、撥ね飛ばし、踏みにじり、切り裂く・・・血飛沫と肉塊が飛び散るおぞましき鏖殺制覇――!

 

「よし!これであと一柱だ!!」

 

 

ラーマの言葉通り、ターゲットを絞るための残り一柱に狙いを定める

 

 

「ふはははははは!!この一撃を以て、この特異点の幕を引くとしよう!!さぁインドの英雄どもよ最奥を放つがいい!貴様らの全力、我が打ち消す!!誇大広告の金字塔の本懐、我が至宝に足るものかこの我が見定めてやろう!!」

 

魔神を挟むように宙に浮き上がり、乖離剣を高々と掲げる英雄王ギルガメッシュ

 

 

「原初を語る――」

 

――王とワタシが、敢えて乖離剣を抜いた理由は『相殺』と『世界の切断』だ。インドが誇る英雄達の宝具の威力を相殺しつつ、世界を切り裂き、全員の傷を全快させる

 

王は『相殺』に全精力を傾ける。ラーマ、カルナ、アルジュナの宝具を完全に見極め、完璧に打ち消せるポジション、タイミング、放つ位置を見通す

 

姫は『世界の切断』に全力を尽くす。乖離剣をバックアップする宝具を全て選別し、世界にあるもの、相殺の威力減衰を上回り、かつ誰も巻き込まぬ絶妙の出力を計算し、導き出す

 

《我はただ放つのみだ!雑事、支援の総て!お前に一任するぞ、『エア!』》

 

――はい!魂に代えても、魔神以外に被害は出しません!『ギル』!

 

 

そう、エアとギルガメッシュの共通の目的

 

それは『宝具にてアメリカ、特異点が崩壊しないように護ること』

 

《財を振る舞うだけ振る舞っておいて、土台が堪えきれなかったなど滑稽にも程がある。王の名に懸け、そのような下らぬ結末を認めるわけにはいかぬのでな!》

 

王の矜持にかけ、ギルガメッシュが謳う

 

――皆が救い、護ったアメリカを・・・壊させはしない!

 

無垢なる献身と願いが響く

 

王と姫は、まさに同じ目的のために――守護し、未来に繋げるために死地に立ち、至宝を開封したのだ――!

 

 

「承知した。――豪奢(ゴージャス)たる王の慈悲を知れ」

 

神殺しの槍を展開――と同時に辺りの不毛の大地の曇天が余さず消し飛ばされ、中天に真紅の太陽が顕現する

 

大地は焼き尽くされ、大気は一瞬で肺を焼き爛れさせる超高温に上昇、岩すら焼け溶ける超絶温度にて瞬時に死の大地へと変貌させる

 

 

「我が父、太陽神(スーリヤ)よ、照覧あれ」

 

 

背後の翼が最大展開し、日輪の如く、真紅と黄金の光を放つ。肉体は余さず黄金の鎧が纏い防護する

 

 

「絢爛とは此、この一刺し」

 

魔神に向け、神殺しの絶槍を放つ――

 

 

「焼き尽くし、未来を照らせ――!!」

 

 

絶望をこの一撃にて焼き払い、あまねく総てを照らすために――!

 

 

「神性領域拡大、空間固定」

 

 

淡々と呟き、『炎神の咆哮』を収納し、シヴァより授けられし鏃を展開し、解脱判定を行う空間を細やかに設定する

 

「神罰執行期限設定」

 

此は神代の神造兵器、ヒンドゥー教における三大神、破壊と創造を司る神、シヴァより与えられし宝具

 

レンジ内にいる者一人一人に判定を行い、失敗したものを『解脱』させる破壊神の権能。アルジュナが持つ、最大級の威力を誇る宝具

 

生前、世界を七度滅ぼすとまで謳われ、アルジュナが使用を封印したとされる最大の切り札――

 

「シヴァの怒りを以て、汝の生命を此処で絶つ」

 

その名は――

 

 

「信じるぞ、英雄王!――羅刹王すら屈した刃、その身で受けてみよ!!」

 

生誕の頃より所持していた『不滅の刃』。それは元は弓なのだが、ラーマの改造により剣に変貌し帯刀されている

 

「そしてこの一撃を未来に――愛するシータに捧げよう!!」

 

ヴィシュヌの転生体であるラーマ、その祝福されし武にて放つ、ブラフマーより授けられし技

 

 

「――食らえ!!」

 

 

――乖離剣!ワタシの想いと願いに応えて!英雄王の至宝たるあなたの全身全霊を今、此処に!

