人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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部員の方からのアイデアを貰ったので、流行りと合わせてやってみます。

プチ特異点です。


正月記念〜プチ特異点その2〜

「う…うぅん…あれ、オレは……」

 

軽いめまいを覚えながらも顔を上げ、身体を起こす少年…藤丸立香。彼は気だるさが身体にへばりつく感覚を覚えながら、それでも軽く首を振って辺りを見渡す。

 

「…あれ、どこだ、ここ…?オレは確か…」

 

そう、楽園カルデアに…まだ籍は入れていないが、全財産を叩いて拵えた聖杯の雫から作り上げた指輪を、マシュの左薬指に嵌めて、いよいよ南極…元凶とされたカルデアスへと向かう最中、楽園カルデアに呼ばれ、祝い、そして別れ部屋に戻ったはず。その近況と、今の場所が結びつかない。

 

「…地下通路…?」

 

見たところ、辺りを見渡して得られる情報は…電車のホームに繋がる通路のような空間。白張りタイルに、黄色い歩道パネル。左側にはポスター、右側にはいくつかの扉。それ以外にめぼしいものはない。自分はポツンと、通路の真ん中に放り込まれているような感覚だ

 

「…これは…?」

 

ふと、左側のパネルと案内が目に留まる。そこの書かれた文言を、藤丸は読み上げる。

 

 

異変を見逃さないこと。

 

異変を見つけたら引き返すこと。

 

異変が見つからなかったら、引き返さないこと。

 

八番出口から外に出ること。

 

 

そして黄色いパネルボードには『0番出口』。右に書かれた矢印は、行くべき道を指し示しているのだろうか。

 

「…八番出口から、外に出ること…」

 

つまり、今は0番…8番出口まで歩いていかねばならないという現状を立香は理解する。試しに通信も試してみたが、繋がる様子はない。

 

「サーヴァントのみんなも…喚べない、のか…」

 

召喚すら出来ず、マシュとも話せない。孤立無援の地下通路に藤丸は放り出されたのだ。あまりに芳しくない状況ではあるが…

 

「迷っていても仕方ない。マシュのところに帰らなきゃ」

 

立香は頬を叩き、決心し歩み始める。通路を左に曲がれば、まっすぐ長い通路があり、左曲がりにまた道は続く。

 

「異変、っていうのが気になるけど…見つけたら、引き返せばいいんだよな。うん」

 

注意深く、異変を見逃さずに進む。幸い、戦闘力は必要ない特異点なのかと安心する立香。

 

「リッカみたいに、完成されたスーパーマスターだったらこんなの朝飯前なんだけどな…」

 

特異点に放り込まれても、力を封じられても必ずや大事を成し遂げるであろう自分が知る最高のマスターを思いながら、立香は歩く。憧れはするが、妬む必要はない。自分には自分のやり方があるのだから。

 

「解りやすい異変だったらいいけど……」

 

立香は歩み始め、通路を左折する。そして長い通路に至る場で正面を見据えた時───

 

「え────」

 

立香は、それを見た。通路の真ん中に並ぶ、男女の二人

 

「ふふ…」

「へへっ…」

 

柔和に、あるいは朗らかに笑う男女の二人組。彼等の顔、姿に藤丸は大いに覚えがあった。

 

「アデーレ……マカリオス…!」

 

アデーレ、マカリオス。楽園カルデアが体験していないギリシャ異聞帯にて、年老いる事も成長する事もない、現地の双子。共に、未来を願ってカルデアに協力してくれた二人。

 

「どうしてここに!?それに…!」

 

見れば、『二人は成長していた』。少女から女性に、少年から青年に。麗しく、逞しく二人は時を進めていたのだ。

 

「二人とも!元気にしていてくれたんだ────」

 

 

異変を見つけたら、すぐに引き返すこと。

 

 

 

「────、あ」

 

いるはずがない。アデーレと、マカリオスがいるはずがない。

 

彼等は異聞帯の住人。ギリシャ異聞帯の現地民。

 

ギリシャ異聞帯は、カルデアが、もう。

 

「ふふ…」

「へへっ」

 

アデーレとマカリオスは、静かに笑っている。藤丸立香を、優しく招き入れる様に笑っている。

 

「あ……オレは……君達は……」

 

近付いてはいけない。先に伝えられたように、これは『異変』だ。本来存在してはならないもの。引き返さなくてはならないもの。

 

アデーレを、マカリオスを否定しなくてはならない。二人は異変だ。カルデアが勝った歴史。消え去った歴史の残滓。

 

──一言くらい。

 

