人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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「大丈夫かなぁ・・・大丈夫かなぁマリー・・・ちゃんと言えるかなぁ・・・本当なら、僕が言わなきゃいけないのに・・・」



「私が伝えます。所長として、私が。あなたは余計な心配していないで、シバニャンさんと交流していなさい」



「大丈夫ですよ~♥必ず皆さん、より結束は固くなります♥しんじましょー♥はい問題。如何な絶望も、哀しみも。必ず乗りこえることが出来る人達の集い、なーんだ♥」

「それは――」


明日の絆を、投げ出せないから

カルデア・カウンセリング・ヒーリングルーム

 

 

 

負傷した職員、精神的なケアを行い、職員の精神的外傷、ストレスを改善するための施設を取り揃える医務室と言っていい

 

 

宇宙、近未来的な暗黒、星空をプラネタリウムで再現し、リラックス効果を招き、スムーズな施術を可能にする取り計らいが英雄王によって為されている

 

そして、その部屋の中心に設置されている、雪花のごときカプセルの中にて、肉体の細胞を新生、生命力を活性化させる処置を受けている少女が一人・・・

 

 

「――身体全体の細胞、ほぼ新生を確認。18年の稼働限界だった貴女の身体は、現時点で65歳までの活動を可能とするデータが取れているわ」

 

 

英雄王より賜されし『神代回帰カプセル』の中に入り治療を受けしマシュの状況を把握し伝えるのは・・・カルデアス所長、オルガマリー・アニムスフィアだ

 

『65歳まで・・・凄いです!伝え聞いていた18歳から、そんなにも・・・!』

 

マシュが歓喜の声を上げる、が、オルガマリーが首を振る

 

「いいえ、まだよ。まだ現代の平均寿命にも届いていないわ。貴女の寿命は、もっと人並みに獲得されなければならないわ。――えぇ、人並みに」

 

オルガマリーは顔に苦悩を浮かべる・・・が、それをマシュに悟らせることなく顔を上げる

 

「引き続き、貴女にはこの処置を受けてもらいます。一日八時間、細胞変異と肉体機能の新生強化。如何なる理由があろうとも、この処置をサボったり、怠ることは断じて認めないわ、いいわね!」

 

『は、はい!このマシュ・キリエライト!全身全霊で肉体強化、改造に励みます!』

 

ゴボボッ、と神代エーテルの液体に充たされたカプセルを揺らすマシュ

 

「よろしい。・・・じゃあ、スリープモードに移行するわね。身体のクリーニング、そして強化作業に入るから・・・ゆっくり眠りなさい。いいわね」

 

『はい!・・・あの、オルガマリー所長』

 

マシュがオルガマリーを呼び、向き直る

 

 

「どうかした?何か不調?」

 

『――いえ。・・・ありがとうございます、所長。私は・・・所長が生きていてくれて、本当に嬉しいです』

 

儚くも強く、マシュは笑う

 

『所長と友達になれて、本当に嬉しいです。・・・本当に、本当に・・・』

 

「・・・えぇ、私もよ。それだけは、誓って本当よ。マシュ」

 

二人は顔を見合わせ、笑い合う

 

『はい!お休みなさい、所長!次に目覚めた際には、更にましゅっとパワーアップした、スーパーマシュの力を先輩と、所長にお見せしますね!』

 

「はいはい、無茶はしないようにね。怖がりなんだから、貴女は」

 

『う・・・はい。気を付けますね・・・』

 

「・・・お休みなさい、マシュ」

 

ゆっくりと意識覚醒を睡眠状態に陥らせ、マシュの心身を眠らせ、改善させる作業に移る。

 

 

「・・・60代なんて、定年退職が見えてくる程度じゃない・・・そんな寿命、まだまだ長いとは言えないわ。せめて、老後を・・・」

 

オルガマリーが下を向き、思案を巡らせていると・・・

 

 

「フォウ!(やぁ、フォウくんだよ!)」

 

ピョコンと、フォウがオルガマリーの肩に飛び乗る

 

「あら、フォウ。・・・もしかして・・・」

 

「フォウ、キュー(そのもしかして、さ。呼んであげたよ、気を利かせてね)」

 

そのまま飛び降り、スタタタと部屋から退出する

 

 

「あれー?行っちゃったよフォウ・・・忙しないな~」

 

それを不思議そうに見送る、人類さいきょ・・・最後のマスター、藤丸リッカが入室する

 

