人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
オルガマリー『やはり天の勢力絡みの存在なのね…!』
パパポポ『別世界の歩んだ歴史にてソドムとゴモラを討ち滅ぼす為に投入された神造兵器であり、世界を洗い流す水の裁きを生き延びた人類を一掃する為に投入された事もある曰く付きのものだ。その戦闘力は、決して侮ってはならない…!』
〜一方 世界首脳会議
「……本当なのかね?この存在を消せば、我々は不老不死を手に入れる事が出来ると?」
「日本という国にそのようなオーパーツがあるとは…」
?「むしろ、我々人類という種が死を失うことの出来る千載一遇の機会と言えるでしょう。世界中の人間は未だ目覚めていない。糾弾する者も、責を問う者もいない。世界を牛耳る貴方がたを除いてね」
「……………」
?「如何なる富も、名声も、栄誉も。命が消えればそれまでのもの。せっかく世界の覇者まで登り詰めた貴方がたが、ここで終わることは人類の損失です」
「むぅ………」
「我々は選ばれた。一人の犠牲にて人類に永遠の命を齎せるのなら、我々は勇気ある決断をするべきだ」
「「「……………」」」」
「………解った。我々が、人類の永遠なる未来を導こう」
「えぇ。是非とも──人に、光あれ」
「君にしては随分積極的だな。……アイザック」
アイザック「私もまた、人を愛していますのでね」
(……量は物足りないが、質はいい。さあ、見せてくれ。私の目的に足る力を…)
「何あれ…!?凄く大きいっていうかでか過ぎない…!?」
突如上空に現れた、荘厳にして神々しき巨大モニュメント。天使の羽が収められた球体に、ラッパを加えた二人の男性に小さな二人の天使をかたどった姿の大理石が如き触感を有する巨大な存在。それにリッカらカルデアは警戒を顕とする。
【エンシェント・デイ…。神にそぐわぬものを掃討する唯一神の補助器具のような存在だ】
「アイン!やっぱり知ってるんだ…!」
【ヤツが投入されるのは最後の審判を逸脱した者を始末するため。この世界に何故やってきたのだ…!?】
空中に浮かぶエンシェント・デイは、サタナエルも知るところだ。未だ尚、神を騙る獣が蠢いているのだとしたら。未だ尚、天国を広げているのだとしたら。
『サタナエル。アイン・ソフ・オウル。人類は愚かにも、お前達という神の所有物に手を伸ばそうとしている』
【何……?】
『お前達は、神の創り出した永劫の光。喪う事でその光は解き放たれ、永劫の光は永劫の生命を齎す。この世界の人類は、その事実に至った。その愚考を、我は浄化する』
「何の話!?今生きているのは狂三と十香だけの筈!」
『ビーストα。神が討ち果たすべき始まりの獣。見るがいい。これがこの世界における人の答えだ』
エンシェント・デイは空に映像を投射する。そこには、海を越え日本に猛烈な速度で飛来する物体。
「───弾道ミサイル!?」
『こちらでも確認した!どうなってるんだ!?世界中から日本に向けてミサイルが放たれたぞ!?』
ロマニの言葉の通り、海を飛ぶそれは日本に向けて各国が放ったミサイルであり、無数に放たれたそれは各軍事国家勢力のもの。それが日本に今、撃ち放たれたのだ。
『アイン・ソフ・オウルを手にした者は、永劫の命を手に入れる。無限の光、無限の生命。それは知恵の実と生命の実を育てる無尽の光。人は愚かにも、それを欲した』
【何をする気だ…!】
『裁きを下す。神の意に背き、不相応なる神威を手にせんとした愚か者に裁きを』
エンシェント・デイは浮かび上がり、光り輝き始める。その光から天の輪が生まれ、輝きを放ち、そして空を満たす。
『間もなく着弾する!今レイシフトアウトを──!』
『己が報いを、自らの下へ』
一際強くエンシェント・デイが輝き、辺りを光で満たす。すると空を切り裂き日本に着弾する筈だったミサイルが、消え去り忽然と失せていた。
『見るがいい。これが人類の業である』
続けて映る映像は、各国の首都が炎に包まれ炎上している様であった。ミサイルが跳ね返され、送り返され、都市を焼き尽くしている地獄絵図。
『これこそが、愚かなる人類に向けられる裁きである。アイン・ソフ・オウルを手にしようとした人類への裁きである』
「なんてことを…!」
『人に進化は不要なり。人に真化は無用なり。肉の体に閉じ込められし、低俗なるままに地を這い神を望むがよい。それがお前達の役割である』
傲岸不遜極まる物言いにて、エンシェント・デイは燦然と輝く。
『……恐らく、各国の首脳が先んじて目を覚ましたのでしょう。そして、アイン・ソフ・オウルを宿す彼女、零光やアインの事を吹き込んだ何者かが排除を諭した』
