人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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クトゥグア【人間の娘如きに害されし屈辱……!永劫に封じられし憎しみ…!そして奪われし復讐の機会!今こそ果たすぞ、ニャルラトホテプ!!】

【この星もろとも!!貴様の娘を奪い去ることで──!!!】



アトラック・ナチャ【!】

ニャルラトホテプ【腐っても私の宿敵…神格を捨てても尚、星を焼いて余りある力を有するか】

戦兎「あまり悠長にも構えていられないみたいだな。だが、こっちはなんとかタッチで間に合ったぜ」

『ケイオスドライバー』

ニャルラトホテプ【綴りが変わったな】

戦兎「あんたの元ネタ的に、こっちの方があってるだろ?……俺達は別の邪神を食い止める。後はそのトリガーだが…」

ニャルラトホテプ【あぁ。この最後の一押しは戦いの中でなんとかする。…君達も、気をつけてくれ】

万丈「あったりめえだぜ!」

一海「娘さん助けるまで死ぬんじゃねぇぞ」

幻徳『グッドラックTシャツ』

ニャル【あぁ。また、必ず会おう!】

アトラ【あたし達は、エボルトのいる道を開いておくよ】
ツァトゥグア【クトゥグアによろしくね〜】

ニャル【よろしく…か。あぁ。今生の別れを告げて来よう】


消火せし腐れ縁

【相変わらずに暑苦しい輩だな、クトゥグア。まさか人になってもそんな風に燃えられるとは、一周回って感動するぞ】

 

星を飲み込まんとする程に燃え盛るクトゥグアの前に、変身したニャルラトホテプが立つ。それは、かつての因縁の続きが如く不倶戴天の光景。

 

【来たか、永遠の宿敵にして因縁。ニャルラトホテプ!貴様を焼き尽くすために、我は神の座を降りこの仮面を纏った!】

 

【私への復讐か?それは生憎だったな。離別の呪いで地球に踏み入れなかったようだが】

 

【小賢しい隠匿をと思うたが、だがそれも今日までだ。あの宇宙人、アトラック・ナチャが用意した依り代!それにより、復讐は果たされる!貴様の家族、娘を貴様の前で奪う事で!】

 

ニャルラトホテプは憐れみを向ける。どうやら、神の矜持も失い果てた宿敵であろう存在に。

 

【復讐として、家族を狙うというのか。私ではなく】

 

【そうだ、ニャルラトホテプ。貴様は何も持たぬが故に、無貌であるが故に無敵であった!そんな貴様がまさか家族を持つとは傑作だ!あぁ、だが祝福するぞ。これは素晴らしい事だ】

 

クトゥグアは燃え盛る。赤き炎ながら、その情動はドス黒い。

 

【貴様の前で、貴様の家族を焼き払う!その復讐が成し遂げられるのだから!!家族の苦悶を聞き及びながら、無力に塗れ死んでいくがいい!!貴様にはそれこそが相応しい!!】

 

まずは家族を狙う。それこそがお前の苦悶を齎す最適解。

 

脆弱と下劣を極めた『人間』に落ち果てた宿敵に、かける情はニャルには無かった。

 

【復讐に燃える哀れな焔……。私が責任を以て、この場で吹き消そう】

 

【やってみるがいい!!腑抜けた貴様にできるのならなぁ!!】

 

そして幕が上がる。無貌の混沌、生ける炎。互いを封じた仮面ライダー同士の戦いが。

 

【ククハハハハハハハ!!どうしたどうした、ニャルラトホテプ!!】

 

ニャルは果敢に白兵戦を挑み打撃を繰り出すが、その拳と蹴りがダメージをもたらす事は叶わなかった。

 

【ぐっ………!】

 

装甲を貫通する灼熱。肌が火傷を負う程の熱量。真紅とオレンジの融解するマグマが如きクトゥグアのライダーシステムは、膨大な熱エネルギーを有していた。

 

【我は生ける炎!アトラック・ナチャが製作したこの仮面の鎧は、我が性質を完全に纏わせた!我を殴るは溶鉱炉に手を晒すも同じと知れ!】

 

【アトラめ、憎たらしい程良い仕事だ…!】

 

【そして、この熱量は当然攻撃にも転用される!!】

 

クトゥグアの反撃の拳。それをニャルは受け──。

 

【!!】

 

いや、もんどりうってかわす。無様に地を転がった意味は即座に現れる。

 

なんと、『拳の放たれた大地が真っ二つに切り裂かれた』。それは限界をはるかに越えて凝縮された熱による現象。

 

