人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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狂三「リッカさん…!あぁ、よくぞ成し遂げてくださいましたわ…!」

リッカ「…。この成功は私達だけじゃ掴めなかったよ」

狂三「え…?」

リッカ「五河士道くんが、精霊たちが、彼女を恐れる事無く向き合ったから。そして狂三ちゃんがその希望を私達に伝えてくれたから…こうなれたんだよ」

サタナエル【あーぅー。きゃっきゃっ】
絶死皇凰【─────】

狂三「…えぇ。えぇ、本当に…。」

山の翁【まだ終わってはおらぬ】

リッカ「!」

エレシュキガル「そうなのだわ。その…デート、するんでしょ?この世界では」

ハデス【彼女を想うことはできた。ならば彼女をより深く知らなくてはならないだろう?】

狂三「…はい。その通りですわ。リッカさん、これを」

『メモ』

リッカ「!これ…!」

狂三「私はみなさんと周辺を警戒していますわ。よろしくお願いしますわね…リッカさん」

リッカ「あ…!」

『士道さんとのデートプラン』

「……私の中で、士道くんのベストヒロイン度合いがどんど上がっていくよ、狂三ちゃん…」

サタナエル【〜?】

リッカ「ううん!さぁ、私達のデートを始めよっか!」


尽きない光

「これが…日本の主要都市の姿…?」

 

特異点の、命が失せた世界。無秩序、無慈悲の顕現による世界への告死がひとまず収まったその世界は、人間や命だけが全てなくなったかのような様相の都心をリッカに見せていた。車も、人通りも、何もかもが存在しないその世界を…都心の道路の真ん中を歩く贅沢を堪能するリッカ。

 

『リッカ。カドックだ。さっきは大立ち回りだったな。……いやまぁ、君は大抵千両役者なんだけどな』

 

「ありがとう!どう?サタナエルのデータグラフは読み取れそう?」

 

『それが…無理そうなんだ』

 

「無理そう?」

 

『カルデアで観測している機嫌グラフや、好感度マークがめちゃくちゃなんだよ。恋愛ゲームの体すら成してない。攻略ルートが実装されてないバグキャラなんだ、その子は』

 

「…バグキャラ……」

 

目の前の少女、サタナエルは無邪気にビルを見上げ手を叩いている。どうやら、彼女は精霊と比肩しても尚規格外であるらしい。

 

「…解った。なら現地の私が突撃して、バグをデバッグしていくしかないね!」

 

『手段はある…いや、もう掴んでそうだな、君は』

 

「大丈夫。彼女…知らない間柄じゃないからさ」

 

それを告げ、リッカはサタナエルに歩み寄る。

 

「さぁ──楽しいこと、いっぱいしよう!」

【うぁー!ぁ〜!】

 

楽しげに笑うサタナエル。世界を元に戻す為のデートが、幕を開ける──。

 

 

(うん。こうして触れ合ってみるけど…)

 

リッカは、狂三が用意していた……──本来は五河士道と行くために練り上げていた珠玉のデートプランを──なぞり、様々な場所と時を重ねる。

 

高級レストランや、映画館に動物園。町並みをどこをどう歩けばどんな組織が見えどう楽しめるか。それが完璧に計画された、まさに乙女の意地とも言うべきデートプランだろう。

 

【きゃははは!きゃははははっ!】

 

サタナエルも、楽しげな様子を隠そうともしない。世界を終わらせ、命を刈り取る恐ろしい存在の側面は、まるで跡形もなく消えてしまったかのように。

 

【あははは!うふふっ!】

 

死、そのものであれどその感性は人間とはなんら変わらない感情の発露を示すサタナエルに呼びかけようとして、リッカは思い当たる。

 

「サタナエルって……彼女の名前なのかな?」

 

サタナエル。彼女がひたすらに呟き呼んでいた名前。現段階において、彼女のパーソナリティと言えるワードがそれしかなかった為、便宜上そう呼んでいたが…

 

「なんとなく、彼女には別の名前をあげなくちゃいけない気がするんだよね……」

 

ならば命名しなくてはならない。名前を考えなくてはならない。ただの死の天使ではない、彼女が彼女として受け入れてもらえる様な名前を。

 

「うーん、どんな名前がいいかな……」

 

彼女にまつわる場面や触れ合いはあまりに恐ろしい場面ばかりな故、サタナエル以外の名前の妙案が浮かばず首を捻るリッカ。どうしたものかと悩んでいると…

 

【─────】

 

「うわっ!?」

 

