人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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?「開けて、ください…」

神殿の門に、縋り付く。

「どうか、話を…私の話を……」



『オレの話を聞いてくれ!』



『君のことを、知りたいんだ!』



『新しい服が欲しいって?』



『わ、解った。じゃあ、午後に一緒に…』



「………士道、さん……」

ロマン「ん?え…あれ!?なんか女の子がいるぞ!?大変だ!?うわああ大変だぁー!?」

少女は、無事カルデアに保護された…


エターナル・ロスト・デート

「改めまして、自己紹介を。私は時崎狂三……故と訳あり、この世界の別より罷り越した『精霊』と呼ばれる者ですわ」

 

吹き荒ぶ雪の嵐より拾い上げた命は、時崎狂三と名乗った。両眼の色が違うオッドアイ、黒髪の麗しい美少女は自らを精霊であると。

 

 

「精霊だって!?極めて強い力を宿したガイア側の存在!神が力と信仰を失った際に落ちる存在ともされる高次の存在が今の君だって言うのかい!?」

 

「リアクションありがとう、ロマニ。…この世界の別ということは、並行世界からの来訪者…と、言う事でいいのね?」

 

狂三は頷く。本来は蠱惑的かつ狂気的な物言いの存在であるのだが、今ここにいる彼女は見る影もない。憔悴…そう言った言葉が相応しい有り様だ。

 

「…私の世界に、突如として【死】が現れましたわ。人の形をした、全てに終わりを齎し破滅させるもの。そう形容するしかない、圧倒的な法則の存在。あらゆる全てを終わらせた者。意志持つ【死】。それにより、世界は滅んでしまいました」

 

「意志持つ【死】……」

 

「突然でしたわ。あまりにも冷徹で、冷厳で…それにより、あらゆる命も、あらゆるものも。全ては滅び、消え去ってしまった。…これが、その映像ですわ」

 

USB媒体を受け取ったロマニらが、慌てて映像を再生する。其処に映っていたのは、あまりにも不可解な光景にして映像。

 

【さー、たー、なー、えー、る】

 

そう、繰り返し繰り返し唱える声。あらゆる全てを巻き込むように、刈り取るように広がり続ける黒き力場。あらゆる全てを呑み込む黒き力場。

 

その中心に至る存在は、少女。それこそが、その世界に降りたかった死であると…狂三は、世界最後の生き残りは口にした。

 

「サタナエル、だって…!?彼女は確かにそう口にしたよね、ゴルドルフ副所長!?」

 

「さ、サタナエル……確か唯一神教の傍流が伝える、サタンの堕天前の天使だったよね確か!?まさかこれは、もしかしなくても…!」

 

「偽神……ビーストΩが関わりある存在案件。…なのでしょうか」

 

ゴルドルフにシオンが推察する中、狂三が残した映像にはそれが映し出される。その死の波濤の中心に歩み寄らんとする、一人の少年。

 

『オレの話を聞いてくれ。オレは君を知りたい。話をしたいんだ』

 

「……彼は『五河士道』。私達の様な精霊と対話し、心を通わせ、キスすることにより世界に仇なす力を封じる権能を持った、あの世界最後の希望でしたの」

 

「色んな女の子とキスしてデレさせる!?」

 

「とんだハーレム野郎じゃねぇか!ファック!!」

 

怨嗟の叫びが職員から怨嗟の声が響くが今は問題ではない。

 

目撃者の狂三が見るその背中、周囲には紫色のドレスを纏った少女、白き獣に乗った幼き少女、双子と思わしき少女、その他にも同じ『精霊』であろう存在が控えていた。

 

決戦だったのだろう。だが───。

 

「…彼は、その存在に接触した瞬間に昏倒、そしてそのまま…永劫目覚めぬ眠りに落ちてしまったのです。そして彼を慕う数多の精霊達も決戦を挑みましたが、結果は……』

 

結末は、まともな勝負にもならず一人、一人と倒れていく。少女が齎す圧倒的な波動と力の奔流に、全てが無意味とばかりに押し潰されていった。

 

「私は……せめて、最後の力を振り絞って、あの世界の完全なる崩壊を食い止められる手段を突き止めねばと、あの死の場から離脱致しました。自らの分身を全て注ぎ込む勢いで生成し、そのまま…」

 

あらゆる抵抗も、あらゆる譲歩も、あらゆる拒絶も無効化する存在。ただただそこにいるだけで、全てに死をもたらす存在。

 

「なんだあれ……あれじゃあまるで……」

 

「女の子の形をした、デッドエンドそのものじゃないか…」

 

会話も、武力も、まるで意味をもたないもの。ただそこに存在する、死を告げる時計の針のような存在。それにカルデア職員達は、戦慄を隠せなかった。

 

いや、命ある限り懐く根源的恐怖は、いくら強くなり力をつけようと逃れられない。それを、映像の中の存在は無慈悲に伝えていたのだ。

 

