人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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モア『おじさま、おじさま』

ニャル『ん?』

モア『どうしておじさまは、エキドナお母様とお子様を作らないのですか?』

ニャル『あ。うーん、そうか、気になる?』

モア『はい。エキドナお母様が悩んでいました!』

ニャル『そうか……。エキドナ、すまない。……それはな』

モア『それは?』

ニャル『怖いから、なんだよ』

モア『怖い…?』

ニャル『あぁ。私は……怖いんだ。私が』

『私という…邪神そのものが』


涙のルーズ

「その姿は……どういう事だ、エボルト…!」

 

【んー?】

 

「その姿は、どういう事だと聞いている!その姿の面影は間違いなく私の、私の……!」

 

動揺を理性で封じ込めながら、ニャルは新たなる姿へ変化したエボルトを問い詰める。最悪な判断や、最悪の事態は容易に想像できてしまう。それは一種の逃避行動であるのかもしれない。

 

【あぁ、ナイアって呼び名か?こいつはとある世界で名乗ってた奴の名前を拝借したんだが…】

 

「………!!」

 

【似てるってことは…まぁつまり、そういう事だろ?相棒】

 

『コブラ!ライダーシステム!!オーバー・ザ・レボリューション!!』

 

そこから先、言葉での問答は無用かつ不要であった。

 

【貴様アァァァァァァッ!!】

【ブラックホール!ブラックホール!レボリューション!!フフハハハハハ……!!】

 

激昂を顕に、ニャルはエボルブラックホールへと変身。猛然と新たなる未知の姿になったエボルトへと突撃していく。

 

万が一の可能性でしかない。ただ、その万が一ですら許せないほどに、ニャルにとって彼女とはかけがえのない存在だったのだ。

 

【フフハハハハハハハハハ!いいねぇ相棒!その怒り、その気迫!ようやくお前さんも一皮剥けてきたようだ!】

 

ワープ、回避、そして再構成を繰り返しながら、エボルトとニャルはぶつかり合う。形振りも体面も構わぬニャルの激昂ぶりを、エボルトは高く評価していた。

 

【お前さんの家族愛は本物だ。だが、それ以外の感情には常にブレーキや乗り切れなさを感じていたんだ】

【なんだと…!?】

 

【償いの意思や決意までが嘘だとは言わない。だがお前は結局のところ【罪悪感】ってやつを忘れられてないんだ。まともに生きようとしても、誰かを護ろうとしても気後れしている】

【………!】

 

【私にそんな資格がない、なんていうのも。結局はそういう事だろうッ!!】

 

瞬間、高速移動かつ熾烈な打撃の乱打が飛ぶ。何故かニャルはその攻撃を回避するコトすら出来なかった。

 

【ぐあああああっ………!!!】

 

膝をつくニャル。エボルトは更に彼を問い詰める。

 

【口には出さなくとも、態度には出さなくとも。お前さんは全てに罪悪感を抱き、気後れしてしまっている。人間が抱く当たり前の感情に支配されているんだ】

 

【……!!】

 

【今のお前の本物の感情は家族愛と、敵を滅ぼす悪意だけだ。それ以外の感情や行動全てに、自分の罪に巻き込ませないという遠慮がある。違うか?】

 

エボルトの言葉に……ニャルは言葉を返すことが出来なかった。

 

【お前自身が伴侶を求めなかったのも、血の繋がった相手を持とうとしなかったのもそうなんだろう?罪人の子は罪人じゃない。口ではそう言っておきながら、お前は何より自分の罪を、血を、何より自分自身の悪辣極まる邪神の業が世界に現れるのを恐れている】

 

【貴様……!】

 

【見ちゃいられないんだよ。かつての相棒として、そんなお前のあまりに無様な姿はな】

 

「おじさま……!」

 

膝をつきながら、それでもモアを庇うニャル。立ち上がりながらも、彼は落ち着いてきた過去そのものたるエボルトを睨む。

 

(そうだとも……私は本能的な部分で何より自分を忌避している。邪神の力は捨てたが、ニャルラトホテプの中核の悪辣極まる気質は完全に引き継いでいる)

 

それを後悔したことはない。相手をひと目見ただけでどこを抑えれば立てなくなるか、何を一番されたら嫌が一瞥すれば全て丸わかりの性質は、カルデアを何度も助けることができた。

 

(だが、それを次代に引き継がせることを私は何より忌避している。そして、血の繋がりをどう愛し、どう扱うか、それによる関係の変化も私は恐れている…)

 

新たなる子を作り、授かったとして。それが世界の敵でない保証はいったいどこにあるのか?

 

それに、今まで散々血の繋がりを与えたいと願い、与えられないからこそ自身より愛してきた子供たちへの愛が、実子を作ることにより全く別のものに代わってしまうのではないか?

 

自分が今まで愛してきた家族を、娘達を。実子を作った瞬間【代替品】などと考えてしまうのが邪神ニャルラトホテプではないのか?

