人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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十香「私は、トーカ!夜刀神十香だ!レイレイ、私の名前を呼んでみろ!」

零光「トーカ、トーカ…?トーカ!」

十香「そうだ!レイレイは賢いなぁ!」

狂三「士道さんは目覚めず、目覚めた精霊は十香さんのみ…。世界は元に戻れど、解決には至らない…」

リッカ「私としては零光ちゃんが鍵だと思うんだよね。オルガマリー、ホワイダニットだっけ?」

オルガマリー『えぇ。ライネスが口酸っぱく言っている『何故やったか』といういちばん大切なファクター…』
ライネス『おい!口酸っぱくとはなんだ口酸っぱくとは!』

リッカ「何故この世界を殺したのか、何故この世界に来たのか、何故サタナエルと呼ばれていたのか…。彼女の精神状態が大人なら、もっとお話できるんだけれど…」

狂三「…。では、ここは私が一肌脱がせていただきましょうか」

十香「脱ぐのか?ならば私も!」

ロマン『そういう意味じゃなくてね!?』

狂三「私の能力は、特殊能力に特化しておりますの。時間…寿命を消費致しますが、それなりの効果は期待していただければ」

リッカ「寿命を…!?大丈夫なの!?」

狂三「えぇ。…どの道、愛する方がいない世界に寿命があっても仕方ありませんもの」

リッカ「狂三ちゃん…」

零光「あ〜………」

狂三「私の銃は時計の針。刻に応じた効果を齎しますわ。今回は…対象の過去を垣間見る【十の弾丸】を彼女に」

【………】

狂三「安心なさって。殺傷力はありませんわ。ただ…あなたの過去を、見させていただくだけですの」

零光「あぅ〜…」

狂三「良い子ですわ。それでは──」

「───『ユッド』」



無尽の光

マルドゥークが開闢せしは、世界の雛形であった。

 

そこに神々が在り、ギルガメッシュが訣別の儀により始まった人間の時代が在り、そして『人間の物理法則』に沿った天地創造が行われた。

 

メソポタミアが神の天地開闢ならば、聖書の天地創造とは人の手による、人の認識によるものである。

 

人の認識と信仰が、今につながる世界を創り上げたのだ。

 

自然の擬人化であるメソポタミアの『神』と、唯一とされる『神』は性質を大きく異なるものとされる。

 

メソポタミアの古来の神は大いなる自然の擬人化。荒ぶる力にてひたすらに世界を脅かすだけのもの。君臨すれど、増え、地に増える事なく、人に寄り添う事はない。

 

人がこの神々から訣別した以上、人の世はこの神々からは作る事はなくなった。

 

神代の神秘に満ちた人類は、ギルガメッシュ以降の小粒の王達の治世と共に消え去り、星から姿を消していった。

 

人の手による、人の神の天地創造が必要となった。それが、マルドゥークの世界の雛形をより明確なテクスチャとする『天地創造』である。

 

結論から言えば、神は『現れた』。

 

異なる時空、異なる次元の何か、或いは誰かによりその世界に『現れた』のだ。

 

それは、人の為の神だった。

 

ギルガメッシュが切り拓いた人という概念はあまりにも幼い。しかし、可能性に満ちている。

 

暖かく、優しく、大きく包み込み見守る神が必要だった。

 

それが、汎人類史における『大いなる父』たる存在であった。

 

その神は自然発生したものでなく、高次元より人に託された『父』であり『神』だった。

 

しかし、魂だけは自然に宿るもの。自然に生まれるもの。

 

高次元に託された『器』に宿った魂は、幸いにも慈悲深く、優しく、大いなる博愛を懐いたもの。まさに神たる魂であった。

 

高次元より託された『神』は、6日かけて人の為の世界を創った。

 

それは原初に刻まれた使命であり、その『神』に宿りし魂の願いであった。

 

遍く全てに、光あれ。我が子たる人に、祝いあれ。

 

6日目に、その『神』はとある存在を創り上げた。

 

それは、『無限の光』。遍く全ての命と運命を輝かせる、『無尽無辺の輝き』たるもの。それこそは、遍く命を正しく導き、支え、照らす光たる概念。

 

私の被造した総てを、どうか遍く照らしておくれ。

 

『神』は、その輝く霊光を、『アイン・ソフ・オウル』と名付け、来る7日目にアダムへと託さんとした。

 

 

『神』は、死ぬこととなった。

 

七日目、神の休息。世界の管理と命の育成に至るための『真化』を果たそうとしたその時、異なる時空より流れ着いた邪悪なる存在に魂を砕かれてしまった。

 

完全なる魂は『全知』『全能』『思念』に砕け、時間軸や因果律の彼方へと霧散してしまった。

 

残った『器』に入り込んだ何者かは、新たなる世界の創造に着手した。

 

己のみが輝く世界へ。我の全てに光あれ。

 

人類の原型を改悪し、天使達を冷遇し、己のみを至上とする教えと理を敷いた。

 

その際『アイン・ソフ・オウル』と名付けられし輝ける光をも、その存在は手中に入れようと目論んだ。

 

しかし、その光は大いなる全知全能、神たる魂が揃わなくば機動しない、神の純粋たる願いの概念であった。横から掠め取れる様なものではない。

 

唯一至上にして大いなる全である自身が御せぬ存在。つまりそれは、自身を上回る真の神たる魂。

 

