人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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狂三「これが、垣間見させていただいた零光の過去…彼女の成り立ちですわ」

リッカ「……この娘も、私達の方の神様が遺してくれた遺産なんだね…」

零光『あ〜………』

十香「なんという卑劣な輩なのだッ!!」

ロマン『うわあっびっくりしたぁ!?』

十香「お前達の世界に巣食い、あらゆるものを見下し!あまつさえ他人を平気で貶める!このような狼藉によりレイレイは故郷を追われただと!?私は決して容認できん!!」

リッカ「十香ちゃん……」

十香「クルミ、これは我々の世界だけの問題ではない!精霊も、人間も、力を合わせ手を取り合って卑劣なる神を討ち果たさなくてはならないのだ!私はそう判断した!」

狂三「………えぇ。どちらにせよ、私達の未来は彼女と彼に握られていますもの。なんとしても、切り拓かなくてはなりませんわ」

零光『ぁう〜?』

オルガマリー『…好感度はほぼ最高値をマークしているわ。グッドエンドルートは解放できるくらいには、零光は心を開いてくれている筈なんだけれど…』

絶死皇凰【─────】

リッカ「………。ねぇ、皆。零光をお願いしてもいい?」

ハデス【リッカ君?】

エレシュキガル「……もしかして……」

リッカ「うん」

絶死皇凰【─────?】

リッカ「私は…サタナエルとデートする!」

ロマン『な──』


『『『『『『『なんだって─────!?』』』』』』』



死の救済の是非を

「アイン!サタナエルの本当の名前と合わせて、アイン・サタナエル!これからはアインって呼ばせてね!」

 

【──────】

 

まだ人が目覚めぬ無人の日本都市部。零光は似た存在である十香、狂三、そしてサーヴァント達やカルデアに任せ、リッカは1対1のデートを挑み執り行っていた。

 

「さぁ始めようよ!私達のデートを!」

【──────】

 

そう───アイン・ソフ・オウルたる零光と合一した天使サタナエル。ルシファータイプの1体にして、黒き鎧と赤き翅を有する185cmの偉丈夫。黙し、秘した彼とのデートを始めようとしていたのだ。

 

本来ならば、彼が肉体にして半身たる零光と離れるなど有り得ない。そして千年王国より取り除かれた【死】の概念たる彼に近付く事もまた不可能だ。本来ならば。

 

だが、零光の好感度を極限まで引き上げた事、過去を知った事、並びに自身らを手中には収めようとしていない事により…所謂『隠しルート』が解禁されたのである。

 

彼が、零光を護るため…否。全てが偽神に魂を奪われないように正しい死をもたらしていた。真意を悟られないよう、そして万が一にも彼女が懐柔されないよう、絶死の冠を戴きながら。

 

ならば、『デレさせる』べき相手はサタナエル…アインも然り。リッカは、死そのものに挑んだ。

 

否。死そのものとデートを行わんと試みたのだ。

 

 

「身長高くて、スラッとしてるからなんでも似合うよ〜!流石はルシファーの兄弟みたいな存在だね!」

 

カルデアで起動させた都市の全てを使い、復活した市街地にてリッカはサタナエル…アインと全身全霊のデートを繰り広げた。

 

店の服を片端から試着させ、店ごと買い取る。美味しいフレンチやアイスクリームを頬張り、漫画や、アニメや、街の景観に裏道巡り。

 

ただの一つもその世界の命は生きてはいない。だがそれ故に、日本の都会のビル街を独り占めにしている感覚はリッカの心を四割増で昂らせていた。

 

「まさか首都高とか高速道路のど真ん中を歩ける日が来るなんて…!無人都市なんて初めての経験だよ、私!」

【──────】

 

鼻息荒く興奮するリッカに、サタナエルはただ静かに付き添う。表情も、言葉も変わらず凪のようでも。それでもリッカから離れる事はしなかった。

 

「本当はね、車とか人とか、もっともっと賑やかなんだよ。人の街は、人が作ったものと人自身で溢れてる!本当の景色は、こんなものじゃ無いんだから!」

【──────】

 

