人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
リッカ「アルバイト」
十香「うむ!聞くところによれば、かのケダモノΩと戦っているのがお前たちカルデアの本当なのだな?ならばそれを助け、私も力を貸すべきだと確信したからだ!」
ゴッフ「う、うむ。私としてはまた敵対されるよりは絶対に味方でいてほしいが……」
狂三「私も、カルデアとは協力関係を継続していたいと思っています。…零光とも、色々とやれることはありそうですもの」
ロマン「精霊達が力を貸してくれるのは嬉しいぞ!いやっほう!ですよね、マリー!」
オルガマリー「………」
ロマン「あれ?オルガマリー?」
オルガマリー「ごめんなさい、少し席を外すわ。副所長、引き継ぎは任せます」
ゴルドルフ「お、オルガマリー所長!?」
〜
?「やはり来てくれましたか。カルデアの所長はやはり素晴らしい方のようだ」
オルガマリー「…その人当たりの良さは信用ならないわね」
『五河士道と残りの精霊はこちらが保護している。どうなるかはあなた次第だ』
「アイザック・ウェストコット」
アイザック「ふむ…。少なくとも敵ではないことは告げておくよ」
オルガマリー「えぇ、そうね」
「「────今は」」
「まずは礼を言わせてもらおう。よくぞこちらの世界、その滅亡の危機を救ってくれた。カルデアの介入無くしては、我等は死に包まれそのまま終わりを迎えていただろう」
DEM社…デウス・エクス・マキナ・インダストリー社の最重要ゲスト歓待ROOMに招かれたオルガマリーを待っていた、30代に見える白髪の男、アイザック・ウェストコットは称賛をオルガマリーに寄越してみせる。それは、単なる賛辞以上の意味はない。
「……………」
だが、オルガマリーは感じていた。その男が持つ異物感、プレッシャーと呼ぶべきものがあまりに異質であることを。時計塔のロードクラスが持つような、圧倒的な存在感。それを若輩に見える彼が醸し出すことに、ただ驚愕を感じていた。
「こちらの人類は見ての通り、不老不死のおぞましさを理解できないレベルの低俗さに属している。貴方方のような、この世界の全ての命運を懸けて戦えるような人間力は有していない。嘆かわしい事だ」
オルガマリーの警戒意識を知ってか知らずか、アイザックは淡々と告げる。この世界は、低俗であると。
「そう世界を卑下するものではないわ。死を受け入れるということは、そう簡単な事ではないもの」
「ふむ。その通りだ。藤丸龍華の領域に行くには、人類は粗製乱造を繰り返しすぎてしまった」
「…何故、リッカの事を……」
「受けたのだよ。あなた達が『偽神』『ビーストΩ』と呼ぶ存在の意志を、その啓示を齎されたのだ、私は」
「!」
オルガマリーからしてもそれは衝撃的な言葉だった。それはつまり、彼は偽神に選ばれ、接触し、そして対話をしたのだということ。
「!……では、先のメッセージ…!『五河士道、並びにその精霊の保護』というのは…!」
「そう。偽神は五河士道を狙い、自らの依代とすることを目的としていた。アイン・ソフ・オウル、並びに精霊を束ねる肉体と魂…。確保するべき要素が、大いにあったということ」
「………隠したのね」
「死んでもらう必要はあったがね。だが、死んだほうがマシと言われる目に遭うよりはと判断したまでだ」
サタナエルの防衛を認可させ、狂三の起死回生を誘発し、精霊達と五河士道を死なせ、それらを回収したのは自身と彼は告げる。それこそが、神の啓示を受けてから成した事だと。
「どういう事かしら。体を確保して、何故即座に渡さなかったの?それどころか、隠し立てるのは明確な同盟者への利敵行為ではないかしら」
そう、確保していながら捧げる訳でなく、それでいて見捨てるわけでもない。アイザックがやっていることは支離滅裂だ。オルガマリーの言葉に、ふむと頷く。
「その議論は御尤も。だがこれは、君達カルデアの見極めるためのものだった」
「見極める…?」
「今や宇宙と一つとなり、世界の全てを手に入れんとする生命の敵、ビーストΩ。それを、果たして討ち果たすに足る存在であるのかどうか。世界の存亡は、それを見極める為の出来事に過ぎなかった」
「お眼鏡には適ったかしら。私達のカルデアは」
「期待以上だったよ。偽神が『真化』に至るために集めていた魂の保管所、並びに捕らえていた魂の保管庫たる天国が消し飛んだ事を確認した。宇宙のあらゆる文明、銀河星雲がなすすべなく消されている中、あれほど明確に痛打を与えたのは君達が初と言えるだろう」
拍手を送るアイザック。その顔は静かに告げる。
「故に、私の提案を是非とも聞いていただきたい」
「…聞かせてもらおうかしら」
「私と手を組まないか?五河士道、精霊達は勿論、我が社の力も全てカルデアに提供することをお約束しよう」
なんとそれは、同盟の提案であった。カルデアと共に、ビーストΩと戦うという申し出。世界を牛耳る企業の提供。