 

(あぁ、そうだ。私は…邪神の全てを引き継いだ私自身が何よりも恐ろしい……!)

 

だからこそ、エキドナを嫁としていながらテュフォンの義理を理由に手を出さず、娘達の懸念や願いを受けながら実子を作りはしなかった。

 

それをエボルトは気後れ、遠慮と断定したのだ。故にこそ、彼の全てには一歩引いたものがある。故にお前は何も成し遂げる事ができないのだと。過去と共に告げに来たのだ。

 

「おじさま!!」

 

【!】

 

そんな中、ニャルにモアが声を掛ける。護られながらも、ニャルに声援を送る。

 

「エキドナお母様も、モアも!皆、おじさまに助けてもらいました!毎日毎日、とっても愛してもらっています!」

 

【モア……】

 

「だからどうか、自分に優しくしてあげてください!おじさまはもう、邪悪で恐ろしい存在なんかじゃないです!モアは、信じています!」

 

モアの言葉に、ニャルはすぐさま立ち上がる。

 

そうだとも。自分を信じられなくとも…

 

【──ありがとう。私の大切なものたち】

 

「はい!」

 

この大切なものは、信じることが出来るのだから。

 

【泣かせるねぇ。お前もいよいよ、声援を受けて立ち上がる側になれたってわけだ】

 

エボルトの言葉に耳を貸さず、ニャルはレバーを回す。

 

【お前にかかずらっている暇はない】

【へぇ……】

 

【私は……家族と仲間を支えなければならぬのだ!】

『レディー、ゴー!!ブラックホールフィニッシュ!!』

 

ニャルが飛び上がり、エボルトに渾身の必殺技を叩き込む。

 

【消え去れ!かつての私の相棒よ──!!】

 

それは怒りによりハザードレベルが上昇した渾身の一撃。当たればエボルトすら粉微塵に砕け散るだろう。

 

【残念だが──お前はオレには敵わんよ】

 

だが、それでもエボルトは。

 

【それに──お前に娘は倒せんさ】

 

ニャルの相棒として、その矛盾を突き詰めた。

 

【!!!】

 

エボルトはニャルのキックに手をかざす。するとそこに、光り輝く壁が現れたのだ。

 

【これは───!!】

 

そう、知らぬはずがない。これはまさしくニャルが愛娘に託したもの。愛娘に、祝福として贈った輝き。

 

【シャイニング・トラペゾヘドロン……。お前が有する最高の秘宝にして、お前が娘に託した至上無二の贈り物だ】

【─────!!】

 

【だから言ったろ?お前に娘は………】

 

やがてキックが弾かれ───

 

【倒せないってなァ────!!!】

 

渾身のカウンターパンチが、ニャルへと叩き込まれてしまった。

 

 

「あ───」

 

その光景を、モアは目の当たりにしたことがある。

 

大切な全てが、終わってしまう光景。

 

あの日アンゴル星に現れた遊星により、全てが失われてしまった日。

 

『娘よ、我が最後の願いを託す』

 

あの日の父に、託された願い。

 

『どうか生きてくれ。何を為せずとも良い。何を示せずとも構わぬ』

 

もう手遅れなまでに侵食された父に脱出ポッドに押し込まれ、最期の別れとなった父の願い。

 

『生きてくれ───。幸せになっておくれ。我が愛しき娘よ──』

 

遠ざかっていく故郷。全てが収穫されていく光景。

 

奇しくもそれが──

 

目の前でまた、起きてしまった。

 

 

【絆や愛で、闇を乗り越えただなんてのは錯覚だ】

 

倒れ伏す、変身解除したニャル。

 

【それは、闇との戦いに終わりは無いという事実から目を逸らしたに過ぎない】

 

悠然と、ニャルへと歩み寄るエボルト。

 

【お前の口癖だったじゃないか。それも忘れちまったのか?】

 

その光景を───。

 

「お────おじさまーーーーーっ!!!」

 

引き裂くような、悲痛極まる彼女の絶叫が響き渡った。




エボルト【さぁて、締めに入るか……むうっ!?】

モア「!!??」

エボルト【まさか、この反応は……!!】

瞬間、パンドラボックスの空間がひび割れていく。

その、時空すら叩き壊し乗り越える超パワー。

それは──

リッカ『うおぉぉぉぉぉぉあああああっ!!!』

七色の嵐を纏い、フィリアガペーとカレイジャスハートを二刀流に装備したエクスドライブ・ストライカー。

ディーヴァ『モア!大丈夫!?』
モア「あぁ!うたうちゃんさん、ディーヴァさん…!」

そして、仮面ライダーディーヴァ。素早くモアのフォローに回る。

エボルト【………マジかよ………】

リッカ『よっ!!』

かつての自分がやった、嘲笑の挨拶

それを返したのは、エボルトの想定を完全に越えた、彼が嘲笑った人間如きたる頂点に位置する存在であった。
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