人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
アスカ「大丈夫?差し入れに来たよ!」
メイ「アスカちゃん…ありがとう…!」
アスカ「イジメしてる奴らは皆やっつけたよ。皆が…、休学や停学してる皆が帰ってくるまで、私はトリニティで待ってるから!」
メイ「え…でも…アスカちゃんには…」
アスカ「いいのいいの!私には非常識な友達がいてさ。常識に囚われず母校が二つあるくらいなんでもないって!」
更生局員「アスカ様。御時間です」
アスカ「あっ、も、もうすこし!」
「アスカ様、御理解を」
アスカ「あ、メイ!じゃあまた来るから!待ってるから!」
メイ「…エデン条約…」
アスカ「え?」
「敵対しているゲヘナとの仲直り…それよりも前に私達トリニティには…」
アスカ「メイ…?」
「アスカちゃん。…トリニティを…トリニティの運命を、どうか…」
更生局員「アスカ様」
アスカ「お、押さないで!またねー!」
メイ「………」
?「あ、あの…」
メイ「…!」
生徒「…ひ、久し振り…覚えてる…?アダム先生の助けで、復学を…」
メイ「〜…!」
ブラックマーケット 大型ビル
男「ぎゃあっ!!」
オルガマリー「観念なさい。既に派遣会社との繋がりの証拠は掴んでいるのよ。トリニティの学生の派遣…名ばかりの人身売買の請負相手でしょう?目的は何かしら」
男「……く、くく…」
オルガマリー「……」
男「知らないのか?キヴォトスの女は頑丈で壊れにくい。その手のインテリには格好の研究材料にもなるしな。それに…」
「────」
「年頃の若い女の身体なんて、欲しがる輩はいくらでもいる。身体だけが大人になったガキなんぞ格好の金稼ぎの道具だ。それが禁忌と解っていながら、手を出すやつは決して消えない」
オルガマリー「だから、あなたのような男が引き受け売り飛ばすと?」
「買い手がいるから売り手がいる。パパ活とかいう脱税売春もそうだ。いつだって…違法を犯しても誰も彼もが得をしたいのさ…!」
オルガマリー「…」
「それに、アリウスとかいう廃校の寂れた行き場のない学生を囲うその取引相手…相当な悪どさだぜ」
オルガマリー「具体的には?」
「決まってるだろ。まともな職にも付けない爪弾きのガキを警備員や活動員に仕立てて汚れ仕事をやらせてるのさ。トリニティに恨み骨髄のガキどもは、トリニティへの嫌がらせを喜んでやっている有り様さ。業が深いぜ。重役に搾取されているのも知らないでよ」
オルガマリー「…アリウス分校…」
男「な、なぁ。話すことは話しただろ?助けてくれよ、な!?」
オルガマリー「えぇ、命は助けてあげる」
男「す、すまねえ!」
オルガマリー「ただ……」
ニャル【──すぐに、殺してくれと懇願することになるだろうがな】
「ひ───」
「まずは、アダム先生。ならびに夏草昇陽学園…の皆様。トリニティの身内の恥の摘発の協力に浄化の協力、誠に感謝いたします。問題の一つを解決した、といったところですね」
大聖堂。シスターフッドの本拠地。サクラコ、アダム、救護騎士団の団長蒼森ミネ、正義実現委員会の委員長ツルギ、副委員長のハスミ、トリニティトップの一人の腹心阿慈谷ヒフミ。ヤマト、アスカ、サラ、そしてリッカらの錚々たるメンバーが、一同に介す。それは勿論、打ち上げなどではない。
「君達の奮戦のお陰で、ミカから託された依頼の大半を果たせた。残るは──行方不明者をブラックマーケットから取り戻す大仕事が残っている」
サラが頷き、ヒフミと共に巨大ホログラムを投射し皆に説明を開始する。
「オルガマリー教育実習生と、阿慈谷ヒフミの提供された情報によると、行方不明者はブラックマーケットにおける大規模人材派遣コンサルタントに身柄を確保され、ヘイローや神秘を題材にした研究材料に回されている可能性が極めて高い」
「研究材料だって…!?何でそんな!?」
「お前がその奇跡をだれよりも体現しただろう、アスカ。知れば誰もが望むんだ。出来ることなら、誰もがあの力を手に入れたいと」
アスカの見せた奇跡。ヘイローとSEEDの発現による、限界を越えた神秘の力。誰もが想定していなかった超常の力を欲しがる勢力が、存在しているのだとサラはいう。
「ブラックマーケットのここ数ヶ月の取引記録と監視カメラ記録を拝見しましたが、女性や人体が外に運ばれた記録はあれど運び出された記録は確認できませんでした。つまりこれは、会社による研究により軍事需要のノウハウを積むための研究材料にされていると推測されます!」
