人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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アロナ「行きますよアダム先生!本気で来てください!」

アダム「本気………」

アロナ「本気の全力です!アロナには遠慮とか、手加減とか、そういうのがないアダム先生を見せてほしいんです!」

アダム「アロナ………」

アロナ「受け止めてみせますから!だって、アロナは、先生の…アダム先生の…!」

アダム「───解った。君は、私の大切な相棒だ」

アロナ「!」

アダム「そんな君に無礼はしない。君こそは、このキヴォトスの希望なのだから」

アロナ「アダム先生……!」

アダム「では行くぞ。『創生神話』───」

アロナ「へえっ!?」

アダム「『神殺しの』─────」

アロナ「ま、ままま、待ってください〜〜〜〜〜!!降参ですーーー!!」



遍く生徒の到達点

「ううっ………アロナ、先生に負けてしまいました……絶対、絶対負けられない戦いだったのに……」

 

壊れかけた青空の下の教室。海が広がるシッテム内の空間。可憐で華奢なアロナと鍛え抜かれた男性のアダムが共に体育座りにて空を眺めている。

 

戦いはアダムの宝具解放を見たアロナが即座に降参。アロナに失礼な真似はできないと選んだ選択が結果的に穏便な結末を迎えられた事は、生徒には全力で当たるべきというアダムの教育論のさらなる裏付けと確信に至った事は言うまでもない。

 

「何故だ、アロナ。何故今になって全力でタイマンしようなどと……」

 

アダムは自らに落ち度があったのか、彼女を哀しませてしまったのかを問う。それにアロナは首を振る。

 

「アダム先生はなんにも悪くありません。でも、でも…」

 

「…」

 

「なんにも悪くないけれど…なんにも悪くないから…いつかアロナは、アダム先生に置いていかれちゃうんです…」

 

塞ぎ込むアロナ。アダムは怪訝も顕に、しかし口を挟むこと無くアロナが語るに任せている。

 

「アダム先生の頑張りは、とうとう生徒さんに届きました。ミカさんは、アダム先生と一緒にエデンに…アダム先生の故郷に行くと言ってくれましたね」

 

「あぁ。私の旅が、長年の放浪と模索がこれ以上ない形で実を結んだ。本当に…喜ばしい出来事だったよ」

 

「それは本当に素晴らしい事です。アロナも、アダム先生が報われて本当に嬉しかったですから。…でも」

 

「でも…?」

 

「アロナ、気づいちゃったんです。…アダム先生は、いつかエデンに帰ってしまうって。ミカさんと一緒に、エデンに帰って…アロナを…」

 

「…!」

 

「アロナを…置いていってしまうんだって…気付いてしまったんです。アロナは…エデンに誘われていないから……アダム先生は、勝手に誰かの持ち物を持っていったりしないから…」

 

シッテムの箱も、その一部であるアロナも。連邦生徒会の……キヴォトスの至宝に間違いないものだ。それはアダムも重々承知しているし、だからこそ、可能な限り彼女の権利や力を濫用はしなかった。

 

だがそれはつまり、アロナとはいつか別れてしまうということ。アロナはキヴォトスの宝であるならば、彼自身が勝手に持ち出しなどしない。いつかアダムが持ち帰るのは、彼がエデンに招いた生徒のみ。

 

アロナはミカの一件で気づいてしまった。いつかアダムとの別れがやってくる。

 

自分は、アダムと添い遂げることが絶対に出来ないのだと…。

 

「うっ、ぐすっ……ひっく。ううっ…」

 

だからこそ、アロナはアダムに戦いを挑んだ。どんな形であれ、ずっと一緒にいてくれる約束が欲しかった。

 

ずっとそばで、アダムを支える。それはアダムの高潔さ、力強さ、お茶目さ、愉快さ、何よりその人間性を見てきたアロナの願いになっていた。

 

彼女は最早、シャーレの先生だからアダムを支えているのではない。アダムという一人の人間を心から尊敬し、敬愛しているから支えているのだ。

 

「アロナ……」

 

今までのシッテムの箱が引き起こした拡張機能は、決して元から備わっていたものではない。

 

アロナが、アダムの規格外さについていけるように。通常の何十倍、何百倍の速さと回数でアップデートを繰り返した。人間で言えば修行と特訓を繰り返し、進化を重ねていたのだ。

 

その弊害で、最早シッテムの箱はアダムやリッカ以外に扱える代物ではなくなっている。始まりの人類という、起源にして比類なき頂点の頭脳に相応しい最強最大のオーパーツとなったのだ。

 

だからこそ、アダムの手から離れたアロナにはもう居場所はない。誰にも起動できず、扱えず、人類の手の届かぬ秘宝となるであろう。

 

それは、アロナにとっては死よりも辛いこと。二度と起動されない事ではない。

 

 

『柴関らーめんは最高だ!明日もきっと最高だぞ、アロナ!』

 

 

『アロナ、準備はいいか。予約受付開始の瞬間に購入だ…!』

 

 

『いい紅茶の茶葉は何円するのか…うわっ高っ』

 

『ペロロ様と共に在らんことを…』

 

 

『行くぞアロナ。戦闘嚮導モード、始動!』

 

 

「はなれたく、ないです…」

 

アロナは、涙と嗚咽を堪えながらも気持ちをアダムに伝える。

 

「アロナ……アダム先生と、ずっとずっと、一緒にいたいです…。アダム先生が、先生だからいたいんじゃなくて…アダム先生と、ずっと一緒にいたいから…」

 

「アロナ……」

 

「ダメだって分かっていても、諦めなくちゃいけないんだとしても…でも!もうアダム先生じゃなきゃアロナはダメなんです…!もう、アロナの先生は…」

 

「…………」

 

