人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
グドーシ「おや、カーマ殿。元気でござるな」
カーマ「それはもう!私は夏草の愛の女神でもあります(?)。リッカさんとグドーシさんの愛を、全力で応援させていただきますよ!」
リッカ「あ…なら、三人で色々なとこまわろうよ!丁度時間空いたしね!」
グドーシ「それは何より。この三人は拙者、とても嬉しい組み合わせにござるよ」
カーマ「はい!喜ん……ハッ!?」
リッカ「!?」
カーマ(これは…私、カップルに挟まる無粋な間女!?そ、それはプライド的に如何なものかと!しかし応援はしたい…ぐぬぬ、矛盾が…!)
グドーシ「煩悩が見えますなぁ」
リッカ「カーマが元気そうで何よりだよ〜」
『わーい!セーヴァー!こっちこっち!』
神田明神の境内、飛び回り跳ね回る天真爛漫な姿が一つ。輝ける金色の神に白い衣装を纏いし少女…キラナ・シャーンティ。アフラ・マズダが使徒にして化身たる彼女は、初の文化に触れ弾むように躍っていた。
【コケるなよ。石畳で頭打ちはフツーに死ねるからな】
そんなキラナに付き添うはアンリマユ…正確には、セーヴァーとしての魂と精神を前に出した在りし日の青年。リッカの身体情報を借り受けた、転生体のような在り方だ。
『いっぱい、素敵なものがあるね!』
キラナとセーヴァーは、とある山の集落での人身御供同士である。キラナは善を永遠に掲げる神の化身として。セーヴァーは、この世全ての悪の集積者として。名前を奪われ、存在を奪われたのがセーヴァーであり、身体に善と賛美を刻まれ、焼きつけられたのがキラナである。
そんな彼と彼女が、普通の祭りや行事を知るはずもなく。それ故に、正月の催しに二人で参加したのだ。アジーカは、アナーヒターと共にモチとうどんを食べに向かった。二人きりである。
『あ!セーヴァー、おみくじ!引こう!』
【運試しねぇ。余程じゃなきゃ結果は解りきってんだろ】
促されるままに、キラナとセーヴァーはおみくじを引き運気を占う。其処には、ある意味必然の結果が待っていた。
『だい、きち?素敵な結果なのかな?』
【良かったじゃねぇの。上澄みだぜ?まぁ私は知ってたがな】
キラナは大吉。セーヴァーは大凶。見るまでもなくといった結果である。互いに司るものを見れば一目瞭然だとセーヴァーは嗤う。
【ケッ、夢のねぇ話だ。悪神だから間違っちゃあいねぇがよ】
『〜……』
【まぁ、所詮は運試し。真に受ける事もねぇ。キラナ、オメーはせっかく良かったんだから…】
すると、セーヴァーの前にキラナは紙を差し出した。それは、大吉のおみくじ。
『はい、あげる。セーヴァーは大吉!』
【はぁ?お前な、それじゃあおみくじの意味が…】
『いいの。私、幸せを分けられるくらい幸せだから』
【!】
『セーヴァーとまた会えて…キラナの名前があって、とってもとっても幸せだから!』
満面の、屈託のない笑みで告げるキラナに、セーヴァーの脳裏に在りし日の記憶が蘇る。
ナイフで身体に讃美と祝詞を刻まれ、その上から烙印の焼きごてを押し込まれながらも、笑みを浮かべ幸福を祈っていたキラナの顔を。
誰かが幸せになれば、私も幸せだからと言ってのけた女の顔を。
どんな責め苦も、どんな独善も受け入れていたコイツが、高々世話役の男一匹が死んだ程度で涸れ果てるまで涙を流し続けた事を。
いつでもコイツは幸福だった。いつでもコイツは満たされていた。
そんなコイツの幸福を…オレは奪って死んでしまった。こいつは悲しみ嘆いて、絶望に沈み死んだんだ。それなのに…懲りずにまた、人の幸せを祈りやがる。
【…幸せだから、じゃねぇよ。バカ】
『?』
【お前はちょっと幸せになったくらいじゃ足りねぇよ。うんと、ドカンと。幸せでいろ。じゃなきゃ……割に合わねぇだろうが】
セーヴァーは、ぽふりとキラナの頭を撫でた。
『〜。…うん!』
…セーヴァーの想いは、キラナは重くは受け止めていないだろう。彼女の情緒は未だ、幼さを多分に残している。
だから…自分の境遇がどれほど歪んでいたかを知る由もないのだろう。彼が、セーヴァーの魂がどれほどキラナの幸せを願っているかを。
【……ったく。返事だけは元気なやつだ】
そんな彼女の頭を…セーヴァーは優しく撫で。
キラナは幸せそうに、目を細めるのであった。