「あれが『サタナエル』と呼ばれるものなのでしょうか?こちらの世界には確かに、ルシファーやサタンと呼ばれる存在が確認されています。その類似した存在…?或いは、現象…?」

 

「…解りません。何も解りませんでした。サタナエルと口にした単語と、世界のあらゆる全てに死を齎した絶対的な力以外は、何も」

 

【さー、たー、なー、えー、る。さー、たー、なー、えー、る】

 

ただただ不気味に響き渡る、透き通った少女の声。

 

「も、もういい!映像を切りたまえ!恐ろしくて耐えられん!」

 

【さー、たー…】

 

撮影者の狂三が、逃げおおせる瞬間だったのだろう。たまたま、その存在がこちらを見た。

 

目が合ってしまったのだ。

 

「ひ、ひいいっ!?」

 

情けなくも尻もちをつくゴルドルフ。その存在は少女で、無垢であった。ただ…そのあまりにも不気味なる無表情が、じっとこちらを見つめているあまりの恐慌さに、彼は…いや、皆が戦慄を覚えたのだ。

 

「こ、この、このようなものを我々に見せてどうするというのかね!?私達にどうしろと!?こんなもの、何もかもが手遅れではないか!」

 

「いいえ。私は自らの分身を生成できるのですが、全てが死に絶えた後、あの世界は特異点と呼ばれる歴史の泡となりましたわ」

 

「特異点…!つまり、まだ確定していない歴史の泡沫に!?」

 

それならば、解決と是正を行えれば可能性はある。元々あまりにも狂い果てていた外来の存在、世界のほうが耐えきれなかったのであろう。

 

「……カルデアの皆様方。皆様は、特異点解決のプロフェッショナルと伺いました。その上で、どうかお願い致しますわ」 

 

狂三は立ち上がり、頭を下げる。いや、下げなくてはならなかったのだ。最後の希望を繋げるために。

 

「どうか私とともに、あの世界を救ってくださらないでしょうか。私は、この事実を伝えるために…あの存在を対処するために生き恥を晒してここへやってきたのですわ」

 

「「「「…………」」」」

 

一同は沈黙する。それは、あまりにも異質だったからだ。

 

そもそも倒せるのか?対処できる存在か?絶対的で圧倒的な、それこそ神と呼ばれるべきであろう存在なのではないか?

 

あれは───人が触れていい存在なのか?百戦錬磨の楽園カルデアの財宝達すらも、確信が持てる確証が持てない程の。

 

「……申し訳ありませんわ。私達の世界の破滅の運命を、持ち込むような真似をして」

 

狂三はそっと立ち上がり、管制室を後にする。

 

「今すぐ、とは言いません。…哀しいことではありますが、拒否されるのも仕方ありません。どうぞ…熟考くださいまし…」

 

(…そんなの嘘だ。助けてほしいからここに来たんだろうに…)

 

(でもこれは、この存在は…)

 

(安請け合いなんか出来るか!こんな、生きた死の概念みたいなもんに…!)

 

それほどまでに振りまかれた畏怖と恐怖は真実であり、隣人やカルデア全てが喪われてしまう可能性を思えばの沈黙。

 

「…時崎君!」

 

しかし、その背中に声をかけたのはゴルドルフであった。

 

「橙色の髪をした、金色の瞳の少女と話をしてみなさい。本心を話してみたまえ」

 

「!」

 

「…その少女の答えが、我々の総意とする。彼女は、きっと君の希望になってくれる筈だとも」

 

「………………」

 

その答えを、その真意を汲み取れないまま狂三は管制室を出る。

 

 

力無く、楽園カルデアの自販機ルームの椅子に腰掛ける狂三。

 

解っていた。こんなもの、即答する方が愚かだ。

 

あれは死だ。挑むような存在じゃない。

 

来た時点で、世界は滅ぶべき現象だ。大人しく、忙しく、消え去るべきだ。

 

……でも、それでも。

 

無様に生き延びてでも、生き恥を晒してでも。

 

世界が滅びてほしくない理由があった。

 

「────約束、していましたの。士道さんと……」

 

それは、とりとめない約束。

 

少年と、他愛もない買い物をしようという約束。

 

空いた午後にショッピングしようという、誰もがたやすく行う約束。

 

「………っ」

 

叶わなくなってしまった。世界の全てが終わってしまった。

 

夢みた細やかな幸せは、永遠に喪われてしまった。

 

「まだ、私は……諦められませんわ…デートをすると、約束したのに……」

 

ソレは数多の分身の一つ、並行存在の自分が懐いた戯れにすぎない約束だったかもしれない。

 

だがその分身が、あの絶死の幽谷から死物狂いで生き延びる奇跡を繋いだ。

 

今ここにいるのは、あの戯れの約束を交わした時崎狂三。

 