 

 

数多のバックアップ宝具の後押し、そしてエア自身の魂との共鳴により、エアは限界を越えた全霊を発揮する

 

刀身は『白金(プラチナ)』の輝きを目映く放ち、取り込み、巻き込み、せめぎあう暴風は七色の極彩色の光に変わる。その衝撃に辺りの大地は砕け、天が哭き、地が震撼する

 

《ふはははははは!!姫にすがられては下手を打てまい!お前も現金よな、乖離剣(エア)!!》

 

魂のバックアップに返答するかのように速く、力強く回転し、星々を廻すかのように七色の光を溢れさせる白金の乖離剣――!

 

 

《よい!その期待、応えてやろうではないか!お前と我を見上げる姫の魂に、この世の頂点に位置する英雄王の真価!そして威光のなんたるかを見せつける時だ、乖離剣(エア)よ!!》

 

限界を遥かに越えた回転と暴風が臨界に達し、虹色の空間断層を引き起こす真空の刃が、世界総てに向け――牙を剥く!

 

 

 

そして、放たれる――

 

 

 

 

「『日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)』――!!!」

 

 

「『羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)』!!!」

 

 

「『破壊神の手翳(パーシュ・パタ)』!」

 

 

インドラ、スーリヤ、ヴィシュヌ、シヴァ、ブラフマー

 

 

インドの神々の力を結集した、三種三様の究極の一撃

 

そのどれもが至高の一撃

 

そのどれもが邪悪を、魔神を、世界を滅ぼせる一撃――

 

「――元素は混ざり、固まり。――万象織り成す星を生む――!!」

 

魔神を滅ぼすため――同時に世界を切り裂き、また、救うため――!

 

 

 

《謳え、エア!!お前の叫びが、何よりこやつの檄となろう!!》

 

 

――はい!!

 

 

白金の乖離剣が、虹色の真空を今、押し放つ!!

 

 

 

《――『『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』』――!!!!!》

 

 

神を滅する浄化の一撃

 

魔王を滅する不滅の剣投

 

あらゆる者を破壊し解脱させる渾身の一射

 

 

その総てを受け止め、破壊し、切り裂き、相殺する天地開闢の一斬――

 

 

間に挟まれた魔神は当然のように消滅する。いや、破壊の規模はたかが魔神を消し飛ばした程度では収まらない

 

 

天は余さず裂け

 

地は瞬時に砕け散り

 

一欠片も生命の存在を赦さぬ、死の地獄――原初の星の様相を垣間見せる――!

 

 

「離れろ!なるべく遠くにだ!巻き込まれるぞ!!」

 

「――ッ」

 

各員を乗せ、全速力で離脱するアキレウス、ロイグの戦車

 

 

「此が、世界の総てを滅ぼし、切り裂く一撃か――」

 

 

天も、地も、余さず消滅し、砕けて虚無の彼方に消えて行く世界の終末の光景を目の当たりにし、スカサハが感慨深げに呟く

 

 

「――あの中に割りいれば、確実にこの身は、砕け散っていた。――ははっ。これはなんとしても・・・カルデアに招かれなければな――」

 

 

荒れ狂う絶滅の一刺し、回転し、穿たれる渾身の刃。あらゆるものを呑み込み解脱させる破壊神の怒り

 

「ふははははははは!知るがいい!!魔神どもよ!!貴様らが誰を敵に回し、何を焼き払い、何に刃を向けたのかをな!!」

 

 

それら総てを食い止め、輝きを放つ天地開闢の暴風――!

 

――ワタシがいる限り、王が在る限り!マスターと、その下に集う財達がいる限り!!これ以上、何も滅ぼさせ!奪わせはしない!!

 

 

乖離剣に魂を預けながら、王の霊基を保護しながら――英雄姫は、エアは高らかに叫ぶ!

