人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
キラナ「シャムシード!」
シャムシード『了解。スラオシャと光輪をリンク、感覚共有を開始します』
キラナ「…大丈夫?」
シャムシード『お気遣いありがとうございます、キラナ様。…確かに、サタンとルシファーには煮え湯を飲まされ、辛酸を嘗めさせられました』
キラナ「……」
シャムシード『ですが───彼は今変わり始めている。純粋悪ではない何かに。傲慢ではない何者かに。その変化の兆しがあるならば、私はかつてアフラ・マズダ様に聖王の座を賜ったものとして、見届けたく思うのです』
キラナ「──そっか!なら、やってみせようよ!」
シャムシード『はい!我等善なるものにて、皆に福音と勝利を!』
『共鳴、同調完了。ウタワールド、現実世界全員の感覚をリンク。スラオシャ、皆のサポートという本懐を果たします。皆様どうか、御武運を』
聞き届けるもの、スラオシャがキラナ…アフラ・マズダとリンクすることにより、全員の感覚が誤差なくリンクする。これにより、同時攻撃におけるタイムラグを消し去りトットムジカの特殊防御を貫く準備が整った。
『魔王の皆!藤丸リッカです!攻撃する場所は私が判断することになりました!防御はサーヴァント達、攻撃は聖杯アリの皆が合わせるよ!』
【了解。行くよ皆!オレ達魔王の、初めてかもしれない共同戦線だ!】
その言葉と共に魔王達が散開する。全てはトットムジカを形取る蓄積された悲哀や絶望を打ち払わらんがために。
『まずは腕!片っ端から切り落とす!』
【アスモデウス!口の中に!】
【了解!】
レヴィアタンが神体を展開。口にアスモデウスをしまう形で一気に突撃を敢行。その、圧倒的なスケールは、四つ腕を全て使わざるを得ない勢いを持つ。
【懐に入った…!】
ガバリ、と口を開ければそこにはアスモデウス。レヴィアタンの咬合は、トットムジカすら抉じ開けることができなかったのだ。アスモデウスは跳躍し、旋風脚の構えを取る。
『兄貴!コンちゃん!一気にお願い!!』
【この絶技、サタン様と愛しきカルデアの隣人に捧ぐ!!】
現実世界ではクー・フーリンのゲイ・ボルク、コンラのブリューナクが閃き、アスモデウスの絶技に完全に合わされたタイミングにて腕を細切れと化す。コンマのズレなき、親子と魔王の共演である。
『次は脚!カルナさん、アルジュナ!アシュヴァッターマン、ラーマ!』
【オレはどこまでも雑だ!ベルフェゴール!】
【( ˘ω˘)スヤァ】
【故に、人類の欲望最大の範囲攻撃で行くぞ!!】
ベルフェゴールの泡の援護を受け、マモンは万魔殿から人類最大最悪の欲望の権化を解き放つ。
【カルデアの風情に合わせたツァーリ・ボンバ!こやつをベルフェゴールの泡の範囲内に脚を巻込み大爆発させてくれるわァ!!】
突進するマモン。迎撃用の光線が最大の禁忌兵器、ツァーリ・ボンバを破壊しようと殺到するが、ベルフェゴールの泡にふんわりと逸らさせ無力化されてしまう。いや、それを狙っていたのだから当然だ。
【オレは、オレ達は敬愛して止まぬサタン様に頼られ肩を並べている!その光栄、その恐悦を貴様は知るまい!わかるまい!!】
【■■■■!?】
【見るがいい!これが人間の業の極地たる一撃よォ!!欲望バンザァァァァァァァァイ!!】
泡にトットムジカの脚が入ったその瞬間、泡の中にて目を潰すような光が溢れ満ちる。アフラ・マズダや聖霊の輝きなどでないおぞましき光。対国宝具マモン・ツァーリ・ボンバがベルフェゴールの癒やしの中で完璧に対策され脚を吹き飛ばす。
そう、カルナとアルジュナらインド組達もそれに完璧に合わせていた。四人とも、インドにてその名を知らない者なき至高の英雄達。それくらいの芸当は造作もない。
『次は鍵盤!防御機能を完全に奪うよ!ノッブ、まじんさん、虎さん、田村麻呂に鈴鹿!おねがい!!』
【サタン様、ここは私が参りましょう】
【ドラゴラースも連れて行って。君の足は引っ張らないよ】
感謝を。それを伝えベルゼブブは蝿の姿にて飛翔する。鍵盤にて放たれる近付くものを拒絶する迎撃兵器を無力化するため、憤怒の竜王ドラゴラースとともに。サタンの宝具であり、憤怒を司る最強の幻獣ドラゴンそのもの。
【グオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!】
【…!】
ベルゼブブはどこまでも冷静に、冷徹に。ドラゴラースは狂しく、激しく苛烈に。対象的な二人は共通した圧倒的な防御力にて懐に侵略。ベルゼブブは渾身のアイアンクロウを振り下ろし、対城宝具の粋にある威力で鍵盤そのものを粉砕しにかかる。
『三千世界一斉発射!!』
瞬間、鍵盤がバラバラに弾け飛ぶ。同時攻撃が成功したため結合が解けたのだ。ベルゼブブの一撃は、眼前全てを引き裂く攻撃でもあったが故に。