永遠に喪われたデートの残滓をかき集めた精霊。

 

「────あぁ……」

 

諦められないから。どうしても、諦められないから。

 

誰ともなく、彼女は祈り。

 

「助けて……くださいまし…………」

 

顔を覆い、涙を流し、苦悶を溢した。

 

やり場のない想い、もう受け止める者がいない願い。

 

その願いを───。

 

「────うん。勿論」

 

「!!」

 

「困っているんでしょ?だったら私に、私達に任せてよ!」

 

───橙色の髪に、黄金に輝く瞳の少女が受け止めた。

 

「…………あなたは……──」

 

その表情に、その決心に。

 

狂三は……かつて、全ての死に立ち向かった少年の意志と強さを垣間見た。

 

「詳しく話を聞かせて。私が、あなたを助ける為に!」

 

その力強い魂と、想いは。

 

「───はい…!」

 

狂三の胸に灯る希望を託すに、相応しかった。




リッカ「私は彼女を助けることにしました!」

オルガマリー「ふふ、そうでしょうね。当然の選択よ」

ゴルドルフ「う、うむ!君が決めたのなら決めねばなるまい、我々も覚悟をな!」

ロマン「職員一同、異議なしさ!」

狂三「皆様……」

シオン「即決できなかった事はごめんなさい。ですが、我等がエースがそう決めたなら話は別です!」

リッカ「あなたの希望、取り戻しに行こう!」

狂三「ありがとう…本当にありがとうございますわ…!」

……リッカの判断と決断により、カルデアはこの特級特異点の解決に着手。

狂三「あの世界では、私達精霊は士道さんとデートし、心を通わせる事で精霊を従えました。アレは確かに、少女の形をしています。であるならば…」

リッカ「初手の選択をミスらない、カルデア式でデートするって事だね!!」

ロマニ「そうなんだ!?恋愛ゲームを真面目にやる世界線なんだね!?」

狂三「私も全霊でサポートします。どうか皆様、あの存在に過つ事なきデートを…!」

……カルデアは一丸となって、仮称【サタナエル】の攻略方法をかき集めた。



山の翁【話は聞いている。アレは意志持つ死であり、そして死の具現。此度は我が護衛の任を買おう】

リッカ「いいの!?」

山の翁【心せよ。死は識るものではない。死は拒むものではない。死とは───】

リッカ「…………!」



エレシュキガル「今回はもう特例の特例。私も山のおじい様と共に現地に赴きましょう。冥界の女神としてね」

ハデス【同じくハデス、同行しよう。かの場所はまさに冥府の底だ。普通の人間では、全てを運命力を吸いつくされてしまうからね】

リッカ「ありがとう!さいっこうに頼もしいよ!エレちゃん!ハデス!」

エレシュキガル「そうでしょう、そうでしょう!…リッカ。これは冥界の女神としての忠告よ。彼女には、誠実でいてあげて」

リッカ「!」

ハデス【あぁ。彼女は……哀しんでいるんだ】



伊邪那美『あなや、リッカはかの迷い子の下へ向かいたもうや?』

リッカ「!!……はい!」

伊邪那美『伊邪那岐が如き比良坂下りの意志、誠雄々しきこと。妾、有らん限りの加護を授けたもう…』

リッカ「ありがとうございます、伊邪那美おばあちゃん…!」

伊邪那美『リッカや。そなたはもう識っておる。彼女はそなたを助けておる。そなたの一番辛い時に、そなたを助けておる』

リッカ「…!」

伊邪那美『思い返したもう。礼を返じたもう。死はおぞましきに非ず。そなたを支えた友であろう。そなたを支え隣に在ろう──』

リッカ「……ありがとうございます!!」



狂三「皆様には、かつて存在した『フラクシナス』のマニュアルを行ってもらいます。これは、リッカさんをオペレートするに当たり必須ですわ」

カドック「どこからどうみても恋愛ゲームなんだが…」

キリシュタリア「くぅっ!!色んな精霊とデートにキスだなんて!」
ゼウス『私は五河士道だったかもしれない…私は五河士道だった?私は五河士道だ……』

カドック「そんなわけあるか!グランドマスター全員集合だ、リッカを助けるぞ!」

数多の準備、数多の対策を講じ……

狂三「行きますわよ、リッカさん。準備は出来ていて?」

リッカ「いつでも来い!今の私はギャルゲ主人公リッカだ!!」

狂三「ふふ…頼もしいですわ。では…!」

「レイシフト、スタート!」

狂三「ザァアァアァフ!キエェエェエル!!!」

今一度赴く。全ての死の根源へ。



サタナエル【さー、たー、なー、えー、る】

黒き空、血に染まった大地。

リッカ「彼女が……人の形をした、デッドエンド……!」

滅びかけの世界に、リッカが降り立った。
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