《・・・手間と時間はかかるが、拠点において他の追随を許さぬ英雄に心当たりはある。――別次元のカルデアと縁さえ結ばれれば此方にも召喚は叶おう。――覗いてみるとするか》
平行世界
『チョコだ!チョコを作り我が国を作るのだ!』
『なんてことだ!このままでは・・・カルデアが物理的に停止、崩壊する――!!』
《――――――――(絶句)》
――むにゃ・・・(休眠中)
《――――――カルデアを危機に晒したその手腕、買ってやろうではないか。――良かろう!縁は結ばれているならば、召喚など容易いわ!ふはははははは!!》
アメリカの縁の精算が終わり、新たな仲間を増やしたカルデア
(色々来たね。筋肉風味がキツすぎるような気がしたけど)
フォウが欠伸を漏らす。後は日を跨ぎ、王と共に、改築に移るのみなのだが・・・
「うむ。だがまだ呼ばねばならぬサーヴァントが二騎程残っている。これは『カルデア』に必要なサーヴァントだ。まぁ、戦闘面で期待できないこともないが・・・後詰めの域を出まいよ」
そういって王は『虹色』の札を取り出す
――セイバーですか?
反射的にそう訪ねた。未だ王が后と求める至宝、セイバーの騎士王は召喚できていない
(オマエも懲りないなぁ・・・脈なしって解らないのかな?)
《フッ、脈があろうが無かろうが知ったことか。我が欲し、求める。男が女を追いかける理由はそれのみで充分よ》
――か、カッコいい・・・!
(そうだねぇカッコいいねぇ。全く相手にされてないって事実を除けばね)
《ははは、こやつめははは。辛辣ではないか獣よ。腹の虫の居所が悪いのか?》
(手に入らないからこそ美しいなんて宣ってるんだからみっともなくすがるなって話さ。さっさと休めよ。オマエが倒れたらカルデアは、エアはどうなるんだ)
デュクシ、デュクシと顔を叩くフォウ
《テンプテーションというヤツか。あざといわ!恥をしれぇい!》
――あ、マスターが見てたやつ!ワタシもできるよ!――フォウや王の事、大好きなんだからね!
(ツンデレじゃないよそれはデレデレだよエア――)
身体中がチョコになり、ぱりんと割れて中から復活したフォウが飛び出す。その破ったチョコ殻をココアにするフォウ
(疲労回復になる、飲んでいいよ。あるいははやくエアに代われよ)
《フッ、実益を兼ねるようになったか。悪くないぞ、――さて》
ココアを聖杯に注ぎながら飲むと同時に、召喚室に一人の少女が現れる
「お疲れ様です、ギル」
生真面目に一礼し、礼を尽くすはカルデア所長、オルガマリー・アニムスフィアだ
「召喚を行うのですか?では、皆を・・・」
放送を行わんとするオルガマリーをギルは遮る
「いや、此はお前のみで構わぬ。此より喚ぶは、『お前の助けになるサーヴァント』なのだからな」
王の言葉に、キョトンとするオルガマリー
「私の・・・?」
「然り。マリーよ、お前の戦いとはなんだ?」
王の問いに、即座に答える
「このカルデアを背負い、皆を庇護し、皆を護っていく事です。戦闘ではなく、生命を護る、指導者の観点の戦いにて」
「うむ。日夜、お前はよく励んでいる。天草の『人の警戒心を解きほぐす振るまい講座』カエサルの『扇動・話術教室』ダビデめの『絶対失敗しないビジネス講座』に毎日参加しているようだな?」
――そう、彼女はリッカ、マシュとは違った実力をもつけている
それは『指導者』『施政者』としての技術。人の上に立ち、部下を庇護せんとする業の総てを学んでいるのだ
何故?決まっている。人理を取り戻す戦いの『先』にこそ、オルガマリーは立ち向かわなければならない戦いが待ち受けているからだ
「所長の重責を担いながらよくやるものよな。『いくら教えても満足しない』と評判だぞ?」
「それは、はい。技術に終わりはありませんから・・・」
今のオルガマリーは、身振りひとつで人の心を動かし、表情で印象を自在に変え的確な交渉を運べるエキスパートと呼んでも差し支えない技術を身に付けている
リッカのコミュニケーションとは似て非なる『自らのみが絶対有利になる』一方的なネゴシエーション術を会得しているのだ
「では、改めて問おう。このカルデアは『善』か『悪』か?」
――それはもちろん、むぐ
(ステイステイ、あえて問い掛けてるのさ、コイツはね)
エアの口にてしっと肉球を押し付ける
(手は洗ってるよ、ガレスちゃん並にね!)