鎧と剣、翼を湛えた美丈夫。白き髪と肌、黒目と赤眼の恐ろしき風貌の存在が唐突にリッカの前へと現れた。

 

「……!」

 

直感で理解する。狂三や精霊を退けた存在は彼だ。指向性の見えない彼女に代わり、死を告げた…或いは死を齎した存在こそが彼なのだ。ハデスに似た美貌、似ても似つかぬ圧倒的重圧を感じる最中に彼が口を開く。

 

【アイン・ソフ・オウル】

 

「!?」

 

【アイン・ソフ・オウル】

 

「…アイン・ソフ・オウル……?」

 

それだけを告げ、黒き翅の宣告者は消え去ってしまった。その言葉を伝えに来た。それだけと言わんばかりに。

 

『アイン・ソフ・オウル……ざっくり言うと無限の光、輝きを意味する言葉だね』

 

『どういう事かしら……死そのものの彼女と無限の光に、なんの関係が…?』

 

ロマニ、オルガマリーが単語の補足と解析に移る中、リッカは全く別の事を考え…また思い至っていた。

 

「零光(れいれい)!」

 

『れいれい…?』

 

「彼女の名前だよ!零三 零光(ぜろみ れいれい)!ディーヴァや大賢者、アロナに調べてもらったら無辺無尽の光って意味らしいから、トリプルゼロとアイン・ソフ・オウルでこの名前!どうかな?」

 

リッカが思いついた名前、リッカが考案した彼女の名前。それは、先の霊装と呼ばれし何者かが残した用語を昇華させたもの。

 

「レイレイ〜!あなたの名前、どう?どうかな?」

 

【レイレイ…?レイレイ!レイレイ!あはは!レイレイ!】

 

呼ばれた彼女は、楽しげに返答を返す。零三零光の名は、彼女の心にいたく高揚をもたらしたようだ。

 

『おや!?真っ黒だったグラフに明るみが!』

『喜んでる、みたいだな…。初めて黒以外の色を見たぞ…』

『というか……好感度パラメーター見なさい!』

『上がり幅が!?カンスト間近にまできたぞ!?』

『どうなってるんだこのポケモンのけつばんやアネデパミみたいなヒロインは…!』

 

【レイレイ〜!きゃはは!あははははは!】

 

心から楽しげに、愉快げに笑う少女、零光。その様子は、世界の全てを滅ぼしかけた存在とは思えないほどに無邪気で、爛漫で。

 

「…案外、名は体を表してるのかも」

 

リッカは微笑む。笑みが溢れるのも無理はない。

 

黒き意匠の出で立ちですら隠せない、笑顔と輝きに満ちていた。

 

 

【あぅ〜〜…………】

 

人が消え去った都心、噴水近くのベンチにて、零光はリッカの膝枕にて眠る。遊び疲れたのだ。

 

「ギル、狂三ちゃん。じぃじ、ハサンの皆に冥界の皆。本当にありがとう…」

 

完全に機能停止していた都市を、ゴージャス自慢の黄金律によりインフラ全てを回復。人員は山の翁の号令によりやってきたハサン達やニトクリスの下僕、ペルセポネーや八百万の神々がカバーすることによりデート可能な状態にしたことにより、完璧なデートが完遂された。

 

「…これで少しは、恩返しができたかな」

 

零光の頭を撫で、普段とは違う慈愛に満ちた顔で寝顔を見つめるリッカ。するとそこに、再び翼が現れる。

 

【─────】

 

絶死皇凰。零光に付き従う…否、寄り添う存在が再びリッカの前に現れる。

 

「私の、彼女に対する感情が不思議?」

 

そう、その存在はそれが不可解だった。リッカは零光を知っている。知りすぎている。その様子の本質を見定めに来たのだろう。

 

「そんなに難しい事じゃないよ。私にとって、彼女は明日への希望だったってだけ」

 

【─────?】

 

「彼女は……私を一番最初に助けてくれたんだ」

 

 

ある日突然、人生は地獄と化した。

 

謂れのない迫害。謂れのない加虐。謂れのない攻撃、謂れのない悪意。謂れのない絶望、謂れのない全て。

 

意味も解らぬまま、何も解らぬまま全ての悪性の坩堝に叩き込まれた。

 

助けを求めた。誰かを頼った。誰かに縋った。

 

それら全ては、当然のように無視されて。

 

当たり前のように蔑まれ、疎まれて。

 

いつからか、何もかもに頼り求めることが無駄だと悟った。

 

この世の全てが私を苛む。この世の全てが私を害する。

 