「夜刀神十香、時崎狂三、鳶一折紙、五河琴里、氷芽川四糸乃…そして五河士道。まずはこれらをカルデアに提供する事で手付材料とするのはどうだ?」
精霊という規格外の存在。夜刀神十香と時崎狂三、零三零光が示したそれを、更に大量にこちらに回すと彼は言ってのけた。
「……………」
交渉。彼はこれをそう言った。だが、それは全く交渉ではない。
単純な話、精霊と五河士道を隠したのは彼だ。つまり、彼らを生かすも殺すもアイザックの判断次第。断れば、彼らが無事に目覚められる保証すらない。
これは実質的な脅迫であり、神と、カルデアを手玉に取った悪魔のような交渉であった。神を欺き、カルデアの善性を信じ手を結ばせる。
アイザック・ウェストコット。今のオルガマリーの魂が贅肉まみれのデブである事を完璧に見抜いた上での握手の差し出しだ。左手が潰れた相手に、左手の握手を差し出すように。
「いいわ。手を結びましょう。神を欺くその手練手管、味方になるというなら歓迎よ」
だが、オルガマリーもまたギルガメッシュの名代。そんな程度の出し抜きには最早眉一つ動かさず彼を受け入れる。
敵は宇宙に生きとし生ける全ての敵だ。多少の毒など、皿ごと飲まねば立ちいかない。それに、悪辣さで言うならばカルデアに敗北はあり得ないという確信がある。
「懸命な判断だ。では、正式にラタトスクのメンバーをカルデアに……」
「その前に、聞きたい事があるわ」
「?」
オルガマリーにとって、それは明瞭化しておくべきものだ。
「何故あなたは、神を裏切り抗う道を選んだの?」
そう、それだけは聞いておくべき事。これほどの得体のしれない相手ならば、せめて行動理念は聞いておかなくては。対立の際に、対策を打つためにも。
「……。君達カルデアと組み、神を討ち果たす。それをすることにより、私は見れると思った。確信したと言ってもいい」
「見れる?…………何を?」
なんてことのないように、アイザックは答えた。
「神の絶望」
「………!」
「己が至上無二と、唯一絶対と信じて疑わぬ輩が、見下し果てていた人間に打倒され、天の玉座から引きずり降ろされる。その瞬間、神はどんな絶望を懐きどのように果てるのか……。きっと、君達カルデアならそれを私に見せてくれると確信したのだよ」
ギルガメッシュは言った。神に挑むは人の究極。その観点に言えば、ティアマト神に挑み討ち果たしたカルデアの人間達は人の究極にいると言える。
彼もまた、人の身で神に挑まんとするものだ。その挫折、その苦悶、その絶望を見てみたいという理由で、カルデアと神に挑まんとしている。
「私は決して善き人々などでは無い。だがだからこそ、【私は私の信念を決して裏切りはしない】」
「…………」
「どうかな?オルガマリー・アニムスフィア。宇宙を牛耳る神を討ち果たそうというのだ。私程度の破綻者如き乗りこなせなくては立ち居かぬのではないかね?」
アイザックは変わらず手を差し出している。彼はカルデアと共に戦うだろう。
正確には、カルデアの成し遂げる成果を間近で見るためのチケットを欲しているのだ。神を討てば、必ずやそこには至上の目的が待つ。
「君達を支援する観測者に言われてね。【絶望を愛でるなら、神の絶望を誘致しろ】……。こんな千載一遇の機会は棒に振れんよ」
「…………よく解ったわ。どうあれあなたは人間力と才能、破綻していながらも信念を有する者であると」
「では?」
「受けるわ、その同盟。私達は必ずやビーストΩを討ち果たす。その為の支援をあなたは行う。それでいいわね?」
「勿論だ。君達があの偽りの神に挑む限り、私は君達を心から応援させてもらうよ」
二人は固く握手を行う。アイザック並びにその会社は彼の世界を牛耳る最高クラスの後ろ盾だ。
彼はカルデアを支援するだろう。宇宙と同一化した神を討ち果たす瞬間を心待ちにしながら。
たとえその後に、何が待っていても…
その瞬間までは、味方で在り続けるだろう。
アイザック「では、我等はこれより同志だ。故に、偽神が残した事実を告げよう」
オルガマリー「…?」
アイザック「ビーストΩがどうやって魂を集めるかだ」
アイザックはモニターに映像を映した。そこには、十ほどの銀河系。
オルガマリー「これは───」
アイザック「これが偽神の『祝福』だ」
瞬間───それらの銀河が光に満ち、一瞬で消滅した。
「………!!」
アイザック「偽神の力は決して嘘や虚威ではない。自らが治め、玉座にせんと企む君達の世界以外など、銀河ごと容易く消滅させられるということだ」
そう──カルデアが戦う領域にいられることが奇跡。
本来ならば気付く暇すらなく、認識すらできず、こんなにもあっさりと銀河から消える。
「私が観測した時点で、もう既に数千万単位の銀河が消し去られている。それら全てが、偽神の目指す真化の為の生贄にされてな」
オルガマリー「…………!」
「忘れない事だ。君達カルデアは、正真正銘『宇宙全ての命運』を懸けているのだと」
部屋中に映される、消え去っていく銀河たち。そこにある全ての魂達。
その消された世界にあった魂達の事を想い……
アイザックは、静かに笑っていた。