【グオオオオオオオオオオオオオオ!!!】
憤懣竜王ドラゴラースが同時に鍵盤全てを炎で焼き尽くす。復活できぬよう、先に行っていた常に攻撃している状態を維持したのである。
『今だよ!田村!!ダイナマイッ!!!』
リッカの指示もまた的確に飛ばされ、解体を果たされる鍵盤。いよいよ以て、残るは翼に胴体、頭のみ。
『ルシファー!一緒に行っても大丈夫!?』
【もちろんさ。サポートサーヴァントみたいなノリで使っておくれよ!】
ルシファーはドラゴラースを呼び戻し、脅威の技術を再び展開する。怒りの化身たるドラゴラースを分解し、自身は傲慢の大魔王ルシファーへと変化する。
『これこそが、カルデア最強最悪のマスターの力を再現したファンメイドさ!』
『おっほ!?』
そう、クリムゾンカラーと融解した鉄のような黄色の竜鎧。それこそ、憤懣竜王武装ドラゴラース。カルデアの活躍に焦がれたルシファーが夢見た最強の姿である。
『はくのん!胴体部分を騎士王と一緒に!羽根は皆で一斉に!』
『胴体に羽根だね!了解だ!』
ドラゴラース・ルシファーは駆け抜け、一気に攻撃を叩き込む。そして全く同時にはくのんとネロ、騎士王とその騎士達、同盟関係における皆が攻撃を同調させる。
【!!!!!】
その甲斐あり、いよいよトットムジカの部位は残すところ頭部のみとなる。決着の時はすぐそこに迫っていた。
『決める!!マシュ、じゃんぬ、巌窟王、カーマ、グドーシ!行くよ!!』
『成る程、これが力を合わせる感覚かぁ…!』
最後の抵抗とばかりに、トットムジカは目から光線を乱射する。しかし当然ながら、そんな苦し紛れの反撃でルシファーが、カルデアの皆が討ち取れるはずはない。ルシファーはトットムジカの遥か上空に飛翔する。
『これができたから、これがいつでも出来るから──カルデアは決して負けなかったんだね…!』
仲間達と心が重なる感覚。完璧に息が合った喜び。力を合わせ何倍にも高鳴る驚愕。
それは意外にも、ルシファーに経験があった。そう、ウタとゴードンに誘われ合唱を行った時の、むず痒いような感覚。
人は一人ではないから成長できた。人は力を合わせたから繁栄できた。自分やアダム、ギルガメッシュのような絶対者が消えても寄り添う事を選んだ。
傲慢で、自分一人では決して辿り着けない領域。思えば、エアの教えとはこれのことだったのだろう。
『一人が世界にいれば、必ず寄り添う誰かがいる。その誰かにも大切な人が。その誰か、その誰かにも、その誰かにも』
そうして世界は広がる。そうして世界は繋がる。そうして世界は森羅万象を織りなしていく。
『僕は──間違えていたんだね』
自身の性質は変えられないだろう。だからこそ、その認識は変えられない、変わっては自分は大魔王ではいられない。
だからこれは、エアやウタが教えてくれた真理にして事実。それを──胸を張って口にする。
『この世界に…。どうでもいいものなんて、一つもないんだ───』
皆がどこかで繋がっている。皆がどこかで支え合っている。皆がどこかで助け合っている。そうやって人間は、世界は存在しているのだと。
目を閉じれば、現実世界のカルデアの皆の奮闘が見える。全員が全員、全力で今を煌めいている。今を一生懸命に生きている。
『──あぁ』
目を開けば、魔王達が、悪魔たちが自分に声援を送っている。これで決める為に。これで、決着であるために。
何より────ルシファーを心から、愛しているが故に。神に貶められた自身らを照らした星を、見上げているのだ。
ルシファーは、その輝きに心から確信を得た。心から──それを悟った。
『綺麗だなぁ─────』
ルシファーの振り下ろした拳と、現実世界の決死の一斉攻撃にて。
とうとう、トットムジカは花火となって爆散するのだった──。
ゴルドルフ『やっ、た…やったのかね!?』
ムニエル『トットムジカ、反応消失!勝った!勝ったんだ!!』
職員たち『『『『『『うぉおぉおぉおぉおぉおぉお!!!』』』』』』
マシュ「やった!やったんですね、先輩!!」
じゃんぬ「つ、疲れたわ……ファンシーなの見た目だけじゃないの…!」
リッカ『………………』
じゃんぬ「リッカもお疲れ様。帰ったらとびきりのパフェを……」
リッカ『……何か、聞こえない?』
じゃんぬ「え?」
リッカ『何か──ドラムの音、みたいな……』
伊邪那美命『愛しきカルデアの子らや』
ムニエル「!!!」
ゴルドルフ「ま……真面目な伊邪那美命………」
『浮足立つ事なかれ』
トットムジカ【!!!】
ルシファー『!』
『カグラの荒御魂、来たる』
トットムジカの頭部、球体表面が砕け───
ルシファー『……ウタ……!?』
血涙と慟哭を示す、神の形相が来たる。
かつて夫に捧げた、解放のリズムとともに。