人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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くま「…知っての通り、今このシャボンディ諸島は禁忌を犯した者達により大混乱に陥っている。海軍大将を始め…大いに荒れるだろう。加えて、七武海が招集を受ける自体も起きている。…海軍自体は、貴方により疲弊しているにも関わらず、だ」

サタン【所詮犬だもの。だからうねる世界に置いていかれる】

くま「…俺は、ゴムの身体を持つ男モンキー・D・ルフィに可能性を感じている。彼のゴムのような身体は、とある存在と共通点があるからだ」

サタン【共通点?】

くま「そう──解放の戦士、太陽神『ニカ』と同じなのだ」

サタン【…!】

くま「故に、俺は…そして、十の齢の…」

目つきの鋭い電電虫【ルシファー様】

ルシファー【バアル?どうかした?】

バアル【…麦わらのルフィが…天竜人を】

サタン【!】


鉄拳制裁

「行けー!!ジェットメリー!飛ばせー!!」

『リッカ、魔力は大丈夫?』

「勿論!かっ飛んで、メリー!」

 

混迷を極めるシャボンディ諸島の空、ヤルキマン・マングローブの間を疾走する、翼持つ羊。正確には小型ジェット挺。フランキーが贖罪としてメリーと共同開発した『ジェットメリー』に乗り、リッカ、ルフィ、ケイミー、パッパグ、ハチの全員が飛来し飛んでいた。

 

この異常事態の前に、ルフィは『ひとまずケイミー達を安全な場所に避難させる』事を選択。全員をサウザンド・サニー号に待機させ、操縦と供給に必要なリッカを伴い、ケイミー達を乗せ飛翔を開始。ハチの知り合いがやっている店に避難させた後は身を隠す事を方針としたのだった。

 

「海軍大将…青キジとは戦った。とんでもなく強くて…勝てなかった」

「船長…」

「そいつらが、同じくらいかちょっと弱いくらいの仲間を連れてきたら…みんなを護りきれるか解らねぇ。だから今は戦うのは避けなきゃいけないって決めたんだ」

「はい。新世界の強さは…未知数だから」

「リッカ」

「?」

「みちすー、ってなんだ?うまいのか?」

 

肩の力を抜ける会話を交わしながら、ルフィ達はジェットメリーを飛ばす。樹木の下は混乱に満ち、海賊達の右往左往が続いている。海軍大将が来る以上、予断を許さないためだ。

 

「……ん!?リッカ、ちょっと止まってくれ!」

「はい!どうしました!?」

 

「…何やってんだあいつ…!」

 

ルフィが見つけた、怒りを燃やす視線の対象。

 

「あれは…天竜人!?」

 

そこには、シャボンディ諸島に訪れていた最後の天竜人の姿があった。

 

 

「どいつもこいつも不愉快だえ!面白くもない買い物ばかりで退屈だったえ!うんざりするえ〜!!」

 

怒りのままに銃を乱射する者がいる。それは天竜人の衣装を纏う大柄な男……ロズワードの息子、チャルロス。この島最後の天竜人。

 

その足元には死体、銃殺体が数多転がっていた。人間、市民、そしてペット用として売られ、買っていた人達も含まれた大量の虐殺の跡。チャルロスはその境遇にストレスを感じていたのだ。

 

「最近上手くいかないことばかり…!どれもこれも全てあのサタンとかいうやつのせいだえ!ムカつく!ムカつくえ〜!!」

 

聖地マリージョアは半壊し、自身も財産や奴隷のほぼ全てを失った。シャボンディ諸島に来たのは、自分の奴隷を再び増やす思惑であったのだ。

 

だが、シャルリアにロズワードからの連絡も途絶え、人間屋で売り出された者たちも求める水準が低く、ダメ押しにこの混乱…思惑通りにいかぬ事が続いたチャルロスは強い精神性ストレス負荷を受け、限界を超えてしまった。

 

「死ぬえ!どいつもこいつも死ぬえ〜〜!!」

 

なんと、銃を乱射し無差別に殺害を開始。逃げ惑う民を始め、購入した奴隷すら次々と殺してしまったのだ。そこに罪悪感などない。玩具を壊す程度の認識で引かれる引き金はあまりに軽かった。

 

「人魚が欲しかったのに、お前ら役立たずはいらないえー!!」

 

ベルゼブブ達が介入する前に購入した奴隷達はチャルロスにより射殺された。それはまさに奴隷以下の扱い…癇癪に壊される程度でしか無い消耗品であった。

 

「わちしは天竜人!!天竜人以外に害されるなどあってはならないえ〜〜!」

 

「うっ……ゥ…」

「あぁ、あなた…!」

 

血溜まりに沈むが、瀕死なれど息がある夫に妻が這い寄る。チャルロスの凶弾に、致命傷を受けてしまっていたのだ。

 

「誰が生きていいと言ったえ!?下々民風情は身の程を弁えるえ!!」

 