…そんな折、さらなる組み合わせのグループも正月を楽しみに高天原に足を運んでいた。
「へぇ。これがしみったれた島国の伝統行事なんだ〜。なんというか、未開の地って感じがするなぁ〜」
『チー!』
「ぐほぉ!?」
『あらあら…。ブランカの機嫌を損ねるなんて駄目じゃない、オベロン』
「ほんとの事を言ったつもりなんだけどなァ…」
そのペアは、オベロンにブライド・ティターニア。妖精獄の騒動から、カルデア入りを果たした妖精王と妖精姫の二人である。アルビオンは、ボルバルザーク主催の無差別最強生物決定戦にエントリーしていったため、二人の…三人の参列である。
『美味しいものを食べて、楽しいことをするのがお正月みたいなの。たくさんお正月しましょうね、オベロン』
ティターニア…ブライドは静かに佇む姿とは裏腹に好奇心旺盛かつ溌剌な妖精王妃である。今日もまた、オベロンを連れて汎人類史を堪能する遊覧漫遊の最中であった。
「はいはい、エスコートさせてもらうさ。僕はオベロン、ティターニアの夫だからね」
それに付き合うオベロンは、決して心から浮かれている…という訳ではないけれど。
「しっかり掴んで離さないでおくれ。混み合った場所から引き上げるのも楽じゃないんだからさ!」
それは、今度こそ離さず君を見つけて手を繋ぐという意思表示。
『えぇ。あなたの事、見失ったりはしないわ』
『チチー!』
そんなオベロンを、見逃し離れるつもりはないというブライド達の意思表示。
──嘘やまやかしの存在しない一幕を、オベロンは確かに最愛の王妃と紡いだのであった。
…勿論。カルデアメンバーだけが楽しい正月かと言えば、全く以てそんなことはあり得ず。
『新たなる始まり、年の数え直し…か。何であれ、永遠でない日付を祝い、言祝ぐのはよいものだな』
「狭間の地ではずっとずっと変わらない黄金の律だったものねぇ。進む日付…明日に向かう世界ってだけで、喜ばしいものだね、ラニ」
『…あぁ。そうだな、私の王よ』
遥か異世界より訪れた、夜の魔女とその王も高天原の催しを楽しみ。
『レイヴン。参拝と言うのは神に祈りや、抱負を告げるものだそうです。せっかくですので、一緒に参拝を行いませんか』
「エアは、何を願うんだ?」
『……そうですね。レイヴンと共に過ごせる時間が、もっと確保できますように…というのは、おかしい願いでしょうか?』
「…いいや。俺もちょうど、それと同じ様な願い事にしようとしていたんだ」
『レイヴン……ありが』
『戦友。高天原の一角で無料餅つき大会が催されている様だ。私と君で…餅つきあいと行こうじゃないか。人間の美味を、君の相棒にも味わってもらおう』
「ふふ、そうだな。了解した。…さぁ、エア。行こう」
『はい、レイヴン。アサルトブーストより直線的で、クイックブーストより初動の速いあなたの戦友の下へと向かいましょうか』
硬い恋人繋ぎで、境内を翔ける鴉とそれに寄り添うルビコンで生まれた存在。
「かつて、エンゲブレト坑道で君は言った。コーラルやルビコンに対して、何かしらの想いを巡らせてくれれば嬉しいと」
『!…はい』
「あの時は言葉に出来なかったが…今伝えるよ。エア、君は俺がルビコンで見つけた、──最高の宝物だと」
『……………嬉しいです。レイヴン。心の底から』
「さぁ、行こう。ウォルターの言う『普通の人生』を…君と何処までも探求するつもりだ」
『何処までもお供します。レイヴン。これからも、ずっと』
来る日も来る日も、幸せを噛み締めて生きていく。美味しいものを食べ、笑顔も悲しみも飲み込んで生きていく。それこそが人間の人生であると、レイヴンとエアは学んでいく。
『より美味しいお餅を作るのは…私だ!見ていてくれ、ミレニアム生徒達!このラスティには…高天原で成すべき事がある!』
『レイヴン。様子のおかしい人がいます』
「いつもあんな感じだった気がする」
正月の一時は…愉快に、または静かに過ぎていく。
カーマ「実は、二人に相応しい正月巡りの相手を招いているんですよ!」
リッカ「なんと!」
カーマ「それでは、どうぞ!」
藤丸立香「あけましておめでとうございます!」
藤丸マシュ「リッカさん、グドーシさん。カーマさん!あけましておめでとうございます!」
リッカ「わぁ…!」
グドーシ「えぇ。あけまして…おめでとうございます。御二方」
正月の日々は、確かに過ぎていく…。