人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
バアル『はい、ルシファー様』
ルシファー『カルデアの皆にばかり戦力を用意させるのは不義理だよね』
バアル『そうなりますでしょうか』
ルシファー『同盟は対等の立場でないと駄目だよね』
バアル『はい』
ルシファー『やりたいことあるんだけど』
バアル『嫌な予感しかしません』
地獄にて。エレジアで万に一つの犠牲や被害が出ないよう、七大魔王の皆が集まってとある事を計画していた。
【えーと、みたせ、みたせ、みたせ、みたせ、みたせ。繰り返して時を破却するんだって】
【カードとかガシャポンのようにはいかんのか!不便だな!】
そう、それはなんと【英霊召喚】。たまにはこちらも何かしらを召喚し自身らの備えにしてみない?という思いつきから魔王達のサーヴァント召喚の試みは今始まった。
それは単純に、自身らの肉体の暴走を阻める戦力が欲しい、ならカルデアの様に用意してみよう、という計画であり、決して悪ふざけではない。全員、齧り付くように召喚手順を履修している。
【決戦術式だとグランドサーヴァントが喚ばれるんだって。流石にそこまでは過剰かなぁ】
【獣扱いは心外…まぁ私は神獣最強なんだけど…】
【触媒が無ければ縁で招かれるらしいぞ!よもや天使の誰かが来るのではあるまいな!フッハッハッハ!熱い同窓会となるであろう!!】
真顔で召喚陣を書くもの、書類を読むもの、誰が来るのかなー、ねーと語る魔王達。それらは真面目な目的であるが、唯一神の異教最強勢力ばかりなので危機感へと欠けるのは致し方ない事である。最強の個の連帯であるのだから無理もないが。
【よし、召喚陣の準備は終わったなアスモデウス。御苦労であった】
【これくらいはね。サタン様の思いつきならばそれは天啓。私、全力でお支え致します】
【うんありがとー】
【ああっ!!(悶死)】
【さて、じゃあとりあえずやってみようか。カルデアの皆にはナイショの試みだから出来栄えは未知数だけど…。とりあえず形だけ】
サタンが玉座から降り、羽根を広げそれらしい警句をそれらしく叫び、体面だけでも整えんとした召喚を執り行う。
【汝!天秤の守り手よ!………だっけ?】
【新手の圧縮言語…?】
【まぁ抑止の輪から呼ぶので間違ってはいないでしょう。…それにしても省略し過ぎな気はしますが……】
ベルゼブブが憂いた後、なんと召喚サークルが回転を始める。黒き召喚陣かつ紅い雷を放つ黒魔術そのものな見た目ではあるが、紛れもなくその召喚に応えんとする存在が顕れようとしているのだ。
【うそ、こんなガバガバテキトーな召喚で出てくるヤツなんているんだ…】
【( ˘ω˘)スヤァ】
【手段は褒められた出来では無いが、我々の存在的には呼び合うものがあるのだろう。此処にいるものらは全員聖杯を必要としない側の存在だからな】
【それは確かに!!では訪れし何者かも、我等に準ずる凄まじい力の持ち主という事だな!!】
それまさしくとばかりに輝く光。この魔王達の暴走を阻むことの出来る英雄英傑は、まさに招かれようとしているのだ。魔王たちはそもそも使い魔という存在を有していないため、楽しげに顛末を見守る。
【時にサタン様。叛逆阻止用の令呪は製作なさいましたか?】
【作ってないよ?】
【そうでしたか……。話の通じる相手が来ることを祈りましょう】
サタンのやることを制御するのは、彼より美しい者しか不可能なので早々に諦め、天運に任せることにしたベルゼブブ。
…実際のところ、召喚自体は完璧に近いものであり、召喚されるサーヴァントの霊基は万全の状態で招かれるという精度を誇っていた。
ただそれ故に…。此度の悲劇は起こってしまったのだと言わざるを得なかった。
【………──誰だ。我を、喚ぶものは。誰だ。我を、招くものは……】
其処に現れしは──蒼き肌、無数の刀剣、そして腕。白き長髪に剝き出しの歯、爛々と輝く眼を見開くただならぬ様相にして風貌の…神霊。
【(天を仰ぐベルゼブブ)】
【あら?女神がいらっしゃったじゃない。強そうね、どこの来歴かしら?】
【どう見てもインドとかそのへん……】
【我を、呼んだのは、貴様らか?貴様らは、何だ?血と、殺戮の匂いがするが…】
【なんだ!我等を知らぬと言うのか!なんともモノを知らぬ輩がいたものだ!】
マモンはその度量の深さにて、親切に来歴を明かし名乗らんと声を上げる。
【待て、マモン───!!】
博識なベルゼブブは即座に止めに入ったが……。