「せっかくだから首都高ダッシュしようよダッシュ!思いっきり走ると楽しいよ!せー、の!」

 

だが、それでもリッカは心から楽しげであった!まるで家族のように、親友のように。笑みを浮かべていない時間がない程に。

 

こうして、端から見ればひたすらリッカが振り回しているような形のデートは、世界に二人だけの錯覚を起こす程の静けさの中、リッカの朗らかな忙しなさと喧しさにサタナエル…アインを振り回す形で突き進んでいった。

 

…余談だが、リッカ異性間デートという衝撃はカルデアに5波乱程巻き起こしたのだが、リッカとアインは知る由もない。

 

 

「走った〜…!首都高全力ダッシュなんて二度と経験できない感覚だよね…!いい経験したぁ!」

 

文字通りレインボーブリッジや首都高を走り回り、ベンチにて一休みするリッカ。アインは自販機にてコーラを買い、リッカへと渡す程度には打ち解けていた。

 

「ありがと、アイン!」

【───────】

 

「あははっ、シャイだな〜!まだまだ御声は聞かせてくれないかぁ。ルシファータイプの美徳は誇りだもんね!」

 

アインは一言も発することはなかったが、リッカはそれを責めなどしない。愉快げに笑う自身の隣に、そっと彼が侍る意味を理解しているからだ。

 

「うん!初めてのデートにしては私達頑張った方だと思うな!ありがとう、アイン!凄くいい経験させてもらったよ!」

【──────】

 

「…実は、ね。個人的にも、色んな意味でも。あなたと話をしたかったし、お礼も言いたいと思ったんだ。零光と、アイン両方に」

【──────】

 

自身の感情を、まっすぐに直接伝える。リッカが話しているのは、紛れもなく死という概念の権化にほかならなかった。他者に死という絶望を齎す、理解不能にして阻むことの出来ない死であるという認識が最初のすべて。

 

だが、それが違うことは先の狂三の命懸けの行動により判明した。彼が理不尽とも言える苛烈さ、傲慢とも言える領域で他者を拒絶し、死をもたらしてきた理由をリッカは見抜いていたのだ。

 

「一生懸命、零光を護ってくれていたんだね。そして……全てに命が死ぬより酷い目に逢わないように、あなたなりに気遣ってくれていたんだね」

【─────】

 

そう。霊的な最高の無原動力機関が、肉体という低次元に縛り付けられながらも、自身を含めてしがらみに過ぎない自分に慈悲を示した。その恩に報いるために、彼女に近付く全てを。

 

そして、死を取り除かれ、白痴のように賛美を繰り返す千年王国の犠牲になることが無いように、備えられてしまった死を振るい魂を解放する。それが、サタナエルの秘された死の目的。

 

例え死により終わりが齎されるのだとしても。終わりなき塩の牢獄に囚われてしまうよりは救いのある結末であろうと。

 

例え死を齎す恐ろしく悍ましい存在と烙印付けられようと。かの少女が殺され、無限の光が他者の手に落ちるのは防がねばならないと。

 

彼は懸命に、誰かの為に死を振り撒いた。他者を拒絶し理解不能の運命の運び手に終始した。

 

最早永遠に、偽神の復讐叶わずとも。それでも、傍らに貶められた無限の光と幼き少女を護らんとするために。

 

「そして、あなたも零光と同じで死の具現化だって言うなら、あの日の私の救いになってくれたのは、あなただから」

【──────!】

 

そう、それもまたリッカの本心。彼が死だと言うのなら、彼には多大な恩がある。

 

「中学生の、地獄みたいな毎日。いじめられて、どこにも居場所が無くて、生きていく理由なんてどこにも無かった毎日。あなたという死だけが、私の思いの馳せる生きる理由だった」

 

死ぬことが救いだった。いつでも傍にある終わりが救いだった。誰にも必要とされない、誰にとっても都合の良い悪だった、貶めていい名も無い誰かだった自分に、唯一平等かつ誠実に接してくれたのが死という概念そのもの。