「やほー、マリー!マシュは眠った?」

 

タンクトップとスパッツのシミュレーション周回(ソロ)を終え、朗らかに挨拶を返すリッカを、オルガマリーは見つめる

 

「・・・どうしたの?顔、怖いよ?」

 

「あ、あぁごめんなさい。別に怒っている訳じゃないわ。・・・あぁ、そういえば・・・聖杯で生まれ変わってから、一度もヒステリーを起こしていないわね。・・・ふふっ、笑ってばかりよ、私」

 

おかしそうに笑うオルガマリーに、以前の面影は無い。あるのは・・・責任と重圧に負けない、気高く誇り高く咲く華のごとき微笑みを浮かべる強き女性の姿だけである

 

 

「良いことだよそれ!最初の頃とは変わったね、お互いに!」

 

「・・・貴女も、なんというか・・・笑顔にハリができたわね?」

 

「そうなんだよね~。前までは『笑うしか出来なかったけど』今は『笑いたくて笑ってる』の!」

 

そう。彼女は知ったのだ『喜怒哀楽の意味』を

 

 

だからこそ・・・彼女は朗らかに笑っているのである

 

 

「・・・そうね。お互い・・・変化には気付けるようになるくらいには一緒にいたものね」

 

「当たり前じゃん?友達だもん!」

 

含みなく、誤解なく伝えるリッカに、笑いながら頷く

 

「そうね。・・・その通り。私と、マシュと、貴女は・・・友達ね」

 

「当然じゃない?もう五つも死線、潜り抜けてきたんだからさ!」

 

そうして二人は互いに、マシュを見やる

 

「マシュも・・・ずっと私を護ってきてくれた。怖いはずなのに、一生懸命、自分を奮い立たせて」

 

「・・・解っていたのね。マシュの心構えを」

 

もちろん、と頷くリッカ

 

 

「だってマシュは私の、たった一人の後輩だからね!可愛くて仕方ないもんね!うん!」

 

「――中学校にも後輩はいなかったの?」

 

「遺憾ながら呼ばれませんでした・・・高校は一年生だし、先輩じゃないしね」

 

「そう。・・・――リッカ」

 

意を決し、オルガマリーが向き直る

 

 

「貴女に、知ってほしいことがあるの。・・・マシュの出生、生い立ちについてよ。・・・本当は、伝えるのが怖いのだけど・・・」

 

「?」

 

震える手を抑え、責任と自律を奮い立たせ言葉を紡ぐオルガマリー

 

「何故彼女がデミ・サーヴァントとなれたのか、何故彼女にだけこのような処置を施すのか。彼女は、どうやって産まれたのか・・・私には貴女に伝える義務があり、貴女にはマスターとして聞く義務があります」

 

「――・・・」

 

真面目な話。決意を感じ取ったリッカは茶化すことなく頷き、泥より風邪を引かないようネメアの獅子皮を纏う

 

「・・・どんな所感を抱くのも貴女の自由よ。軽蔑、侮蔑されても可笑しくない。・・・絶交も覚悟で、この話を貴女に伝えます」

 

「――・・・うん」

 

「・・・マシュは、このカルデア・・・『アニムスフィア』の元研究所。今はもう、全権をギルに譲るつもりだけれど・・・とにかく研究所で。数多に行われた非人道的実験により産み出された一人・・・『英霊融合実験』の被験者、唯一の成功例なのよ――」

 

 

そうして、オルガマリーは話し始めた。アニムスフィアの業を

 

先代の所長が犯した、禁忌かつ非人道な試みを――

 

 

 

――先代の所長、マリスビリー・アニムスフィア・・・私のお父様は英霊の価値と危険性に着目していたわ

 

 

英霊をいくら使い魔風情と侮ろうとも、彼らは人間を遥かに越えた存在。その気になれば容易くマスター、人間に反逆する。そして座に還ってしまう

 

それでは、安全な『兵器』とは言えない。そう考えたお父様・・・いえ、もう私は一度死んだ・・・ただのオルガマリー。血縁を名乗るのは止めましょう

 

・・・マリスビリーが行った実験、それこそが『英霊』と『人間』の融合。『デミ・サーヴァント実験』よ。彼はより確実、かつ安全なる英雄の力を求めたの

 

・・・今なら解るわ。英雄という歴史を紡いだ『先達』に対する魔術師全体の認識そのものが間違っていると。真摯に、誠実に助けを求める。それだけが、英雄達の力を借りるための最適解だと・・・今なら