「アロナの、最高に格好いいヒーローは…もう、アダム先生しかいないから…だから…だから……っ」

 

膝に顔を伏せ、静かに啜り泣くアロナ。

 

「……………私は、なんと愚かな……」

 

アダムは今、自らの浅慮を心より恥じていた。自身の選択を、心より猛省していた。

 

誰かを選ぶと言うことは、誰かを選ばないということ。アロナがどれだけ望んでも、自身はキヴォトスの至宝を自らのために持ち出すなど絶対に選ばない事を自分自身がよく理解している。

 

だが、それではアロナを、シッテムの箱を利用しているに過ぎない。教職の間だけのビジネスパートナー。そんな乾いた、無機質な関係となっていると問われても仕方あるまい。

 

(そんな事、断じてあり得ないというのに)

 

アダムがキヴォトスの…汎人類史において先生を行えているのはアロナのお陰だ。人間の規範、現代の法律や法則、人間の基準。頑健と頑丈なるキヴォトス人すら及びもつかないアダムが人間社会に溶け込む際の全てを、アロナと共に勉強した。

 

他の学校に行けていないのは、仕事を終わらせた自由時間を生徒と、この勉強に費やしているからだ。アロナは公私のパートナーだ。半身と言ってもいい。

 

そんな彼女を、『選ばない』という選択で悲しませた事を…アダムは海よりも深く後悔し反省を行った。

 

(そうだとも。選ぶのならば、一人や二人では意味がない。アロナも必ず連れていき、悲しませてはならない選択肢をしなければならない)

 

誰かを選ぶのでは、選ばれない者が生まれる。

 

誰もを哀しませないのならば、全てを選ばなくてはならない。

 

自分は先生として、その選択肢を知っている。先生として取るべき道を知っているのだ。気休めの慰めではない、大切な選択肢を。

 

「『修学旅行』だ、アロナ」

 

「え…?」

 

「生徒をエデンに連れて行く際は、アダム個人の目的の他に…生徒達との『修学旅行』としての側面も持たせようと思う。私に人生を託してくれる生徒はもちろん、そうでない生徒も。来たいと願った全てを私はエデンへ導こう」

 

アダム先生として、エデンを目的とした修学旅行であれば。生徒達はもっと気楽にエデンへと至ることができる。

 

「そして、修学旅行とは学校行事だ。私には、スケジュール管理と生徒皆を導く為のパートナーが不可欠になるだろう。……後は、解ってくれるな?アロナ」

 

「…!アダム先生…!」

 

「哀しい想いをさせて本当にすまなかった。君と私は一心同体だ。どうか私のエデンに、君も共に来てほしい。そして、全ての学生を対象にした修学旅行を計画するには、君のサポートが不可欠だ」

 

これならば、もう哀しい思いはさせない。アロナと共に、エデンへと至れる。

 

「これからもずっと……私を支えてほしい。アダム先生には、君が不可欠なんだ。どうか、よろしく頼みたい。アロナ」

 

自分にとってアロナは不可欠。その言葉こそ、アロナが願っていた言葉にして現実。

 

「はい!アロナ、どこまでもアダム先生を支えますね!皆で行きましょう!アダム先生のエデン!修学旅行へ───!」

 

伸ばしたアダムの手を、確かに握り返し立ち上がるアロナ。

 

「──ありがとう。アロナ」

 

その愛くるしい、雨上がりの空のような笑顔に…、

 

アダムは心から、安心するのであった。




黒服【という訳で、ビーストΩを討ち果たせばアダム先生のエデンは剪定される世界から、全時空を繋げるワールド・ターミナルに価値を変えることとなる。楽園カルデアの全宇宙制覇の旅の、欠かせない拠点となることでしょう】

アダム「本当か…!」

アロナ「わぁーい!エデンは滅びないんですね!黒服さん!」

【えぇ。比類なき強敵、唾棄すべき所業の贖いとして、ビーストΩは全宇宙のエントロピー熱量を解決する燃料となってもらいます。どうやら、真化人類はそのための装置すら手掛けていた】

アダム「………『全知全能の聖杯』…」

【はい。真化人類の魂を物質化させた『全知』と『全能』それぞれの聖杯には、全宇宙のデータと燃料変換の権能がある。全知は行方不明ですが、全能の聖杯は既にカルデアが保護している。後は全知の聖杯を手に入れ、ビーストΩの魂を全能の聖杯に焚べたその時…】

アダム「宇宙の燃料問題は解決し、全ての並行世界が存続する『完全無欠の因果地平世界』が誕生するのだな」

黒服【流石はアダム先生。エデンにてその結論すら掴んでいましたか】

アダム「仮説だったが、今立証されたのだ。……楽園カルデアの、最大の目標だな」

黒服【キヴォトスにとっても…ね。私達も協力を惜しみません】

アダム「共に、未来を掴もう」

黒服【喜んで。…それでは】

アロナ「アダム先生!やりましょう!皆で修学旅行に行くためにも!」

アダム「あぁ、勿論だ!」

(……ビーストΩ、かつての唯一神を討ち果たしたその時。全宇宙の未来が尊重される。楽園カルデアの手にした答えに相応しい、なんと希望に満ちた結末であることか)

アダムはアロナと、青い水平線を見る。

(私も全身全霊にて戦おう。その未来を形にするために。そして──)

アロナ「これからもよろしくお願いします!ずっとずっと一緒ですよ、アダム先生!」

(かけがえのない、全ての生徒達の為に)

楽園は証明され、更に全宇宙の希望が示された。

アダム・カドモンの放浪の旅は、全ての世界に福音を齎したのだ。

全ての可能性が、赦される未来を。

その実現を…

アダムは強く、強く誓うのであった。



ブルーアーカイブコラボ エデン条約編 

メインストーリー 完
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