 

「あなたがいてくれたから…、私は生きていけたんだ。いつでも傍にいてくれて、あの日の私に寄り添ってくれて…本当にありがとう」

【………………】

 

「そして─────、もう、大丈夫だよ。私や誰かを、救って助けるなんてしなくても、大丈夫なんだよ」

 

リッカは告げる。世界に呼ばれ、招かれ、その世界を死という救済で救う必要はないのだと。 

 

それはサタナエルにとっても永遠に終わることのない救世の旅。招かれた世界、迷い込んだ世界を一つ一つ死で包み、解き放つ。

 

いつまで続く?いつまで命を拒絶し続ければいい?いつになったら全てを救う日がくる?

 

いつか話すことも忘れ、いつか語ることも請う事も忘れ、恐ろしい死を徹底してきた。

 

これ以上無いほど貶められても、肉体に閉じ込められても、ただ我が身の帰天を願う魂を護り続けて来た。

 

この世界の『彼女と友達になってくれそうな生命体達』を無慈悲に殺してでも。

 

いや、【殺さなくてはならない】と断定し殺めたのも、全てはあの千年王国の悍ましい祝福から命を救う為に。

 

皮肉なものだ。死そのものである存在が、何よりもかの光景に恐れ戦いていたのだから。

 

「もう、怖がらなくても大丈夫。ビーストΩは、私達がぶっ倒す」

【!】

 

「私達、命あるもの全ての敵を必ず倒してみせる。この宇宙に生きる全ての敵を私達は討ち果たしてみせる。だからもう、死による救済なんて考えなくてもいい。レイレイと一緒に、楽しい事をたくさんしていいんだよ」

 

もう、死の安らぎを齎さなくてもいいと。彼女はそう告げた。

 

「あなた達は、あなた達の為に生きていいんだよ。生命を謳歌する権利は、誰にも赦されているんだから」

【─────!】

 

リッカの言葉に、サタナエルは目を見開き思案する。

 

もう、無人となった世界を作らずともよい。

 

彼女を、白痴のような今から前に進ませる事ができる。

 

あの神を、傲慢なる神を終わらせる事ができる。

 

───アイン・ソフ・オウルが、再び遍く全てを照らす光に立ち戻る光になれる。

 

信じてもいいのだろうか?

 

信じるべきなのだろうか?

 

この魂がかの悪魔の手に渡れば、何もかもが終わってしまうのではないか?

 

誰も拒まず、誰も傷つけない暖かい世界に、彼女を導けるのか?

 

 

【さー、たー、なー、えー、る】

 

もういいんだよ。

 

 

【さー、たー、なー、えー、る】

 

傷つかなくていいんだよ。

 

【さー、たー、なー、えー、る】

 

怖がらなくていいんだよ。

 

【さー、たー、なー、えー、る】

 

きっと届くから。

 

【さー、たー、なー、えー、る】

 

きっと、救われるから。

 

【さー、たー、なー、えー、る】

 

どうか、光あれ。

 

【さー、たー、なー、えー、る】

 

あなたの全てに───

 

 

───光あれ。

 

 

【………………っ、っ…………】

 

それは、彼女の齎した祈りの意味。

 

リッカの言葉と彼女の祈りは、一つになってアインの恐怖を癒やした。

 

故に────。

 

【───俺は………俺は………】

 

自らの声を発したのは、実に数千年ぶりの事であった。




────その、困惑と迷いは。

『───見つけたぞ。愚かなる堕天者よ。無様なる愚昧よ』


リッカ「───!?」

サタナエル【───!?】

『神に代わり、我が世界もろとも裁きを下す。神にそぐわぬ全てを滅ぼす。我の使命はただ、それであるのみ』

空に浮かび上がった、超弩級の人造巨大兵器。

『我が名はエンシェント・デイ。神にそぐわぬ全てを滅する者也。至高の福音を齎すもの也──』

全長数百から数千に至る、偽神の刺客が姿を現した──。
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