当然にして理不尽ながら、彼にとって彼の許可なく生きていることすらも許されぬ事であった。怒りも顕に追撃の凶弾を撃ち放とうと銃口を向ける。

 

「わちきら天竜人の思い通りにならぬ事等!あってはならないえ〜〜!!」

 

そして、その銃口から弾丸が放たれたその時───またしても彼にとってままならぬ事が起こる。

 

「!?」

 

瞬間、間に割って入る形になった影が、またしてもチャルロスの最も疎む『ままならぬ事』を助長する。

 

「………………」

 

『ギア2』を発動させ、超速でジェットメリーから飛び出したルフィがその弾丸から命を護った。目にも止まらぬスピードで、、直撃から庇ったのである。

 

【ルフィ船長!治療します!】

「!…頼む!」

 

即座に鎧にて身分を隠したリッカが追従。魔力の泥にて息のあるものを治療する。真っ直ぐに相対する、ルフィとチャルロス。

 

「お前が、天竜人ってヤツか。なんでこんな事するんだ、お前…」

 

「穢らわしい海賊かえ!?どこから湧いたえ!?」

 

「この人らも、お前が殺した奴等も…ただ生きてただけだろ」

 

「笑わせるえ!この世界は天竜人のもの!つまりわちきのもの!何をどうしようと自由!わちきの勝手だえ!」

 

「お前……!」

 

「気安く話しかけるなえ!海賊風情が!そしてお前は何をやってるえ!!」

 

チャルロスが発砲したのは、ルフィではなく背後のリッカであった。鎧を纏っていたためダメージは無いが、それは無邪気な悪意に満ちたものであり、

 

「────!!」

 

麦わら海賊団船長、モンキー・D・ルフィを激昂させるには充分すぎる蛮行に他ならない。彼にとっての仲間を害した、という事であるからだ。

 

「ブツブツうるさいえ!お前らまとめて死んでいいえ〜〜!!」

 

それが最悪手と気付かぬチャルロスは銃を乱射する。人格や行動に破綻が生じる程のストレスが、彼を凶悪な人災と変貌させていた。

 

そしてそれが、自らに下る制裁の決定打ともなる。

 

「俺の仲間に…!何してんだお前ェッ!!

 

ここに降りる前、パッパグやハチにルフィは入念に釘を差されていた。『天竜人に関わるな』『天竜人の行動を阻むな』と。それは世界の禁忌、やってはならないタブーだと。

 

だが、それが世界のタブーであるならば仲間を傷付ける事はルフィの何よりのタブー。海兵として仲間になったリッカの為に怒る事は、至極当然の帰結。

 

【ルフィ船長!!】

 

「ゴムゴムの…………!!!」

 

目にも止まらぬ勢いで殴る──では飽きたらなかった。身体中を捻りあげ、口から息を放ち猛烈に回転しながらチャルロスに突撃していくルフィ。

 

「え……」

 

チャルロスはそれに反応すら出来なかった。戦闘経験が皆無かつ、一方的に嬲るしかしてこなかった彼が、今のルフィの技を見切れる筈もなく。

 

そして──放たれた拳は、世界の閉塞を崩す嵐の如くに。

 

「『JET暴風雨』!!!!!」

 

ゴムゴムの暴風雨の、ギア2バージョン。猛烈な速さと硬さの拳が、乱反射のベクトルと推進力を兼ね備えて全てチャルロスへと放たれたのだ。

 

「アバガゲブガゲゲゲゲゲ!!????」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

「ぎ、ぎざまぁ!!わちぎにごんな事をして……!!」

 

「だあァァァァァァァァァァァァァ!!!」

「ブガゲェエッ!!!」

 

カエルの潰れたような断末魔を上げ、やがてトドメの一撃を受けたチャルロスは遥か彼方へとぶっ飛んでいく。家屋を貫通し、ヤルキマン・マングローブを突き破り、見えなくなるまでの距離を一瞬で。

 

(ゴムゴムの暴風雨!?一発殴るだけじゃ到底済まなかったから…!)

 

「ア……アバゲ………」

 

やがて、マングローブの一角に深く深く食い込み完全に停止する。突如現れた怒り心頭のルーキーの必殺を、彼自身が食い止める事も、いなすことも出来るはずもなく。

 

「……………─────」

 

身体中から排熱するかのように立ち昇る湯気と共に、伸ばした身体を戻すルフィ。

 

……本来の次元とは違い、彼は仲間を傷つけられたが故に。これほどまでに強力な一撃を繰り出した。

 

──そしてそれは、ルフィが世界の禁忌をチャルロスごとぶっ飛ばし、世界を変化させる一石として十分であった。

 




ルフィ「…リッカ、大丈夫か?」

リッカ【はい!治療も終わっています】

ルフィ「良かった!なら…行こう!」

リッカ【はい!!】



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