 

・・・ともかく、マリスビリーは英霊を召喚するための聖遺物を『人間』に定め、触媒となるように画策したの。英雄を喚ぶに相応しい魔術回路、無垢な魂を持った子供。これを掛け合わせ、英霊と子供を一つの存在にし、彼等に『人間』になってもらおうと試みたの

 

人間を造り、英雄の受け皿にする。この実験が非人道なのはそれが理由よ。人間を造りながら、その存在は考慮されないことこそが・・・

 

・・・そして、そのコンセプトのもと、マリスビリーは秘密裏に人工受精による子供たちを作り上げた

 

今から16年前、西暦2000年。それがマシュの誕生年でもあるの。彼女は・・・人工受精、遺伝子操作によって作られた人間なのよ

 

・・・作られた、という点では彼女はホムンクルスと近しい存在かもしれないわ。・・・本当に、赦されないことではあるけれど・・・事実なの

 

 

――でも、彼女は人間なんでしょ?

 

・・・えぇ。そうよ。そう。・・・彼女は、マシュは人間よ。人間なの・・・人間なのよ・・・

 

――泣かないで、オルガマリー

 

・・・ごめんなさい。馬鹿な事を言ったわ。続けるわね。それから、10年後の2010年、マシュが10歳の頃に実験が行われたの

 

 

前に、失敗・・・とは言ったかもしれないけれど、それには語弊があるわ。英雄の召喚には確かに成功した。それがソロモン・・・『ロマニ』に続く第二のカルデア英霊召喚の成功例・・・成功したのだけれど、結論から言えば・・・目覚めなかったの

 

その英霊は高潔な方で、カルデアの・・・マリスビリーの行いを認めなかった

 

『お前達の所業は断じて許せない。だが、自分が退去してはこの少女は死ぬ。だから退去しないが、目覚めもしない』と。彼はきっぱりと言い放ったわ

 

 

・・・マシュは証明したのよ。『英霊融合』の術式の正しさと『その行為のおぞましさ、過ち』を

 

・・・オケアノスでヘラクレスが言っていたでしょう。『英雄はけして、第二の生を、願いを望んではならない』と。彼等には共通の認識がある。『世界は、其処に生きる人間のもの』という認識が。だからこそ・・・人間との融合は、固辞するのよ

 

人格を塗りつぶし新生するなんて悪魔、怨霊の所業だもの。反英雄ですら認めないはずよ

 

 

・・・そうして融合実験は頓挫、一年後にマリスビリーは所長室で亡くなっていたみたい

 

・・・自殺、と認定されたわ。その後に、私が仕事を引き継ぎ、所長になった

 

 

・・・正直、何もかもが嫌だったわ。尊敬していた父は外道と知り、その実験を訳もわからず引き継いで

 

皆は私の所長という肩書きに期待して、何処までも要求を重ねてきて・・・

 

 

マシュにいつ復讐されるか、気が気じゃ無かった。『トイレで惨たらしく殺されるの!当然だわ!』が・・・口癖だったかしら

 

 

でも、けれど・・・私は、彼女を『無かったこと』にすることだけは・・・どうしても、どうしても出来なかった

 

だってそうでしょう?どんな形であれ、どんな思惑であれ、生まれた生命に罪はないわ。なら、最低限でもいい。産み出した者として、自由と権利が無くては、与えなくては本当に人ではなくなってしまう

 

ロマンも伝えてきたわ『融合した英霊は眠っていても、マシュのマスター適性は一流だ。これを活用しないのは時間の無駄だ』って。今思えば、これは魔術師に解りやすいように伝えた、彼の嘆願だったのね

 

・・・正直、拒食症とヒステリー予備軍でそれどころじゃなかったけれど・・・先に言った通りに、マシュに自由を与えたわ

 

・・・殺されるかと思ったし、怖かったけど。マシュから目を背けたら、本当に私は『人でなし』になってしまう。

 

マシュを見たくないからといって見ないのは『間違っている』と・・・なんとか、判断できたようね。以前の私でも

 

 

マシュは一人前の人間として認められ、自由を手にした

 

前までの彼女の身体は無垢に過ぎた。無菌室で育ったマシュの身体は外の世界には適応できないの。・・・以前までの彼女は、カルデアのみで生活できた女の子だったのよ

 

――今は、違うんでしょ?