――むぐー
「『善』です。来歴はともかく・・・ここにいる方々は、紛れもなく」
その応えに、満足げにうなずく英雄王
「うむ、それは我も認めるところよ。――だがお前も理解している通り、人理の先にある戦いとは人間どもの『悪』との戦いだ」
――人間の、悪
それは、ゲーティアが見せた悲しみと悲劇
世界のあらゆる事象を、ゲーティアはワタシに見せつけた
・・・それらは世界の一部であり、不可欠な要素であるとワタシは信じ、彼等の要求に否を突きつけたわけだが・・・
――そう言えば、ゲーティアもワタシに名前をくれたんだっけ・・・
その名、『レメゲトン』と呼称していた
(いつか意趣返しに名乗ってやるのもいいんじゃないかな?その名前を聞けば、奴等がどれだけキミに期待していたかなんて丸わかりだ)
――彼等の価値観に思うところはあったけど、それでも彼等の存在の全否定には繋がらない
――いつか、この名を・・・彼等に告げ返す日が来ることを信じて、『レメゲトン』の名前は大切にしまっておこう
ワタシの名前は『エア』であり・・・魔神では無いのだから
――だから、この名を告げるときは
彼等の憐憫が潰える『訣別』の時に――
《――後生大事に抱えておけよ、エア。奴等がお前に託した『ソレ』こそが、奴等の全能を砕く鍵になろう》
――はい。王よ
「覚悟の上です。カルデアの接収、利権争い、押収、権利の強奪、実力行使。――それらからカルデアを護るのが私の戦いなのですから」
エアと同時に、オルガマリーが告げる
「彼女達の『善』を・・・いつか成し遂げる『奇跡』を、汚されないように」
「――そこまで解っているならば問題はあるまい。なればこそ、此度の召喚にこそ意義はあるというもの」
笑いながら虹色の札をサークルに投げ入れる
「では、そんなお前の戦いを心強く支えるサーヴァントを招くとしよう。オルガマリー、聖杯に告げサーヴァントを絞れ。用語は『教授』『魔弾の射手』だ」
オルガマリーが頷き、召喚を開始する
「聖杯よ、願いを汲み取る万能の器よ。此処に縁を招き、我が声に応えよ!」
聖杯を使用し、狙った縁を確実に呼び出す
現れたのは――
「――いやいや、私を招くとはお目が高い。このような秘密裏の召喚、誠に私に相応しい舞台だとも、ははははは!」
スーツを身に纏い、朗らかに笑う棺桶を所持した陽気なおじさまが現れる
「あ、あなたは・・・」
「そうだネ、真名を教えても構わないが・・・一生懸命頑張る君にはこう呼んでもらいたい!『Mr.ダンディ』と!」
――み、Mr.ダンディ・・・!カッコいい!
(アラフィフ、とはいうが確かにイカした歳の取り方だね)
圧倒されながら、オルガマリーが頷く
「わ、解りました。Mr.ダンディ。えと、よろしくお願いいたします」
「若いネー。キラキラしてる!喚ばれた理由は解るよギルガメ君。彼女に『講義』すればいいんだろう?」
陽気ながら、底冷えのする笑顔で英雄王を見据えるアラフィフ
「然り。オルガマリー、そやつはあらゆる社会の『悪』を識る者だ。おおよそ人心、人間社会で起こりうる悪は総て把握しているといっても過言ではない」
「悪を識る、教授・・・――まさか、モリア――」
オルガマリーの言葉を即座にアラフィフは遮る
「わぁあストップストップ!真名は秘密だとも!予定は未定だが、この先私が活躍する時ネタバレになってしまう!まだまだ私はMr.ダンディだとも!」
「は、はい・・・」
「宜しい。――さて、オルガマリー君といったかな?何故、ギルガメ君が私を君の助けになると言ったか解るかナ?」
即座に応えられず、キョトンとするオルガマリーを愉快げに眺める
「それはね、君に『悪』を支配させる手助けができるからサ。悪は基本、遠ざけるものではあるが知っていて得をするものであるからネ」
「そう、なのですか?」
「勿論。名うてのハッカーが出所するときは大手企業がこぞって採用を求める。その手腕は防衛、他社への攻勢に使えるからサ。空き巣や強盗を生業とするものは建築物、防犯の知識がとても深い。識っているのだから当然だネ?・・・解るかねオルガマリー君『悪』は『善』の営みを護るために大変、それはもう大変に意味を持つ!」
王はアラフィフの言葉を後押しする
「『善』のみでは悪意には無力。丸腰の兵など射殺されるが必定と同じようにな。――故に、お前が真に、カルデアを護らんとするなら『悪』を支配するは必須である」
「悪を、支配する・・・」
反芻するオルガマリーにサムズアップするアラフィフ
「何、問題はないサ。『誰かを貶めたい』『誰かを破滅させてやりたい』などという願いで興された悪意ではなく、『善なる営みを護りたい』とする悪意ならば、けして自分を見失いはしないと思うがね。というかそうさせない為に私が講義するのだがネ!というか地の文!Mr.!ダンディ!!」
クックッと笑うギル
「どうだ?講義を受けるか?受けぬというなら仕方あるまい、退去させるが・・・」
「マジで!?いやいやそれはないナー、いや、ないよね?」
「さてな――」
「――やります。教えてください。私に、社会の『悪』を」
顔を上げ、応えるオルガマリー
「カルデアの『善』を護るために・・・貴方の知る『悪』の総てを私に」
その決意を聞き、Mr.ダンディ・・・アラフィフは邪智に顔を歪ませる
「――勿論だとも。私はちょっと悪どいが、君のような真摯な者の嘆願を裏切るほど腐ってはいないつもりだよ?」
「裏切っても構わんぞ?バリツではなくウルクアーツで今一度滝壺に叩き落としてくれる」
「ウルクアーツ!?バリツとはまた違う技があるのかネ!?」
「うむ。肉シートですむと思うな。貴様を滝に擦り付け、サーフボードにしながら滝を下り、貴様を踏み台に滝壺から脱出も自由自在よ。覚悟が定まったなら・・・――いつでも、我に唾を吐くがよい」
いい笑顔で笑う英雄王に
「よーしMr.ダンディ愛弟子を育成するぞー!うんうん、やっぱり裏切りは自分じゃなく誰かにさせるに限るネ!」
恐怖の汗を流しながら頷くMr.ダンディであった・・・
――悪いこと・・・あ、今度フォウにサプライズパーティーするから楽しみにしててね!
