人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
リッカ「物静かで可憐だと思ったけど、アグレッシブでストロングだねアツコちゃん!ギルガシャナ姫様もピーチ姫もそうだし、姫様って皆そうなのかな?」
アツコ「そうなんだ…姫様として恥じない選択できてたんだ。よし」
リッカ「強い!心が!…バルバラさんのお陰でおばさんから逃げれたけど、ここからどうしよう?」
アツコ「あ…。だったら、アリウス分校の『放送塔』に言ってくれる?」
リッカ「放送塔」
アツコ「うん。廃棄された全天放送施設なんだけど、そこで私が、生徒会長で憎しみも虚しさもいらないよってスピーチして、アリウスの皆の戦いを止めるきっかけを作ろうと思うんだ」
パパポポ『アグレッシブッポ。だが、それはいい考えだ』
アツコ「そっちとは逆方向に大聖堂があって、そっちには『慈悲の歌』を告げる蓄音機もあるんだけど…流石に真逆だから諦めるしかないか。リッカさん。スピーチの内容を考えるから、それまで私を護ってくれる?」
リッカ「まっかせて!!…ふっふっふ…!」
アツコ「?」
リッカ「今の私は姫を護るプリティ☆ドラゴン!これに燃えない女の子はいないってものだよね!!」
ベアトリーチェ【ビーストαァ!!】
アンリ【何だ若作りババァ!!】
ベアトリーチェ【ぐっ…!!逃げ切れると思うなよ!貴様諸共、私の崇高の生贄にしてくれる!!】
アリウス生徒『『『『『『………………』』』』』』
パパポポ『精神制御か…酷いことを…』
リッカ「下がって、アツコ姫!ここは私が!」
アツコ「こ、殺さないでね?あと、銃は…?」
リッカ「チャカは不要。──今こそ、日本刀の切れ味を見せる時!!」
パパポポ『峰打ちッポよ。峰打ち暴れん坊といったら……』
リッカ「お願い、パパポポ様!」
パパポポ『うむ。いざ!』
リッカ「(チャキッ!)参る!!」
BGM 暴れん坊将軍殺陣のテーマ・賛美歌オーケストラアレンジ
「アダム先生!ミレニアムサイエンススクールセミナー2名、現着しました!後々ヴェリタス、ゲーム開発部、エージェントC&Cのメンバーも合流する手筈になっています!」
「エデン条約の件、大変お疲れ様でした。ここからは私達もお力になりますね、アダム先生?」
「ありがとう…!キヴォトス三大学園の力、アリウスに潜む黒幕に見せてやろう!」
「ミサキ、ヒヨリ!また一緒に戦えるんだな…!絶対に姫を助けよう!」
「は、はい…!姫ちゃんは私達と違って、これからのアリウスに絶対必要な存在ですから…!」
「……流石に塞ぎ込んでる場合じゃないよね。姫が覚悟を決めたのなら、少しくらいは力にならなくちゃ」
決戦の機運が高まるアダム陣営。ミレニアムの合流を待つ最中の時間でも着々と追加される、アダムを慕う生徒たち。そして再会を果たしたアリウスの仲間達。全てが好転していく様を、アリウス・スクワッドのリーダー錠前サオリは静かに見やる。
「サオリちゃん。なに一人で黄昏れてるのかなっ?」
距離を取って、その様子を見つめるサオリに話しかける者がいる。聖園ミカ…。ある意味で全ての始まりの二人が邂逅、正確には再会を果たす。
ミカの接触を受けたのはサオリであった。それが、エデン条約に纏わる全ての始まりと言えるだろう。サオリは、ミカの顔を見て口を開く。
「……お前と、アズサが正しかった」
「わっ、いきなり本題?時間いいかなから始めるつもりだったのに……」
「アダム先生を信じ、頼ったお前達は正しかった。全てが正しく、夢でも思わぬ方向に動き始めた。信じた相手が、頼るべき大人の選択が正しかったんだ」
「サオリちゃん…そんな本当のこと…」
「……間違えていたのは、私だ。私だけだ」
サオリは壁にもたれかかり、天井を見やる。虚ろ気に、瞳が揺れる。