 

 

ええ。ギルが・・・英雄王が手を打ってくれた

 

ロマニと相談して素早くマシュの身体の問題を見抜き、『身体を新生、強化、回帰させる装置』を見繕ってくれた

 

 

今の彼女の活動限界・・・寿命は神代の環境を生きる肉体を設定されたカプセルの改造により、60代にまで寿命が延びている

 

細胞劣化を改善し、肉体を強化し。普通の人間以上にその存在を補強して、ね

 

平均寿命からはまだ遠いけど・・・マシュはもう、唐突に活動を停止することはないわ

 

普通の人間としての人生の寿命が、彼女にはもう・・・約束されているの

 

・・・それが、マシュ・キリエライトという娘の来歴

 

 

Aチームに首席で配備され、半年後にカルデアスの火が消え、私は国連に掛け合い、マスターによる特異点調査の許可を得て、・・・レフにより、大半が瀕死に追い込まれ、管制室は爆発し、レイシフトの事故が起こり、・・・そして、マシュはデミ・サーヴァントになった

 

 

 

それが、貴女の後輩。デミ・サーヴァントになった・・・マシュの、真実よ

 

 

――

 

話終え、オルガマリーはリッカを見つめる

 

「・・・批判、罵倒は覚悟しているわ。父親の所業、だなんて言い訳は赦されない。私も、それを看過した一族なのだから。あらゆる糾弾は、私に。ロマニではなく、私に」 

 

懸命に見据えるオルガマリーの声は震え、身体は揺れている

 

「――ぜ、ぜっ・・・絶交も・・・するというのなら、う、う、うけっ、受け入れます・・・けれど、一つだけ」

 

それでも、彼女は願った

 

「どうか、マシュの事を、よろしくお願いします。・・・彼女は貴女の事を、何よりも大切に思っています。それだけは、確かだから。・・・これからも、彼女の良きマスターでいてください。・・・良き、友達で・・・」

 

 

リッカはしばらく沈黙していたが、やがて顔を上げる

 

「マリー!」

 

「は、はい!」

 

「――よく、頑張ったね。オルガマリーは本当に偉いや!」

 

――リッカは、朗らかに笑った

 

マシュと、かけがえのない友の奮闘と告発に、心からの賛辞を送り

 

「え、え・・・!?わた、私はマシュの生命を弄んだ一族よ!?」

 

「オルガマリーがやりたかったことじゃないじゃん」

 

「マシュを、真っ当なお父さんやお母さんの営みから産ませてあげられなかった・・・その原因の娘よ!?」

 

「真っ当な営みから生まれたって、真っ当な育てられ方をするとは限らないからね」

 

「――っ」

 

リッカは笑い、告げる

 

「私、いつも思う。生命は『どう生まれた』かじゃなくて、『どう生きるか』だって」

 

彼女は心から、そう信じている

 

生誕は選べず、また、どう生まれたいかは選べない

 

ならば・・・与えられた生命をどう歩み、どう生き、どう終わらせるかこそが重要なのではないかと

 

「マシュの生まれはちょっと特殊かもしれないけど、今もこうやって生きてるし、オルガマリーだって責任から逃げないで、今まで一緒に頑張ってきた。皆が皆、頑張って生きてる。・・・それだけで、何も悪いことなんてなくない?」

 

「だって、だって・・・!皆、私を責めた!『お前は人でなし』だって!『無能な所長』だって!」

 

オルガマリーは恐慌、錯乱してしまう

 

リッカの答えに。暖かな肯定に

 

「だから、そう言われる前に、私から・・・!嫌われる前に、嫌われようって・・・!私・・・!マシュを、あなたに任せようって・・・私・・・!」

 

「責めないよ。マリーがどれだけ頑張ってきたかなんて、一番よく解ってるよ。皆」

 

へたりこむオルガマリーの前に、片膝立ちでそっと手を取る

 

「辛かったね。心細かったね。本当に、本当に・・・よく頑張ったね」

 

「・・・リッカ・・・」

 

「私がいる。マシュもいる。皆もいる。・・・辛いこと、背負い込まなくていいんだよ、オルガマリー」

 

ゆっくりと、オルガマリーを抱きしめる

 

「私が言うことは一つだよ、オルガマリー」

 

「・・・一つ・・・?」

 

「『本当に、お疲れ様。産まれてきてくれて、ありがとう』」

 

「――――っっ・・・」

 