「人体実験…だから、五体満足じゃなきゃダメだったんだ…研究するなら五体満足が望ましいから…」
リッカが呻くように吐き捨てる。トリニティの生徒の退学や停学者が心のみを壊されていたのはそういった理由なのだろう。身体は商品として使うため、研究材料としての資源のために。
「でも、どうしてトリニティだけをターゲットに?確かに世紀末なゲヘナや、ハイテクかつハイテクノロジーなミレニアムはやりにくいかもしれないけど…」
「ヤマトさん、それは…トリニティ成立前の確執が根付いているんです」
ヒフミはそれを告げ、ホログラムに更に画像を映す。それはティーパーティートップ、ミカの学友ナギサからの提供資料。
「私達トリニティは設立前、数多無数の学園でした。それを今の形に合併統合しようとした際…反対派の学園を迫害し追放したんです。それが…」
「アリウス分校。今ではキヴォトスの表舞台から消えた…人材派遣会社を構成する学生と卒業生会社員の出身校だ」
その情報は前カイザーコーポレーション、現スーパー便利屋の調査の裏付けからも確実であった。
アリウス分校…
かつてのトリニティ領内にかつて自治区を有した、数ある分派の一つ。諸派の統合に向けた「第一回公会議」において唯一反対の立場をとり続けた結果、連合を果たしたトリニティ総合学園から激しい弾圧を受け、自治区からも追放されてキヴォトスの表舞台から姿を消した。
「…シスターフッドの前身である組織も、特に苛烈な弾圧を与えていたと残されています。まさかその生徒達は…」
サクラコの言葉に、サラは静かに頷く。
「恨みを忘れておらず、どこかでずっと牙を研いでいたんだ。…トリニティへの復讐を。自らを追いやった全てへの憎しみと共に。恐らく派遣会社は、まともな社会貢献が出来ないアリウス分校の卒業生や、或いは脱走した者達。まともに生きていくことすらできない彼女らを雇用したんだ。あらゆる汚れ仕事を引き換えに。トリニティという復讐相手への憎しみを煽って」
「トリニティの学園にだけ狙いを絞ったのは、アリウス側の要望だったんです。音声記録には、そういった旨の会話と…契約書には、トリニティのみを害する作戦にのみ参加すると…」
生きていく理由は憎しみのみ。自らを迫害し追放した者に報いを。
そしてその憎悪を最大限に利用するため、トリニティ生徒のみにターゲットを絞る形態を大人は取った。三大学校のうち、人材の多いトリニティであるならばいくらでも材料はある。
厳しい規律、鬱屈した環境にストレスの捌け口を求めていたトリニティ生徒に、卒業後の安定した進路を約束する。見返りに、トリニティ生徒の確保の手助けを依頼したのだ。イジメという形で。
トリニティを内側から腐らせ弱体化させ、同時に神秘を宿した材料を確保させる。派遣会社はいざとなればアリウス側を切ればいい。身分もまともに示せぬ落伍者など、誰も見向きはしないだろう。
かつてのトリニティの罪。過去から紡がれたアリウス側の憎しみ。それが、この陰湿な一連の事件と腐敗の全容。大人が、かつての悪意を火種としてトリニティへと放ったのだ。黒き炎として。
「そんな……じゃあ、先にイジメをしたのはトリニティって事なの…!?」
「アスカ…」
「アリウスの奴等は、自分がイジメられたからその怒りを返してるって事…そういう事だったのかよ!?」
アスカは怒り、声を荒げた。それはトリニティがアリウスを弾圧、迫害していたことへの怒りだと誰もが思った。
しかし、アスカの怒りは常に…いや、リッカの旅路を見据えたが故に、矛先を違わなかった。
「そんなの、今の生徒の皆には関係無いじゃないか!!なんで、昔の憎しみや罪なんかで苦しまなきゃいけないんだ!」
「アスカ…」
「妖精国での妖精の皆と同じ事だ!昔の罪は、ずっと昔の事なんだ!今に生きる皆にその償いを求めるなんて間違ってる!今いじめられて、攫われた皆は!アリウスってやつらに何もしてないじゃないか!そんなの間違ってる!絶対に!!」
アスカは、今を苦しむ皆にとことん寄り添う姿勢を見せる。それは妖精国の記録を…リッカ達の決死の贖罪を見ていたが故の答え。
彼女にとっては──今を懸命に生きる皆の未来を理不尽に奪うことこそ、最も忌むべき邪悪であるのだと告げた。過去の確執などで、最早彼女は搖らがない。