「信じるべきでない相手を信じ、選ぶべきではない選択を選び続けた。誰も彼もを不幸にしてきた。幸福に至る道を、尽く諦め…また、諦め続けてきた」
「それも全くもってその通りだけど…」
「事此処に至って、姫は私に愛想を尽かし一人で決着を付けにいった。私は今、穢らわしい大人とまで呼んだアダム先生に恥をかかせてまで自分の尻拭いをさせている」
「うん、傍から聞いても全然良いところないけど…」
「私は……疫病神だ。関わるもの全てを不幸にしておきながら、私自身の全てを私だけで解決することすら出来ない。ミサキも、ヒヨリも、姫も、私がいなければもっともっと早く幸せになれた道があった筈なんだ」
「───」
「私のせいだ…。姫が今危険な目に遭っているのも、私が、私なんかが皆のリーダーであったから…。私なんかがいなければ、皆…!」
「────それは、聞き捨てならないな」
ミカはサオリの腕を掴み、トリニティの校舎裏へと引きずり込む。その力はあまりに強く、サオリは僅かな抵抗すら出来ない。
「なっ、何を…!」
「えいっ!」
ミカはそのまま力の限りにサオリを校舎の壁に叩きつける。その衝撃はあまりに強く、サオリが叩きつけられた壁に無数の亀裂が走る。
「がはっ……!」
「歯を食いしばりなよっ!」
そしてそのまま──反動で跳ね返ってきたサオリの顔面を、ミカ渾身の右ストレートが捉える。それは熊やゴリラ並、アダムの足元にも及ばないレベルの一撃。
「がぁ────っ!」
モロに受けたサオリの顔面のマスクが粉々に砕け散り、大地に叩き伏せられる。修正の意図で放ったパンチだが、キヴォトス外の人間なら十人は葬れた一撃だろう。
「自分がいなければ、とか。私なんかがいなければ、とか…。もうサオリちゃんはアダム先生の生徒なんだから、二度とそんな事言わないで」
「がはっ、ぐ…あ…がぁっ……」
「そんなの、あなたを信じた全てに…あなたを助けようとしてくれたアダム先生に対する何よりの侮辱だよ。解った?」
校舎の壁に亀裂が入り、やがて崩れる。土煙の中で、ミカはサオリの隣にそっと座る。
「…だって、その通りだろう…!私はマダムを、信じてはならない相手を信じてしまった!取り返しのつかない過ちを犯してしまったんだ!私がいなければ、もっと皆は早く幸せになれていた!」
「その前に、皆もっと早く自殺でもしてたんじゃない?ミサキって子、身体中リストカットまみれだったし。ヒヨリちゃんは…まぁまぁ図太そうだから生きてそうかな?」
「!」
「アリウススクワッドの皆は少なくとも…。サオリちゃんがいたから今まで生きてこれたんだと思うな。自分なんかが、っていうの…わかるけど、それはただの自分勝手なんだよ」
私もそうだったもん。そう告げ、ミカは青い空を見やる。
「悪いと思っているなら、罪だと感じているなら。やるべきことは自分を責める事じゃない。これからどうするか、どう償うか、どう未来を変えていくかなんだよ。サオリちゃん」
「……償い…?」
「そうだなぁ……。あ、シャーレのアダム先生のファームで幻獣のお世話なんてどうかな?授業を受けながら、ペガサスや、ユニコーンとかのお世話をするの!きっと楽しいよ!」
「…馬鹿な…」
「リッカちゃんやオルガマリーさんのカルデアに行ってみるのはどうかな?すっごい楽園らしいよ!私も行ってみたいな〜!その時は、皆で行ってみようね!きっと素敵な思い出になるよ!あ、夏草って知ってる?もうすっごく素敵な都市でね!キヴォトスの外なんだけど…」
「馬鹿な事を言うな!償いだぞ?楽しんでどうするんだ!償いとは罰だ、苦しんで当然のものだ!何故素敵な思い出などに…」
「出来ないの?今まで奪われた幸せを取り戻して、アダム先生を安心させる事が本当に出来ない?」
「出来る、わけがない!絶対に…無理だ!」
その答えを聞いたミカは、慈愛に満ちた笑みで微笑む。
「──絶対に出来ない事をしなくちゃいけない。出来るわけないことをやらなきゃいけない。それをね?人は『償い』って言うんだよ。サオリちゃん」