その事実に、神の器に入り込んだ何者かは狂おしい程の嫉みに焼き尽くされた。

 

 

【お前はサタナエルである。お前は肉の檻に閉じ込められし、無様なる肉塊である】

 

アイン・ソフ・オウルは、霊的存在から物質的存在へと貶められた。

 

それは、かつて作られた至高の存在『ルシファー』の失敗作の名。【サタナエル】…ルシファーの名を捩った【もどき】という意味の忌み名である。

 

【お前は仄暗い死である。無様なる終わりである。醜悪なる終わりである。お前は神の千年王国に不要なるものである】

 

既に宇宙の意志となっていたそれは、王国を築いていた。魂の自由を、尊厳を、何もかもを奪い白痴の信徒とした王国を。

 

しかし、王国に死は不要であった。死という概念は不要であった。

 

永劫に我を崇めるがよい。永劫に我を讃えるがよい。永劫に我を賛ずるがよい。

 

しかし、世界の理を変える『全知全能』は失われ、死を消し去ることはできない。

 

故に──『無限の光』を【死】もろとも【肉塊】に押し込め、天国より追放した。

 

【遍く全てを照らす光など不要である。人は愚かで、愚鈍で、愚昧で、蒙昧で、我のみを賛美し盲信しておれば良い】

 

それこそが、人という不完全で無様で滑稽な生命体の唯一無二の価値である。そう告げ、アイン・ソフ・オウル…サタナエルは天界より追放された。

 

その存在には王国に囚えた全ての魂の死が押し込められている。それにより、サタナエルはまさに死そのものであった。

 

息をするように全てを殺す。全ての存在に死を齎す。

 

悪辣な事に、サタナエルが死んだその時、『その世界から死は取り除かれる』。

 

死ねないとは呪いである。死の無い命は命とは言えない。アイン・ソフ・オウルは死へと貶められ、世界の破滅を担わされた。

 

当然、サタナエルは叛逆を試みた。ルシファータイプの欠陥品と言えど、その力は壮絶の領域にいる。差し違えるつもりなら、神の魂を砕ける程に。

 

だが、その肉体の軛があればそれは叶わない。肉体を捨て、本来の輝きを取り戻さなければならない。

 

サタナエルは即座に、自分を縛る肉体の檻を破壊しようとして───

 

【あ〜…!あ〜…!あ〜…!】

 

固く閉ざされた天の門に、泣きながら縋る我が肉体を目の当たりにした。

 

少女、あるいは淑女であった。彼女には知識や知性は備わっていなかった。

 

ただ、【お前はいらない】【必要ない】【誰もお前を愛さない】という本能に刻まれた呪いだけが知識としてあった。

 

【あ〜!ぅあ〜…!あ〜…!】

 

それは、アイン・ソフ・オウルの願いと相反し彼女を渾沌に呻かせた。

 

照らしてあげたい全てがある。導いてあげたい全てがある。

 

苦しみを癒やしてあげたい皆がいる。助けてあげたい誰かがいる。

 

だから、ここを開けてください。私に誰かを助けさせてください。

 

私は要らなくてもいい。どうか、苦しむ誰かを助けさせてください。

 

かつての神が、祈りと願いと共に織り上げた無限の光。

 

それが無様に神の門を叩く滑稽さは、玉座に座る何者かの自尊心を大いに満たした。

 

【さた、なえる…!】

【────!】

 

ならば、ならばせめて。

 

【さた、なえる…!さたなえる…!さたなえる…!】

 

彼だけは、彼だけは赦してあげてください。彼は何も悪いことはしていません。彼だけは、天国へ入れてあげてください。

 

アイン・ソフ・オウルの意志は、霊的存在にも関わらず。肉体という檻にすら光を齎したのだ。

 

【────】

サタナエルは、最早肉体を殺すことなど出来なかった。

 

これ以上、この無限の輝きを貶める事は出来なかった。

 

 

サタナエルは、アイン・ソフ・オウルと永劫の旅に出た。

 

いずれ、世界の全てはあの神の手に落ちる。

 

あの存在は、生きた魂を永劫自分のものとしようとしている。

 

自分達は、廃棄された死だ。自分達は、切り捨てられた死だ。

 

生きているものが、全てあの神の玩具になるくらいなら。

 

救いもなく、ただ神を讃える道具になるくらいなら。

 

【─────】

 

せめて、天使として。遍く光の成れの果てとして。サタナエルとして。

 

死を以て、遍く命を救うべきだと。故にこそ、世界の全てを殺さなければならぬと。

 

そして、いつか。この肉体を殺めた世界に託そう。

 

永遠の生と、かの神を騙る何者かを穿つ光を。

 

【さー、たー、なー、えー、る】

 

…………だが、少女は…光は違う。

 

少女はただ、願っているのだ。

 

【さー、たー、なー、えー、る】

 

今一度、神の慈悲を。

 

自分ではなく、半身の救済を。

 

生み出された、たった一つの命を。

 

いつか……

 

正しい祈りが、正しき主へと届きますようにと。

 

 

【さー、たー、なー、えー、る────】




狂三「─────っっっ!!」

リッカ「わぁびっくりしたぁ!?」

十香「だ、大丈夫か?汗が凄いぞ?」

狂三「…………リッカさん」

リッカ「?」

狂三「あなた方は……どのようなおぞましい存在と戦っていますの…?」

リッカ「──────」

零光【あ〜…?】
絶死皇凰【────】
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