リッカの暖かい肯定に、オルガマリーは堰を切ったように嗚咽する

 

「わたっ、わたっ、わたし・・・私・・・私・・・!」

 

「うん」

 

「・・・産まれて、良かったの・・・!?本当、に・・・!?」

 

「もちろん」

 

「あな、た、たち、の、友・・・達で、本当に・・・いいの・・・!?」

 

「当たり前だよ。責めることなんて何もない」

 

そっと、震えるオルガマリーを抱きしめる

 

「マシュが産まれて、貴女が自由を認めた過去を労って、今を生きよう。今を精一杯生きて、その今を未来に繋げようよ。大丈夫。親を尊敬できるくらい親に愛されたマリーと、皆に優しく支えられてるマシュにならそれができる。産まれた奇跡、出逢えた偶然。――それを、大切にしていこうよ」

 

リッカが、総てを受け入れ、満面喜色の笑みを浮かべる

 

「私も、マリーも、マシュも・・・皆皆、同じ『生命』なんだから!」

 

「――――リッカ――っ・・・!!」

 

胸に顔を埋め、オルガマリーは泣いた、泣き続けた

 

「わたっ、わたっ、わたし・・・!嫌われると思って!人でなしだって、リッカに、言われると思って・・・!ずっと、ずっと怖くて・・・!でも、マシュとリッカに、隠し事、したく、なくて・・・私!――!」

 

 

誰にも伝えられなかった。答えなど解りきっていた

 

重すぎる荷物を、潰れるまで背負わなければならないと覚悟していた

 

手にした絆をも、代償として手放さなければならないと、震えながら覚悟していた

 

・・・けれど、それは勘違いだった

 

彼女にとって、生命は等しく同じ

 

作られていようが、いなかろうが、価値と尊さはけして変わらない

 

彼女は既に、出逢っているのだから

 

造られながらも、自分を導き、救ってくれた・・・かけがえのない、親友に

 

 

「うん、うん。――大丈夫、大丈夫だよ。頑張ったね。本当に、本当に。よく、頑張ったね――」

 

リッカは泣きじゃくるオルガマリーを抱き締め続けた

 

――大切な、友人を。無理をしがちな、危なっかしい友達を

 

優しく、強く。抱き締め続けた

 

言葉にせずとも、伝わるように

 

『私達の間に、変わることは何一つない』と・・・伝えるように――

 

・・・やがて、オルガマリーは泣きつかれ、眠りにつき、それを見届けたリッカはマリーをおぶり、送り届けんとする

 

「お休み、マシュ。オルガマリー。・・・これからも、よろしくね」

 

ゆっくりと、二人は部屋を後にするのであった――




(ヒュウ、一世一代の大懺悔だったね。無事収まるところに収まって何よりだ)


――うん!やったね、フォウ!お互い、必ず解ってくれるって信じてた!

生命に生まれとか、価値とかは関係なくて。『生きている』『この世界に在る』だけでかけがえのない・・・総てが『尊い』んだって事に!あぁ――マスターも、マリーも・・・本当に、良かったね――!

《フッ――解りきった事なのだがな。我以外の総てに、優劣などあるものか。まったく手間のかかる。・・・場の仕掛人にしては悪辣が過ぎるぞ、獣》

(何の話だい?)

《とぼけおって。・・・まぁ良いわ》


「――聞いていたな、マシュ」

『――はいっ・・・・・・はいっ・・・!!先輩も、所長も・・・私の、かけがえのない・・・大切な、大切な・・・――っっ・・・』

――意識が覚醒してる!?え、じゃあ今の話、全部・・・!

(あれーおかしいなぁーあれれーおかしいぞー。睡眠モードにはなってたはずなのになー)



「フォウ!(じゃあ、またね)」

『意識覚醒・OFF』

ピョィン

『意識覚醒・ON』

「キュー?(いっけねー押しちゃったー)」

スタタタタ

『・・・先輩?所長・・・?』





「解ったな、マシュ。産まれなど気にするな。お前はお前だ。変わらず・・・あるがままに振る舞うがいい」

『――はい!英雄王・・・本当に、本当に!ありがとうございます――!』


――とっても、とっても!尊いね!フォウ!

(うん!)

『マシュ・オルガマリー・リッカのコスプレをしたフォウに増え、ぐるぐる回りながらバターになる』

(御祝いのバターケーキに使って!エア!)

――フォウ――!?
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