【オレはマモン!我等七大魔王における強欲を担当せし魔王である!よく覚えておけ、何処かの女神!!】
間に合わず、その存在に来歴を明かしてしまったのだ。
【…魔王。そうか、魔王。そうか。そうか、そうか!!】
【む?どうした?光栄に感極まったか?】
【お前は魔王か!ならば、お前達も、魔王だな!そうだな!!】
【えっ、急に何…怖…】
【ぎはははは!ハッハッハ!!ギャッハッハッハ!!】
【馬鹿者め……少しは他神話に興味を持てというに……!】
【ならば!!殺す!!!!!!】
瞬間、地獄を満たして余りある怒気と殺気。同時に歓喜の下に行われる地響きは空間を軋ませる。
【我は、殺戮の女神!カーリー!!魔王であるならば、お前達を、皆殺す!!其の為に、我は喚ばれ応じたのだ!!ぎははは、ヒャッハッハッハッ!!!】
魔王を感知したその存在は、その神威を極限まで昂らせサタンらを見やる。彼女の本懐を果たさんとする極上の獲物が七人もいれば無理からぬ話ではあろうが。
【カーリー…。インド神話の戦闘女神ドゥルガーの怒りにより更なる側面を顕した殺戮の女神だ。召喚は召喚でもカウンター召喚と相成ってしまった様だな…】
【元気だね〜。期待できそうじゃない?おーい、僕の言葉聞こえてる〜?】
【殺戮の時は此処に在る…!供物は既に此処に在る…!始めるぞ、貴様ら全ての悉くの鏖殺を!!ぎはははは、ヒャッハッハッハッハッハァ!!!】
最早狂乱の極みとも言えるレベルに至ったカーリーに、生半可な言葉など届く筈も無かった。全ての手に持った武器を、一斉に魔王らへ振り下ろす。
【魔王の悉くの全て!!滅びるがいい───!!!!】
【ぐはぁーー!!】
その刃が運悪く直撃し、反撃する間もなくバッタリと倒れ伏すマモン。味方だと信じ切っていたため対応が遅れたのだ。
【勝利…!勝利だァ…!!!】
【えっ、マモン程度殺したくらいで勝ち宣言?】
【馬鹿にしないでくださる?我等七大魔王の中で彼は最馬鹿!まだまだ魔王の層は厚くてよ!?】
【ヒャッハッハッ!!ぎははははは──!!滾る、滾るぞ我が血潮!魔王を骸とし、我は踊り舞い狂う!!】
カーリーの足踏みは地獄を揺らし、なんとルシファーの固有結界たる魔界を激震させていく。それは、カーリーが勝利した際に確率で発動される宝具。
【舞い轟け我が舞踏!!『
魔界のテクスチャを完全粉砕する勢いで踏み鳴らされる大舞踏。世界を砕くか、魔力が切れるか、シヴァを踏むかしなければ止まることが無い殺戮女神の勝利の舞。
【へー。世界にはこんな激しく荒々しい神や女神もいるんだね。カルデアに招かれて無かったから知らなかったよ】
【サタン様。実はカルデアに招かれているパールヴァティーというサーヴァントは、かのカーリーと同じ存在なのです】
【……そうなの!?】
【えぇ。インドの神話体系は実に多種多様かつ多面的で……】
【ぎははははは!!届け、届け!!我が舞踏よ世界に届け───!!!】
【ああいった神の側面も存在するのが、かの神話の特徴なのです】
【へぇ〜……。ふふ、成る程ね】
【?】
【カルデアが何故英霊を招くのか…解った気がしたのさ】
…その後、カーリーの舞踏による魔界崩壊の危機をベルゼブブ、アスモデウスがカーリーと戦い、魔力消費させる事によりスパンを急激に短縮。
余波が魔界外に出れば大陸一つ消し飛ぶ程の大激闘の末、ベルフェゴールをクッションにして時間を稼いだ(シヴァではないので一切止まることはなかったが、ベルフェゴールが起きることもなかった)隙を付き魔力切れにて停止。
【世界に我等が仇なすならば即座に殺せ】との契約をカーリーは受諾。魔界の破壊を条件にエレジア攻略まで滞在を了承。
レヴィアタンはヒビ割れた魔界を修理し…
サタンは魔界の崩壊という一大イベントを目の当たりに出来るかどうかの瀬戸際を、玉座に座りながら一部始終を眺めていたのであった。
サタン【いやぁ、波乱だったねぇ。お疲れ様】
ベルゼブブ【実に善きサーヴァントでした…。本懐を果たせるでしょう】
サタン【うんうん】
ベルゼブブ【次はもう少し慎重を期して…】
サタン【うん!楽しいからドンドン行こう!】
ベルゼブブ【はい……】
レヴィアタン【閉鎖空間修復ってこんな気持ちだったのかなぁ、未来人……】
カーリー【………(ふみふみ)】
ベルフェゴール【( ˘ω˘)スヤァ】
カーリー【むぅ……奇怪な、踏み心地だ…】
こうしてカーリーは、記念すべき魔界初召喚サーヴァントとなったのであった。