【我が炎の熱量こそが刃!打撃すらも必殺に至る!かわしたのは良い判断だ。受けていれば死んでいただろうからなぁ!】

 

【残火の太刀の真似事なんかしやがって…!】

 

【さぁ逃げろ逃げろ!その小賢しい聡明さでどこまで逃げ続けられるかなァ!】

 

無造作に振るわれる乱打の全てに、触れば消し飛ぶ熱量が籠もる。一撃でも当たれば即座に消滅する一撃。

 

ニャルは相手の感情や情動を見切る事を得意とする。クトゥグアの優位性から生まれる高慢を宿す乱雑な攻撃は、かわすこと自体は容易い。

 

しかし、一度当たれば死ぬという極限状態は否応なしにニャルの疲弊と困憊を招く。拮抗していたのは数分で、即座にニャルは防戦一方に追いやられる。

 

【いいぞいいぞ、胸がすくようだ!貴様が無様に我から逃げ回り、地を転げ回るその姿!存分に堪能させてもらっているぞ!】

 

【悪趣味かつ苛烈な性分は変わらなかったようだな、クトゥグア】

 

【当然だ。力をなくそうと神の在り方は変わらぬ。貴様の性根があいも変わらず腐りきっているようになァ!】

 

そしてクトゥグア自身から、膨大な熱量と熱波が放たれる。生ける炎のその力が、ライダーシステムにより再現発動されたのだ。

 

【吹き飛ぶがいい混沌の化身!】

 

【!!】

 

【貴様は何も───救えない!!!】

 

辺り一帯を完全に焼き尽くす一撃。大地すら融解させ、吸った息が肺を焼くほどの大火力焼熱波動。

 

【ぐぅうぅうぅうっ………!!】

 

ニャルラトホテプはその身にダメージと、防御を貫通する火傷を刻まれ吹き飛んでいく。ベルトの完成によりこの程度で済むダメージ。他の存在では塵も残らなかったであろう。ニャルはその場に、倒れ伏す。

 

【貴様の娘はこの火の最中に飛び込み、我を殺した。それはトラペゾヘドロンの加護があればこそ成し遂げた事。娘に小賢しい改造にて託していたのだろう?】

 

【…………】

 

【だが今貴様に封神の力はない。娘に託し、我等を殺す為の備えを手放すとは笑止千万。だから貴様は今、ここで死ぬのだ。私に全てを焼き尽くされてなァ!】

 

苛烈なるクトゥグアが、ベルトを操作する。彼は人間を下劣と蔑んでおり言語音声はない。変わりに炎が燃え盛り、苦悶の悲鳴と絶叫が響き渡る。

 

【身体を蝕まれる痛みは苦しかろう?だから今楽にしてやるぞニャルラトホテプ!この日を我は永年待っていたのだ!】

 

【………】

 

【全ての力を込め貴様を抹殺する!それこそが!クトゥグアの神格を極限にまで辱めた貴様への当然の報い!さぁ、塵も残らず消え失せろ!!】

 

空中に浮かび、燃え滾る炎そのものとなったクトゥグアがライダーキックをニャルラトホテプに打ち放つ。もはやそれこそは、クトゥグアが費やす全ての熱量が形となったもの。

 

【案ずるな!寂しくなどない…後に貴様に関わる全てが貴様の後を追うのだからなァ────!!!】

 

勝利を確信したクトゥグアのライダーキックが、今。瀕死のニャルラトホテプに迫りくる。

 

【…………圧倒的な力だ。どうやらクトゥグアの性質上、人間となってもその熱量は遜色ない神威のようだ】

 

ニャルラトホテプは確信したのだ。自分の運命を。

 

そして───。

 

【──ならば、その力を利用するまでだ】

 

自身の逆転の勝機。千載一遇の機会を。

 

 

『このトリガー、解るか?こいつは実は最初から起動できた訳じゃなくてよ。ベルナージュにコテンパンにされてからどうやっても目覚めさせられなかった』

 

ニャルは聞き及んでいた。殺す数刻前、地球でのエボルトの暗躍を。

 

『どうしたもんかと思ったが、丁度良く三人のライダーキックがやってきてくれたんでね。その力を利用したわけだ』

 

【ライダーキックを…か】

 

『そうだ。忘れんなよ?お約束は、破るためにあるんだぜ?』

 

そしてその会話をニャルは忘れなかった。

 

死んでいった親友の、生前の忠告だったから。

 

 

【!!!】

 