(エア、伝えてくれたらサプライズの意味が無いよ――)
手錠が身体に余すことなく嵌められ、消滅し、赤スーツと黄色のネクタイを着て復活するフォウ
(ルパンダサーイ)
――あっ、そ、そうだった・・・!着せ替えまでこなすんだねフォウ!
《全く、多芸な獣よ。どれ程力を溜め込んでいるやら・・・披露が楽しみよな》
「あ、一つお願いがあります」
オルガマリーが手をあげる
「何かな?オルガマリー君」
「・・・いつか、リッカに力を貸してあげてください。・・・真名も、いつか」
「――勿論だとも。それまでは私は、君のマンツーマン講師として頑張るとしようかネ」
「職員どもには貴様の存在を秘匿しておく。ロマン、ダ・ヴィンチには伝えておくが・・・マスターの前には顔を出すな」
その要求に頷くMr.ダンディ
「ふむ、知らぬことこそ最大の防衛だネ?サーヴァントの枠にも私のことは無しでお願いしよう。では早速だがオルガマリー君!君の仮想する敵組織全員の個人情報の把握、暗記といこう!」
「ぜ、全員ですか?」
「勿論全員だとも。嗜好や弱みを知ればよりよい関係を築く『材料』にも使え、身近な方々が『不幸な事故』などに見舞われぬよう『警告』もできる。どう動かすか『指示』も出来る。良いことづくめだろう?無論、上位職の情報は念入りに、的確にね・・・いや、他意は無いんだよ本当に。ただ人となりを知っておきたいだけサ」
「――っ」
「同時にカルデア職員の事も知っておこう。『家族』が敵に誘拐されたりしたら事だからネー。怖いナー防犯しなきゃナー。・・・たとえば、いやたとえばの話だがネ?彼等が新しい就職先に行くとき、こちらにも残る絆『思い出』が必要だろう?此方と過ごした時間を『忘れない』よう、彼等の身の回りを知っておくのはそう言った理由さ。大したことじゃないよ、本当にネ――」
「――今更怖いものなんて何もありません!人理焼却を脱した際、保護をスムーズに終わらせるための情報提供と割りきります!」
「そうだ!『悪』で『善』を護る事こそが大事なのだ!素晴らしい!君は素養と資質に満ちているあっはっはっはっ!!」
――悪も、善も等しく価値がある。ですね、王
《うむ。マリーめは、ますます強かに、一皮向けようさ――》
楽しげに笑うMr.ダンディ、決意を固め教えを賜るオルガマリーを、王は楽しげに眺めていた・・・
「さて――来るがよい。最古の毒殺者、おぞましき女帝よ」
『バシュムの毒瓶』
「――よもや我を招こうとは。お前の楽園を腐り落とさせる毒が入りよ――」
《エア!》
――はい!
『座った王を駄目にするウルトラリラックスフォウカラー玉座』
「まぁ座れ、玉座だ」
「な、なにっ――!?このようなデザインの玉座など、我を馬鹿に――・・・・・・・・・・・・」
「どうだ?」
「――心地好い・・・」
「よし、参列したな。貴様の『庭園』を造る材料、総て我が受け持とう。貴様渾身の土木建築、我に見せてみよ」
「庭園が、入り用か?・・・然るべき材料と、3日あれば・・・即座に目の当たりにさせてやろう・・・あぁ~・・・」
「よし、話は決まったな。特異点攻略は庭園完成の暁とする!油断と慢心、ゴージャスには無縁と知るがいい――!」
――気持ち良さそう!やったね、フォウ!やっぱりカラーがいいんだね、カラーが!
(これもプレシャスパワーの応用。女帝なんぞがボクに勝てると思わないことだね――)
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