「ぁ………」

 

──駆け寄って、せめて一言だけでも。

 

「ううっ………」

 

 

『立香さん』

 

「!!」

 

『未来で…貴方の子供を、産みたいです』

 

「──あぁぁぁぁぁ…………っ!!」

 

立香は、全力で引き返した。

 

帰らなくちゃいけない場所がある。迎えたい未来がある。

 

心に刻んだ、あの幸せが。どんな苦しみも乗り越える意味になる。

 

「はぁっ…はぁっ……はぁっ…!!」

 

 

立香は引き返した。戻った先には、黄色いパネルボード。

 

「…一番出口…」

 

見れば、0番出口となっていた表示が、出口1と変化していた。南武公園、成平ビルなどといった地名が書かれている。

 

「…特異点、なんだよな…これを後、七回…」

 

異変を見つけたら引き返すこと。引き返しても先に進めるのであれば、それは挑む価値があるものだ。

 

「……行かなくちゃ。帰るんだ、オレは…」

 

彼女の下へ。オレがカルデアで手に入れた、最高の宝物の下へ。

 

「異変を見つけたら…引き返すこと…」

 

どんな甘い夢でも、引き返さなくてはいけない。どんな辛い過去でも、引き返さなくてはいけない。

 

「辛い思い出には、暇がないから大丈夫かな…」

 

マシュに抱かれ、胸に顔を埋めて寝ないと【悪夢】を見る体質になってしまった都合上、異変のネタには事欠かない。注意しなくてはと意気込む藤丸に…

 

「!!」

 

異変は、これ以上なく明確な現象を引き起こした。それは、向こうから歩いてきた中年をあっさり飲み込んだ、最悪の代物。

 

「ケイオスタイド…!!」

 

ビーストⅡ、ティアマトが披露したバビロニア崩壊の原初の海。触れれば即座にアミノギアスにより人類の敵となる最悪の質量兵器。立香は即座に踵を返す。

 

「触ったら終わる、触ったら終わる、触ったら終わる…!」

 

脇目も振らずに走らなければ、今ここで自分は死ぬ。確固たる自信の下、藤丸は迫り来るケイオスタイドからひたすらに逃げる。サーヴァントの助けもなく、カルデアの通信も無い中、逃げることしか出来ない。

 

いや…逃げる事ができるなら。それが自分の最適解だと信じて。

 

 

「あぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁ!!」

 

絶叫しながら、黄色いパネルボードの前へと飛び込む。しこたま身体を打ち据えたが、立香は構わずパネルボードの数字を見やる。

 

「…2番出口……」

 

数字はカウントされた。では、成功した…という事だろう。2度の異変は乗り換えた。ならば後は、6つ同じ事を繰り返すのみ。

 

「やるしかない…生き残る為にも…生き延びるためにも…」

 

弱音を吐く資格などもう無い。世界と未来を取り戻すまで、自分は最後まで駆け抜けなくては。

 

「さぁ、次は何だ…、…?」

 

見ると、白い注意喚起のパネルの横に、先程とは違うものがある。それは、白い扉。

 

「…異変、じゃないよな……」

 

予測の範囲では、広い通路に至らなくては異変のカウントは起きない。ならばこの扉は、異変やそれ以外の枠組みの外。

 

「使えるものは、何にでも頼らなくちゃだめだ…」

 

自分一人で解決できる事には限界がある。助けのない自分の力などたかが知れている。リッカのように、地獄をすべて力に代えられるパワフルさや運命力は持ち合わせていないのだから。

 

「頼む……ポジティブな出来事であってくれ…!」

 

祈るような気持ちで扉を開けると、そこには──。

 

「…駅のホーム?」

 

電車を待つかのような、駅のホームが広がっており。

 

「!!!」

 

「………」

 

いつの間にか自分の傍らには…

 

「あ、アジーカ…ちゃん?」

 

「?誰それ…?」

 

リッカ、その力の中核を担う少女にそっくりな幼女が、自分を見上げていた…。




りつか「わたし、ふじまるりつか。あなたは?」

立香「!…オレも、藤丸立香なんだ」


りつか「あなたも?みんなそうだよ」

立香「皆…?」

作家の男性「おや…君も迷い込んだ人類最後のマスターなのか?」

アイドル衣装の少女「地獄に仏!頼もしい味方、また来たね!」

おじさん「乗り物が無いと俺は…俺は…」

りつか「皆、ふじまるりつか」

立香「…なん、だって…?」

脅威のメンバーに、立香は動揺を隠すことが出来ずにいた──。

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