渾身の力で蹴りを入れたクトゥグアだが、即座に違和感に気づく事になる。

 

【貴様…!!】

 

滅びていない。宿敵がなおも生きている。渾身の力を受けていながら、ライダーキックを受けていながら。

 

何故だ…。そう感じる間もなく、変化が訪れる。

 

【ぐっ、ぐぅうぅうぅう!?】

 

クトゥグアを襲う猛烈な虚脱感。体に満ちていた充実感が加速度的に抜け落ち、矮小な存在に成り果てていくおぞましい感覚。

 

【な、なんだ…!なんだ、これはぁ……!?】

 

クトゥグアのライダーキックは…正確にはニャルに当たっていなかった。

 

【お前の事だ。こうやってしぶとく生きながらえたんだろう?】

 

苦笑しながらニャルが掲げた石化しているトリガー。エボルトが託したそれを、クトゥグアの蹴りのガードに使ったのだ。

 

それだけではない。そのトリガーが、クトゥグアの炎と力を吸い取っていく。邪神の力を過不足なく映したクトゥグアだからこそ、その弱体化は見るも無残な結果を招く。

 

【ぐぅ、オォオお…………】

 

炎が消えかけ、倒れ伏したクトゥグア。その力の9割が、ニャルのトリガーに注ぎ込まれた事となる。

 

【有り難くいただいたぞ、貴様の熱エネルギー】

 

対照的に悠然と立つニャルラトホテプ。その手には、黒き光と赤き線が走るトリガー。

 

『トラペゾヘドロントリガー!!』

 

それはニャルが持つ至宝、対封神の力。ナイアに託した自身の権能を封じ込めたトリガーだった。

 

【その礼だ。この力の試金石に使ってやる】

 

起動した事を確認し、ニャルラトホテプはそのトリガーを高く掲げる。

 

【星辰の力よ、此処に来たれ】

 

すると─────

 

 

【ウルルルゥウォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオゥ゙!!】

 

【!!!】

 

天空が砕け散り、遥か異次元の果てからとある神格が姿を顕す。

 

それは無貌であり、黒き身体を持ち、苦悶に身体を攀じる神。

 

そう、即ちニャルが捨てた神格。【ニャルラトホテプ】そのもの。ニャルはそれを呼び出したのだ。

 

【■■■■、■■■■、■■■■■■?】

【変身】

 

トリガーを刺し、ケイオスドライバーのレバーを回す。

 

【ルゥヴヴヴェ゙ェ゙ェ゙ェ゙ェ゙ェ゙ェ゙ェ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!!!】

 

するとニャルラトホテプの神格に無数の光の刃が突き刺さり、神格を五体バラバラに寸断、裁断する。心胆を引き裂くような絶叫が響き渡る中、ニャルラトホテプの神格が一人分の輝けるアーマーと変化し、ライダーのニャルに装着される。

 

『ヘドロン!ヘドロン!!トラペゾヘドロン!!エボリューション!!アッハハハハハハハハハハハハハハハァ!!』

 

現れしは、白と黒のアーマーに変化したニャルラトホテプの姿。黒き装甲には赤き線が光り、白き装甲には星々が煌めいている。

 

『フェーズ∞、完了』

 

それこそが、自身の捨て去ったニャルラトホテプ自身の力をトラペゾヘドロントリガーで引き摺り出し再利用する最終形態。仮面ライダーニャルラトホテプ・トラペゾヘドロン。エボルトが用意した、相棒最高の晴れ姿である。

 

【お、ぉお……ぉお……】

 

クトゥグアの前にいるのは、全盛期となったニャルラトホテプ。自身の神格をライダーに変化させた本来の力。

 

『お前はもう用済みだ』

 

抜け殻となったクトゥグアになんら感慨もなく、ニャルはそれを生成する。

 

『乾かず飢えず、無に還れ』

 

【あ、ぁ…】

 

それは、クトゥグアの熱量など及びもつかない無限熱量。彼が見てきた全宇宙を凝縮し抽出した、ビッグクランチ・インパクト。

 

【ぁ─────】

 

それらに触れたクトゥグアは────。

 

全因果、全並行世界より存在を抹消されることとなった。




ニャル『光射す世界に、我等暗黒、住まう場所無し』

残り火を振り払ったニャルは、空を見上げる。


『この力で、このふざけたゲームから全てを取り戻す』

ニャル(待っていろ、エボルト。私達のケジメは痛烈だぞ)

決意を新たに──

ニャルはエボルトの待つ決戦の場へと歩みを進めるのだった。
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