人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
レタッソク「美しいぞ、ウタ姫」
ウタ「ありがとう。レタッソクさん、ウロヤソクさん。二人とは長い付き合いになったねぇ」
ウロヤソク「始まりはお恥ずかしい限りだが…それでも、我々を君は受け入れてくれた」
レタッソク「感謝を。此度の戦い、全力を尽くす!」
ウタ「うん!頼りにしてる!」
「「感謝を!」」
ゴードン「…ウタ」
ウタ「あ、ゴードン!来てくれたの?」
ゴードン「勿論さ。ウタの晴れ舞台、見ているよ」
ウタ「うん!…ねぇ」
ゴードン「?」
「ありがとう、お父さん。行ってきます!」
ゴードン「…………行っておいで。ウタ…」
(マテリアルの返信は明日まとめて行います)
かつての犠牲、惨劇を乗り越え、エレジアは大いなる復活と復興を遂げ、またそれを目前とすることとなった。
国民のほぼすべてを失い、また国と呼べる文化や文明をも全て喪ってなお、国王と外来よりやってきた少女…そして、エレジアへ脚を運んだ一人の存在により、奇跡としか言いようのない再生を、十年という期日にて成し遂げられる事となったのだ。
後の世に、このエレジアは分け隔てない中立にして平等の国として名を響かせるであろう。種族や文化の隔てなく、誰もが音楽を楽しめる国家となるだろう。
──そんな未来を迎えるための仕上げ、総決算が今。始まろうとしていた。舞台となるのは、エレジアにて備え付けられし大音楽スタジアム。空を天井とする、大いなる大合唱を良しとした空間。
そこにはかつて天竜人であった者達や、魔王サタンの配下たる地獄の軍勢が席に集い、満たし、主役と主賓の来訪を心待ちにしていた。
彼らは、エレジアの復興を助けた者達。そして何より今から行われる大決戦に挑む覚悟を決めた者達だ。エレジアが真なる復興を迎えるため、挑まなくてはならない使命のようなもの。
かつて、【トットムジカ】なる楽譜に宿りし魔王が解き放たれた事により、エレジアは滅びる定めとなった。こうして復興を果たした今、ただ封印するだけではまたいつか同じ過ちを繰り返す。
故に、此度のエレジア総出の音楽祭、披露宴にも似たそれは魔王を【討ち果たす】ものであり、トットムジカを『迎え入れる』ものでもある。
封印しているだけでは、またいつか解き放たれる。ならばいっそ、国の守護者として迎え入れる。それを答えとし、実現を目指した結果が此度の集結。
トットムジカの楽譜に込められた哀しみと憎しみは、まさに歴史の負の凝縮。それは歴史が重ねられるたびに募ってきた澱み。皮肉にも、人類が溜め込んだ淀みと言えばその在り方はカルデアの預かり知らぬことでは無い。
故にこそ、トットムジカ本人と彼女は語り合い、友となった。滅ぼし、暴れるほかなく、その結果を正しく責任として受け止めるために。
新しい未来を迎えるために…。全ての決算と決戦は、今この瞬間より行われる事となる。
「──皆!エレジアの皆!こんにちは!ウタだよ!」
スタジアム中央において、現れし歌聖姫衣装の女性。成人を越え、心身ともに健やかに育ったその女性こそが、エレジアの興亡すべてを左右する存在。
ウタ。ルシファーが見出した美声と歌唱能力、そして『ウタウタの実』の能力者たる存在。かつてのエレジアの悲劇の加害者であり被害者。
此度はその能力と気丈さにより──エレジアの未来を背負う覚悟と共に、スタジアム中央へと立ったのだ。
「エレジアのかつての悲劇から、十年以上も経ちました。あの日の事、エレジアが無くなってしまった事。それは、私とトットムジカが引き起こした惨劇です」
この長い十年の間で、彼女は強くなった、能力ではなく、己の強さと弱さを認める心そのものがだ。かつての惨劇を起こしたのが誰かを、彼女は告げる。
「エレジアを滅ぼした私達を、それでも受け入れてくれた国王ゴードン。そして私を見出し、最初のファンとしてずっとずっと支えてくれたルシファー。そしてここにいる、エレジアを復興させてくれた全ての皆。皆がいてくれたから、私はこうして自分の罪と向き合う強さを貰えた。全部全部皆のお陰です。本当に…ありがとう!」
スタジアムを満たす喝采。彼女の言葉と想いを、皆が受け止めた。
「だから今日は!みんなの為に歌いたいと思います!この十年で積み重ねた想いを歌にして…皆に聞いてもらいたい!」