「それを仕方ないって認めちゃったら…!リッカやビリィ、ホープやバーヴァンシーの妖精国での頑張りを否定する事になる!私はアリウスを認めない!絶対に!どんな理由があれ…!今を生きる皆はアリウスに何もしていないんだ!!」
「〜〜…アスカ…」
「あっ、その…と、わたくしは思います!」
アスカの言葉、そして強い宣言に、リッカは頷き言葉を繋ぐ。
「その通りだよ。トリニティの迫害を恨み、その憎しみをぶつける事に正当性はあったとして、それは今を生きる学生たちが贖うものじゃない。トリニティ学園と、アリウス…学園自体が取り組むべきものだよ。罪の贖いを、今の生徒に求めることは間違ってる」
「うん。これは、私達が外様という視点だから言えることなのかもしれない。でも…過去の確執は、過去のものでしかないんだ」
「…あぁ。それでも譲れないと言うなら、それはもう互いの正義のぶつかり合いだ。アリウスは復讐のため、私達は今を生きる仲間達の為に全力で戦うしか無い。それが、私達が出来る憎しみの受け止め方だ」
リッカ、ヤマト、サラの後押しにアスカは嬉しげに何度も頷く。アダムは夏草の民達の精神の高潔さに感服しながら取りまとめる。
「…私は、全ての生徒達の味方でありたい。それは攫われた、イジメられたトリニティ学園の生徒達は勿論…今尚、憎しみに囚われしアリウス生徒達も例外ではない。今は無理でも、いつか必ず…先生として、アリウスの憎しみを受け止めてやりたい」
「……先生。その御言葉、その意志に感謝を。トリニティの罪にすら、寄り添ってくださるのですね」
「だが…今何より優先すべきは邪悪な私利私欲に晒されているトリニティの生徒達だ。彼女らを助ける以上の正義は他にない。…本来ならば、これは御法度だが…」
アダムは、その場の生徒に頭を下げた。
「頼む。皆を助け救うため…君達生徒の力を私に貸してほしい。私の力が足りる、足りないの話ではない。──イジメに向き合ってくれた君達と共に、最後までこの難題に挑みたいのだ」
「そんな野暮はいいっこなしで…!あ、あれ…?」
一同皆、アダムは救出は一人で行くものだと言い出すと踏んでいた。だが…アダムは助力を…生徒達と共に救出作戦を果たしたいと願った。
「アダム先生。シスターフッドはあなたの御心のお傍に」
「トリニティとしては、騒動は危ないですが…」
「シャーレの当番としてなら問題はないなァ、くけけ…!!」
「えぇ。深く傷ついた彼女らに、寄り添わなくては」
「私もアカペロロ様を支える覚悟です!ついでにナギサ様の監視の依頼も果たします!」
トリニティ勢力は皆、同調の意思を見せ。
「へへっ…バッチリ頼ってくださいよ、アダム先生!」
「私も全力を尽くします。一人の生徒として」
「榊原先生も、きっと同じ事を言うはずですから」
夏草の民達も、アダムへと同調を示した。そして──
「やってやろうよ、アダム先生。生徒には光を。そして邪悪な大人には死ぬより酷い地獄を見せに行こう!」
『アロナもバッチリサポートします!』
「……あぁ!皆、やろう!」
アダムが手を差し出すと、皆その手に手を重ねる。絆と決意を乗せ──
「皆の手で、生徒を助けよう!」
「「「「「「「おーっ!!!!」」」」」」」
重ねた心が、力強き意気を放った。
深夜
サラ『既にトリニティ勢力はブラックマーケットに向かった。マーケットガードに、アダム先生と共に挑んでいるようだ』
ヤマト『サラがヒフミちゃんと突入、救出。私が対人対空の揺動遊撃。アスカが戦闘機や戦車の撃破の切り札だね』
アスカ『はい!二人の…三人の足は引っ張りませんよ!』
リッカ『お願いね!スーパーエース!』
ヤマト『背中は任せたよ、アスカ。信じてるから』
アスカ『えっへへへ…!はいっ!!』
サラ『何度も言うが、油断だけはするなよ。お前は浮かれすぎる』
アスカ『ちぇっ。そんなふざけた機体のアンタに言われたくないね』
ヒフミ『あはは…何がふざけてるんですか?』
アスカ『ひぃ!?』
サラ『ヒフミ、発進準備はいいか!』
ヒフミ『いつでもいけます!どうぞ!』
リッカ『よし皆!行くよ!』
『保志ヤマト。フリーダム!行きます!』
『鈴村アスカ!デスティニー!行きますッ!』
『石田サラ!アカペロロ出る!!』
シャーレから、三機の少女達が飛び立つ。
そして──
リッカ『借りますね、榊原先生…。あなたの教えと願いは忘れませんから!』
リッカは、悪の邪龍としてでなく。
『藤丸龍華…!ヴァルキュリアガンダム!!発進します!!』
生徒を救うための翼を纏い──三人に続いて羽撃いた。