「─────!!!」
「アダム先生に申し訳ないと思うのなら、あなたやアリウスは幸せに向かって歩まなきゃいけない。幸せにならなくちゃいけない。そんな資格はない、こんな幸せでいいはずが無いって気持ちに一生向き合いながら。それでも幸せにならなくちゃだめなんだよ」
「………」
「資格が無いからなんて、償いから逃げるのは許さない。アダム先生に向かって恩返ししたいなら、あなた達が奪われた幸せを取り返すしか道はないんだよ。…私も、今そうなんだから」
そして、サオリの手を取りミカは告げる。
「もしそれが、どうしても許せないなら…私が、あなたを赦してあげる。もう自分を責めなくていいんだよって。あなたは幸せになっていいんだよって。何度でも言ってあげるから」
「……どうして。どうして、そこまで……」
「自分の罪を赦す方法は、他人の罪を赦す事だって教わったんだ。私はアダム先生に、赦してもらえたから。私もあなたや、アリウスの皆を赦そうって思うんだ。……うん、そうだね」
手を強く握り、ミカは決意を宿す。
「この戦いで、私は敵を倒すんじゃなくて…。あなた達の罪が赦されるように戦うよ。あなた達が変われるように。あなた達が真っ直ぐ歩いていけるように」
「…聖園、ミカ…」
「うん。だから───。あなた達の為に、祈るね」
サオリとの対話の中で、ミカは自らの成すべき戦いを見定めた。やがてサオリを作戦会議の為に帰し、ミカは空を一人で眺める。
「元々、アリウスはトリニティ設立前には姉妹校だった。だからどこかに必ずある。……慈悲を告げる場所。懺悔を告げる場所が」
そこならきっと、祈りはアリウス全てに届く。赦しはきっと、アリウス皆に届く筈。
「アダム先生、ありがとね。……私、こんな短い間で、ずっとずっと大人になれたよ…」
それは、アリウスに満ちるであろう憎しみを全て受け止め続けることに等しい。全ての戦力を引き受けることになるかもしれない。
──生きては帰れないかもしれない。でもそれが、自分のやるべきことだから。
「大好きな人の為に、命の全てを使えるのなら…それはきっと、素敵な人生だよね☆」
……皮肉にも。決意を固め澄み渡ったミカの表情は美しく、女神や天使にすら劣らぬもので。
「………全く」
「あなたと言う人は…………」
その決意は、親友二人には筒抜けで。
聞かなかった事にしつつ、ミカは校舎破損の罪で入念に巨大ロールケーキを3本口にぶち込まれる事となり。
(君を迎えに行く王子様は、一人しかいない。その時に叱ってもらうといいさ)
セイアは全てを察しながら、静かに頷くのであった。
─────そして、突入五分前。ティマイオスとパパポポの力で、直接アリウス分校エリアに突撃を開始する段階にて。
黒服【アダム先生。ベアトリーチェに対して宣戦布告を一言】
アダム「何?」
マエストロ【通信は繋がるのだよ。一応ゲマトリアだからな、奴は】
ゴルゴンダ【憎悪に沈んだ彼女を震え上がらせる啖呵を、お一つ】
デカルコマニー【そういうこった!】
アダム「───。そうか、では…」
アダムは、端末を手に取る。
〜
アダム『聞こえるか。淑女とやら』
ベアトリーチェ【!アダム・カドモン…!?】
アダム『貴様は私が殺す』
【!!】
『覚悟するがいい。私が殺すと決めたのは、神に続いて二人目だ』
〜
アダム「これでいいか?」
黒服【クックック…。少し漏らしてしまいました…】
アロナ『きたねぇです!』
マエストロ【……殺すのか?】
アダム「どうだろうな…ただ」
ゴルゴンダ【……】
「罪の報いは受けさせる。必ずだ」
デカルコマニー【そういうこった!】
──アリウス分校エリアの突入時間に至り。
アダム「皆──行くぞ!!」
生徒達「「「「「「「はい!アダム先生!!」」」」」」」
エデン条約を巡る騒動は、クライマックスを迎える。