そう。それは感謝の発露と共にトットムジカと戦うための総仕上げ。現実世界のカルデアと、ウタワールドと呼ばれる夢の世界にトットムジカは現れる。同時に戦わなくてはならないのだ。
「だからどうか、聞いて下さい!大好きな皆と、エレジアに贈る…!私の、積み重ねてきた想いの全てを!」
大喝采と祝福に包まれながら、ウタは自らの想いを以て歌を歌い上げ始めた。
それは異世界の彼女が紡ぎ上げた歌であり、カルデアの時空におけるONE PIECEの歴代の主題歌のメドレーでもあった。彼女はなんと、その作詞と作曲をほぼ全て自らで成し遂げたのだ。
その歌声は明るく、それでいて前向きで希望を宿し、聞く誰もが理想の世界の…新時代の到来を確信するもの。いずれ皆が立ち上がり、映し出された大型ビジョンモニターにて歌い踊る彼女に歓喜の涙すら流した。
そのライブは、一人の少女の壊れきった心が完全に蘇った事を表す何よりもの証明。エレジア復活の、極めて絶対的な象徴に他ならなかったのだから。
「皆、たくさん楽しんで!みんなの為に!皆と一緒に歌うから!」
そして熱狂的な盛り上がりの中、観客が一人、また一人と糸の切れた人形のように席に持たれ眠りについていく。
それは、ウタワールドにおける招待の証。精神と魂が、トットムジカ決戦の場へと向かった事を意味していた。
「ゥ…」「うーん…」「むにゃむにゃ…」
一人、また一人と眠りについていく。天竜人も、地獄の悪魔たちも、ウタの復活を確信し戦うために眠っていく。
それは、別空間にて聞き及んだ魔王達も同様だった。マモン、レヴィアタン、アスモデウスらが次々と眠っていく。
「────」
やがて…エレジアでウタ以外に起きているのは、ゴードンにもう一人。大魔王ルシファーその人だ。
『本当に…、立派になったね。ウタ』
ルシファーだけが、彼女に拍手を送る。国を上げた大ライブは数時間にも及び、一人ひとりを招くまでウタは歌い続けたのだ。
「ルシファーが、あの日からずっと一緒にいてくれたからだよ。あなたが、私やエレジアをずっとずっと照らしてくれた」
ウタはスタジアムから、ルシファーのいるSアリーナの席に歩む。ルシファーはなお、拍手を止めず彼女に微笑んだ。
「本当に、本当にありがとう。あなたは、魔王なのかもしれない。色んな事を聞いたから、あなたは悪い存在なのかもしれない」
『────』
「でも。でも私にとっては…。ルシファーは大切な家族で、一番最初のファンで。私にとっての…一番星だから。この気持ちだけは、ちゃんと伝えたかったんだ」
そして、ルシファーの目の前に立ち。彼女はそっとルシファーに親愛の抱擁をかわす。
「ありがとう。そして…最後のお願い」
『うん。言ってみて』
「皆で──私とトットムジカを、新時代へ連れて行ってほしいんだ」
皆で行く新時代。その意味をルシファーは理解していた。
そこには憎しみも、哀しみも必要ない。誰もが当たり前に幸せになれる世界。笑顔に満ちた世界。
彼女はその願いと決意を、ルシファーに託したのだ。それは、自身らを救ったルシファーにのみ告げる願い。
『うん、勿論さ』
その返答は、極めて単純かつ…希望に満ちたものである。ルシファーは彼女に、未来を約束したのだ。
『君が当たり前に歌える新時代に…君とトットムジカを連れて行くよ。僕と、皆でね』
「…本当、私の自慢のファン一号だよ。ルシファー」
そして彼女は、ルシファーの耳元で囁く。
「ありがとう。──私のお星様」
万感の想いを込めた感謝と…。
「………──【■■■■、■■■■、。■■、■■、■■】─────」
トットムジカを目覚めさせる…最初の祝詞を。
『────』
ルシファーはそっと崩れ落ちる。彼がこうまで無防備なのは、彼が美しいと信じた者への誠意。
「ルシファー……。皆…気をつけて──」
ルシファーの身体を抱きながら…彼女は静寂のスタジアムで手を合わせ。
背後から──魔王トットムジカが現れるのであった。
カルデア
ルル「トットムジカ出現!ウタワールド展開!」
フェイト「第一形態、ウタワールドにて同じ反応あり!」
オルミーヌ「全員ウタワールドにて存在確認!」
シオン「いよいよ来ましたね!オルガマリー所長!」
オルガマリー「全同盟に通達!戦闘配備!魔王トットムジカ、総力戦を開始するわ!各員、必ず生きて戻るのよ───!!」
合図と共に…エレジアにおける最大最後の戦いが幕を開けた。