人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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英雄王のジョークが冴え渡る!


拝聴せよ!これが王の言霊である!!


戯言

『もう少し先に、現地の兵と見受けられる反応がある。接触してみるかい?』

 

 

「うむ、如何にするマスター?我としては現地にて人と話すのは旅の醍醐味故、オススメだぞ?」

 

『分かった。――じゃあ』

 

 

こほん、とロマンが咳払う

 

 

『スピード落としてあげて!頼むから!!二人とも喋れてないから!』

 

死んじゃうから!と涙目になるロマンの嘆願

 

「むぅ。これからだというのに……仕方あるまい、小石を撥ね飛ばすのも後味が悪いしな」

 

 

アクセルを緩め、パラを展開し速度を緩めていく

 

 

やがて停止し、二人を下ろす

 

 

未だに胸が高鳴る。バイクはこんなに素敵な乗り物であったのか……ギルギルマシン、大切にしよう

 

「堪能したか?これが我の、王の行軍というものだ。光栄に思えよ」

 

「は、はい――凄かったです!身体中を痛いくらい風が打ち付けて……気持ちよかったです!」

 

「お尻が割れた……」

 

『大丈夫、もともとよリッカ』

 

「そうじゃなくて!」

 

「ふははは、移動は基本これで行くぞ?我は愉快な王!よし、現地の民と接触してみよ」

 

「だ、大丈夫かな?」

 

フランス語など習ってはいないだろう事をマスターは心配しているのだろう。もちろん自分は話せない。どこの国にいたのか、それすらも不明瞭なのだから役にはたてない

 

 

『ごめんなさい、帰ってきたら勉強ね』

 

「そんなぁ!」

 

 

「何、言語の壁に阻まれるのもまた旅の醍醐味よ。心配はあるまい。異種でもないのだ、疎通はできよう。表情で、手振りで、魂で物事を伝えよ。それが交流というヤツだ」

 

魂で、物事を……

 

英雄王の言葉は揺るぎない自我がある。けして、旅人はマシュとマスターだけではないのだ

 

「円滑な人付き合いに、コミュ力は必須と知れ。あぁ言っておくが我に友は一人しかおらん。何せ自分をけして曲げぬ。我を曲げねば友は作れぬからな。ははは」

 

『苦労しただろうなぁ唯一の友』

 

「……解りました、先輩。ここは私に任せてください」

 

「マシュ?」

 

「マシュ・キリエライト!カルデアの交流大使に立候補します!」

 

『よい気合いだ。言葉には力がある。基本、踏みにじられる哀しい葉っぱでもあるのだナ。ショッギョムッジョ。キャットは哀しい』

 

『喋って動きが止まる馬鹿は斬りやすいですからね。ともあれがんばですよ!』

 

「はい!」

 

「よし行け親善大使よ、間違っても私は悪くないなどと少し前のマリーのような駄々はこねるなよ?」

 

『ギル!』

 

「ははは、笑顔で流せ、粋なユーモアだ」

 

 

もうすっかり打ち解けている。弾む会話が心地よい

 

 

「では行きます!」

 

 

肩をいからせ兵士に迫るマシュ。お手並み拝見だ、頑張れマシュ

 

「大丈夫かな……?」

 

 

 

「……」

 

「ヘーイ」

 

「!?」

 

 

「エクスキューズミー。私達は怪しいものではありません。私達の話をしましょう。天文台の端からあなたたちに――」

 

「変な奴等がいるぞ――!!!」

 

 

結論から言わせて貰うと、あっさり囲まれてしまった

 

「申し訳ありません!失敗しました!」

 

「マシュのばかぁー!」

 

「そこは、ハロー?ナイストゥーミートゥ?であろうが未熟者め……」

 

『フランス!ここフランスだから!』

 

兵士は怯えながらも迎撃の体勢をとっている。どうも何かと戦ったような疲弊ぶりだ

 

「ドクター!何かこの場を収める手段はありますか!?コミュニケーションの妙を教授ください!」

 

『知るもんか!ぼっちだからね!小粋なジョークでも話してみよう!この帽子はドイツんだ!みたいな!』

 

『ロマニ、黙って』

 

『ごめんなさい所長!』

 

「さて、殺気だっているがどうする?塵に還すか?」

 

サーヴァントではない現地人、皆殺しにするのは容易いだろうが……

 

――自分は、なるべく殺生はしたくない。生きている人間を手にかける覚悟もできてはいないのもあるが……

 

生命が持つ、輝きのようなものを……安易に摘み取るのは、『惜しい』気がするのだ

 

 

『特異点は切り離された世界、殺めてもパラドックスはおきないだろうけど……』

 

『マシュ、リッカ。無力化を最優先にしなさい。あなたたちが背負うのは人理の行方だけでいい、無用な重荷はいらないわ』

 

 

「所長……」

 

『戦闘が避けられないなら、峰打ちで。無茶な注文だけど、少なくとも手が血で染まることはないはずよ』

 

『聞いたかい英雄王!殺しちゃダメだからね!』

 

「解っている。――よい選択だ」

 

旅路の色が決まる。何故だかそんな予感がした

 

 

この選択は、尊いものだと……感じ入るものが胸にあった

 

 

「――ならば、この場は我が収めよう」

 

「ギル?」

 

 

ざっ、と一歩踏み出す

 

……嫌な予感がする。なんだかしょうもない予感が

 

 

「我に刃を向ける無礼、特に許す。我は通りすがりの英雄王、大抵の無礼は水に流そう」

 

兵士に語りかける

 

「言葉など通じずとも伝わる衝撃がある。しかと聴け、王の言葉に耳を傾けよ!」

 

 

「ゴクリ……」

「先輩、後ろに」

 

――王が話をするとしよう

 

「――どこぞの国の出身の暗殺者が英雄になった。山の翁とかいう侘しい教団の頭領がアサシンの代表となった」

 

「ハサンといったか。小賢しい暗殺を繰り返すネズミではあったがそれなりに賢しかった。その小手先で名を上げはしたが奴等にはどうしても苦手なものがあった」

 

 

アサシンの苦手なもの……?凄いぞ、そんなものがあるのか……!

 

 

『苦手なもの……?』

 

うむ、と頷き王が続ける

 

 

「それは――財政管理だ。刈ろうが刈ろうが財政は火の車。あまりのその粗末な手腕にあっさりと山の翁の家計は破産と相成った――」

 

グッ、と辺りを見下ろす、渾身の表情で

 

「――ハサンだけに、破産」 

 

 

『…………』

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

 

――恥ずかしい

 

顔から火が出そうだ。見るな、見ないでくれ

 

そんな、可哀想なものを見るような目で、自分を見ないでください――!!

 

 

「はははははは!ハサンだけに破産だ!解るか?ハサンに破産をかけた至高のジョークだ!ハサンとは最も不遇なサーヴァントの称号、せめて笑い者にしてやるのが供養というものだ!はははははは!」

 

 

「……帰ろうぜ」

 

「ああ、戦いってむなしいな……」

 

兵士が武器を納め、すごすごと引き返していく

 

 

「……無力化に、成功しました」

 

「うん、一応追いかけようか……なにか分かるかもだし……」

 

『そうしてちょうだい……』

 

『神は残酷だなぁ……』

 

 

皆、テンションが駄々下がりしている。兵士も行ってしまった

 

「フッ、ジョークにおいても我は無敵!我の欠点の無さがこわい!ハサン、だけに破産……!フハハハハハハ!」

 

――ジョークをいいかけたら、死ぬ気でとめてみようかと。無銘は決意を新たにしたのだった




?「山の翁が最不遇――よくぞ宣った」


「首を出せ」

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