「首脳より偉い…黒幕的な誰かって事!?」
『えぇ。先の十香は、夢で何者かに零光を殺めるよう諭した。それと同じ様に、世界を牛耳る誰かにアイン・ソフ・オウルの事を諭したのよ。それを手にすれば、永遠の生命を手に入れることが出来る…と』
十香はまず士道を殺した者への怒りに突き動かされた為、その天啓の意味を深く理解せず突撃を敢行した。それ故に帰還と生還の目処があるため落ち着いたが、世界の権力を牛耳るトップ層に、それを諭したならば。
『人類を死から戒法した偉大なる救世主たち』という不動の名声に目が眩んだ俗物達にそれを諭したならば。人は日本と零光を切り捨てでも人類を不老不死にする道を選んだのだ。
つまりこの世界は──、自らの手で、零光とアイン、日本に生きる生命を切り捨てる道を選んだのだ。
『人類の愚行、愚かなる罪は自らのものとしなければならない。今こそ、その報いを齎す時なり』
エンシェント・デイが浮き上がり、更に輝きを増していく。
『神と一つになるが良い。その罪の魂を、我が天へと導かん』
そしてその光が──全世界を満たした。
〜
一方、各国首脳地下シェルター内部は絶望と混乱の最中にあった。自国が放ったミサイルが跳ね返され、自国の首都を焼き尽くしたのだから。
「な、なんという事だ!私の国が!我々の国家が!」
「何故!?どうしてこのような事になったの!?」
狼狽を極める各国首脳陣。当然であろう。人類を不老不死に導く英傑になるはずが、世界と国を焼いたA級戦犯となってしまったのだから。
「あ、アイザック!これは君の責任だぞ!」
「……私の?」
「君が言ったのだろう!日本の犠牲で我々は不老不死に至ると、確かにその栄光は我々にあると!」
「あぁ──確かに言いましたね。ですが問題はありません。あなた達は救われるでしょう」
「何を────、う、ううっ!?」
瞬間、俗物たちが苦しみ始める。胸を抑え、のたうち回り、白目を剥きながら悶えている。
「ぐぉおぉおぉお!……な、なんだ、何が、何が…!!」
「肉体、精神、魂。そのうちの魂が、アナタ方から無理やり引き剥がされているのです。肉離れや脱臼を自らの存在基盤で行われる。地獄よりもおぞましい苦しみでしょう」
その者、アイザックと名乗る白髪の男性は事もなげに告げてみせる。彼には、そのような事は起きていないとばかりに。
「精霊に強く守られているあの男、並びにビーストαの耐粛清即死概念により、日本は無事ですが…あなた達の魂は永遠に神の供物として利用されることになるでしょう」
抜き出された魂は絶叫を上げながら加工され、エンシェント・デイに吸収されていく。それは肉から皮を剥ぐような、爪を一つ一つ剥がすような地獄の苦しみを伴わせて。
「おめでとう。この世界の人間は、自ら自滅を選んだのです」
「あ、アイザック────!!」
「さようなら。人殺し」
最後に残った強国の首脳の、絶望に満ちたまま加工され吸収されていく魂の有り様を見届けた後、抜け殻となった肉体が転がる中でアイザックは天井を見上げる。
「甘言に惑わされ、自ら世界崩壊の引き金を引き、希望がまやかしと知り、全てに絶望し消えていく……」
アイザックと名乗る人間は、同じく啓示を受けていた。アイン・ソフ・オウルがどのようなもので、サタナエルがどのようなものであるかを。
その上で、彼はそれら全てのより良い活用法を見出した。零光を殺し、不老不死を手にした人間が至る不死の絶望もはじめは良いものと考えたが…
それはやはり長すぎる。元々この場は特異点。カルデアが介入した以上いずれ是正されるものならば、ジャンクフードやスナック菓子のような即物的なものがいい。
即ち、人類文明社会の戦犯たる者達の絶望。正しい歴史に戻るまでの暇潰しには最適なものだ。事実全くその通りであった。
「悪くない見世物だった。その礼に、カルデアの邪魔はしないでおいてやろう」
量は物足りないが、質はかなり良いものが見れた。やはり、貶めるのは俗物に限る。
「精霊達は大半が眠りにつき、あの男も目覚めさせるのは最後の手段だろう。さて…カルデアはどう出る?」
滅亡が目前に迫る特異点において…
このアイザック・ウェストコットという人物は、絶望を愛していた。
エンシェント・デイ『聞こえるか、アイン・ソフ・オウル』
零光『ぁ………』
『人類はお前を見捨てた。お前という光を手にするため、お前を殺めんとした』
零光『うぅ………』
『人類は、お前を礎に発展を成そうとしたのだ』
『ぅう〜…………』
『神はお前に赦しを与えんとしている』
零光『!』
『今一度、神の赦しを得よ。おぞましき死の半身を捨て、神の身許に至るのだ』
零光『………』
『神は今一度、お前を愛すであろう』
零光『…………───』