生きる事そのものが苦痛だった。明日が来ることが絶望だった。

 

だが、死ぬ事は迷惑だからできなかった。

 

でも、死はあの時間違いなく自分の希望だった。

 

あの日々の中で考えていたこと。それは【死】と【死に方】と【死後】だったから。

 

どんな風に死んだら楽だろう。どんな風に死んだら苦しくないだろう。どんな風に死んだら辛いんだろう。色んな本や資料を立ち読みしたりして、毎日毎日死に方に思いを馳せて。

 

死んだら魂はどこに行くんだろう。天国かな?それとも、期待に応えられなかったから地獄かな?きっと地獄だろうな。私はお母さんとお父さんになれなかったんだから。

 

天国に行きたいな。きっとだめだろうな。どこに私の居場所はあるのかな。

 

でも、死ぬ事だけは私を否定しない。

 

死だけは、私に何も求めない。

 

それどころか、いっぱいいっぱい私に色んな事を教えてくれる。

 

炎で焼け死ぬのは苦しいよ。煙で窒息するよ。

 

溺れたら、死体がすごく醜いよ。

 

切腹は、昔は立派な死に方だったんだよ。私もしたら、少しは生まれた意味ができるかな?

 

感電死は、凄く熱いみたいだよ。椅子でするってほんとかな?

 

どんな死に方が楽しいかな。どんな死に方が素敵かな。どんな死に方が私に相応しいかな。

 

早く死にたいな。早く死なないかな。早く、早く。

 

私に生きる楽しみをくれるあなたと、早く一つになりたいな。

 

素敵な死に会いたいから、もう少しだけ生きてみよう。

 

もう少しだけ、もう少しだけ生きてみよう。

 

明日はどんな死に方を見つけられるかな?

 

そうだ、中学校を卒業したら試してみよう。

 

どうせ───誰にとってもいらない命なんだから。

 

 

……リッカの中学校時代に、【(れいれい)】だけが彼女に寄り添った。

 

彼女だけが、リッカの希望だった。

 

明日への希望は、彼女という死だった。

 

グドーシと出会うまでの命を……

 

零光は、繋いでいたのだ。

 

 

「ほんの少しでも…あの日の恩返しが、できたかな」

 

零光の頬を撫で、呟くリッカ。彼女にとって、零光は最初の友達だった。

 

人となった死であるのなら。

 

死とは彼女の友達なのだ。

 

【───────】

 

その天使が如き美丈夫は……

 

リッカの言葉を、神妙に受け止めていた。

 

 




狂三「リッカさん、やりましたわね!好感度レベル既定値突破!彼女はあなたに、デレていますわ!」

リッカ「ホント!?良かったぁ!楽しんでくれてたんだ!」

ロマニ『初見殺しの極みだったね…。でも、こうして解決したなら何よりさ!』

オルガマリー『さぁリッカ。テクスチャを天沼矛で直した後に彼女を保護しましょう』

リッカ「うん!狂三ちゃん、保護はどうやるの?」

狂三「キスですわ。キスにより精霊の力を封印する…待ってくださいまし、これリッカさんにも有功ですの?」

零光【ちゅー?】

リッカ「ど、どうなんだろう?ま、まぁとりあえず世界を元に戻しちゃお!」

リッカは天沼矛を掲げ、力強く突き刺す。

すると──不毛の死地と化していた世界が、見る間に元通りに回帰していく。伊邪那美命の権能は、日本において全知全能すら上回る。

ムニエル『敵を倒す以外なんでもできるな……』

ロマン『リッカ君の武装の中で一番のチートだね!じゃあ、専門家の組織も目を覚ますだろうし身柄の引き渡しを……』

世界の滅亡を退けたカルデアの柔らかいトーク。

絶死皇凰【────!】

それを──

鏖殺公「貴様ぁあぁあぁあぁあぁあッ!!!」

リッカ「─────!?」

狂三「ッ───ザァアァアフ、キェエェエルッ!!!」

零光めがけ、一直線に振り下ろされた大剣。それを受け止めた狂三の銃。

鏖殺公「そこをどけ……!!シドーを殺したそいつを生かしてはおけんのだ…!!」
狂三「丸腰の相手を…なんのつもりですの、夜刀神十香…!!」

零光【あ、あぅ……?】
絶死皇凰【────】

リッカ「まさか──五河士道くんの、精霊…?」

怒りと激情に満ちた表情の、紫のドレスの精霊。

その有り様は──

ただひたすら、敵意に満ちていた。
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