 

――堪えきれず崩壊を始める世界

 

天は落ち

 

地は崩落し

 

あらゆる森羅万象は虚無の果てへと堕落していく――

 

――これが!この輝きが!この力が!!

 

 

その叫びと魂に応え、乖離剣『エア』が空前絶後の稼働効率にて虹色の真空を解き放つ――!!

 

 

――人理を照らす、星達の輝きだ――!!

 

 

 

 

――世界は砕け、呑み込まれ、吹き飛び

 

 

その終末を越えた先に

 

 

《――よくぞ奮闘した、エア》

 

 

――はい、英雄王

 

 

希望の華が、咲き乱れる――

 

 

寂れ、陰鬱とした世界は魔神もろとも完膚なきまでに砕かれ、消滅し

 

 

現れたるは快晴、どこまでも広がる山脈

 

天に浮かぶ真紅の星、灼熱の太陽

 

 

人理を望む天文台に、それに寄り添う希望の華――

 

 

「・・・言葉がない。まさか、我等の全身全霊の宝具を唯一人で受け止め、相殺できる者がいようとは」

 

カルナが心からの称賛を贈る

 

「全くだ。――完全勝利の筈なのに、何故か負けた気分だな」

 

晴れやかに、ラーマが笑う

 

「・・・英雄達の王。その名、けして大言壮語では無かったようだ」

 

静かながら、確かに認めるアルジュナ

 

 

「――フッ。我が蔵の助力と後押しを使い、最大にまで高めた至宝の一撃を相殺にまで持ち込むとは大したものよ。奴等を纏めて呑み込む全身全霊の気迫を込めたのだが」

 

 

ふはは、と笑い、限界を遥かに越えた反動で停止した乖離剣を握りしめる

 

 

「暫し休むがいい。一日もすればまたお前は輝こうよ」

 

・・・そして

 

 

「――我が至宝の真価、本領を引き出した功績を以て、お前の魂の研鑽と真価を認める」

 

己を傍で支え続け、インドの神々の一撃をも押し返させた、唯一無二の魂に

 

――・・・・・・おう、・・・ふぉう・・・

 

 

《今は、少し眠るがよい。特異点が消え去るには未だ時間があろう》

 

反動の疲労に、休眠状態に入った魂に

 

《――お前の奮闘、見事であった。――ゆるりと休め英雄姫の名に相応しき、我に寄り添う魂よ》

 

 

英雄王が注ぐ視線は、何者も見たことが無いほどに穏やかであった――




「じ、自分の目が信じられない・・・こんなの、現代でやっていい戦いじゃないぞ・・・!」

「もう閲覧するだけでお金が取れますねぇ~・・・現代に甦る神話!これしか無いですね!」

「これ、魔術師現実として受け止められるんでしょうか、所長・・・所長?」


「・・・えぇ、そう、ね・・・」

「所長――!?」


「つ、疲れた、わ・・・」


『メッセージが届いています』


『本当にお疲れ様!貴女の頑張りが、皆とアメリカを救ったのだわ!本当に、本当に素晴らしいのだわ!人間は、やればできる凄い生き物なのだわ!』


「あはは、ありがとう・・・とりあえず・・・」

――お疲れ様、皆・・・



「こうしてまた、彼と彼女によって幸福な結末が紡がれた、か・・・ますますファンになってしまうね」

(当たり前だ。ボクの姫、ボクのエアだぜ?何回もボクを倒して世界を救ってるんだ。・・・あと、エアを護るギルにも感謝しないとね、ちょっと)

「そうそう。素直に生きなよ、キャスパリーグ。――名残惜しいが、退散だ。預かりものは君に渡すよ」

『フォウくんマペット』

『花束』

『キャスターギルガメッシュ『女性衣装用』』

(こ、これは!)

「着せ替えの一つも嗜ませよ、バカめ・・・だってさ。それじゃあ、また。残る特異点はあと二つ。君達なら、揺るぎない幸福の結末を描けるモノと信じているよ――」


(・・・こ、これは凄い!エアが着るのか!凄い!凄いぞ――!!)

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